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No.7573の一覧
[0] 俺と鬼と賽の河原と。(ほのぼのラブコメ)[兄二](2009/12/29 22:04)
[1] 其の二 あたしと彼と賽の河原と。[兄二](2009/09/21 21:30)
[2] 其の三 俺と鬼と地獄の酒場と。[兄二](2009/12/24 21:37)
[3] 其の四 俺と彼女と昨日の人と。[兄二](2009/09/24 13:26)
[4] 其の五 俺とあの子と昨日の人。[兄二](2009/09/24 13:50)
[5] 其の六 俺とあの子と一昨日の人と。[兄二](2009/04/01 21:22)
[6] 其の七 俺とお前とあいつとじゃらじゃら。[兄二](2009/09/24 13:55)
[7] 其の八 俺とあの子とじゃら男の恋と。[兄二](2009/04/04 21:04)
[8] 其の九 俺とじゃら男と屋台のおっさん。[兄二](2009/04/05 22:12)
[9] 其の十 俺と迷子と三途の河と。[兄二](2009/04/19 01:06)
[10] 其の十一 あたしと彼といつもの日常。[兄二](2009/05/18 23:38)
[11] 其の十二 俺と鬼と黒髪美人と。[兄二](2009/05/18 23:38)
[12] 其の十三 俺と少女と鬼の秘密と。[兄二](2009/04/13 01:47)
[13] 其の十四 俺と野郎と鬼と少女と。[兄二](2009/05/18 23:39)
[14] 其の十五 俺と河原と兄妹と。[兄二](2009/04/19 01:04)
[15] 其の十六 私と河原とあの人と。[兄二](2009/04/24 23:49)
[16] 其の十七 俺と酒場でただの小噺。[兄二](2009/05/18 23:32)
[17] 其の十八 俺と私と彼と彼女と。[兄二](2009/05/24 01:15)
[18] 其の十九 俺と彼女と気まぐれと。[兄二](2009/05/21 09:39)
[19] 其の二十 俺と彼女とデートと。[兄二](2009/05/24 01:16)
[20] 其の二十一 俺とお前とこの地獄と。[兄二](2009/10/17 19:53)
[21] 其の二十二 俺と天狗と閻魔と家族と。[兄二](2009/05/31 00:27)
[22] 其の二十三 俺と閻魔とパーティと。[兄二](2009/06/04 01:07)
[23] 其の二十四 俺と閻魔と部屋と起源と。[兄二](2009/06/05 00:43)
[24] 其の二十五 じゃら男と少女と俺と暁御と。[兄二](2009/06/09 23:52)
[25] 其の二十六 じゃら男と少女とでえとと。[兄二](2009/07/30 22:38)
[26] 其の二十七 じゃら男と少女と俺と暁御とチンピラ的な何か。[兄二](2009/06/16 00:38)
[27] 其の二十八 俺とじゃら男とリンと昨日と。[兄二](2009/06/16 11:41)
[28] 其の二十九 俺と酒呑みと変なテンション。[兄二](2009/06/20 00:27)
[29] 其の三十 俺と前さんと部屋とゲームと。[兄二](2009/06/21 19:31)
[30] 其の三十一 俺と河原と妹と。[兄二](2009/06/27 19:20)
[31] 其の三十二 俺と山と天狗と。[兄二](2009/06/27 19:18)
[32] 其の三十三 俺と山と天狗と地獄と。[兄二](2009/06/30 21:51)
[33] 其の三十四 俺と彼女と実家と家族と。[兄二](2009/07/03 20:35)
[34] 其の三十五 俺と家族と娘と風邪と。[兄二](2009/07/07 00:05)
[35] 其の三十六 私と彼と賽の河原と。[兄二](2009/07/09 23:00)
[36] 其の三十七 私と主と、俺と部下と賽の河原と。[兄二](2009/07/12 22:40)
[37] 其の三十八 俺と部下と結局平和と。[兄二](2009/07/17 23:43)
[38] 其の三十九 俺とその他と賽の河原と。[兄二](2009/07/21 08:45)
[39] 其の四十 俺とメイドと賽の河原と。[兄二](2009/07/20 22:53)
[40] 其の四十一 俺と無関係などっかの問題と幕間的な何か。[兄二](2009/07/22 21:56)
[41] 其の四十二 暁御と奴と賽の河原と。[兄二](2009/07/25 22:22)
[42] 其の四十三 俺と海と夏の地獄と。[兄二](2009/07/28 00:21)
[43] 其の四十四 俺と海と真の地獄と。[兄二](2009/07/30 22:35)
[44] 其の四十五 俺と貴方と賽の河原と。[兄二](2009/08/01 23:35)
[45] 其の四十六 俺とお前の滅亡危機。[兄二](2009/08/04 21:48)
[46] 其の四十七 俺とお前と厨ニ病。[兄二](2009/08/07 20:23)
[47] 其の四十八 疲れた俺と罰ゲーム。[兄二](2009/08/10 19:10)
[48] 其の四十九 俺と鬼と……、は? 猫?[兄二](2009/08/13 20:32)
[49] 其の五十 俺と盆と賽の河原と。[兄二](2009/08/17 00:02)
[50] 其の五十一 私と俺とあたしと誰か。[兄二](2009/08/19 23:35)
[51] 其の五十二 貴方と君の賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:03)
[52] 其の五十三 俺と藍音と賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:01)
[53] 其の五十四 俺と彼女ととある路地。[兄二](2009/09/04 21:56)
[54] 其の五十五 幕間 ある日の俺とメイドと猫耳。[兄二](2009/09/10 21:30)
[55] 其の五十六 幕間 俺と閻魔と妹の午後。[兄二](2009/09/14 22:11)
[57] 其の五十七 変種 名探偵鬼兵衛。前編[兄二](2009/09/21 21:31)
[58] 其の五十八 変種 名探偵鬼兵衛。 後編[兄二](2009/09/21 21:28)
[59] 其の五十九 俺が貴方と一緒に縁側で。[兄二](2009/09/24 22:25)
[60] 其の六十 俺と君とそんな日もあるさ。[兄二](2009/09/27 22:00)
[61] 其の六十一 俺とお前じゃ端から無理です。[兄二](2009/10/02 21:07)
[62] 其の六十二 今日は地獄の運動会。[兄二](2009/10/05 22:30)
[63] 其の六十三 ワタシトアナタデアアムジョウ。[兄二](2009/10/08 22:36)
[64] 其の六十四 鈴とじゃら男と賽の河原と。[兄二](2009/10/12 21:56)
[65] 其の六十五 俺と妹とソファやら鍵やら。[兄二](2009/10/17 19:50)
[66] 其の六十六 俺と御伽と竹林と。[兄二](2009/11/04 22:14)
[67] 其の六十七 俺と翁と父よ母よ。[兄二](2009/10/23 21:57)
[68] 其の六十八 俺と翁と月と水月。[兄二](2009/11/04 22:12)
[69] 其の六十九 貴方の家には誘惑がいっぱい。[兄二](2009/11/04 22:11)
[70] 其の七十 俺と娘と寒い日と。[兄二](2009/11/04 22:08)
[71] 其の七十一 俺と河原と冬到来。[兄二](2009/11/04 22:04)
[72] 其の七十二 俺と露店とこれからしばらく。[兄二](2009/11/07 20:09)
[73] 其の七十三 俺と貴方と街で二人。[兄二](2009/11/10 22:20)
[74] 其の七十四 俺とお前と聖域にて。[兄二](2009/11/13 22:07)
[75] 其の七十五 家で俺とお前が云々かんぬん。[兄二](2009/11/23 21:58)
[76] 其の七十六 俺と厨二で世界がやばい。[兄二](2009/11/27 22:19)
[77] 其の七十七 俺と二対一は卑怯だと思います。[兄二](2009/11/30 21:56)
[78] 其の七十八 俺とお前の急転直下。[兄二](2009/12/04 21:44)
[79] 其の七十九 俺と現世で世界危機。[兄二](2009/12/11 22:39)
[80] 其の一の前の…… 前[兄二](2009/12/15 22:10)
[81] 其の八十 俺と現世で世界危機。 弐[兄二](2009/12/19 22:00)
[82] 其の一の前の…… 後[兄二](2009/12/24 21:28)
[83] 其の八十一 俺と現世で世界危機。 終[兄二](2009/12/29 22:08)
[84] 其の八十二 明けましておめでとう俺。[兄二](2010/01/02 21:59)
[85] 其の八十三 俺と貴方のお節料理。[兄二](2010/01/05 21:56)
[86] 其の八十四 俺と茶店とバイターさんと。[兄二](2010/01/11 21:39)
[87] 其の八十五 俺と閻魔とセーラー服と。[兄二](2010/01/11 21:42)
[88] 其の八十六 俺と結婚とか云々かんぬん。[兄二](2010/01/14 21:32)
[89] 其の八十七 俺と少女と李知さん実家と。[兄二](2010/01/17 21:46)
[90] 其の八十八 俺と家と留守番と。[兄二](2010/01/21 12:18)
[91] 其の八十九 俺としること閻魔のお宅と。[兄二](2010/01/23 22:01)
[92] 其の九十 俺と実家で風雲急。[兄二](2010/01/26 22:29)
[93] 其の九十一 俺と最高潮。[兄二](2010/02/02 21:30)
[94] 其の九十二 そして俺しか立ってなかった。[兄二](2010/02/02 21:24)
[95] 其の九十三 俺と事件終結お疲れさん。[兄二](2010/02/06 21:52)
[96] 其の九十四 俺とアホの子。[兄二](2010/02/09 22:27)
[97] 其の九十五 俺とチョコとヴァレンティヌスと。[兄二](2010/02/14 21:49)
[98] 其の九十六 俺が教師で教師が俺で。[兄二](2010/02/22 22:00)
[99] 其の九十七 俺と本気と貴方と春と。[兄二](2010/02/22 21:55)
[100] 其の九十八 ~出番黙示録~アキミ。[兄二](2010/02/25 22:37)
[101] 其の九十九 俺と家と諸問題と。[兄二](2010/03/01 21:32)
[102] 其の百 俺と風と賽の河原で。[兄二](2010/03/04 21:47)
[103] 其の百一 百話記念、にすらなっていない。[兄二](2010/03/07 21:47)
[104] 其の百二 俺と憐子さんと前さんで。[兄二](2010/03/10 21:40)
[105] 其の百三 俺とちみっこと。[兄二](2010/03/14 21:15)
[106] 其の百四 俺と保健室が危険の香り。[兄二](2010/03/17 21:48)
[107] 其の百五 俺と娘と妹でなんやかんや。[兄二](2010/03/20 21:43)
[108] 其の百六 大天狗は見た![兄二](2010/03/24 20:09)
[109] 其の百七 俺と春とクリームパン。[兄二](2010/03/27 21:33)
[110] 其の百八 俺と憐子さんと空白。[兄二](2010/03/30 21:44)
[111] 其の百九 猫と名前と。[兄二](2010/04/03 21:03)
[112] 其の百十 俺と猫とにゃんこと猫耳とか。[兄二](2010/04/07 21:56)
[113] 其の百十一 春と俺と入学式。[兄二](2010/04/17 21:48)
[114] 其の百十二 俺と子供二人。[兄二](2010/04/13 22:03)
[115] 其の百十三 俺とあれな賽の河原と。[兄二](2010/04/17 21:41)
[116] 其の百十四 俺と生徒とメガネ。[兄二](2010/04/20 22:07)
[117] 其の百十五 眼鏡と俺と学校で。[兄二](2010/04/23 21:52)
[118] 其の百十六 貧乏暇なし、俺に休みなし。[兄二](2010/04/27 22:07)
[119] 其の百十七 俺と罪と罰と。[兄二](2010/04/30 21:49)
[120] 其の百十八 大天狗を倒す一つの方法。[兄二](2010/05/05 21:39)
[121] 其の百十九 大天狗が倒せない。[兄二](2010/05/09 21:29)
[122] 其の百二十 俺とご近所付き合いが。[兄二](2010/05/12 22:12)
[123] 其の百二十一 眼鏡と俺とこれからの話。[兄二](2010/05/16 21:56)
[124] 其の百二十二 俺と刀と丸太で行こう。[兄二](2010/05/22 23:04)
[125] 其の百二十三 俺と逢瀬と憐子さん。[兄二](2010/05/22 23:03)
[126] 其の百二十四 俺と指輪と居候。[兄二](2010/05/25 22:07)
[127] 其の百二十五 俺と嫉妬と幼心地。[兄二](2010/06/02 22:44)
[128] 其の百二十六 俺と噂も七十五日は意外と長い。[兄二](2010/06/02 22:05)
[129] 其の百二十七 にゃん子のおしごと。[兄二](2010/06/05 22:15)
[130] 其の百二十八 俺とお人形遊びは卒業どころかしたことねえ。[兄二](2010/06/08 22:21)
[131] 其の百二十九 俺と鬼と神社祭。[兄二](2010/06/12 22:50)
[132] 其の百三十 俺と日がな一日。[兄二](2010/06/15 22:03)
[133] 其の百三十一 俺と挑戦者。[兄二](2010/06/18 21:47)
[134] 其の百三十二 俺と眼鏡と母と俺と。[兄二](2010/06/22 23:21)
[135] 其の百三十三 薬師と銀子と惚れ薬。[兄二](2010/06/25 22:09)
[136] 其の百三十四 俺とできる女と強面な人。[兄二](2010/06/29 22:08)
[137] 其の百三十五 逆襲のブライアン。[兄二](2010/07/03 22:49)
[138] 其の百三十六 俺とお前と学校の怪談が。[兄二](2010/07/06 22:03)
[139] 其の百三十七 俺とある日のアホの子。[兄二](2010/07/09 21:21)
[140] 其の百三十八 すれ違い俺。[兄二](2010/07/12 22:14)
[141] 其の百三十九 じゃらじゃらじゃらりとうっかり洗濯。[兄二](2010/07/15 22:11)
[142] 其の百四十 俺と序文はまったく関係ない話。[兄二](2010/07/19 22:50)
[143] 其の百四十一 俺と決闘と日本刀。[兄二](2010/07/22 20:42)
[144] 番外編 現在の短編:薬師昔話 お姫様の話。[兄二](2010/04/17 21:47)
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[7573] 其の四 俺と彼女と昨日の人と。
Name: 兄二◆adcfcfa1 ID:b80cdb5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/09/24 13:26
俺と鬼と賽の河原と。



 ここは河原。



「一つ積んでは母のため」




 そこで、人は石を積む。




「二つ積んでは父のため」




 それが供養と言われつつ。




「三つ積んでは祖母のため。四つ積んでは爺ちゃん、爺ちゃん!? じいちゃあああああああああああああああああん!!」







 それが、賽の河原。




「じいちゃんに何が起きたのさ!?」








其の四 俺と彼女と昨日の人と。







「前さん? 前さんなら俺の隣で寝てるぜ?」


 どうもこんにちは、薬師です。

 ただいま、ベッドの上に寝る前さんの横。

 いわゆるベッド際に立っていたりする。

 前さんは隣で寝てるけど、俺は立ってるぜ!! という新展開。

 さて、その彼女の寝顔を拝見といってみようと思う。

 現在彼女は、布団を放りだし、斜め気味に、シーツを握るようにして寝ている。

 その服は俺が貸した白い浴衣。

 ただし、帯がほどけてどこかへ行ってしまっているが。

 そんな中、時折、「…うぅ…ん…」とか言って眠る顔は幸せそうで。

 以上、これ以上は脳内補完してほしい。

 さて、それでまあ、大変愛らしいと思う諸兄には同意するが、いい加減に、起こさねばならない。

 今日は、日曜であり、休日なのだが、彼女の予定は聞いちゃいないのだ。

 時刻は朝九時。

 という訳で、まずは声を掛けてみる。


「前さん、前さーん」


 残念、無反応。

 仕方がない、揺するか。


「前さん、朝だぞー」


 肩を掴んで揺らす。

 すると、わずかに反応が返ってきた。


「う、うぅ…ん?」


 少しだけ、腕や頭に動きが見えた。

 それを見て、俺は畳みかける。


「ほら、前さん、朝だ。早く起きないとベッドで俺も寝るぞ?」

「……うん…」


 ……。


「いや、それはそれで困る」

「うん……? やくし?」


 なぜか呼ばれた。


「ん、ああ。如意ヶ嶽 薬師本人だ」


 ので律義に答える。


「うぇ? 薬師?」

「ああ」


 すると、彼女の上半身が跳ねあがった。


「うぇえ!? 薬師!? 何で!?」

「!?が多いな。というのはともかく。昨日、前さんが寝てしまった後、送ろうと思ったのだけど。鍵持ってない、前さん起きない、俺の家に泊めるしかない、と相成った」

「う、そうなんだ。でも、あれ? あたしの服じゃないよね、これ」


 そう言って、前さんが、着ている白い浴衣を、つまんで見せる。

 それに俺はうなずく。


「それは、前さんを一回寝かしたら、途中で起きだしてきて――、『服寄こせ』って言ったから、ある程度サイズに幅が利く奴を渡した」

「じゃあ、自分で着替えたんだ」

「ああ、誓ってやましいことはしてないぞ?」


 すると、前さんが、俺の顔を覗き込んできた。

 鼻先すぐそこまで。


「ほんとに?」


 その表情を見るに、本気で疑ってる訳ではないようだった。

 証拠に口の端が吊り上っている。

 それに対し、俺はあえて目をそらしてみせた。


「実は……、頭くらいは撫でたかもな」

「そうなんだ、撫でたんだ……」


 俺の言葉に、前さんが複雑そうな表情を見せる。

 きっと、子供扱いということに関して考えているのだろう。


「さて、飯、残りもんは貰ってきてるから、食うといい」


 言うと、前さんはまだ眠そうな目をこすりながら肯いた。


「うん、食べる」

「おっけ、そこのちゃぶ台に乗っかってる」


 言いながら、俺は部屋の中心にあるちゃぶ台を指差した。

 実は、俺の数少ない家具の一つである。

 寮の数ある部屋の一つ、広くも、せまくも無い畳の部屋。

 そして部屋に不釣り合いななベッド。

 冷蔵庫と箪笥と、押し入れ。

 これで、おおむね終わり。

 ベッドより、布団の方が好きなのだが、何故か、ベッドが備え付けてあったのだ。

 はたして、畳は傷まないのか。

 そんな部屋で、前さんはちゃぶ台の前に座って、おにぎりを食べ始める。

 ちなみに、俺はもう食べ終わった。

 実は、この寮毎日三食でるのである。

 朝夜は食堂で、昼は俺の場合は前さんが届けてくれる。

 地獄の生き物は、ちゃんと食べないと、危険なことになるとか。

 そういうの含めて、ここは驚くほど好条件の職場だったりする。

 そしてぼんやりとおにぎりを頬張る前さんを眺めていると、食事が終わったらしい。

 それを見計らって、俺は前さんに声を掛ける。


「さてさて、お嬢さん。今日の予定は?」

「んー、特にないけど? あ、でも同僚に外出許可もらっとかないと」

「外出許可?」

「私達の寮、外出許可ないと、休日外に出れないんだ。でも、でも、出てるかどうかかいとくだけなんだけどね。ご飯の準備とかあるから」


 きっと、ホワイトボードでもあるのだろう、と勝手に想像してみる。


「だから、同僚に後で書いてもらえるように頼んどく」

「ほぉ。で、今日は暇なのか?」

「うん、でもあれだなぁ、いろいろ日用品買い足さなきゃいけないんだった」

「そうか」


 俺はついて行く、とは言わなかった。

 女性の日用品購入につきあうほど俺は猛者じゃない。


「だが、まあ、川までは送らせてもらおうか」

「いいよ、そんな。子供じゃないんだし」


 両手を振って断ろうとする前さんに、俺は食い下がった。


「いや、な。飲みに連れていったのは俺だから、最後まで面倒見させろ、と。ま、俺は散歩がてらだから気にするな」


 すると、前さんはしばらく悩んでいたようだが、やがて肯く。


「うん、じゃあお願い」

「了解。じゃ、俺は部屋の外に出てるから、着替えが終わったら来てくれ」

「ん」


 言ってから、廊下に出て、少し。

 ガチャリ、と音を立てて扉が開く。


「それじゃ、行くか」


 声を掛けると、そこにはいつもの若草色の和服姿の前さんが。


「うん」


 俺は、前さんを伴って、寮を後にした。






 寮から五分、俺達は賽の河原へと来ている。


「それじゃ」

「おう、またな」


 言って、前さんが今日も仕事の同僚へ走って行く。

 話していた、と思ったら鬼の女の人が急に微笑んで――、

 あ、撫でた。

 それに対し前さんは顔を真っ赤にしてるけど、無断外泊した手前、大きく出れないらしい。

 ぷるぷる震えながら耐えている。

 そしてそれを眺める俺の視力は2・0。

 と、それはともかく。


「きゃっ!」


 俺は、乱暴に石が崩される音と、悲鳴に、振り向いた。


「いい気味じゃねぇか……」


 そこには、地に座りうなだれる何かの制服を着た中学生か高校生くらいの少女と、そして――、


「昨日の人!?」

「あっ、てめぇは!!」


 昨日の人だった。


「詳しく言うなら、てめぇ、覚――、って言って金棒食らった人!」


 多分、てめぇ、覚悟しろよ、っていいたかったんだと俺は思っている。

 そんな彼は、昨日と同じような赤い髪でアクセサリーじゃらじゃらの気持ち悪さを醸し出していた。


「そ、そういうテメェは昨日の――、ってそうか、今はあの娘はいねぇのか」


 ま、それはいいか。

 それよりも、そこでくずおれてる少女、だと思う。


「昨日は、あの娘に負けたけどな、お前とタイマンなら負けねぇぞ?」


 ストレートの前さんとは打って変わって、ふわふわとした金髪に近い感じの色の薄い茶髪に、

 黒い大きなリボン。

 前髪で隠れてその眼はみえないが、多少いじめられそうな外見をしているものの、多分美少女。


「わかってるんだろうな、あんなことしてよぉ。ここであったが百年目ぇ」


 そんな彼女に、俺は手を伸ばす。


「ほれ、掴まれ」

「あ、は、い。ごめんなさい」


 彼女が俺の手を掴み立ち上がったのを確認すると、俺は男に視線をもどす。


「許して欲しかったら、土下座しな」


 俺は、そう言った男の目を、真っ直ぐに見詰める。


「な、なんだよ」


 そう、真っ直ぐ、真剣に見詰めて――、


「すまん、聞いてなかった」

「な」


 いや、その、あれだ。

 話してたのか?


「テメェ! 舐めて――」


 その言葉を、俺は遮る。


「まあ、待て、落ち着け」

「んだよ」


 そう、俺に名案がある。


「大丈夫、二度も説明させる二度手間はさせない。あれだ、だいたい雰囲気はわかった。だから、俺が予想で話の流れを言ってみよう。で、間違ったところをお前が直す、と」

「何言ってんだ?」

「多分あれだな。俺とお前は昨日会ってる、それで、まあ、言うまでもなく仲は険悪だ。それが、うっかり同じ職場で会ってしまった。そして、あ、お前は昨日の! となり、お前がその恨みを以って、ここで逢うたが百年目よぉ!! となり、そして――」


 言いながら、俺は拳を握る。


「あ、ああ」

「ふん、ならばここで決着をつけてやるぜ、行くぜっ! うぉおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 俺の拳が唸った。


「はっぴねすっ!!」


 じゃらりとか、装飾品が擦れる音を立てながら男が倒れる。

 まったく、倒れる時すらじゃらじゃら言うとはけしからん奴め。

 で、それは置いておいて、今意識を向けるべきはこちらではない。


「問題ないか?」


 目の前の少女に、構うべきだろう。


「あ、はい。ありがとうございました」


 ぺこりと、少女がお辞儀した。


「で、そこな少女は、お名前なんというのかな?」


 少々茶化して、言ってみると、少女は、背筋をピンと張って答えた。


「はい、私は要 暁御って、いいます」


 そのようにして、俺は、カナメ アキミと知り合った。






 流れ流れて三途川。

 たまの出会いと少しの休み。

 俺は明日もどうせ石を積むのだろう。







―――


其の四、何とか新キャラ登場。
何があるってほどでもないけれど。
ただ、まあ、ここまで書いて思うことは、一人称って難しい。
普段三人称使いなので、とりあえずがんばって腕を磨きます。



では、コメント返信。



ザクロ様


哀れな人は、再登場を果たしました。
もしかすると、長い付き合いになるかも。



ふいご様


実は、ここの感想掲示板、ほとんど鬼っ娘に関するコメントが載っているという現実が横たわっていたり。
さあ、あなたもご一緒に、鬼っ娘最高。


ルシフル様


真っ向勝負じゃ勝てやしない。
ゆえに私はひっそりチラシ裏でほのぼのを書くのです。


では誰が勝って、誰が負けたのか。
   少なくとも、私は鬼っ娘に負けている。
                   兄二





さてでは最後に。
合言葉は、

鬼っ娘は、人類の生み出した叡智の結晶。


 


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