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No.7573の一覧
[0] 俺と鬼と賽の河原と。(ほのぼのラブコメ)[兄二](2009/12/29 22:04)
[1] 其の二 あたしと彼と賽の河原と。[兄二](2009/09/21 21:30)
[2] 其の三 俺と鬼と地獄の酒場と。[兄二](2009/12/24 21:37)
[3] 其の四 俺と彼女と昨日の人と。[兄二](2009/09/24 13:26)
[4] 其の五 俺とあの子と昨日の人。[兄二](2009/09/24 13:50)
[5] 其の六 俺とあの子と一昨日の人と。[兄二](2009/04/01 21:22)
[6] 其の七 俺とお前とあいつとじゃらじゃら。[兄二](2009/09/24 13:55)
[7] 其の八 俺とあの子とじゃら男の恋と。[兄二](2009/04/04 21:04)
[8] 其の九 俺とじゃら男と屋台のおっさん。[兄二](2009/04/05 22:12)
[9] 其の十 俺と迷子と三途の河と。[兄二](2009/04/19 01:06)
[10] 其の十一 あたしと彼といつもの日常。[兄二](2009/05/18 23:38)
[11] 其の十二 俺と鬼と黒髪美人と。[兄二](2009/05/18 23:38)
[12] 其の十三 俺と少女と鬼の秘密と。[兄二](2009/04/13 01:47)
[13] 其の十四 俺と野郎と鬼と少女と。[兄二](2009/05/18 23:39)
[14] 其の十五 俺と河原と兄妹と。[兄二](2009/04/19 01:04)
[15] 其の十六 私と河原とあの人と。[兄二](2009/04/24 23:49)
[16] 其の十七 俺と酒場でただの小噺。[兄二](2009/05/18 23:32)
[17] 其の十八 俺と私と彼と彼女と。[兄二](2009/05/24 01:15)
[18] 其の十九 俺と彼女と気まぐれと。[兄二](2009/05/21 09:39)
[19] 其の二十 俺と彼女とデートと。[兄二](2009/05/24 01:16)
[20] 其の二十一 俺とお前とこの地獄と。[兄二](2009/10/17 19:53)
[21] 其の二十二 俺と天狗と閻魔と家族と。[兄二](2009/05/31 00:27)
[22] 其の二十三 俺と閻魔とパーティと。[兄二](2009/06/04 01:07)
[23] 其の二十四 俺と閻魔と部屋と起源と。[兄二](2009/06/05 00:43)
[24] 其の二十五 じゃら男と少女と俺と暁御と。[兄二](2009/06/09 23:52)
[25] 其の二十六 じゃら男と少女とでえとと。[兄二](2009/07/30 22:38)
[26] 其の二十七 じゃら男と少女と俺と暁御とチンピラ的な何か。[兄二](2009/06/16 00:38)
[27] 其の二十八 俺とじゃら男とリンと昨日と。[兄二](2009/06/16 11:41)
[28] 其の二十九 俺と酒呑みと変なテンション。[兄二](2009/06/20 00:27)
[29] 其の三十 俺と前さんと部屋とゲームと。[兄二](2009/06/21 19:31)
[30] 其の三十一 俺と河原と妹と。[兄二](2009/06/27 19:20)
[31] 其の三十二 俺と山と天狗と。[兄二](2009/06/27 19:18)
[32] 其の三十三 俺と山と天狗と地獄と。[兄二](2009/06/30 21:51)
[33] 其の三十四 俺と彼女と実家と家族と。[兄二](2009/07/03 20:35)
[34] 其の三十五 俺と家族と娘と風邪と。[兄二](2009/07/07 00:05)
[35] 其の三十六 私と彼と賽の河原と。[兄二](2009/07/09 23:00)
[36] 其の三十七 私と主と、俺と部下と賽の河原と。[兄二](2009/07/12 22:40)
[37] 其の三十八 俺と部下と結局平和と。[兄二](2009/07/17 23:43)
[38] 其の三十九 俺とその他と賽の河原と。[兄二](2009/07/21 08:45)
[39] 其の四十 俺とメイドと賽の河原と。[兄二](2009/07/20 22:53)
[40] 其の四十一 俺と無関係などっかの問題と幕間的な何か。[兄二](2009/07/22 21:56)
[41] 其の四十二 暁御と奴と賽の河原と。[兄二](2009/07/25 22:22)
[42] 其の四十三 俺と海と夏の地獄と。[兄二](2009/07/28 00:21)
[43] 其の四十四 俺と海と真の地獄と。[兄二](2009/07/30 22:35)
[44] 其の四十五 俺と貴方と賽の河原と。[兄二](2009/08/01 23:35)
[45] 其の四十六 俺とお前の滅亡危機。[兄二](2009/08/04 21:48)
[46] 其の四十七 俺とお前と厨ニ病。[兄二](2009/08/07 20:23)
[47] 其の四十八 疲れた俺と罰ゲーム。[兄二](2009/08/10 19:10)
[48] 其の四十九 俺と鬼と……、は? 猫?[兄二](2009/08/13 20:32)
[49] 其の五十 俺と盆と賽の河原と。[兄二](2009/08/17 00:02)
[50] 其の五十一 私と俺とあたしと誰か。[兄二](2009/08/19 23:35)
[51] 其の五十二 貴方と君の賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:03)
[52] 其の五十三 俺と藍音と賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:01)
[53] 其の五十四 俺と彼女ととある路地。[兄二](2009/09/04 21:56)
[54] 其の五十五 幕間 ある日の俺とメイドと猫耳。[兄二](2009/09/10 21:30)
[55] 其の五十六 幕間 俺と閻魔と妹の午後。[兄二](2009/09/14 22:11)
[57] 其の五十七 変種 名探偵鬼兵衛。前編[兄二](2009/09/21 21:31)
[58] 其の五十八 変種 名探偵鬼兵衛。 後編[兄二](2009/09/21 21:28)
[59] 其の五十九 俺が貴方と一緒に縁側で。[兄二](2009/09/24 22:25)
[60] 其の六十 俺と君とそんな日もあるさ。[兄二](2009/09/27 22:00)
[61] 其の六十一 俺とお前じゃ端から無理です。[兄二](2009/10/02 21:07)
[62] 其の六十二 今日は地獄の運動会。[兄二](2009/10/05 22:30)
[63] 其の六十三 ワタシトアナタデアアムジョウ。[兄二](2009/10/08 22:36)
[64] 其の六十四 鈴とじゃら男と賽の河原と。[兄二](2009/10/12 21:56)
[65] 其の六十五 俺と妹とソファやら鍵やら。[兄二](2009/10/17 19:50)
[66] 其の六十六 俺と御伽と竹林と。[兄二](2009/11/04 22:14)
[67] 其の六十七 俺と翁と父よ母よ。[兄二](2009/10/23 21:57)
[68] 其の六十八 俺と翁と月と水月。[兄二](2009/11/04 22:12)
[69] 其の六十九 貴方の家には誘惑がいっぱい。[兄二](2009/11/04 22:11)
[70] 其の七十 俺と娘と寒い日と。[兄二](2009/11/04 22:08)
[71] 其の七十一 俺と河原と冬到来。[兄二](2009/11/04 22:04)
[72] 其の七十二 俺と露店とこれからしばらく。[兄二](2009/11/07 20:09)
[73] 其の七十三 俺と貴方と街で二人。[兄二](2009/11/10 22:20)
[74] 其の七十四 俺とお前と聖域にて。[兄二](2009/11/13 22:07)
[75] 其の七十五 家で俺とお前が云々かんぬん。[兄二](2009/11/23 21:58)
[76] 其の七十六 俺と厨二で世界がやばい。[兄二](2009/11/27 22:19)
[77] 其の七十七 俺と二対一は卑怯だと思います。[兄二](2009/11/30 21:56)
[78] 其の七十八 俺とお前の急転直下。[兄二](2009/12/04 21:44)
[79] 其の七十九 俺と現世で世界危機。[兄二](2009/12/11 22:39)
[80] 其の一の前の…… 前[兄二](2009/12/15 22:10)
[81] 其の八十 俺と現世で世界危機。 弐[兄二](2009/12/19 22:00)
[82] 其の一の前の…… 後[兄二](2009/12/24 21:28)
[83] 其の八十一 俺と現世で世界危機。 終[兄二](2009/12/29 22:08)
[84] 其の八十二 明けましておめでとう俺。[兄二](2010/01/02 21:59)
[85] 其の八十三 俺と貴方のお節料理。[兄二](2010/01/05 21:56)
[86] 其の八十四 俺と茶店とバイターさんと。[兄二](2010/01/11 21:39)
[87] 其の八十五 俺と閻魔とセーラー服と。[兄二](2010/01/11 21:42)
[88] 其の八十六 俺と結婚とか云々かんぬん。[兄二](2010/01/14 21:32)
[89] 其の八十七 俺と少女と李知さん実家と。[兄二](2010/01/17 21:46)
[90] 其の八十八 俺と家と留守番と。[兄二](2010/01/21 12:18)
[91] 其の八十九 俺としること閻魔のお宅と。[兄二](2010/01/23 22:01)
[92] 其の九十 俺と実家で風雲急。[兄二](2010/01/26 22:29)
[93] 其の九十一 俺と最高潮。[兄二](2010/02/02 21:30)
[94] 其の九十二 そして俺しか立ってなかった。[兄二](2010/02/02 21:24)
[95] 其の九十三 俺と事件終結お疲れさん。[兄二](2010/02/06 21:52)
[96] 其の九十四 俺とアホの子。[兄二](2010/02/09 22:27)
[97] 其の九十五 俺とチョコとヴァレンティヌスと。[兄二](2010/02/14 21:49)
[98] 其の九十六 俺が教師で教師が俺で。[兄二](2010/02/22 22:00)
[99] 其の九十七 俺と本気と貴方と春と。[兄二](2010/02/22 21:55)
[100] 其の九十八 ~出番黙示録~アキミ。[兄二](2010/02/25 22:37)
[101] 其の九十九 俺と家と諸問題と。[兄二](2010/03/01 21:32)
[102] 其の百 俺と風と賽の河原で。[兄二](2010/03/04 21:47)
[103] 其の百一 百話記念、にすらなっていない。[兄二](2010/03/07 21:47)
[104] 其の百二 俺と憐子さんと前さんで。[兄二](2010/03/10 21:40)
[105] 其の百三 俺とちみっこと。[兄二](2010/03/14 21:15)
[106] 其の百四 俺と保健室が危険の香り。[兄二](2010/03/17 21:48)
[107] 其の百五 俺と娘と妹でなんやかんや。[兄二](2010/03/20 21:43)
[108] 其の百六 大天狗は見た![兄二](2010/03/24 20:09)
[109] 其の百七 俺と春とクリームパン。[兄二](2010/03/27 21:33)
[110] 其の百八 俺と憐子さんと空白。[兄二](2010/03/30 21:44)
[111] 其の百九 猫と名前と。[兄二](2010/04/03 21:03)
[112] 其の百十 俺と猫とにゃんこと猫耳とか。[兄二](2010/04/07 21:56)
[113] 其の百十一 春と俺と入学式。[兄二](2010/04/17 21:48)
[114] 其の百十二 俺と子供二人。[兄二](2010/04/13 22:03)
[115] 其の百十三 俺とあれな賽の河原と。[兄二](2010/04/17 21:41)
[116] 其の百十四 俺と生徒とメガネ。[兄二](2010/04/20 22:07)
[117] 其の百十五 眼鏡と俺と学校で。[兄二](2010/04/23 21:52)
[118] 其の百十六 貧乏暇なし、俺に休みなし。[兄二](2010/04/27 22:07)
[119] 其の百十七 俺と罪と罰と。[兄二](2010/04/30 21:49)
[120] 其の百十八 大天狗を倒す一つの方法。[兄二](2010/05/05 21:39)
[121] 其の百十九 大天狗が倒せない。[兄二](2010/05/09 21:29)
[122] 其の百二十 俺とご近所付き合いが。[兄二](2010/05/12 22:12)
[123] 其の百二十一 眼鏡と俺とこれからの話。[兄二](2010/05/16 21:56)
[124] 其の百二十二 俺と刀と丸太で行こう。[兄二](2010/05/22 23:04)
[125] 其の百二十三 俺と逢瀬と憐子さん。[兄二](2010/05/22 23:03)
[126] 其の百二十四 俺と指輪と居候。[兄二](2010/05/25 22:07)
[127] 其の百二十五 俺と嫉妬と幼心地。[兄二](2010/06/02 22:44)
[128] 其の百二十六 俺と噂も七十五日は意外と長い。[兄二](2010/06/02 22:05)
[129] 其の百二十七 にゃん子のおしごと。[兄二](2010/06/05 22:15)
[130] 其の百二十八 俺とお人形遊びは卒業どころかしたことねえ。[兄二](2010/06/08 22:21)
[131] 其の百二十九 俺と鬼と神社祭。[兄二](2010/06/12 22:50)
[132] 其の百三十 俺と日がな一日。[兄二](2010/06/15 22:03)
[133] 其の百三十一 俺と挑戦者。[兄二](2010/06/18 21:47)
[134] 其の百三十二 俺と眼鏡と母と俺と。[兄二](2010/06/22 23:21)
[135] 其の百三十三 薬師と銀子と惚れ薬。[兄二](2010/06/25 22:09)
[136] 其の百三十四 俺とできる女と強面な人。[兄二](2010/06/29 22:08)
[137] 其の百三十五 逆襲のブライアン。[兄二](2010/07/03 22:49)
[138] 其の百三十六 俺とお前と学校の怪談が。[兄二](2010/07/06 22:03)
[139] 其の百三十七 俺とある日のアホの子。[兄二](2010/07/09 21:21)
[140] 其の百三十八 すれ違い俺。[兄二](2010/07/12 22:14)
[141] 其の百三十九 じゃらじゃらじゃらりとうっかり洗濯。[兄二](2010/07/15 22:11)
[142] 其の百四十 俺と序文はまったく関係ない話。[兄二](2010/07/19 22:50)
[143] 其の百四十一 俺と決闘と日本刀。[兄二](2010/07/22 20:42)
[144] 番外編 現在の短編:薬師昔話 お姫様の話。[兄二](2010/04/17 21:47)
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[7573] 其の二十七 じゃら男と少女と俺と暁御とチンピラ的な何か。
Name: 兄二◆adcfcfa1 ID:b80cdb5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/16 00:38
俺と鬼と賽の河原と。




「一つ積んではリンのため」



「二つ積んではリンのため」


 俺はひたすら、積み上げられていく服を見守っていた。


「三つ積んではリンのため」





 さようなら、俺の財布の中身。

 俺の懐は氷河期に入ったようだ。








其の二十七 じゃら男と少女と俺と暁御とチンピラ的な何か。












 俺は今、服を買うためにデパートに居る。


「これは、判断を間違えたかもしんねぇ……」


 俺の眼には、桁のやけに多い値札が映っていた。

 ……給料日後でよかったぜ……。

 それに、今までつるんでいた奴らとの付き合いをやめた途端、金の使い道がなくなっていた。

 そんなように胸をなでおろす俺に、リンは上機嫌でかごに物を入れて行く。

 現状あるのが、寝巻き2、普段着1、外出用2、ってとこか。

 あとは普段着一枚で終わりか。

 ちなみにこの数は俺が指定した。

 多分こんなもんだろってことで言ってみたが文句が出なかったのでそのまま通る。

 そして、最後の普段着がかごに入れられこれで終わりか、と思った瞬間。


「ぶはッ!」

「?」


 リンが、下着売り場に突入。

 忘れていた。

 しかも、何も考えないで突っ込んじまった。

 その状況に、慌てて辺りを見回して、俺はそそくさと退散した。


「お、俺はちょっとそこにいるからな、終わったら来い」


 そう言って離れようとして、俺は服の端をつままれる。


「……」


 俺は、不安そうにこちらを見るリンに、怯えを感じ取った。

 目を離した隙に、俺が逃げると考えているのか。

 俺は溜息を一つ吐くと、言う。


「わぁったよ。付いててやるから早く選べ」


 そのようにして、俺の苦行が始まった。











「……やっと終わったな」


 俺は、リンを引きつれて、街を歩いている。

 苦行も終わり、晴れやかな気分で歩いていると、リンがソフトクリームの屋台をじっと見つめていることに気付く。

 そして、気づいた以上はと、俺は屋台へ向かっていく。


「ソフトクリーム二つ――っ!?」

「よぉじゃら男」


 そこには、


「せ、せせせ、センセイ!?」


 如意ヶ嶽薬師が立っていた。


「なんでここに!?」


 挙句、その後ろには、パンフや新聞でたびたび見る、最高責任者、閻魔の姿が。


「いやな? こないだ屋台手伝ったのが広まったんだか知らねーが。また、今回だけでいいから同業者の手伝いしてくれないかって、電話が来たんだよ。で、午前中は暇だしそれまでならかまわんかな、と」


 それはいい、それはいいが、何故に閻魔まで……。


「閻魔については、飯一日分でホイホイついてきた」

「薬師さん! そこは内密に……!!」

「そうだったか?」


 いや、もうなんと言おうか。

 センセイは権力者相手に何をやっているのか……。

 まあいいか。


「それで、ソフトク――」

「で、じゃら男よ。お前に聞きたいことがあるんだが」


 俺の言葉は途中で遮られた。

 センセイは問う。


「そこの幼女はなんだ」

「え、あ、それは、昨日から一緒に住むことになった――」

「このロリぺド野郎ッ!!」

「ぽげらっぱッ!!」


 俺の頬に、拳が突き刺さる。


「失望した! 例え暁御の望みがゼロだからって、何をロリに走ってるんだッ!!」


 ちげーよ、違うんだよ。

 なんとか、声を絞り出して見た。


「そうじゃなくて……」

「言い訳か、いいだろう、聞いてやろう」


 俺は、どうにか生き残ろうと、言葉を選んだ。


「俺が昨日家に帰ろうとしたら、こいつ、リンって言うんだけどよ、リンが話しかけて来て、そんで連れて帰ったんだよ」

「この犯罪者めっ」

「はんにばるッ!!」


 再び拳が突き刺さる。

 何がいけなかったのか。


「いや、ちげーんだよ……、そうじゃなくて…」


 言い募ろうとする俺、それに対しセンセイは。


「いや、もう大体読めてる。その子、家なかったんだろ?」

「耳が痛いですね……、戻ったらまた努力はしてみますが」


 いや、そこまで読めてて殴るのかよセンセイ……。


「ほらよ、二つだ。代はいい。さーびす、って奴をしてやろう」


 そう言ってセンセイがソフトクリームを手渡す。

 なんだかんだいって、殴っても衝撃がほとんどだし、腫れないのを見る限りでは、上手い殴り方をしてくれてるんだろう。

 きっと、俺のことを思って殴ってくれてるんだ。

 よな?

 きっと、そうだよな……。

 ともあれ、事の一部始終を茫然と見ていたリンに俺は、ソフトクリームを手渡した。


「ほらよ」


 すると、受け取る前に、リンはメモにペンを走らせた。


『だれ? えんまさまはしってるけど』

「あー……、こっちは、俺の師事してる、如意ヶ嶽薬師」

「よろしくな」


 そう言ってセンセイが笑う。

 そんなセンセイに、リンはお辞儀して、メモで、


『ななみ りんです』


 とセンセイに自己紹介する。

 センセイは、それを気にした様子もなくにこやかに返す。


「おーけい、リンな? 覚えた。何かあったら気軽に声、掛けれねーな、肩叩いてくれ」


 リンが、笑顔で肯く。


「いい子じゃねーか。そいじゃ、頑張れよ」

「お、おう!」


 センセイの言葉に応えて、俺はリンと再び歩き出した。











「よお、猛じゃねーか。ちょっと来いよ」


 そろそろ昼も近付き、帰ることを考えだした頃。

 俺は知った顔に出会う。


「んだよ」


 そいつは、不良仲間、と言ってもいい。

 少なくとも、だった、だが。

 センセイにぼこぼこにされた後は、全く会っていない。

 そんな男が、俺を路地裏へと手招きしていた。


「よお、しばらく何の噂も聞かねえから心配してたんだぜ?」


 そんなように、男は気味の悪い笑みを浮かべた。

 俺は、対して嫌そうな顔を向ける。


「んな用事なら俺は帰るぜ。人と約束があるんだ」


 俺はそのまま背を向けて、リンを連れだって大通りに戻ろうとする。

 すると、男は更に笑みを深める。


「ぷっ、ははははは! 本当に丸くなりやがったな、似合わねえ。ふんだけどお前。死刑確定したよ」


 俺はその言葉に、体はそのままに振り向いた。


「んだよ、俺にゃ、お前らに関わる気なんてねえぞ?」


 それだけ言って、顔を前に向ける。

 言葉は、すぐ後ろから振ってきた。


「お前にゃなくても、こっちにはあるんだよ……! お前のせいで運営にボコにされたってなぁッ!!」


 その瞬間、風を切る音が聞こえて。

 衝撃。

 地面が迫る。

 何が起きた?

 理解、鈍器で殴られた。

 意識が保てない。

 俺の意識は、そのままブラックアウトした。









「よ、暁御」


 時は一時。

 俺は暁御と公園に居た。


「あ、薬師さん。じゃら男さんは?」


 そこに、じゃら男の姿はない。

 そして――、メールも返って来てはいなかった。


「じゃら男は、もともと少し後で参加する予定だったからな。しばらくは気にせんでいい」


 そう言ってごまかす。

 じゃら男が暁御とのデートをあっさりすっぽかすとは考えにくい。

 何かあったか、それともドジでも踏んだか……。

 ともかく、メールを待つほかない。


「で、どこに行くつもりだったんだ?」

「あ、まずは映画館にでもと」


 そう言った暁御に、俺は肯き、映画館へと向かう。

 公園からは映画館は然程遠くなく、あっさりと辿り着いた。


「何見るよ?」


 すると、暁御はラブロマンスの類を熱心に見詰めていたが、急に俺の方を見ると、


「えっと……! その、ラブロマンスの類はっ……、面白くありませんよね…」


 お約束、と言えばお約束か。

 まあ、暁御もそういう歳だからラブロマンスもしょうがない。


「別にかまわんさ。誕生日なんだろ? それなら、こんくらいの我侭、喜んで受けて立とう」


 すると、暁御の表情が輝く。


「はい! ありがとうございます!!」


 そのようにして、俺達は込み合う映画館の中へ入って行った。




 映画も終わり、俺達はまだ街を歩いている。

 いよいよもって、雲行きが怪しい。

 じゃら男からのメールは未だに来ない。


「そう言えば、私が誕生日だってこと、知ってたんですか?」


 暁御の言葉に、苦笑いで俺は肯いた。

 と、そこで思い出す。

 ……じゃら男の応援に必死で贈り物の類用意してねえ。

 不味い、これはいかん。

 誕生日だってことを映画館で言ってしまった俺の失敗だ。

 知らない事になっていればよかったが、これは完全に誕生日を知っていながら放っておいた最悪な野郎だ。


「いや、昨日偶然な。鬼兵衛との話題に上がったんだが――、悪い。何も用意してない」


 素直に謝る。


「いえ、いいんです。知ってくれてただけでも――」


 が。

 俺はその言葉を遮った。


「だが、実はここに前偶然買った装飾品がある。お一つ如何か」


 露天少女よ、よくやった。

 実に必死で、懐を探ったところ、スーツの内ポケットに、前買ったままの装飾品がいまだに入っていたのだ。

 その装飾品を、手品のように俺は暁御に差し出して見せた。


「あ……、ありがとうございます!!」


 暁御に渡したのは、バングル、とかなんとかいってた気がするが、要は銀細工の腕輪。

 細かく細工が施されてはいないが、シンプルな良さがある、と思う。

 その品を両手で大切そうに抱えて、


「大切にしますね!」


 そう言って笑う暁御。


「そこまで言ってくれると送った側としては本望だ」


 暁御は贈り物とかに慣れてないのかね、この喜び様を見ると。

 まいったな……、これならじゃら男から突撃した方が良かった気がするが、返せとも言えんし。

 仕方なく、俺はそのまま続けようとして、携帯が震えた。


「と、ちょっと待ってくれ」


 携帯の表示には飯塚猛。

 その本分には、簡素にこう書いてあった。






『悪い、今日はいけそうにねえ』






 汚い路地裏で俺は目を覚ました。


「っつ、どこだぁ、ここ」


 朦朧とする意識が次第にはっきりしてきて、思い出す。


「……、あの野郎っ、ってリン、どこだ?」


 立ちあがって辺りを見るが、リンの姿はない。


「帰った、のか?」


 言い知れぬ不安を覚えて、俺は寮へと走り出した。

 結果から言おう。

 リンはいなかった。

 あったのは、手紙が一つ。



愛しの幼女が大切だったら、二丁目の三番倉庫に来い。



 俺は再び走り出すこととなる。

 二丁目の三番倉庫。

 家からそう離れてはいない。

 くっそ……! 待ってろよ、リン…!!

 焦る思いが募る中、人にぶつかりそうになるのも気にせず走り。

 自分でも驚くほど早く、倉庫に辿り着く。


「来てやったぞおらぁッ!!」


 突撃早々俺は咆える。

 二十ほどの人間が、俺を見ていた。

 その一人が、俺の前に出る。


「よく来たな、お前のことだから来ないと思ってたぜ?」

「うるせえ、リンはどうした?」

「そこにいるよ、まだ何もしてねえさ。お前がおねんねした後はどうだか知らねえけどな」


 男が親指で示した先には、両手両足を縛られて転がされているリンの姿があった。

 相手はやる気満々、もう容赦する理由はねえよな?


「こないだは、よくやってくれたよな猛ぅ……、お前のおかげで全員へこまされたんだぜ? 落し前、付けてけよ」

「つけてってやるよ、ああ、つけてってやるよッ!!」


 俺は、拳を振り下ろした。

 男の顔に、拳が突き刺さる。


「ぐぎゃっ!」


 はん、情けねえ声だな。

 俺は、男を気絶させて、次の獲物を探す。


「おいテメ、猛、覚悟できてんだろうな!!」

「うるせえっつってんだろうぁああああッ!!」


 俺の膝が、もう一人の腹に食い込む。

 倒れた奴を無視して、裏拳。

 こんだけたくさんいりゃ、適当振ったって当たるよなぁ!!

 三人目の顔面に裏拳が直撃。

 よし、中々のペース。

 だが、長くは続かなかった。

 後頭部に、硬い感触。


「っぐ、づうううッ!」


 前のめりに倒れる。

 だが、それでも。

 迫る地面に手をついて、ばねの様にして復帰。

 鉄パイプを持った野郎の首筋に回し蹴り。

 そこにバットなんぞ持った野郎が俺の横腹へとスイング。

 避けられない。

 直撃を貰う。


「がっ、は……」


 それでも。

 拳を振る、殴られる。


「な、なあ……、猛って、前から喧嘩は滅法強かったけどよ……」


 拳を振る、殴られる。

 その繰り返し。

 それでも。

 拳を振る、拳を振る。

 殴られる。

 絶対に気絶などしない。

 拳を振る、拳を振る、拳を振る。

 殴られて尚、怯みなどしない。


「こんなに、強かったか…?」


 拳を振る、拳を振る、拳を振る、拳を振る、拳を振る。

 拳を振る。


「あああああぁああああああアアアアアアアアァァアアアアッ!!」


 拳を、振り続けた。









「っは……、どうだ。見たか……?」


 後頭部から血が流れ。

 あちらこちら腫れ。

 右腕は全く上がらず。

 それでも尚。

 ただ一人、俺は立っていた。

 俺は、転がる人の波を越えて、リンの拘束を解く。

 リンは、心配そうにこちらを見上げていた。


「ほら、そんな心配そうな顔すんなよ。帰るぞ?」


 言うと、目の前の少女は、笑いながら、肯いた。

 さて、帰るか。

 そう思って踵を返して、不快な声が届く。


「待てよ……。まだ、楽しんで行けよ」


 御免だ。

 黙って倉庫を出ようとして、気付く。

 外には、さらに二十人を超える人数が、待機していた。


「さっき呼んでおいたんだ、ほら楽しんで行けよ」


 どうやら、休ませてはもらえないらしい。

 俺は再び、人の群れに突っ込んでいった。













「っつ、それにしても。手こずらせやがって……。三十人いたのに、五人にまで減らされちまった…」


 俺は、倉庫の前に、ボロ雑巾のように転がっている。

 意識はあった。

 だが、腕も足も全く動かない。

 ただ、指だけがもぞりと芋虫のように動くだけ。

 ああ、くそ…、格好悪い。


「おいおい…、まだ動こうとしてんのかよ。コイツ、そんなにすごい奴だったか? 噂は前からあったけど」


 その時。

 不意に聞き覚えのある声が聞こえた。


「そりゃ、ここは地獄だからな。本来の強さ以外にも、精神的なものが効くのがこの世界だ」

「ふーん、そうか。……って、誰だお前……」


 よく聞く声だ。

 俺が、


「天に尾を引く、天ツ狗」


 センセイと仰ぐ。


「そこに転がってる男の、先生だっ!」


 如意ヶ嶽薬師、その人だ。

 俺は安心して、意識を手放した。












「そこな幼女。リンだったか? うん。無事だな?」


 しかしじゃら男も無茶しやがる。

 心配になって来てみればこの有様。

 まあ、気合いだけで五十人抜きとは頑張ったが。

 そんなじゃら男に、リンが駆け寄る。


「あー……、怪我は酷いが、命にゃ関わんねえよ。精神的にそれほど軟くねえはずだ」


 地獄において死とは精神の死に近いものがある。

 わかりやすく言うなら、気を強くもてば死にはしない。

 ともあれ。

 転がるじゃら男に近づいて、そのすぐ横のリンを視界に収めながら、言う。


「そいつにゃ、好きな女がいる」


 いきなりリンが驚愕の表情でこちらを見る。

 そりゃ、まあ、年の功的に考えて、目の前の二十歳そこらの奴がじゃら男をどんな目で見つめてるかくらいはわかる。

 が、少女の目には迷いはなく。

 ま、いいことだ。

 そう納得して、呟いた。


「命短し、恋せよ乙女、な。まあ、死んでるわけだが」


 だが、ある意味乙女である期間は短いかもしれない。


「どちらにせよ、純粋に恋できる期間ってのは、短いからな」


 意味がわからないとばかりにリンが俺を見つめた。

 俺は、答えてみることにする。


「簡単な話だ、大人になれば――、恋の先に現実を見るからな。恋が終わった後を見なければならない、ってか、結婚を見つめるようになる。すると、学歴、収入等など勘定に入るわけだ」


 世知辛いな。

 まあ、それでも恋愛する奴はするんだが。


「そんなだからな。純粋にそいつに恋できるのは、今だけかもしんねぇ。つーわけで、頑張れよ、と。望むなら、お前のセンセイ、とやらも可だぜ?」


 そう言ってにやりと笑う。


「ま、これからも俺はお前の好きな人殴り続けるわ。まずはこの犯罪者めっ、だな」


 言うと、こちらをリンが見上げている。

 何か言いたいらしい。

 俺は懐から、


「む、好きな人がそんな目に会うのは許せない派? 悪い、筆ペンとメモ帳しかない」


 と言ってそれを渡すと、達筆な字で、少女がこう書いてよこした。


『ほどほどに』


 それを見て俺は吹き出す。


「ほどほどに! ねえ…! くくっ、いいな、流石。ま、ほどほどにさせてもらうさ」


 さて、頑張ったじゃら男を運んでやるとするか。














「しらな、知ってる天井だな……」


 俺は、いつものベッドで目を覚ました。

 そこに、いきなりメモが突き出され。


『おきた?』


 俺はリンの姿を確認する。


「リン……、大丈夫なのか?」

『だいじょうぶ、やくしさんがたすけてくれた』

「そっか……、格好わりいな。俺」


 だが、その言葉にリンは首を横に振って、抱きついてきた。


「あ、おい」


 その眼には、涙。

 とたんに何も言えなくなる。

 そして、溜息一つ。


「そこにある、花束。お前にやるよ」


 俺はそう言って微笑んだ。

 俺の腹から、顔を離したリンも、こちらを見て笑ってくれた。







 賽の河原は、今日も平和みてえだ。









おまけ



「げ、俺ピーマン苦手なんだよ」

『すききらいはだめ』

「いや、んなこといってもよぉ……」

『そんなこといってるとおおきくなれない』

「いいんだよ、ってかお前は俺のお袋か。ガキのくせに」

『わたし、あなたよりとしうえ』

「馬鹿言うんじゃねえ」

『しごきゅうねん、にじっさい』

「え?」











―――

さーて二十七。
じゃら男が派手に活躍しました。
強かったんですね。



年上ロリという異常な日常。



テストも終了し、やっと好き放題……、前もしてましたね。
はい。







返信。




ヨッスゥイ~様

空気キャラから主人公2に進化したじゃら男です。
大丈夫、この作品で死人が出るとしたら、現世で地獄行きくらいかと。
というか既に死んでますからね。
もう回収したフラグなら怖くないっ!





山椒魚様

リンはこのままじゃら男のもとでチャンスを待つようです。
主に暁御に振られるとか。
そう言えば、リンのがカタカナになってたりしますが、その内薬師先生の手によって漢字が決められるようです。





ねこ様

ピンチはあったけど、じゃら男は見事死亡回避しました。
リンのポジショニングは……、
恋人かつははお(削除急げ! 削除だッ!! ロリ母なんて認められんッ!! どんなニーズだ!?)






妄想万歳様

残念ながら、今回は暁御の誕生日に掠れもせず。
きっと枕を涙で濡らすのでしょう。
そしてそこをリンがかっさらっていくという……。
そうだ、私はロリもいけるクチなんだよ。





XXX様
じゃら男にロリフラグ……、ゆるせ(ry
じゃら男愛されてますね。
私も好きですが。
ともあれ、今回で男を急上昇。これで暁御が振り向いてくれるかはわかりませんが。





ザクロ様

ロリを拾って来て光源氏計画、と思ったら成人女性(笑)だった。
ふむ、現在に至るまでに、三人のタイプの違うロリが出たわけですな。
精神、年齢ともに高めの前さん、精神、年齢、両方が見た目のままの由美、年齢が二十歳、精神的にはロリのリン。
あとは、見た目大人の精神ロリで……、もうロリじゃなくね?
















最後に。


合法ロリ……、素晴らしい響きだと思ったあなたは、鉄の精神を鍛えましょう。


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