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No.7573の一覧
[0] 俺と鬼と賽の河原と。(ほのぼのラブコメ)[兄二](2009/12/29 22:04)
[1] 其の二 あたしと彼と賽の河原と。[兄二](2009/09/21 21:30)
[2] 其の三 俺と鬼と地獄の酒場と。[兄二](2009/12/24 21:37)
[3] 其の四 俺と彼女と昨日の人と。[兄二](2009/09/24 13:26)
[4] 其の五 俺とあの子と昨日の人。[兄二](2009/09/24 13:50)
[5] 其の六 俺とあの子と一昨日の人と。[兄二](2009/04/01 21:22)
[6] 其の七 俺とお前とあいつとじゃらじゃら。[兄二](2009/09/24 13:55)
[7] 其の八 俺とあの子とじゃら男の恋と。[兄二](2009/04/04 21:04)
[8] 其の九 俺とじゃら男と屋台のおっさん。[兄二](2009/04/05 22:12)
[9] 其の十 俺と迷子と三途の河と。[兄二](2009/04/19 01:06)
[10] 其の十一 あたしと彼といつもの日常。[兄二](2009/05/18 23:38)
[11] 其の十二 俺と鬼と黒髪美人と。[兄二](2009/05/18 23:38)
[12] 其の十三 俺と少女と鬼の秘密と。[兄二](2009/04/13 01:47)
[13] 其の十四 俺と野郎と鬼と少女と。[兄二](2009/05/18 23:39)
[14] 其の十五 俺と河原と兄妹と。[兄二](2009/04/19 01:04)
[15] 其の十六 私と河原とあの人と。[兄二](2009/04/24 23:49)
[16] 其の十七 俺と酒場でただの小噺。[兄二](2009/05/18 23:32)
[17] 其の十八 俺と私と彼と彼女と。[兄二](2009/05/24 01:15)
[18] 其の十九 俺と彼女と気まぐれと。[兄二](2009/05/21 09:39)
[19] 其の二十 俺と彼女とデートと。[兄二](2009/05/24 01:16)
[20] 其の二十一 俺とお前とこの地獄と。[兄二](2009/10/17 19:53)
[21] 其の二十二 俺と天狗と閻魔と家族と。[兄二](2009/05/31 00:27)
[22] 其の二十三 俺と閻魔とパーティと。[兄二](2009/06/04 01:07)
[23] 其の二十四 俺と閻魔と部屋と起源と。[兄二](2009/06/05 00:43)
[24] 其の二十五 じゃら男と少女と俺と暁御と。[兄二](2009/06/09 23:52)
[25] 其の二十六 じゃら男と少女とでえとと。[兄二](2009/07/30 22:38)
[26] 其の二十七 じゃら男と少女と俺と暁御とチンピラ的な何か。[兄二](2009/06/16 00:38)
[27] 其の二十八 俺とじゃら男とリンと昨日と。[兄二](2009/06/16 11:41)
[28] 其の二十九 俺と酒呑みと変なテンション。[兄二](2009/06/20 00:27)
[29] 其の三十 俺と前さんと部屋とゲームと。[兄二](2009/06/21 19:31)
[30] 其の三十一 俺と河原と妹と。[兄二](2009/06/27 19:20)
[31] 其の三十二 俺と山と天狗と。[兄二](2009/06/27 19:18)
[32] 其の三十三 俺と山と天狗と地獄と。[兄二](2009/06/30 21:51)
[33] 其の三十四 俺と彼女と実家と家族と。[兄二](2009/07/03 20:35)
[34] 其の三十五 俺と家族と娘と風邪と。[兄二](2009/07/07 00:05)
[35] 其の三十六 私と彼と賽の河原と。[兄二](2009/07/09 23:00)
[36] 其の三十七 私と主と、俺と部下と賽の河原と。[兄二](2009/07/12 22:40)
[37] 其の三十八 俺と部下と結局平和と。[兄二](2009/07/17 23:43)
[38] 其の三十九 俺とその他と賽の河原と。[兄二](2009/07/21 08:45)
[39] 其の四十 俺とメイドと賽の河原と。[兄二](2009/07/20 22:53)
[40] 其の四十一 俺と無関係などっかの問題と幕間的な何か。[兄二](2009/07/22 21:56)
[41] 其の四十二 暁御と奴と賽の河原と。[兄二](2009/07/25 22:22)
[42] 其の四十三 俺と海と夏の地獄と。[兄二](2009/07/28 00:21)
[43] 其の四十四 俺と海と真の地獄と。[兄二](2009/07/30 22:35)
[44] 其の四十五 俺と貴方と賽の河原と。[兄二](2009/08/01 23:35)
[45] 其の四十六 俺とお前の滅亡危機。[兄二](2009/08/04 21:48)
[46] 其の四十七 俺とお前と厨ニ病。[兄二](2009/08/07 20:23)
[47] 其の四十八 疲れた俺と罰ゲーム。[兄二](2009/08/10 19:10)
[48] 其の四十九 俺と鬼と……、は? 猫?[兄二](2009/08/13 20:32)
[49] 其の五十 俺と盆と賽の河原と。[兄二](2009/08/17 00:02)
[50] 其の五十一 私と俺とあたしと誰か。[兄二](2009/08/19 23:35)
[51] 其の五十二 貴方と君の賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:03)
[52] 其の五十三 俺と藍音と賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:01)
[53] 其の五十四 俺と彼女ととある路地。[兄二](2009/09/04 21:56)
[54] 其の五十五 幕間 ある日の俺とメイドと猫耳。[兄二](2009/09/10 21:30)
[55] 其の五十六 幕間 俺と閻魔と妹の午後。[兄二](2009/09/14 22:11)
[57] 其の五十七 変種 名探偵鬼兵衛。前編[兄二](2009/09/21 21:31)
[58] 其の五十八 変種 名探偵鬼兵衛。 後編[兄二](2009/09/21 21:28)
[59] 其の五十九 俺が貴方と一緒に縁側で。[兄二](2009/09/24 22:25)
[60] 其の六十 俺と君とそんな日もあるさ。[兄二](2009/09/27 22:00)
[61] 其の六十一 俺とお前じゃ端から無理です。[兄二](2009/10/02 21:07)
[62] 其の六十二 今日は地獄の運動会。[兄二](2009/10/05 22:30)
[63] 其の六十三 ワタシトアナタデアアムジョウ。[兄二](2009/10/08 22:36)
[64] 其の六十四 鈴とじゃら男と賽の河原と。[兄二](2009/10/12 21:56)
[65] 其の六十五 俺と妹とソファやら鍵やら。[兄二](2009/10/17 19:50)
[66] 其の六十六 俺と御伽と竹林と。[兄二](2009/11/04 22:14)
[67] 其の六十七 俺と翁と父よ母よ。[兄二](2009/10/23 21:57)
[68] 其の六十八 俺と翁と月と水月。[兄二](2009/11/04 22:12)
[69] 其の六十九 貴方の家には誘惑がいっぱい。[兄二](2009/11/04 22:11)
[70] 其の七十 俺と娘と寒い日と。[兄二](2009/11/04 22:08)
[71] 其の七十一 俺と河原と冬到来。[兄二](2009/11/04 22:04)
[72] 其の七十二 俺と露店とこれからしばらく。[兄二](2009/11/07 20:09)
[73] 其の七十三 俺と貴方と街で二人。[兄二](2009/11/10 22:20)
[74] 其の七十四 俺とお前と聖域にて。[兄二](2009/11/13 22:07)
[75] 其の七十五 家で俺とお前が云々かんぬん。[兄二](2009/11/23 21:58)
[76] 其の七十六 俺と厨二で世界がやばい。[兄二](2009/11/27 22:19)
[77] 其の七十七 俺と二対一は卑怯だと思います。[兄二](2009/11/30 21:56)
[78] 其の七十八 俺とお前の急転直下。[兄二](2009/12/04 21:44)
[79] 其の七十九 俺と現世で世界危機。[兄二](2009/12/11 22:39)
[80] 其の一の前の…… 前[兄二](2009/12/15 22:10)
[81] 其の八十 俺と現世で世界危機。 弐[兄二](2009/12/19 22:00)
[82] 其の一の前の…… 後[兄二](2009/12/24 21:28)
[83] 其の八十一 俺と現世で世界危機。 終[兄二](2009/12/29 22:08)
[84] 其の八十二 明けましておめでとう俺。[兄二](2010/01/02 21:59)
[85] 其の八十三 俺と貴方のお節料理。[兄二](2010/01/05 21:56)
[86] 其の八十四 俺と茶店とバイターさんと。[兄二](2010/01/11 21:39)
[87] 其の八十五 俺と閻魔とセーラー服と。[兄二](2010/01/11 21:42)
[88] 其の八十六 俺と結婚とか云々かんぬん。[兄二](2010/01/14 21:32)
[89] 其の八十七 俺と少女と李知さん実家と。[兄二](2010/01/17 21:46)
[90] 其の八十八 俺と家と留守番と。[兄二](2010/01/21 12:18)
[91] 其の八十九 俺としること閻魔のお宅と。[兄二](2010/01/23 22:01)
[92] 其の九十 俺と実家で風雲急。[兄二](2010/01/26 22:29)
[93] 其の九十一 俺と最高潮。[兄二](2010/02/02 21:30)
[94] 其の九十二 そして俺しか立ってなかった。[兄二](2010/02/02 21:24)
[95] 其の九十三 俺と事件終結お疲れさん。[兄二](2010/02/06 21:52)
[96] 其の九十四 俺とアホの子。[兄二](2010/02/09 22:27)
[97] 其の九十五 俺とチョコとヴァレンティヌスと。[兄二](2010/02/14 21:49)
[98] 其の九十六 俺が教師で教師が俺で。[兄二](2010/02/22 22:00)
[99] 其の九十七 俺と本気と貴方と春と。[兄二](2010/02/22 21:55)
[100] 其の九十八 ~出番黙示録~アキミ。[兄二](2010/02/25 22:37)
[101] 其の九十九 俺と家と諸問題と。[兄二](2010/03/01 21:32)
[102] 其の百 俺と風と賽の河原で。[兄二](2010/03/04 21:47)
[103] 其の百一 百話記念、にすらなっていない。[兄二](2010/03/07 21:47)
[104] 其の百二 俺と憐子さんと前さんで。[兄二](2010/03/10 21:40)
[105] 其の百三 俺とちみっこと。[兄二](2010/03/14 21:15)
[106] 其の百四 俺と保健室が危険の香り。[兄二](2010/03/17 21:48)
[107] 其の百五 俺と娘と妹でなんやかんや。[兄二](2010/03/20 21:43)
[108] 其の百六 大天狗は見た![兄二](2010/03/24 20:09)
[109] 其の百七 俺と春とクリームパン。[兄二](2010/03/27 21:33)
[110] 其の百八 俺と憐子さんと空白。[兄二](2010/03/30 21:44)
[111] 其の百九 猫と名前と。[兄二](2010/04/03 21:03)
[112] 其の百十 俺と猫とにゃんこと猫耳とか。[兄二](2010/04/07 21:56)
[113] 其の百十一 春と俺と入学式。[兄二](2010/04/17 21:48)
[114] 其の百十二 俺と子供二人。[兄二](2010/04/13 22:03)
[115] 其の百十三 俺とあれな賽の河原と。[兄二](2010/04/17 21:41)
[116] 其の百十四 俺と生徒とメガネ。[兄二](2010/04/20 22:07)
[117] 其の百十五 眼鏡と俺と学校で。[兄二](2010/04/23 21:52)
[118] 其の百十六 貧乏暇なし、俺に休みなし。[兄二](2010/04/27 22:07)
[119] 其の百十七 俺と罪と罰と。[兄二](2010/04/30 21:49)
[120] 其の百十八 大天狗を倒す一つの方法。[兄二](2010/05/05 21:39)
[121] 其の百十九 大天狗が倒せない。[兄二](2010/05/09 21:29)
[122] 其の百二十 俺とご近所付き合いが。[兄二](2010/05/12 22:12)
[123] 其の百二十一 眼鏡と俺とこれからの話。[兄二](2010/05/16 21:56)
[124] 其の百二十二 俺と刀と丸太で行こう。[兄二](2010/05/22 23:04)
[125] 其の百二十三 俺と逢瀬と憐子さん。[兄二](2010/05/22 23:03)
[126] 其の百二十四 俺と指輪と居候。[兄二](2010/05/25 22:07)
[127] 其の百二十五 俺と嫉妬と幼心地。[兄二](2010/06/02 22:44)
[128] 其の百二十六 俺と噂も七十五日は意外と長い。[兄二](2010/06/02 22:05)
[129] 其の百二十七 にゃん子のおしごと。[兄二](2010/06/05 22:15)
[130] 其の百二十八 俺とお人形遊びは卒業どころかしたことねえ。[兄二](2010/06/08 22:21)
[131] 其の百二十九 俺と鬼と神社祭。[兄二](2010/06/12 22:50)
[132] 其の百三十 俺と日がな一日。[兄二](2010/06/15 22:03)
[133] 其の百三十一 俺と挑戦者。[兄二](2010/06/18 21:47)
[134] 其の百三十二 俺と眼鏡と母と俺と。[兄二](2010/06/22 23:21)
[135] 其の百三十三 薬師と銀子と惚れ薬。[兄二](2010/06/25 22:09)
[136] 其の百三十四 俺とできる女と強面な人。[兄二](2010/06/29 22:08)
[137] 其の百三十五 逆襲のブライアン。[兄二](2010/07/03 22:49)
[138] 其の百三十六 俺とお前と学校の怪談が。[兄二](2010/07/06 22:03)
[139] 其の百三十七 俺とある日のアホの子。[兄二](2010/07/09 21:21)
[140] 其の百三十八 すれ違い俺。[兄二](2010/07/12 22:14)
[141] 其の百三十九 じゃらじゃらじゃらりとうっかり洗濯。[兄二](2010/07/15 22:11)
[142] 其の百四十 俺と序文はまったく関係ない話。[兄二](2010/07/19 22:50)
[143] 其の百四十一 俺と決闘と日本刀。[兄二](2010/07/22 20:42)
[144] 番外編 現在の短編:薬師昔話 お姫様の話。[兄二](2010/04/17 21:47)
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[7573] 其の百二十六 俺と噂も七十五日は意外と長い。
Name: 兄二◆adcfcfa1 ID:a2c9f347 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/02 22:05
俺と鬼と賽の河原と。









「あー、あれだな。幾ら好きだ、なんて言っても首を高速回転しながら一秒間七十八回のタップダンスを踊る求愛は駄目だ。ちゃんと相手の文化ってやつを予習するように」


 我ながら、未だに教師をやってるのが不思議でならないが、しかしまあ、続いている以上はあっていなくもないのではなかろうか。

 流石俺、教師の鑑、と自画自賛ながら俺は黒板を叩く。。


「例えどんな愛があっても殺し愛はダメだ。精々殴り愛までにしとけ。まあ、それで嫌われても責任持たんけど」


 しかし、なんでこんな授業内容になったんだったか。

 確か、うちの生徒があんまりにも人間らしくない辺りから始まった気がするが。

 まあ、それはどうでもいいことか。

 それよりも授業だな、うん、と俺は肯いて話を続ける。


「後、ちゃんと相手と自分の差を理解するように。幾ら河原で殴り合いの状況だからって、音速の拳を貰えば大体の人は弾け飛ぶから手加減するよーに」


 生徒たちは――、今回の、フランケンシュタイン博士の造り出した人造人間の様な生徒たちは、しきりに肯いている。

 いや、まあさすがに厳つい生徒は二割くらいで、他は普通だが、それにしたって存在感が半端でない。

 正に、勢い余ってやっちまいそうな人種たちだ。


「いいか? ただの人間辺りなんか、熟れたトマトを扱うかのように接するんだ。失敗したら一瞬で潰れトマトだぜ」


 そんな彼らの未来の悲しい事故を防ぐために、俺は授業を続ける訳だが――。


「薬師さん!」


 そんな所に闖入者。


「何用だ閻魔殿」


 そんな闖入者に、俺は抑揚なく尋ねたのだった。












其の百二十六 俺と噂も七十五日は意外と長い。











 不意の乱入。それは閻魔。

 彼女は入ってくるなり俺にこう言った。


「大変ですっ!」

「なにが大変なんだ。冷蔵庫に残しといた牛乳か?」

「違いますっ!」

「なんだなんだ、じゃああれか。力加減を誤ってうっかり引きちぎってしまった蛍光灯の紐か?」

「違いますっ! ってそんなことしてたんですか!!」

「親の不倫現場でも見たか?」

「それは深刻ですけど違いますっ」

「じゃあ、アイロン点けっぱでこっち来たとか?」

「それは大変ですけど、そうじゃなくてっ」

「じゃあ、あまりに焦り過ぎてスカートがめくれ掛かってる辺りか?」

「ちがいま――! あわわわっ、みないでください!!」

「安心しろ、見ても楽しくない」

「それは貴方が男として、そして私が女として大変ですっ」

「で、本題は?」

「私と貴方が恋人同士ということになってるんですっ!」

「そいつは大変でしたね、ですが、誠に申し訳ありませんが、授業中なのでお引き取りください」

「お役所仕事はやめてくださいよぉ!」


 そりゃ、お役所仕事にもなる。

 まったく意味が分からんのだ。そもそも。


「その噂の相手たる俺に相談しに現れる辺りからしてもう手遅れだろう」

「貴方しかいないんですよ……、見捨てないでください」

「むしろ自爆?」


 真面目な顔で貴方しか(相談する相手が)いないんですよ、とぶっちゃける閻魔に、教室が沸き立つ。

 完全に自滅。既に手遅れである。


「で、どうすればいいでしょう?」


 上目遣い、涙目で聞いてくる閻魔に、俺は顎に手を当て考えて。

 考えて――、


「うーむ、そうだな……。んなことより、今冷蔵庫の中になにがあったかの方が気になるんだが」


 諦めました。手遅れです。

 んなよくわからん噂などより今日の糧のが大事である。

 あと、牛乳は大丈夫だろうか。ヨーグルトになっていないだろうか。


「今日の夕飯はなにがいい? 大したもん残ってねーはずだから食材買ってきて作るから希望があれば聞くぞ? あと食後にヨーグルトだ。多分」

「じゃあ、カレーで――、って」


 再び沸き立つ教室。そう言えば火に油注いだな。

 と思えば、動きの速い女生徒が、手を上げる。


「せんせー、せんせーと閻魔様って同棲してるの?」

「ど、どど、同棲なんて――」

「添えなくて悪いが同棲までいってない」

「じゃあ通い妻、もとい夫?」

「否定はできない事実がある」


 教職者として嘘はいかんよやっぱ。

 しかし、女生徒の質問に答えればやはり沸き立つ教室。どうにもこうにも皆非常に盛り上がっている。

 まあ、確かによく考えてみれば、そう、あれ、スキャンダル、というやつか。

 楽しまれている所悪いが、事実としてはただの家政夫なんだけどな。


「薬師さん、貴方、どうにかする気があるんですかっ!」


 そんな閻魔の言葉に俺は首を横に振った。


「処置なし、手遅れ。諦めたまえ。人の噂も七十五日、二か月ちょいだ。意外と長いな」

「意外と長いとか言わないでくださいよ……」


 しゅんとうなだれる閻魔に、俺は親指を立てて一言。


「頑張れよ」

「ちょっとっ、こちらに、来てください!!」


 あっさりと俺は閻魔に連行されていったのだった。

























「で、どうしましょう」


 校長室で閻魔は俺にそう持ちかけた。

 しかし、どうすると言われても、


「ほとぼりが冷めるまで待つしかねーだろ」


 としか言いようがない。

 こういったものは焦って否定すればするほど、広まって行き、背びれ尾びれに胸鰭まで発生するのだ。

 しかし、それだけでは不満らしい、目の前の閻魔様は。


「どうにか、なりませんかね……。皆の視線が温かくて辛いんです」


 温かいのに辛いとは贅沢な。とは言わないことにしておこう。

 俺も命は大事だ。


「そりゃあ、あれだな。後はどうにかする方法があるとすれば――」


 口元に手を当て、俺は考える。

 考えて出した結論は、こうだ。


「しばらく会わないってのも手だな。餌を与えなきゃ後は勝手に向こうが処理してくれるだろ」


 ほとぼりが冷めるのを待つ、一般的な手段だ。

 下手に俺が家事に出てたら更に燃え上がる可能性を否定出来ん。

 ほとぼりが冷めても家事をしに行ったら再燃する可能性があるが、そこはそれ。

 まあ、名案じゃないかもしれないが、妥当なところだろう。

 なのに。

 閻魔は何故かこの世の終わりの様な顔をした。

 訂正、あの世の終わりの様な顔をした。


「え、会わない……? それはどのくらい?」

「一月二月だろ。さっきも言った通り七十五日位」


 それにしても、俺さっきまで授業中だったんだが、これで給料出るんだろうか。

 出なかったら、閻魔の夕飯をピーマンのピーマン詰めのピーマン和えにしてやろう。


「駄目ですっ!」


 そう思った瞬間、何故か俺は閻魔にすがりつかれていた。

 どうしてこうなった、と思うと同時、いやな予感が背筋を駆け抜ける。

 どう考えてもこれはやばい。

 そう、この状況、そして閻魔の自爆癖、不幸体質辺りから出てくる答えは――。

 ――ガラッ、と扉の開く音。


「校長先生、どうかしたんで――」



「――私は貴方が居ないと生きていけませんっ!!」



「……ふう。もう駄目だ」


 黒い継ぎ接ぎ医者だって、匙を投げるぜ。

 閻魔の、貴方が居ないと(家事が立ちゆかないので)生きていけません発言に固まる女教師。

 再起動したときは、まるでできの悪いカラクリのようにぎくしゃくとしながら後ろを向いて。


「ごゆっくり」


 それだけ残して去っていく。

 閻魔は、未だ固まったまま閉まった扉を見ていた。

 おお、神よ、何故私を見捨てたもうたか。


「……うむ。見事な自爆」

「ど、ど、ど、どうしましょうっ!!」


 閻魔、再起動。

 ここまで墓穴掘ってなにを言うのかと思えば。

 むしろ、墓穴掘って自作の棺桶まで用意して、冠婚葬祭な手続きも終了し、棺桶で寝てるみたいな状況に至って今更何を。


「ちょっと誤解を解いてきますっ! どこ行ったか知ってますか?」

「あー、多分二階の会議室だわ」

「わかりました、行ってきます!」

「ちょい待ち、多分今、身体測定――、まあいいか」


 行ってしまった閻魔を追いかける気力もなく、俺は彼女の後を追うのをやめた。


















 その後三十分ほどして。

 再会したのは――、


「背が二センチも縮んでました……」


 どんよりとした閻魔様でしたとさ。


「そういうこともある。誤差の範囲内だ」


 屋上のベンチで二人並んで昼飯を食うのはいいが、空気が重すぎる。

 と言うか、こんな事してるから噂も立つんだろうに。


「あと、胸がまったく変わってませんでした……」

「ミライヲシンジロ」


 まあ、どう考えても時の流れが解決してくれなさ気な問題だ。むしろ豊胸手術を行った方が速そうだが。


「体重は、二キロ程増えてました……」

「そーなのかー」


 これに関してだけは俺の仕業と言えなくもない。

 食生活改善とは言っても栄養管理士ではない俺にはどうすることもできない問題がある。

 もう少し気を配って見るか、と、俺が考えていると、不意に閻魔が立ち上がった。


「べ、別に幸せ太りじゃありませんからねっ?」

「うん」

「いや、うんって……。貴方は肝心な時に押しが足りないと思います」

「よくわからんが、そうなんかもしれんな」


 自分じゃわからないので適当に答える俺。


「べ、別に貴方との食事を毎日楽しみにとか……、してる訳じゃないというのは事実無根で……、なんといいますか」

「どっちなんだ閻魔様よ」


 はっきり白黒つけてくれ。

 そんな催促に、閻魔は小首を傾げて、


「……楽しみ、ですよ?」


 何故か疑問符付き。

 しかし、まあ、悪い気はしない。

 俺はにやりと笑って一言。


「そいつは嬉しいね」


 と、それで一旦この会話は終了。

 今度は、今日の今の今までの話を切り出した。


「これから、どうしましょうか……」


 まだ引きずっているのか閻魔様は。

 もうこうなったら仕方ない。


「もう、いっそあれじゃね?」

「どれですか」

「俺とお前さんが結婚しちまえば万事丸く収まるんじゃね?」

「こ、こここ、困りますっ!!」

「まあ、流石に冗談だ。だがしかし――」


 今日一日閻魔に付き合ってわかったのだが――。

 もうじたばたしたってどう仕様もないのだ。


「何もかもめんどくせーから。帰るぞ」


 俺は閻魔を小脇に抱えて飛び立った。

 午後から俺に授業は無い。閻魔も予定は無いらしい。

 そして、色々と噂に気を使うのも馬鹿らしい。


「あ、ちょっと、待ってくださいよ!」

「うるせー、黙らっしゃい。噂なんて気にすんな。俺は気にしてない」


 そう言った俺に、閻魔はおずおずと聞いた。


「……貴方は、私と恋人同士でも、いいんですか?」


 俺はざっくりと答えた。


「――なんかもう、現時点で色々と今更過ぎだろ」


 それを聞くなら、もっと前に聞くべきだ。















「つーかさ。こないだの舞踏会で婚約者ってことになってんだからもうどうしようもないじゃねーか」

「あ」

「あと、今日の夕飯ピーマンのピーマン詰めのピーマン和えな」

「えっ……」





























―――
目からビームが出そうな現状からなんとか復活したのが昨日。昨日から徹夜で突貫工事でした。
まあ、勢いで突貫したんで書いた自分でもいいのか悪いのかよくわからない話が出来上がりましたがお許しを。
とりあえず明日から平常運航頑張りたいです。







あと、今前回の拍手返信書いてます。十一時くらいに前回の話んとこに乗っかるだろうので気になる方はどうぞ。





では返信。


SEVEN様

本当に、いい歳こいたおっさんどころか古代生物一歩手前の生き物がなにをスキンシップ図ろうとしているのでしょうか。
でも、確かに由美が一番純粋な乙女ですよね。果たして真っ白なキャンバスは白いままでいられるのか。
薬師のさじ加減一つな気もしますが、薬師が育てた結果が藍音さんだから……。うん。
でもまあ、本当にこの作品ないに希少な乙女として頑張って――、ごほん、この作品の沢山の乙女の中の一人として頑張っていただきたい。


志之司 琳様

比較的ほのぼの率が高くても、中に野郎をぶっこむだけでこの通り。残念な風景に。
あと、アホの子に知能ゲーをやらせる辺り、薬師の鬼畜さ加減が見え隠れしていますねわかります。
しかし、それにしてもあのおやじわかってないです。むしろ親父をやめて向き合えばいいのに。離婚してしまえ、胴と下半身が。
そのまま生きてたりして皆をドッキリさせてしまえばいいと思います。てけてけとして学校の人気者だ。


光龍様

そりゃあもう、アホの子と違って由美は奥ゆかしいタイプなので、どうしてもアホの子に奪われそうになってしまうのです。
あと、にゃん子に対してアホの子はまったく容赦なく撫でまわそうとしたりするので、ひやひやものの模様。
ちなみに薬師の体の造りは概ね人間のままです。精々頑丈さとか治癒力とか人間そのものをグレードアップしたようなものくらい。
あと、多分痛覚の類に関して神経鈍ってます。金棒ぶっささったりしてても痛い痛い言いながら平気な顔してますし。


奇々怪々様

実際に相手すると、部屋がタイフーン。それがアホの子。藍音さんが大変だ。
そして、薬師は人の心の機微には鋭い割にまったくもって恋愛になると駄目駄目ですね。
もうあえて気付かないようにしてるんじゃないかと思うほどの残念っぷりです。
最後に、あれなんですよ。目の奥が異常に熱くてですね、こう、その熱量を放てばビームになりそうななにかがですね。


通りすがり六世様

アホの子は薬師への感情においてよくわかってない所がある分、恋愛の思惑が絡んで来ないんですね。なので書いてる方も癒されます。
あと、やっぱり手間が掛からないより、手間暇かけた方がなんだって愛着がわいたりするのは基本ですね。
その点由美はやっぱりばしばし薬師に体当たりしていっても問題ないと。むしろ体当たりして薬師をぼこぼこにへこませたって下さい。
そして、上半身と下半身が分離しておきながら、普通に家で看病される薬師の図と言うのは非常に奇妙だと思う。


霧雨夢春様

薬師の朴念仁具合には、どうにも最近畏敬の念を抱き始めました。この嫉妬の方向が分かっていれば、薬師も由美ルート直行していたのに……。
まるでギャルゲーで誰も落とさず友人ルートを直行するかのような縛りプレイの様に、恐ろしさを覚えます。
そして、知能ゲーに関しては何処をどう動かしても負ける、奇跡の馬鹿、それが春奈です。
まあ、そんなこんなで、指摘された通り出番が少ないような気がした閻魔姉の方でした。妹はまた今度。読者に流されすぎるのは考えものですが、読者の要望に応えるゆとりに関しては自信があります。まず話の形式的に自由すぎる。












最後に。

私は身体測定で、減量もしてないのに七キロ痩せててホラーだと思いました。


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