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No.7573の一覧
[0] 俺と鬼と賽の河原と。(ほのぼのラブコメ)[兄二](2009/12/29 22:04)
[1] 其の二 あたしと彼と賽の河原と。[兄二](2009/09/21 21:30)
[2] 其の三 俺と鬼と地獄の酒場と。[兄二](2009/12/24 21:37)
[3] 其の四 俺と彼女と昨日の人と。[兄二](2009/09/24 13:26)
[4] 其の五 俺とあの子と昨日の人。[兄二](2009/09/24 13:50)
[5] 其の六 俺とあの子と一昨日の人と。[兄二](2009/04/01 21:22)
[6] 其の七 俺とお前とあいつとじゃらじゃら。[兄二](2009/09/24 13:55)
[7] 其の八 俺とあの子とじゃら男の恋と。[兄二](2009/04/04 21:04)
[8] 其の九 俺とじゃら男と屋台のおっさん。[兄二](2009/04/05 22:12)
[9] 其の十 俺と迷子と三途の河と。[兄二](2009/04/19 01:06)
[10] 其の十一 あたしと彼といつもの日常。[兄二](2009/05/18 23:38)
[11] 其の十二 俺と鬼と黒髪美人と。[兄二](2009/05/18 23:38)
[12] 其の十三 俺と少女と鬼の秘密と。[兄二](2009/04/13 01:47)
[13] 其の十四 俺と野郎と鬼と少女と。[兄二](2009/05/18 23:39)
[14] 其の十五 俺と河原と兄妹と。[兄二](2009/04/19 01:04)
[15] 其の十六 私と河原とあの人と。[兄二](2009/04/24 23:49)
[16] 其の十七 俺と酒場でただの小噺。[兄二](2009/05/18 23:32)
[17] 其の十八 俺と私と彼と彼女と。[兄二](2009/05/24 01:15)
[18] 其の十九 俺と彼女と気まぐれと。[兄二](2009/05/21 09:39)
[19] 其の二十 俺と彼女とデートと。[兄二](2009/05/24 01:16)
[20] 其の二十一 俺とお前とこの地獄と。[兄二](2009/10/17 19:53)
[21] 其の二十二 俺と天狗と閻魔と家族と。[兄二](2009/05/31 00:27)
[22] 其の二十三 俺と閻魔とパーティと。[兄二](2009/06/04 01:07)
[23] 其の二十四 俺と閻魔と部屋と起源と。[兄二](2009/06/05 00:43)
[24] 其の二十五 じゃら男と少女と俺と暁御と。[兄二](2009/06/09 23:52)
[25] 其の二十六 じゃら男と少女とでえとと。[兄二](2009/07/30 22:38)
[26] 其の二十七 じゃら男と少女と俺と暁御とチンピラ的な何か。[兄二](2009/06/16 00:38)
[27] 其の二十八 俺とじゃら男とリンと昨日と。[兄二](2009/06/16 11:41)
[28] 其の二十九 俺と酒呑みと変なテンション。[兄二](2009/06/20 00:27)
[29] 其の三十 俺と前さんと部屋とゲームと。[兄二](2009/06/21 19:31)
[30] 其の三十一 俺と河原と妹と。[兄二](2009/06/27 19:20)
[31] 其の三十二 俺と山と天狗と。[兄二](2009/06/27 19:18)
[32] 其の三十三 俺と山と天狗と地獄と。[兄二](2009/06/30 21:51)
[33] 其の三十四 俺と彼女と実家と家族と。[兄二](2009/07/03 20:35)
[34] 其の三十五 俺と家族と娘と風邪と。[兄二](2009/07/07 00:05)
[35] 其の三十六 私と彼と賽の河原と。[兄二](2009/07/09 23:00)
[36] 其の三十七 私と主と、俺と部下と賽の河原と。[兄二](2009/07/12 22:40)
[37] 其の三十八 俺と部下と結局平和と。[兄二](2009/07/17 23:43)
[38] 其の三十九 俺とその他と賽の河原と。[兄二](2009/07/21 08:45)
[39] 其の四十 俺とメイドと賽の河原と。[兄二](2009/07/20 22:53)
[40] 其の四十一 俺と無関係などっかの問題と幕間的な何か。[兄二](2009/07/22 21:56)
[41] 其の四十二 暁御と奴と賽の河原と。[兄二](2009/07/25 22:22)
[42] 其の四十三 俺と海と夏の地獄と。[兄二](2009/07/28 00:21)
[43] 其の四十四 俺と海と真の地獄と。[兄二](2009/07/30 22:35)
[44] 其の四十五 俺と貴方と賽の河原と。[兄二](2009/08/01 23:35)
[45] 其の四十六 俺とお前の滅亡危機。[兄二](2009/08/04 21:48)
[46] 其の四十七 俺とお前と厨ニ病。[兄二](2009/08/07 20:23)
[47] 其の四十八 疲れた俺と罰ゲーム。[兄二](2009/08/10 19:10)
[48] 其の四十九 俺と鬼と……、は? 猫?[兄二](2009/08/13 20:32)
[49] 其の五十 俺と盆と賽の河原と。[兄二](2009/08/17 00:02)
[50] 其の五十一 私と俺とあたしと誰か。[兄二](2009/08/19 23:35)
[51] 其の五十二 貴方と君の賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:03)
[52] 其の五十三 俺と藍音と賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:01)
[53] 其の五十四 俺と彼女ととある路地。[兄二](2009/09/04 21:56)
[54] 其の五十五 幕間 ある日の俺とメイドと猫耳。[兄二](2009/09/10 21:30)
[55] 其の五十六 幕間 俺と閻魔と妹の午後。[兄二](2009/09/14 22:11)
[57] 其の五十七 変種 名探偵鬼兵衛。前編[兄二](2009/09/21 21:31)
[58] 其の五十八 変種 名探偵鬼兵衛。 後編[兄二](2009/09/21 21:28)
[59] 其の五十九 俺が貴方と一緒に縁側で。[兄二](2009/09/24 22:25)
[60] 其の六十 俺と君とそんな日もあるさ。[兄二](2009/09/27 22:00)
[61] 其の六十一 俺とお前じゃ端から無理です。[兄二](2009/10/02 21:07)
[62] 其の六十二 今日は地獄の運動会。[兄二](2009/10/05 22:30)
[63] 其の六十三 ワタシトアナタデアアムジョウ。[兄二](2009/10/08 22:36)
[64] 其の六十四 鈴とじゃら男と賽の河原と。[兄二](2009/10/12 21:56)
[65] 其の六十五 俺と妹とソファやら鍵やら。[兄二](2009/10/17 19:50)
[66] 其の六十六 俺と御伽と竹林と。[兄二](2009/11/04 22:14)
[67] 其の六十七 俺と翁と父よ母よ。[兄二](2009/10/23 21:57)
[68] 其の六十八 俺と翁と月と水月。[兄二](2009/11/04 22:12)
[69] 其の六十九 貴方の家には誘惑がいっぱい。[兄二](2009/11/04 22:11)
[70] 其の七十 俺と娘と寒い日と。[兄二](2009/11/04 22:08)
[71] 其の七十一 俺と河原と冬到来。[兄二](2009/11/04 22:04)
[72] 其の七十二 俺と露店とこれからしばらく。[兄二](2009/11/07 20:09)
[73] 其の七十三 俺と貴方と街で二人。[兄二](2009/11/10 22:20)
[74] 其の七十四 俺とお前と聖域にて。[兄二](2009/11/13 22:07)
[75] 其の七十五 家で俺とお前が云々かんぬん。[兄二](2009/11/23 21:58)
[76] 其の七十六 俺と厨二で世界がやばい。[兄二](2009/11/27 22:19)
[77] 其の七十七 俺と二対一は卑怯だと思います。[兄二](2009/11/30 21:56)
[78] 其の七十八 俺とお前の急転直下。[兄二](2009/12/04 21:44)
[79] 其の七十九 俺と現世で世界危機。[兄二](2009/12/11 22:39)
[80] 其の一の前の…… 前[兄二](2009/12/15 22:10)
[81] 其の八十 俺と現世で世界危機。 弐[兄二](2009/12/19 22:00)
[82] 其の一の前の…… 後[兄二](2009/12/24 21:28)
[83] 其の八十一 俺と現世で世界危機。 終[兄二](2009/12/29 22:08)
[84] 其の八十二 明けましておめでとう俺。[兄二](2010/01/02 21:59)
[85] 其の八十三 俺と貴方のお節料理。[兄二](2010/01/05 21:56)
[86] 其の八十四 俺と茶店とバイターさんと。[兄二](2010/01/11 21:39)
[87] 其の八十五 俺と閻魔とセーラー服と。[兄二](2010/01/11 21:42)
[88] 其の八十六 俺と結婚とか云々かんぬん。[兄二](2010/01/14 21:32)
[89] 其の八十七 俺と少女と李知さん実家と。[兄二](2010/01/17 21:46)
[90] 其の八十八 俺と家と留守番と。[兄二](2010/01/21 12:18)
[91] 其の八十九 俺としること閻魔のお宅と。[兄二](2010/01/23 22:01)
[92] 其の九十 俺と実家で風雲急。[兄二](2010/01/26 22:29)
[93] 其の九十一 俺と最高潮。[兄二](2010/02/02 21:30)
[94] 其の九十二 そして俺しか立ってなかった。[兄二](2010/02/02 21:24)
[95] 其の九十三 俺と事件終結お疲れさん。[兄二](2010/02/06 21:52)
[96] 其の九十四 俺とアホの子。[兄二](2010/02/09 22:27)
[97] 其の九十五 俺とチョコとヴァレンティヌスと。[兄二](2010/02/14 21:49)
[98] 其の九十六 俺が教師で教師が俺で。[兄二](2010/02/22 22:00)
[99] 其の九十七 俺と本気と貴方と春と。[兄二](2010/02/22 21:55)
[100] 其の九十八 ~出番黙示録~アキミ。[兄二](2010/02/25 22:37)
[101] 其の九十九 俺と家と諸問題と。[兄二](2010/03/01 21:32)
[102] 其の百 俺と風と賽の河原で。[兄二](2010/03/04 21:47)
[103] 其の百一 百話記念、にすらなっていない。[兄二](2010/03/07 21:47)
[104] 其の百二 俺と憐子さんと前さんで。[兄二](2010/03/10 21:40)
[105] 其の百三 俺とちみっこと。[兄二](2010/03/14 21:15)
[106] 其の百四 俺と保健室が危険の香り。[兄二](2010/03/17 21:48)
[107] 其の百五 俺と娘と妹でなんやかんや。[兄二](2010/03/20 21:43)
[108] 其の百六 大天狗は見た![兄二](2010/03/24 20:09)
[109] 其の百七 俺と春とクリームパン。[兄二](2010/03/27 21:33)
[110] 其の百八 俺と憐子さんと空白。[兄二](2010/03/30 21:44)
[111] 其の百九 猫と名前と。[兄二](2010/04/03 21:03)
[112] 其の百十 俺と猫とにゃんこと猫耳とか。[兄二](2010/04/07 21:56)
[113] 其の百十一 春と俺と入学式。[兄二](2010/04/17 21:48)
[114] 其の百十二 俺と子供二人。[兄二](2010/04/13 22:03)
[115] 其の百十三 俺とあれな賽の河原と。[兄二](2010/04/17 21:41)
[116] 其の百十四 俺と生徒とメガネ。[兄二](2010/04/20 22:07)
[117] 其の百十五 眼鏡と俺と学校で。[兄二](2010/04/23 21:52)
[118] 其の百十六 貧乏暇なし、俺に休みなし。[兄二](2010/04/27 22:07)
[119] 其の百十七 俺と罪と罰と。[兄二](2010/04/30 21:49)
[120] 其の百十八 大天狗を倒す一つの方法。[兄二](2010/05/05 21:39)
[121] 其の百十九 大天狗が倒せない。[兄二](2010/05/09 21:29)
[122] 其の百二十 俺とご近所付き合いが。[兄二](2010/05/12 22:12)
[123] 其の百二十一 眼鏡と俺とこれからの話。[兄二](2010/05/16 21:56)
[124] 其の百二十二 俺と刀と丸太で行こう。[兄二](2010/05/22 23:04)
[125] 其の百二十三 俺と逢瀬と憐子さん。[兄二](2010/05/22 23:03)
[126] 其の百二十四 俺と指輪と居候。[兄二](2010/05/25 22:07)
[127] 其の百二十五 俺と嫉妬と幼心地。[兄二](2010/06/02 22:44)
[128] 其の百二十六 俺と噂も七十五日は意外と長い。[兄二](2010/06/02 22:05)
[129] 其の百二十七 にゃん子のおしごと。[兄二](2010/06/05 22:15)
[130] 其の百二十八 俺とお人形遊びは卒業どころかしたことねえ。[兄二](2010/06/08 22:21)
[131] 其の百二十九 俺と鬼と神社祭。[兄二](2010/06/12 22:50)
[132] 其の百三十 俺と日がな一日。[兄二](2010/06/15 22:03)
[133] 其の百三十一 俺と挑戦者。[兄二](2010/06/18 21:47)
[134] 其の百三十二 俺と眼鏡と母と俺と。[兄二](2010/06/22 23:21)
[135] 其の百三十三 薬師と銀子と惚れ薬。[兄二](2010/06/25 22:09)
[136] 其の百三十四 俺とできる女と強面な人。[兄二](2010/06/29 22:08)
[137] 其の百三十五 逆襲のブライアン。[兄二](2010/07/03 22:49)
[138] 其の百三十六 俺とお前と学校の怪談が。[兄二](2010/07/06 22:03)
[139] 其の百三十七 俺とある日のアホの子。[兄二](2010/07/09 21:21)
[140] 其の百三十八 すれ違い俺。[兄二](2010/07/12 22:14)
[141] 其の百三十九 じゃらじゃらじゃらりとうっかり洗濯。[兄二](2010/07/15 22:11)
[142] 其の百四十 俺と序文はまったく関係ない話。[兄二](2010/07/19 22:50)
[143] 其の百四十一 俺と決闘と日本刀。[兄二](2010/07/22 20:42)
[144] 番外編 現在の短編:薬師昔話 お姫様の話。[兄二](2010/04/17 21:47)
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[7573] 其の百二十四 俺と指輪と居候。
Name: 兄二◆adcfcfa1 ID:2ca242a2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/25 22:07
俺と鬼と賽の河原と。





「一つ、聞かせてほしい」


 銀色の居候は、寝ている俺に乗っかって、何故かそう聞いたのだ。


「なんだよ」


 眠りから、妙な重みで起こされた俺は、不機嫌そうに言い放つ。

 それで返ってきた答えは……、


「ノーパン、好き?」


 どうにも残念なものだった。




 ……またノーパンか。












其の百二十四 俺と指輪と居候。












「下着をつけない奴なんて、大嫌いだっ」


 と、勢いで言ってみたものの、


「まあ、その辺は個人の自由だとは思うが、着けるのが常識的だと思うぞ?」

「貴方の好みは?」

「果てしなく、どっちでもいいな。だが、できれば俺の知らない所でやって欲しい所ではある」

「本当に?」

「何処に疑う余地がある」

「なるほど。貴方は脱がしたい派、と」

「なにをどうしてそうなった……、ってか、なんだなんだ、流行ってんのか」

「なにが?」

「新手のクールビズかこのやろーと聞いてるんだ」

「憐子が付けないって言うから、貴方的にはどうなのかな、と」

「というかどういう流れなら下着を付けないなんて言葉に繋がるんだ?」

「乙女の会話を聞きだそうだなんて、えっち」


 乙女というのは年若い――、と言うのはやめた。

 また腹に拳が入るのもよろしくない。

 流石に学習の一つもしないと、体が持たないのである。

 なので、俺は乙女に関する講釈をやめて、別の方向に話を勧める。


「そんな会話が乙女の会話だったなんて信じたくなかったよ、俺は」


 下着を付ける付けないの話が乙女の会話だと、銀子は言う。

 事実であれば、世界中の男たちの夢は粉砕骨折全治三カ月だろう。

 まあ、実際の所男たちの夢なんて粉砕骨折どころか死んでるようなドロドロの会話もその辺に転がってるので、事実を否定出来ない訳だが。

 と、世の無情を噛み締める俺に、銀子はあっさりと言い放つ。


「で、流行ってるかどうかだけど、多分、藍音もしてないと思う」

「驚きの事実。驚きの新事実過ぎて涙が高圧縮で発射され地を穿つわ」


 嘘だよな。嘘だと言ってよバー……、でもジョー……、でもない、藍音。

 しかし、だ。

 そんな法螺話はどうでもいい。

 俺は藍音を信じているのだ。


「まあ、ぶっちゃけるとそんな話はどうでもいいんだ。で、何しに来たんだ?」


 これで、これまでのことを聞きに来ただけだ、と言ったのであれば一発拳を唸らせてぶんぶんと振りまわす所存である。

 ただ、もしかして、もしかすると、本当にそれだけかもしれないのが銀子の恐ろしい所であったが、しかし。


「――できた」


 ちゃんとした用件があったことに俺は胸を撫で下ろしつつ、話を促した。


「なにが?」


 すると、銀子はその瞳で俺を真っ直ぐに見詰め、彼女にしては珍しく実に嬉しそうに、言ったのだ。


「――指輪が」





















 一旦食事を挟み、再び俺は銀子と会話する。


「で、できたと噂の指輪ってのは、どんな指輪だよ」


 気になったので、居間のソファに座りながら、背もたれの向こうにいる銀子に問う。

 すると、銀子は無表情で、白々しいほどにもじもじと体をくねらせながら答えにならない言葉を返した。


「私から言わせようだなんて、きゃ、恥ずかしいっ」

「すまんきもい。薄気味悪い」

「それは酷い。あまりに酷い」

「すまんとは言った。少なくとも謝った」

「謝罪に誠意が無い」

「すまなかったというのも吝かではないかもしれなくはないでもない」

「まず、謝罪するかもといレベルであって謝ってない」

「それよりも、いい加減話を勧めてくれんかね。なにができたんだよ」


 ここに来てやっと俺は本題に戻る。

 そう、それだ。

 何か見失いかけていたが、本題はそれなのだ。

 一体何ができたのか。

 果たして稀代の錬金術師ができた、などと報告してくるような品物は一体何なのか。

 その答えは、


「――結婚指輪」


 些か予想外だった。


「へ?」


 思わず、変な声が出る。

 そして、きっちりとものを理解すれば、おのずと出て来たのは疑問に他ならなかった。


「結婚すんの?」


 俺の問いに銀子は肯く。


「する」

「誰と?」


 もう一度聞けば、銀子は俺の前へと回ってきて、恥じらうように、俺の胸をつついた。


「私から言わせようだなんて、きゃっ、恥ずかしい」

「すまないきもい、気色悪い」

「それは酷い、実に酷い」


 言いながらも、銀子は俺の手を取る。

 そして、


「ほら、ぴったり」


 俺の手に一つの指輪がはめられる。

 しかも左手の薬指にだ。


「悪い冗談だ」

「冗談じゃない」

「それこそ冗談じゃないだろ。俺とお前さんが結婚とか。どんな強制力が働いたんだ?」

「自然の摂理。運命、問題ない。準備はいつでも」

「結婚だなんてのは、掃除ができるようになってから言ってくれ」

「一掃は得意」

「掃いて捨てるぞ」

「それは困る」

「では花嫁修業でもしてくれたまえ」

「したら嫁確定? 確変来たこれデレ期突入」

「すまん、ただの時間稼ぎだった」


 まったく、なんの冗談なのだか。

 実際にぴったりの指輪を持ってくる辺り、手の込んだ冗談である。

 そんな現実に、俺は苦笑交じりに溜息一つ、肩を竦めて立ち上がる。


「まったく、その手の冗談は好きな男にでもしてやってくれ。こんな爺にしたって色気のあるお話にはならんよ」


 俺の言葉に、銀子はふるふると首を横に振った。

 何故か、呆れている?


「たまに、貴方は脳に蛆が湧いてるんじゃないかと思う」

「いきなり酷いな」

「酷いのは貴方。人がせっかくエンゲージリングを渡してるのに……」

「残念ながら、俺とお前さんがそんな関係だった覚えは無いな」

「じゃあ、どんな関係?」

「俺家主、お前さん居候」

「そこから始まるラブストーリー。お約束」

「俺の居ない所でやってくれ」

「まさかの相手不在ラブストーリー。どこまで言っても独りよがり」

「第一なぁ? 別にんなことせんでも追い出したりせんよ」

「やはりデレ期、ありがたやありがたや」

「拝むな道端に捨ててくるぞ」

「ツン期突入、忙しい」


 まったく、銀子は脊髄反射で会話してるんじゃないだろうか。

 話しながら、ちらりとそう思う。

 繰り広げられる会話の半分以上は無駄で構成されている。

 それに付き合う俺だから、何も言えん訳だが。


「まったく、俺に構って楽しいか?」


 なんとなく、そう聞いてみれば、俺は銀子に呆れた顔をされる。


「貴方は、ばか」

「馬鹿、ねえ? 学は無いけどそこまで馬鹿じゃないつもりなんだが」

「じゃあ、問題をだす」


 銀子レベルの問題だと確実に答えられないな。

 と、考える俺。しかし、そんなのはまったく関係なかった。


「お、『お前』と、『すきだ』、を使って短文を作りなさい」


 何故か、照れたように銀子は言う。

 俺は、顎元に手を当てて、考えるそぶり。


「なるほどな。ふむ、わかった」

「う、うん」

「言うぞ?」

「……わかった」


 銀子が息を呑む中、俺は胸を張って、


「――ヒーハァ、お前は隙だらけだっ!」


 言い放った。


「ばーかばーかっ!」


 何故か、俺は罵られ、胸を叩かれた。























「まったく、何が気に入らんのか知らんが。とりあえず機嫌直せっての」


 言いながら、俺は拗ねてむくれている銀子にアイスを渡そうと手を伸ばす。

 ガチガチ君。今先程買ってきた、コンビニの品だ。ちなみに最寄りのコンビニではない。

 それはともかくとし、その、差し出されたアイスを受け取りながら銀子は言う。


「もので許しを乞おうなんて片腹痛い」

「じゃあなんで受け取ったし」

「私は食べ物は無駄にしない主義」

「じゃあ返してくれ。俺が食うから無駄にならない」

「やだ」

「なんでいきなり駄々っ子なんだ」

「やだやだ、返さない」

「いや、別にいいけどな」


 俺が言えば、銀子はすぐに封を開け、ガチガチ君を口に含む。

 そして、二口三口と言った所で。


「頭痛い」

「馬鹿め」

「これは、罠っ?」

「いや、ただの自滅だろ」

「私の怒りが有頂天」

「有頂天の意味を辞書で引け」

「喜びで舞い上がるさま。ひとつのことに夢中になり、うわの空になること」

「うむ、これは酷い」

「所で、一口食べる?」


 下から差し出されたそれに、俺は一つ肯いた。


「もらおう」

「はい、あーん」


 差し出されたアイスを俺は一口分口に含む。

 うん、堅い。非常に堅い。流石ガチガチ君だ。歯が砕けるかと思う位堅い。

 それを平気な顔して食べる銀子は化物か。まあ、それはともかく。

 安っぽい味ながら、長続きしてるだけはある味だな、うん。

 などと、その味に俺が満足していると、銀子は何故か、アイスの棒の方を俺に向けていた。

 受け取れ、という意味だろうか。感性に従って、俺はそのアイスを受け取る。

 それで、どうすればいいのだろう、と考えているとどうやら、


「私にも、あーんして」


 ということらしい。

 俺は呆れ半分で、溜息を吐くように呟いた。


「何ゆえに……」

「私はまだ怒っている。だからあーん」


 前後の文がまったく繋がらない。が、まあ、怒ってるので召使か何かのようにアイスを食わせろと言っている訳だ。

 その程度で機嫌が直るっていうなら、望むべくもない。

 俺は、受け取ったアイスを銀子に差し出した。


「ほらよ」

「ん」


 差し出されたそれを食べる銀子はまるで小動物だな。

 言ったら言ったで何か言い返されそうなので、俺は心中のみで呟く。

 そんな中、銀子が上目づかいで俺を見る。


「ほーひたの?」


 どうしたの、と聞きたいのだろう。

 なので、俺は首を横に振って返す。


「何でもねー」


 すると、銀子は俺を上目遣いで見たまま、アイスを食べた。

 非常に居心地が悪い。


「ふーん?」


 非常に居心地の悪い、そんな午後。




















「朴念仁。女の子がプロポーズするのに必要な勇気がどれくらいかわかってない」

「そいつはともかく、うちに居ても暇だからどっかいかないか?」

「行く」


 ――まったく色気もへったくれもねーが、それでいいと思う訳だ。


















 蛇足かおまけか。



「なあ、藍音」

「なんでしょう」

「お前さんは、ちゃんと下着を付けてるよな?」

「確かめてみてください」

「……」


 そう言って藍音はスカートを摘まむ。

 要するに、捲れというのか。俺は流石にそこまでに至りたくは無いのだが。


「冗談です」

「それはよかった」

「……やはり本気でした」

「それは困る」

「半分冗談です」

「冗談の方を圧倒的に支持する」

「……それはともかく、穿いていますが、なにか? やはり、脱がす楽しみもあると思います」

「そーなのかもしれないなー」

「それに、スカートめくりは下着があって楽しめるものだ、と聞き及んでおります」

「初耳だ」

「……まあ、ですが。そういうプレイを薬師様がしてくださるのでしたら、不肖藍音、喜んで脱ぎましょう」

「……」

「と、ここまで言ってみましたが、もしかしたら穿いているかもしれない、穿いていないかもしれない、という日によるランダムがスリルがあって素敵だと思いますが」

「嘘だと言ってよ藍音」

「知っていますか? その会話自体新聞の捏造という話ですが、その際にジャクソン氏はこう言ったそうです」










「ごめんよ、どうも本当らしい」







 











―――
藍音さんのスカートの中は、謎。
神秘ってやつですねわかります。要するにご想像にお任せしますと言うことで。








返信。


志之司 琳様

クライマックス過ぎて普通なら気が気じゃないと思います。
下手打てば前かがみじゃないかと思います。まあ、そこは薬師だからあれですが。
あと、脱がしてしまうなら最初から服なんて要らないんじゃないかと思います。キリッ。あと、和服は洋服と違って肌蹴やすいという事実がですね……。
しかし、それにしたって薬師はそろそろ陥落してもいい頃だと思うんですが。圧倒的過ぎてそろそろヤンデレと言う核兵器が飛び出す可能性もゼロじゃなくなりそうです。


悪鬼羅刹様

女性との外出は、家族ですら疲れる訳ですからねぇ……。
どう考えてもいきなり下着売り場でどの下着が似合うか問われるというシチュエーションは気付かれMAXでしょう。
しかしまあ、幸せ税ということで薬師には諦めてもらいたいところです。さもなきゃもげてもらうしか。
あと、攻防あわせもつ無敵要塞とかレベル高すぎてやってらんないです。どうやって倒すのやら。


奇々怪々様

和服の所々の穴にはロマンを感じて仕方がありません。
あと、和服の微妙なガードの低さとか完全にあれですよね。魅力的ポイント過ぎて和服美人の登場率が上がります。
それと、憐子さんは薬師でいいのじゃなくて、薬師がいいってことを薬師は理解すべき。
最後に、むしろ覗いてそうなのはAKMさんなんじゃないかと思います。


REX様

きっといまごろAの付く人は……、そう。
薬師の家の屋根裏辺りに生息してそうな辺り残念です。
ええ、住んでいるって辺り、まったく否定できない事実がそこに横たわっています。
気付けば後ろに暁御の影が――。


霧雨夢春様

感想感謝です。一気読みして頂き感謝です。ただ、徹夜にはお気を付けを。
いやはや、やはり面白いと言っていただけるのが一番うれしいです。まだまだ精進していきたいです。
とりあえず、今後もメリハリ付けて頑張りたいですね。ただ、やっぱりヒロインの登場割合は悩みどころです。
主に暁御さんとか。後は出番が多すぎて逆に藍音さんメインが出しにくかったり。


光龍様

和服は――、ノーパン。酷く遠い理想郷ですが、そうあるべきだと思います。
しかし、その通りで、スーツの男と巫女さんのミスマッチ具合がこの上ないです。
これで薬師が着流しだったらそれはどんな撮影だ、と言うお話で。後、読み返してみるとやっぱり憐子さんとだと生き生きしてますね、薬師。
人気投票に関しては、五十万も超えたし、そろそろってとこですかね。今回は二重投票可でガンガンやれるようにしたいと思います。


SEVEN様

憐子さん的には、自分のキャラを理解して、その上で沿うか沿わないかで恥を感じるようです。
ノーパン→憐子さんキャラ範囲内、可愛いもの好き→憐子さんキャラ範囲外。の模様。
他に相手がいないというか、薬師以外は憐子さんに耐えられない気がします。性的にも披露的にも。
あと、ある意味薬師の女性関係は清らかですよね、肉体関係的には。


黒茶色様

色々とシュールすぎて、各方面に喧嘩売ってましたね前回。
この間私も自転車かっ飛ばして山に入って見ましたが、駄目でした。
天狗への道は遠く険しいです。フラグマスターはそう簡単になれるものではないようです。
自分道民ですから近くに山は沢山あるんですけどねぇ……。


通りすがり六世様

貴方とは実に気が合うようです。和服には当然、ね。
着物やら袴なんかにはあちこち手を突っ込む部分があって非常になんか危ういと思います。
まさか、憐子さんはそのあたりのセクシー効果を狙って和服美人やってるんでしょうか。
そんな和服美人のノーパンの話題がここまで伝播してこの話が出来上がった訳ですが。


あも様

大丈夫、基本的に先生はノーパンスタイリストだし、押せ押せな感じです。
まあ、確かに平面仕様な和服だと、余裕がないときっちり着られないんでしょうけど、穴があれば手を突っ込みたくなるのが人間の性。
本能を利用した巧妙な罠です。それと藍音さんは穿いてるか穿いてないかすら不明です。ミステリアスですね。
あと、先生の精神年齢は、まあ、薬師と同等ですね。死んでた期間が長いので。でも、上に立ったり下に立ったり、姉な立場を行ったり来たりです。


名前なんか(ry様

更新の安定性だけが唯一の取り柄なのであります。まあ、暇人半分ですが。
薬師のもっとも厄介な所はそこですよね。なまじ恋愛関係に意識が行かない分、勝手にわかった気になってますから。
なんか薬師と常人では恋愛に関しては完全に言語が違うような気がします。DOCファイルをメモ帳で見たかのような狂い具合だと。
あと、AKMさんがちょっとしたイベントに現れ難いのは世界の法則です。もうストーキングしかないですね。はい。











最後に。

友人宅に数年前のガッチガチに凍ったアイスバーが今回の話のガチガチ君のモチーフです。いや、食べてませんけど。



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