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No.7573の一覧
[0] 俺と鬼と賽の河原と。(ほのぼのラブコメ)[兄二](2009/12/29 22:04)
[1] 其の二 あたしと彼と賽の河原と。[兄二](2009/09/21 21:30)
[2] 其の三 俺と鬼と地獄の酒場と。[兄二](2009/12/24 21:37)
[3] 其の四 俺と彼女と昨日の人と。[兄二](2009/09/24 13:26)
[4] 其の五 俺とあの子と昨日の人。[兄二](2009/09/24 13:50)
[5] 其の六 俺とあの子と一昨日の人と。[兄二](2009/04/01 21:22)
[6] 其の七 俺とお前とあいつとじゃらじゃら。[兄二](2009/09/24 13:55)
[7] 其の八 俺とあの子とじゃら男の恋と。[兄二](2009/04/04 21:04)
[8] 其の九 俺とじゃら男と屋台のおっさん。[兄二](2009/04/05 22:12)
[9] 其の十 俺と迷子と三途の河と。[兄二](2009/04/19 01:06)
[10] 其の十一 あたしと彼といつもの日常。[兄二](2009/05/18 23:38)
[11] 其の十二 俺と鬼と黒髪美人と。[兄二](2009/05/18 23:38)
[12] 其の十三 俺と少女と鬼の秘密と。[兄二](2009/04/13 01:47)
[13] 其の十四 俺と野郎と鬼と少女と。[兄二](2009/05/18 23:39)
[14] 其の十五 俺と河原と兄妹と。[兄二](2009/04/19 01:04)
[15] 其の十六 私と河原とあの人と。[兄二](2009/04/24 23:49)
[16] 其の十七 俺と酒場でただの小噺。[兄二](2009/05/18 23:32)
[17] 其の十八 俺と私と彼と彼女と。[兄二](2009/05/24 01:15)
[18] 其の十九 俺と彼女と気まぐれと。[兄二](2009/05/21 09:39)
[19] 其の二十 俺と彼女とデートと。[兄二](2009/05/24 01:16)
[20] 其の二十一 俺とお前とこの地獄と。[兄二](2009/10/17 19:53)
[21] 其の二十二 俺と天狗と閻魔と家族と。[兄二](2009/05/31 00:27)
[22] 其の二十三 俺と閻魔とパーティと。[兄二](2009/06/04 01:07)
[23] 其の二十四 俺と閻魔と部屋と起源と。[兄二](2009/06/05 00:43)
[24] 其の二十五 じゃら男と少女と俺と暁御と。[兄二](2009/06/09 23:52)
[25] 其の二十六 じゃら男と少女とでえとと。[兄二](2009/07/30 22:38)
[26] 其の二十七 じゃら男と少女と俺と暁御とチンピラ的な何か。[兄二](2009/06/16 00:38)
[27] 其の二十八 俺とじゃら男とリンと昨日と。[兄二](2009/06/16 11:41)
[28] 其の二十九 俺と酒呑みと変なテンション。[兄二](2009/06/20 00:27)
[29] 其の三十 俺と前さんと部屋とゲームと。[兄二](2009/06/21 19:31)
[30] 其の三十一 俺と河原と妹と。[兄二](2009/06/27 19:20)
[31] 其の三十二 俺と山と天狗と。[兄二](2009/06/27 19:18)
[32] 其の三十三 俺と山と天狗と地獄と。[兄二](2009/06/30 21:51)
[33] 其の三十四 俺と彼女と実家と家族と。[兄二](2009/07/03 20:35)
[34] 其の三十五 俺と家族と娘と風邪と。[兄二](2009/07/07 00:05)
[35] 其の三十六 私と彼と賽の河原と。[兄二](2009/07/09 23:00)
[36] 其の三十七 私と主と、俺と部下と賽の河原と。[兄二](2009/07/12 22:40)
[37] 其の三十八 俺と部下と結局平和と。[兄二](2009/07/17 23:43)
[38] 其の三十九 俺とその他と賽の河原と。[兄二](2009/07/21 08:45)
[39] 其の四十 俺とメイドと賽の河原と。[兄二](2009/07/20 22:53)
[40] 其の四十一 俺と無関係などっかの問題と幕間的な何か。[兄二](2009/07/22 21:56)
[41] 其の四十二 暁御と奴と賽の河原と。[兄二](2009/07/25 22:22)
[42] 其の四十三 俺と海と夏の地獄と。[兄二](2009/07/28 00:21)
[43] 其の四十四 俺と海と真の地獄と。[兄二](2009/07/30 22:35)
[44] 其の四十五 俺と貴方と賽の河原と。[兄二](2009/08/01 23:35)
[45] 其の四十六 俺とお前の滅亡危機。[兄二](2009/08/04 21:48)
[46] 其の四十七 俺とお前と厨ニ病。[兄二](2009/08/07 20:23)
[47] 其の四十八 疲れた俺と罰ゲーム。[兄二](2009/08/10 19:10)
[48] 其の四十九 俺と鬼と……、は? 猫?[兄二](2009/08/13 20:32)
[49] 其の五十 俺と盆と賽の河原と。[兄二](2009/08/17 00:02)
[50] 其の五十一 私と俺とあたしと誰か。[兄二](2009/08/19 23:35)
[51] 其の五十二 貴方と君の賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:03)
[52] 其の五十三 俺と藍音と賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:01)
[53] 其の五十四 俺と彼女ととある路地。[兄二](2009/09/04 21:56)
[54] 其の五十五 幕間 ある日の俺とメイドと猫耳。[兄二](2009/09/10 21:30)
[55] 其の五十六 幕間 俺と閻魔と妹の午後。[兄二](2009/09/14 22:11)
[57] 其の五十七 変種 名探偵鬼兵衛。前編[兄二](2009/09/21 21:31)
[58] 其の五十八 変種 名探偵鬼兵衛。 後編[兄二](2009/09/21 21:28)
[59] 其の五十九 俺が貴方と一緒に縁側で。[兄二](2009/09/24 22:25)
[60] 其の六十 俺と君とそんな日もあるさ。[兄二](2009/09/27 22:00)
[61] 其の六十一 俺とお前じゃ端から無理です。[兄二](2009/10/02 21:07)
[62] 其の六十二 今日は地獄の運動会。[兄二](2009/10/05 22:30)
[63] 其の六十三 ワタシトアナタデアアムジョウ。[兄二](2009/10/08 22:36)
[64] 其の六十四 鈴とじゃら男と賽の河原と。[兄二](2009/10/12 21:56)
[65] 其の六十五 俺と妹とソファやら鍵やら。[兄二](2009/10/17 19:50)
[66] 其の六十六 俺と御伽と竹林と。[兄二](2009/11/04 22:14)
[67] 其の六十七 俺と翁と父よ母よ。[兄二](2009/10/23 21:57)
[68] 其の六十八 俺と翁と月と水月。[兄二](2009/11/04 22:12)
[69] 其の六十九 貴方の家には誘惑がいっぱい。[兄二](2009/11/04 22:11)
[70] 其の七十 俺と娘と寒い日と。[兄二](2009/11/04 22:08)
[71] 其の七十一 俺と河原と冬到来。[兄二](2009/11/04 22:04)
[72] 其の七十二 俺と露店とこれからしばらく。[兄二](2009/11/07 20:09)
[73] 其の七十三 俺と貴方と街で二人。[兄二](2009/11/10 22:20)
[74] 其の七十四 俺とお前と聖域にて。[兄二](2009/11/13 22:07)
[75] 其の七十五 家で俺とお前が云々かんぬん。[兄二](2009/11/23 21:58)
[76] 其の七十六 俺と厨二で世界がやばい。[兄二](2009/11/27 22:19)
[77] 其の七十七 俺と二対一は卑怯だと思います。[兄二](2009/11/30 21:56)
[78] 其の七十八 俺とお前の急転直下。[兄二](2009/12/04 21:44)
[79] 其の七十九 俺と現世で世界危機。[兄二](2009/12/11 22:39)
[80] 其の一の前の…… 前[兄二](2009/12/15 22:10)
[81] 其の八十 俺と現世で世界危機。 弐[兄二](2009/12/19 22:00)
[82] 其の一の前の…… 後[兄二](2009/12/24 21:28)
[83] 其の八十一 俺と現世で世界危機。 終[兄二](2009/12/29 22:08)
[84] 其の八十二 明けましておめでとう俺。[兄二](2010/01/02 21:59)
[85] 其の八十三 俺と貴方のお節料理。[兄二](2010/01/05 21:56)
[86] 其の八十四 俺と茶店とバイターさんと。[兄二](2010/01/11 21:39)
[87] 其の八十五 俺と閻魔とセーラー服と。[兄二](2010/01/11 21:42)
[88] 其の八十六 俺と結婚とか云々かんぬん。[兄二](2010/01/14 21:32)
[89] 其の八十七 俺と少女と李知さん実家と。[兄二](2010/01/17 21:46)
[90] 其の八十八 俺と家と留守番と。[兄二](2010/01/21 12:18)
[91] 其の八十九 俺としること閻魔のお宅と。[兄二](2010/01/23 22:01)
[92] 其の九十 俺と実家で風雲急。[兄二](2010/01/26 22:29)
[93] 其の九十一 俺と最高潮。[兄二](2010/02/02 21:30)
[94] 其の九十二 そして俺しか立ってなかった。[兄二](2010/02/02 21:24)
[95] 其の九十三 俺と事件終結お疲れさん。[兄二](2010/02/06 21:52)
[96] 其の九十四 俺とアホの子。[兄二](2010/02/09 22:27)
[97] 其の九十五 俺とチョコとヴァレンティヌスと。[兄二](2010/02/14 21:49)
[98] 其の九十六 俺が教師で教師が俺で。[兄二](2010/02/22 22:00)
[99] 其の九十七 俺と本気と貴方と春と。[兄二](2010/02/22 21:55)
[100] 其の九十八 ~出番黙示録~アキミ。[兄二](2010/02/25 22:37)
[101] 其の九十九 俺と家と諸問題と。[兄二](2010/03/01 21:32)
[102] 其の百 俺と風と賽の河原で。[兄二](2010/03/04 21:47)
[103] 其の百一 百話記念、にすらなっていない。[兄二](2010/03/07 21:47)
[104] 其の百二 俺と憐子さんと前さんで。[兄二](2010/03/10 21:40)
[105] 其の百三 俺とちみっこと。[兄二](2010/03/14 21:15)
[106] 其の百四 俺と保健室が危険の香り。[兄二](2010/03/17 21:48)
[107] 其の百五 俺と娘と妹でなんやかんや。[兄二](2010/03/20 21:43)
[108] 其の百六 大天狗は見た![兄二](2010/03/24 20:09)
[109] 其の百七 俺と春とクリームパン。[兄二](2010/03/27 21:33)
[110] 其の百八 俺と憐子さんと空白。[兄二](2010/03/30 21:44)
[111] 其の百九 猫と名前と。[兄二](2010/04/03 21:03)
[112] 其の百十 俺と猫とにゃんこと猫耳とか。[兄二](2010/04/07 21:56)
[113] 其の百十一 春と俺と入学式。[兄二](2010/04/17 21:48)
[114] 其の百十二 俺と子供二人。[兄二](2010/04/13 22:03)
[115] 其の百十三 俺とあれな賽の河原と。[兄二](2010/04/17 21:41)
[116] 其の百十四 俺と生徒とメガネ。[兄二](2010/04/20 22:07)
[117] 其の百十五 眼鏡と俺と学校で。[兄二](2010/04/23 21:52)
[118] 其の百十六 貧乏暇なし、俺に休みなし。[兄二](2010/04/27 22:07)
[119] 其の百十七 俺と罪と罰と。[兄二](2010/04/30 21:49)
[120] 其の百十八 大天狗を倒す一つの方法。[兄二](2010/05/05 21:39)
[121] 其の百十九 大天狗が倒せない。[兄二](2010/05/09 21:29)
[122] 其の百二十 俺とご近所付き合いが。[兄二](2010/05/12 22:12)
[123] 其の百二十一 眼鏡と俺とこれからの話。[兄二](2010/05/16 21:56)
[124] 其の百二十二 俺と刀と丸太で行こう。[兄二](2010/05/22 23:04)
[125] 其の百二十三 俺と逢瀬と憐子さん。[兄二](2010/05/22 23:03)
[126] 其の百二十四 俺と指輪と居候。[兄二](2010/05/25 22:07)
[127] 其の百二十五 俺と嫉妬と幼心地。[兄二](2010/06/02 22:44)
[128] 其の百二十六 俺と噂も七十五日は意外と長い。[兄二](2010/06/02 22:05)
[129] 其の百二十七 にゃん子のおしごと。[兄二](2010/06/05 22:15)
[130] 其の百二十八 俺とお人形遊びは卒業どころかしたことねえ。[兄二](2010/06/08 22:21)
[131] 其の百二十九 俺と鬼と神社祭。[兄二](2010/06/12 22:50)
[132] 其の百三十 俺と日がな一日。[兄二](2010/06/15 22:03)
[133] 其の百三十一 俺と挑戦者。[兄二](2010/06/18 21:47)
[134] 其の百三十二 俺と眼鏡と母と俺と。[兄二](2010/06/22 23:21)
[135] 其の百三十三 薬師と銀子と惚れ薬。[兄二](2010/06/25 22:09)
[136] 其の百三十四 俺とできる女と強面な人。[兄二](2010/06/29 22:08)
[137] 其の百三十五 逆襲のブライアン。[兄二](2010/07/03 22:49)
[138] 其の百三十六 俺とお前と学校の怪談が。[兄二](2010/07/06 22:03)
[139] 其の百三十七 俺とある日のアホの子。[兄二](2010/07/09 21:21)
[140] 其の百三十八 すれ違い俺。[兄二](2010/07/12 22:14)
[141] 其の百三十九 じゃらじゃらじゃらりとうっかり洗濯。[兄二](2010/07/15 22:11)
[142] 其の百四十 俺と序文はまったく関係ない話。[兄二](2010/07/19 22:50)
[143] 其の百四十一 俺と決闘と日本刀。[兄二](2010/07/22 20:42)
[144] 番外編 現在の短編:薬師昔話 お姫様の話。[兄二](2010/04/17 21:47)
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[7573] 其の十三 俺と少女と鬼の秘密と。
Name: 兄二◆adcfcfa1 ID:b80cdb5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/04/13 01:47
俺と鬼と賽の河原と。








 ここは河原。



「一つ積んでは母ため、をとある場所で翻訳すると――」




 そこで、人は石を積む。




「Laden by one : for mother。それをもう一回日本語にすると、」




 それが供養と言われつつ。




「苦しい1時までに、母親のために。Byとあるエキサイティングな翻訳」




 それが、賽の河原。




「意味わかんないっ!!」









其の十三 俺と少女と鬼の秘密と。







「薬師さん! おはようございます!」

「おはようございます!」

「よお、少年少女達よ」


 彼らが、ここに就職して、やっと半月となる。

 まだ、担当は決まってないが、双方、精力的に働いているため、周りからの評価は上々。

 そして、もう一人。


「何を黙り込んでるんだ? 李知さんよ?」

「むう……」


 もちろん、李知さんだ。

 その彼女は――、口に手を当てながら、何事かを考えている。


「で、何を考え込んでいるのやら」


 聞くと、李知さんは口元から手を離し、こちらを見た。


「いや、少し、計りあぐねていて……」

「何を?」

「お前を」


 俺かよ。


「人を馬鹿にして楽しむ嫌な奴かと思えば、子供には優しい」

「俺にだってさっぱりだ」

「そして何より憎めない」


 その辺は自分じゃ把握できないのだが。


「うん?」

「お前は、私を嫌ってるんじゃないのか?」


 はて、それこそ意味がわからんが。


「何故に?」

「いや、私にだけあのような態度だし、他には優しいし」


 あー、そうだっけか?

 李知さんだけじゃない気がするが――。

 ともあれ、俺は立ち上がって、李知さんの目をまっすぐに見つめて――、言う。


「うん? だが――、俺は李知さんのこと好きだぜ?」

「なっ!」

「恐る恐るの慎重な関係は他人。友人とは、気安く軽口を言い合える間柄を指す。俺の軽口はな? いつも親愛の情をこめて、親しみ易くあるように言ってるんだよ」

「…そ、そうなのか?」

「ああ。ほら、お前さんもいつの間にか敬語が取れてる。だが、俺としてはできる限り親愛の情を込めたつもりだったんだが、理解が得られんとは……。悲しいな」


 と俺は悲しい目をしてみる。

 すると、李知さんは申し訳なさそうに。


「そう、だったのか。すまなかった、私の浅はかな考えでお前の親愛を貶めてしまった……!」


 信じた!

 これはやべぇ…。

 本気で面白い。

 ここまで面白いと俺からの好感度が上昇ですよ、っと。

 元より嫌いな訳はないんだが。


「ああ、わかってくれたならいい。だから、俺はお前さんをこれからも親愛を込めてからかいつづけるな!」

「ああ、これからも私をからかい続けてくれ!」


 はいポチっとな。

 俺は手元のとあるスイッチを操作した。


「言質とった」

「え?」


 驚く李知さんに、俺は手の中の物をひらひらと振ってみせる。


「俺の手の中にあるのはなんだと思う?」

「て、てーぷれこーだー…」


 では再生。


『ああ、これからも私をからかい続けてくれ!』

「なっ、お、お、お前」

『ああ、これからも私をからかい続けてくれ!』

「また私をからかって……!」

『ああ、これからも私をからかい続けてくれ!』

「う」

『ああ、これからも私をからかい続けてくれ!』

「う?」

『ああ、これからも私をからかい続けてくれ!』

「うるさーい!!」


 確かに。

 俺は手元を操作してテープレコーダー、ってかデジタルなのでボイスレコーダーを止める。


「お、まえはいい加減にっ」

「なあ、聞くがさ、お前は嘘をついたのか?」

「な、そんな事はない。私はいつでも清廉潔白、誠実あれ。嘘など吐かない!」

「ほい、言質とった」

「え?」

『私はいつでも清廉潔白、誠実あれ。嘘など吐かない!』

「嘘、吐かないんだろう?」

『ああ、これからも私をからかい続けてくれ!』

「な、な、な、それは……」

「それともあれか? 嘘を吐かないと言った舌の根も乾かぬうちに発言を翻すのか? 誠実な人は」

「うぐ」


 そんな彼女に、俺は満面の笑みを向けた。

 そして――、


「からかっていいんだな? これからも」


 む、固まった。

 そしてしばらく震えていたか、と思うと。


「……ああ」


 承諾した。

 いやホントに面白いな。


「というのもここまでがぶっちゃけからかいなんだが。まあいいか、なんか勝手に承諾してくれたし」


 いや、承諾してくれなくてもからかうんだが。

 と、まあ、俺はそれでひと段落、とボイスレコーダーをしまおうとする。

 のだが。


「な、お前、消せっ」


 必死に李知さんが手を伸ばしてきていた。

 俺は反射的に後ろに下がる。


「あっ」


 と、そこで問題が生じた。

 俺は、目の前に石を積んでいたわけで。

 そこに、何の準備もなしに踏み込むと――、

 転ぶ。


「っと、あぶねぇ」


 俺は、それが解ったのでとりあえず、李知さんを抱きとめた。

 なんとか被害は――、俺の積んだ奴が壊れてるね。

 お疲れ。

 とか自分を労いつつ、李知さんに声を掛ける。


「おーい、大丈夫か?」

「あ、ああ」


 微妙に動揺した声を聞いて、俺は彼女が体勢を直すのを待とうとしたら――、

 彼女はそれを好機と見たらしい。

 俺がボイスレコーダを握ったままでいる李知さんの背へと手を伸ばした。

 俺は身動きできない、どころか――。


「ほら、観念して寄越せ!」

「おい、ちょっと待て、この体制で無理に暴れられると――」

「え、あ、きゃあっ!!」


 後ろに倒れこむ事になってしまった。

 背から首にかけて衝撃が走る。


「ぐお、後頭部が痛い」

「な、あ、え?」


 丁度、俺の首元に頭がある李知さんが、戸惑いながら声を上げた。


「で、悪いがどけてくれまいか?」


 ぶっちゃけると覆いかぶさるように倒れられたため、動けないんだな。

 これが。

 あと、今まで気付かなかったが、密着体勢になって気づいたことがある。

 結構あるんだな、何が?

 察してほしい。

 言うなれば、俺じゃなきゃこの状況、襲ってるぞ?

 が、なかなか李知さんが動かない。


「おーい、李知さん?」


 声を掛けると、やっと反応が返ってきた。


「あ、ああ、今――」


 と、そこで。


「李知……? 薬師を押し倒して、何やってるの……!?」


 まさかの展開が来た。

 ちょっと首を動かして見ると、そこには誤解満載の前さん発見。

 家政婦は見たって顔してるよ。


「五分経ったから来てみたら、そこの二人を置いてけぼりで、突然抱きあったかと思えば、押し倒して――」

「い、いや、これは違くて」


 がばっと上体を起こし必死に弁明しようとする李知さん。

 俺はそれに続いた。


「そうだ! 例え李知さんが色々な物を持て余していても、俺にその気はない!」

「そ、そうだ! って違う!! 私は持て余してない!」


 うーん、だがね?


「とりあえず馬乗りの状況からどいてくれるか? そのままマウントポジションで俺をぼこぼこにでもするつもりかね?」


 言うと、やっと李知さんは動いてくれた。


「で? 話はきかせてもらうんだからね?」


 そして前さんが、恐怖政治を始めた。

 まさに鬼。






「それで?」

「と、まあこうなったわけです」


 正座する俺達の前で、会話するロリとロ……、げほんげほん。

 えー、あー、会話する少女達と少年。

 要するに事の一部始終を見ていた二人が説明をしてるわけである。

 そして、その結果。


「消してあげなさい」

「えー」

「えーじゃない」


 消すのか、せっかくいい声が録れたのに。


「それに、無くても結局からかうんでしょ?」

「おう」

「一瞬の躊躇もなく言われた……」


 微妙に落ち込んでる李知さんはスルーで。


「仕方ない……」


 俺は、かちゃかちゃと、適当にレコーダーをいじる。


「ほいっと、おーけい」

「よろしい」


 その前さんの言葉に俺は胡坐をかき、李知さんは立ち上がる。

 と、そこで、なんか俺を見る由美。


「どうした」

「いや、なんかすごいなー、と」


 何がすごいと!?

 そんなこと言う子には――、


「肩車してやろう」

「え、あ、あの」


 いきなり由美を肩車してみたんだがあれか?


「別にスキンシップが足りないわけじゃないのか?」


 幼くして死んで家族の愛が足らなかったのかと思ったが違うらしい。


「いや、別にそう言う訳じゃ……」


 言い淀む幼女、もとい由美。


「うん?」


 と、思えば由壱の方が、こちらを見ている。


「おお、お前さんもか」


 一度由美を下ろし、由壱を担ぎあげる。


「え、あ。すごい」


 お、由壱は普通に喜んでくれてるぞ?

 というのはともかく。

 少し、気になったことがあるのだが、後で聞いておかねばならんか。













「薬師、お疲れ様」

「お、時間か」


 あれからしばらく。

 仕事の時間が終わった。



「じゃあ、帰るか」


 俺は、立ち上がり、歩き出そうとして、気づく。

 由美が、俺の服の裾を掴んでいる。


「どうした?」


 怪訝に思って聞いてみるが、彼女は黙ったまま俺を見上げてくる。

 ……。


「行こう、由美」


 そこに、由壱が声をかけて、彼女は俺の服から名残惜しそうに手を離した。


「お兄ちゃん……、うん」


 二人が、渡し守にチケットを渡し川の向こうへと消える。

 やはり、なんかあったのか?

 そして、俺は振り向かずに後ろにいる二人に聞いた。


「なぁ、どうやったら鬼になるか、正確に教えてくれないか?」


 すると、前さんの戸惑う声がした。


「え? でも、それは」


 次に、咎めるような李知さんの声。


「いきなり何を言うかと思えば。私達が言うと思うか?」


 だろうなぁ。

 だが、ちょいと確かめないといけないことができちまった。

 だから、問う。


「だったら、質問を変えるが。極度の飢餓に陥ると、鬼になるってのは――、正解か?」


 二人の、息を飲む音が聞こえた。


「!」


 ビンゴ、か。

 だったら、あいつらは帰すべきじゃなかったかもしれない。







「肩車したときにも思ったが――、なあ、安岐坂兄妹、やつれてなかったか?」







―――

おかしいぜ!!
安岐坂兄妹メインだと思っていたらそうでもなかったんだぜ!!
うん。
本当は次の奴と一本だったはずなんだけど。
李知さんのせいで予定外に伸びたので、もう一本増やす。
安岐坂姉妹、どうなるのか。



どうでもいい近況報告で、


テレビCMでつるのがチルノに聞こえた。
穴があったら入りたい。


テレビ番組で謙信が建立(こんりゅう)した寺、が謙信が混入した寺に聞こえた。
うどん吹いた。
お前、謙信食ってる時にうどんの話すんなよ、とか思いついた。
消えたい。


ニュースで、マケイン氏上院議員が、魔剣士上院議員に聞こえた。
死にたい。





では返信。







妄想万歳様


誤字報告ありがとうございます。
そしてけーね先生が頭に浮かんだ貴方。
同志ですか。
自分で書いててあれですが、読み返したら、あるぇー?
角は長くないけど。



ザクロ様


まあ、じゃら男はこういうキャラという事で。
あと、地獄の広さですが、在獄中の霊の数で広さが変わります。
ただ、五丁目はかなり広い。
色んなとこから霊が集まりますので。
ついでに、空間も大分捻じれ切ってるので、四丁目は中々カオスに。
次に、形は平面になっております。
果てに着くと、進んでも進んでも進まなくて無限ループ。
自然の方は結構豊富。
斬り倒された木とかが地獄に生えてくる。
結構霊樹が豊富。
珍獣は、地獄生まれ、としては鬼もまた一つの地獄名物。
他は、タラスクみたいな妖怪の類がちらほら。
という感じでしょうか。
更新、頑張ります。



GEORGIA様


コメントありがとうございます。
どうも。
こ洒落てますね。
というのはともかく。
李知さんのいは李ぢれる年上のい、だと思ッてゐる今日この頃。





くぁwせ様


感想どうもです。
面白いと思っていただけたなら感謝の極みです。
石積みですが、意外とこれが難しくて、上の指定した高さに到達しないといけないという決まりが。
だが、それをやると崩れてしまう、ので玄人の技がいる、と。
ちなみに、母のためは言わなくても大丈夫です。
もうすでに両親への供養から外れているので。


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