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No.7428の一覧
[0] 汝は悪魔なりや? ―Pandemonium Online―【VRMMO/デスゲーム】[長瀞椛](2009/04/24 21:14)
[1] プロローグ[長瀞椛](2009/03/26 22:25)
[2] 第1話(1)[長瀞椛](2009/03/16 00:21)
[3] 第1話(2)[長瀞椛](2009/03/16 00:21)
[4] 第1話(3)[長瀞椛](2009/03/16 00:20)
[5] 第1話(4)[長瀞椛](2009/03/16 00:23)
[6] 第2話(1)[長瀞椛](2009/03/16 22:15)
[7] 第2話(2)[長瀞椛](2009/03/18 21:57)
[8] 第2話(3)[長瀞椛](2009/04/07 22:17)
[9] 第2話(4)[長瀞椛](2009/03/26 22:26)
[10] 第2話(5)[長瀞椛](2009/04/07 22:18)
[11] 第3話(1)[長瀞椛](2009/03/26 22:23)
[12] 第3話(2)[長瀞椛](2009/03/26 22:24)
[13] 第3話(3)[長瀞椛](2009/03/27 22:43)
[14] 第3話(4)[長瀞椛](2009/03/28 21:24)
[15] 第3話(5)[長瀞椛](2009/03/29 22:51)
[16] 第4話(1)[長瀞椛](2009/03/31 20:33)
[17] 第4話(2)[長瀞椛](2009/03/31 20:31)
[18] 第4話(3)[長瀞椛](2009/04/01 21:14)
[19] 第4話(4)[長瀞椛](2009/04/02 21:53)
[20] 第4話(5)[長瀞椛](2009/04/02 21:54)
[21] 第5話(1)【TS】[長瀞椛](2009/04/03 21:53)
[22] 第5話(2)[長瀞椛](2009/04/04 21:05)
[23] 第5話(3)[長瀞椛](2009/04/05 22:35)
[24] 第5話(4)[長瀞椛](2009/04/07 22:18)
[25] 第5話(5)[長瀞椛](2009/04/07 22:14)
[26] 第6話(1)[長瀞椛](2009/04/11 00:16)
[27] 第6話(2)[長瀞椛](2009/04/11 21:26)
[28] 第6話(3)[長瀞椛](2009/04/15 21:12)
[29] 第6話(4)[長瀞椛](2009/04/24 21:11)
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[7428] 第2話(3)
Name: 長瀞椛◆02a085b6 ID:15741d4c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/04/07 22:17
『……あー、うー……ひもじいよう……おいしいご飯が食べたいよう……』
『やめてくださいキールさん……。思っていることを直接口に出されると、キツいです……』
 それはきっと、全員思っていることだろう。ノアあたりはわからないけれど。
 数少ない娯楽である食事を、モンスターのドロップ品に頼らなければいけないというのは精神的にきつい。
 せめて果実の味がもうちょっとマシならいいんだろうけれど……本来、初心者救済処置用のアイテムにそこまで求めるのは無茶というものだろう。製作会社もまさかこんな事態になるとは思っていなかったはずなのだから。
『あーもう、リアルに帰ったら絶対……ゲーム会社から賠償金ふんだくって、腹いっぱいうまい飯食う!』
『というか、私らに関しては一生生活できるくらいの賠償金ふんだくっても許されるわよねこれ』
『そうだね。そのくらい貰わないと割に合わないし、ね。まあ……生きて帰らないことには、取らぬ狸の皮算用だけれど』
『こういう会話で現実突きつけるのはやめようぜ、ファーテル……』
 暫くそんなどうでもいい話をしていると、レオンハルトが秘匿チャットに割り込んできた。
『ファーテル。狩りは終わったが……念のためもう一度回復を頼む』
 ――勝ったのか、この人。作中トップクラスのボスに、ソロで。
 本当に無茶をするなあ……と呆れる僕たちを他所に、ファーテルは淡々と仕事をこなしていく。
『あと、ユーリ』
 不意打ちで、レオンハルトが僕を呼んだ。
『ん、何?』
『千里眼で俺のいる周辺のキャラクターの分布をチェックしてくれ。雑魚モンスターはどうとでもなるから、わざわざチェックしなくてもいい』
『わかった』
 僕がレオンハルトの顔を思い浮かべながら、指先で四角を描くと……その中に、ダンジョンのエリアの俯瞰マップが表示される。
 マップにはいくつものドットがあちこちを動いている。この点はプレイヤーキャラクターを表わし、触れることで彼らが何をやっているか拡大して見ることもできる。
 この千里眼は“Sariel”のスキルの中でも最も使用頻度が高い。
 “アスタロトの迷宮”を除いた全てのマップの状況を確認することができ、マップ内のモンスターやキャラクターの分布をリアルタイムに確認できる。拡大・角度を変更することで、装備なども細かいところまでチェックすることができる。
 “LucifugeRofocale”の遠隔支援と同様に、僕たちにとって生命線となるスキルの一つだ。
『殆どいない……小規模のパーティが3組いるみたいだけど、レオンハルトを狙っているわけではなさそう』
 さて……マップを確認したところ、3人から5人程度のパーティが3組。装備も人数もパーティ構成も、敗北すれば死亡というルールのあるレオンハルトとの戦闘を想定しているとは思えない。
 それを報告するとレオンハルトは、やはりな、と溜息を吐いた。
『……最近、俺への……ギルド系プレイヤー襲撃の数が減っている』
 レオンハルトの言葉に、ファーテルが呟く。
『ということであれば……大手ギルドあたりから何らかの指示があったのかな』
 ほんとうにそうだとすれば、非常にまずい。
 僕たちがこうして無事に逃げおおせているのは、他のプレイヤーたちの足並みが揃っていないから、というのが大きい。
『大規模な討伐部隊でも組むつもりなのかしら』
『だとしたら捕まえればいつでもどうこうできそうな俺らなんかよりも、目立つ行動をしているレオンハルトたちのほうがヤバそうだな……大丈夫か?』
 キールが心配そうに問いかけるが、レオンハルトはきっぱりと、自信たっぷりに言い放つ。
『俺は重武器の範囲攻撃スキルがあるから囲まれたところでどうとでもなる。そういうのがない奴のほうが心配だ』
 こういう発言って結構ムカつくもののはずなんだけれど、レオンハルトの場合は実際に納得させるだけの実力があるだけに、僕たちからは何とも言えない。
 ボスを一人で狩るほどに戦闘能力とゲーム内知識を極めた男に対して何か言ったところで、釈迦に説法だ。
『まあ俺が一番、戦力的には心配の種かねえ……おいおいユーリ、なんか街の連中が討伐パーティ集めてるぞ』
『……マジで?』
 どうやらゆっくりしている訳にもいかなさそうだ。
『次はどこにするつもりなんだい?』
『えーっと、カフの樹海あたりにしようかと……』
 樹海はこの森から南下し、高い山を挟んだ位置にある。
 ここからだと普通なら街道を使って遠回りして何日かかけて移動する場所だが、山を越えれば何とか夜までには辿り付けるはずだ。
『そういえば、そろそろ私も活動場所を別のところにしようと思うんだけど……どこかいい場所あるかしらね』
『そうだな……お前なら、テット鉱山あたりがいいんじゃないのか』
『駄目ですよ、レオンハルトさん!』
 レオンハルトが地名を出すと、メルキセデクが慌てて制止する。
『ん? あそこならレベルも調度いいと思うが……って、そういえば。あそこはオーガ系モンスターが出るのか』
『ええ。僕らは兎も角、ラケシスさんは女の人だから特に……亜人系モンスターが出るところはまずいです……』
 亜人系モンスターは、ゴブリン、コボルト、オーク、オーガ、トロウル、ダークエルフといった具合に……RPGの悪役としてよく出てくる、様々な種族が存在する。
 彼らは他のモンスターよりも高い知性を持っているため、様々な戦術を駆使して人間のパーティを襲ってくる。
 それが、このゲームにおける本来の亜人系モンスターの姿だが、アスタロトは彼らを大きく“歪めた”。
 人間、つまりプレイヤーの女性と遭遇した場合、HPを0にしない程度に甚振り、バッドステータス漬けにした挙句……彼女らを軟禁する。
 ――捕らわれた彼女らがどんな目に遭わされているか、想像したくはないが……大体の見当はつく。
 そんな事情があるため、女性プレイヤーが亜人系モンスターのいる場所でソロ狩りをするのは自殺行為――というのが、ほぼ全てのプレイヤーの認識だ。
『これまで普通のモンスターだった連中が、まるで本物みたいな行動するようになるんだもんなあ……。
 アスタロトの正体がプログラマだとしたら……とんでもない才能の無駄遣いを兼ねた大悪行だな。
 これだけの技術でちゃんとしたAI作って、筑波で開発中だっていう家庭用ドロイドに入れれば、それこそどのくらい稼げることか』
 キールの皮肉めいた冗談を聞きながら、ふと考える。
『……彼女は一体、何者なんだろう』
 今、こうして思い返してみると――アスタロトの正体が一体何なのかは、結局わからないままだ。
 ゲーム会社の誰かが作ったプログラムなのか。悪意あるハッカーが生み出し、送り込んだものか。それとも彼女がそう名乗った通りに……僕たちの知らない世界の住人……悪魔なのか。何もわかっていない。
 外の世界なら情報が転がっているかもしれないけれど……今の僕たちには外に出る手段はないし、外の人間が介入する手段もない。そもそも、外部からの干渉が可能な状況ならば、すぐさま救助なりなんなりが来ただろう。
 ただ確かなのは……彼女がこの世界を大きく変えるだけの力を持っているということだけだ。
『さあな。少なくとも、一ヶ月もの間、仮想現実空間に66万人を閉じ込めておきながら公の権力によって逮捕なりなんなりされていないあたり……実在する人間とは思えんが』
『そうだよね。普通人間の手によるものだったら……海外からハッキングしているとしても、調べればわかることだろうし』
 僕がそう言うと、レオンハルトも、ああ、と相槌を打つ。
『それこそ本当に悪魔だったとしても不思議ではない』
 コミュニケーションツールとしてメールシステムと並んで使用される、プレイヤー用掲示板に書かれている情報によると、アスタロトは著名な悪魔の名前とのこと。
 オカルトに詳しいプレイヤー曰く……ソロモン72柱の1柱。40の悪霊の軍団を率い、序列29番に位置する大公。魔界においても五指に入る実力者。
 この悪魔は、巨大な蛇にまたがった、毒蛇を持ち毒を吐く――という姿をしているらしいが、少なくともイラストとかで見た彼女はその原形となった悪魔の姿を留めていない。
 しかしその悪魔のモデルとなったのはどこかの豊穣の女神であり、このゲームにおける彼女が美しい女性の姿をしているのはそちらがモデルとなっているのであろう。
『……せめて、外からの情報を持って来れればなあ』
 外部にはこれまで作られてきた、このゲームのデータベースサイトなどが存在する。
 アスタロトによる改造はかなりされているが、それでも見やすくまとめられたデータベースがあるのとないのとでは全然違う。
 それに、“魔王”のシステムがゲームのメインストーリーに由来する以上……考察から打開策のヒントが得られるかもしれない。
『だが、外からの介入がないのは俺たちにとっては不幸中の幸いかもしれないぞ』
『どういうこと?』
『そんなことになったら……公のお墨付きで、俺たちだけピンポイントで殺して他を助けるとか、そういう話になりかねん』
 うへあ、とキールがげんなりとした声をあげた。
『俺らの生存権はどうなっているのさ、それ……』
『基本的人権は“公共の福祉に反しない”程度にしか守られないからな』
『66万人を助けるために、可哀想だが7人の人間に犠牲になってもらいましょう――というのが世論になりそうですね』
 メルキセデクが溜息混じりに言う。民主主義の基本は多数決。それを踏まえれば今の日本では――僕たちを殺してでも他のプレイヤーを早く助けるというのは、当然のことだろう。
 しかし……ただ単に蔑ろにされるなら兎も角、命に関わる問題だ。
 ――赤の他人を助けるからお前は死ねと言われて、はいそうですか、と素直に命を差し出せる人間が果たしてどれくらいいるだろうか。
 少なくとも僕たち7人は、誰一人として当てはまらなかった。
 他に手段がないというならともかく、自分たちが死ぬ以外の脱出条件がある中で自分から死のうとは思わない。
 僕だって……父さんのことがあるし、まだまだやりたいことだって一杯あるんだ。
『……絶対生き残ってやる』
 僕たちの思いを代表するかのようなレオンハルトの呟きには、鬼気迫るものがあった。


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