幻想立志転生伝
***エピローグ及び彼らのその後***
~とある世界の終わりに~
≪聖竜教団聖都シバレリア・大聖堂にて≫
世界統一暦1999年多分7月。
カルマ達の時代から3000年の時が流れ……その世界は終わりを迎えようとしていた。
「神父さま……どうか我等をお救い下さい!」
「ああ、神様……」
「どうしてこうなっちまったんだ!?」
「……心を静めなさい。さすれば女神は必ずや我等をお救い下さります……」
最近急に増えたボロボロの信徒達を目の前にして、説教をする人影は、
神聖竜王教団、第369代大司教ゲン・リーシュギー。
彼はこの期に及んでさえ心にも無い奇麗事を自然に並べ立てられる自分に辟易としながらも、
これも聖職者の務めと割り切り、言葉を続けている。
「今から100年ほど前の危機に、女神ハイム様は敬虔な信徒を引き連れ、天に上られたといいます」
「今回も、その奇跡が起きると!?」
「おお、おお……!」
時を遡る事100年ほど前、世界は一度崩壊の危機に立たされていた。
世界が人の住める環境ではなくなりかけていたのだ。
だが、女神ハイムが天より降り立って世界を修復したのはVTRにすら残っている史実である。
そしてその際に女神は100年後のどうしようもない崩壊を予言し、
望む者は共に天の国へと連れて行ったと言う。
ただし、その数は決して多いものではなかった。
何故なら女神は、その時こうも言っていたのだ。
『今から行く地は、我が侭を言うと命すら危うい世界だ。……それでも構わぬか?』
と。その言葉に大半の人々は二の足を踏んだ。
どうせ100年後では自分は生きていない。だったら今を謳歌したい。
……その結果がこれだ。
「……さて、今日はここまでです。皆さん、心安らかに女神を待ちましょう……」
「「「「はい!」」」」
大司教ゲンは出来うる限りの笑みを浮かべ、大聖堂の奥へと戻っていく。
……周囲には寝袋が転がっていた。
二階、三階と階段を昇り、窓から外の世界を臨む。
「まさに、世界の終わりですか……」
異変が起きたのは一年ほど前からだ。まずは雨が全く降らなくなった。
いつしか黒雲が天を覆いつくし、海は荒々しくうねる。
大地に生える植物は無く、一面の荒地と化した地平の彼方に時折人影らしきものが見えるのみ。
度重なる大地震に人類文明はほぼ壊滅した。
この大聖堂も、かつて女神が暮らしていた城であるが故に無事であるに過ぎない。
……足元に見える僅かな緑は、
古代マナリア王国時代に生み出されたと言う"レントの聖樹"と呼ばれる歩く樹木。
今や彼らの枝に生る果実だけが頼みの綱だが、その聖なる木々もその数を減らす一方だという。
だがそれも当然。大地に落ちた種を芽吹かせる力を、最早大地は持っていないのだから……。
「まさか、私の存命中に世界の終わりが来てしまうとは……こうなると長生きも考えものですね……」
彼の大司教は長い髭をさすりながら首を振った。
そして何故自分が責任者をしている代で終わりが来てしまったのかと溜息をつく。
教皇や枢機卿といった上層部は100年前に女神と共に天へと昇ってしまい、
以来教団は半ばその運営を停止していた。
それが再び脚光を浴びたのは20年ほど前のこと。
滅びが見えてきた人類は再び神を求め始めたのだ。
この大司教も、当時自分の利権の為に天に行くのを拒んだ破戒僧の血筋でしかないのだ。
「……何を今更、のはずなのですがね……」
老人は窓から視線を外し、再び自室に向かって歩き始める。
その遥か下では食料を求める人々と樹木の警備兵との間で小競り合いが起きていた。
もしかしたら、彼はそれを視界に入れたくなかったのかも知れない。
神であればこの現状を打開できるのであろうか?
いや、この世界の神であればこう言うだろう。
『は?今更何を言っておる。わらわはもう知らん……この世界はもう、寿命だ』
と。
少なくとも、混乱の中もう細かい日時すら誰も判らなくなってしまったような現状の世界に明日がある、
などとは誰も思って居なかったが……。
……。
≪ てんごく(笑) ≫
さて、そんな阿鼻叫喚の世界を尻目に、と言うか眼下にして浮かぶ巨大建造物があった。
丸い円筒状をしていてあまりに巨大な無重力空間に浮かぶ……と、言えば大体お分かりになるだろう。
そう、所謂スペースコロニーと言う奴である。
もはやファンタジーでもなければ剣と魔法の世界ですらない気もするが、それを気にしてはいけない。
「今日あたり危なそうだな……これ以上の延命はもう無理か」
「そうでありますね魔王様。ま、この期に及んで残った連中に気を使う必要は無いのですよー?」
「そうだよー。はーちゃんとして気になるのはわかるけどさー」
まおーと蟻ん娘と蜂っ子と言うトリオが、
その中にそびえる屋敷の中で、山盛りの饅頭を平らげながら話をしていた。
……世界が滅びそうになった時に、世界の外に逃げようと作られたこの人工の大地は、
周辺別時空から集めた技術の集大成である。
世界が滅びるなら別な世界を作れば良いじゃないという考えの元作り出されたこの小さな世界では、
勝手に草花を摘む事すら許されていない。
かなりギリギリのバランスで組み上げられた生態系と環境を崩せば死あるのみなのだ。
「何にせよ、これ以上の受け入れは無理だな。奴等が来た場合を考えてたもれ?」
「絶対数年以内に採光用窓をぶち破る馬鹿が出るのですよー」
「自重できない奴は要らないよねー?」
……側近達の言葉を聞いてまおー様……女神ハイムは溜息をついた。
「お前らが言うな。8代目ハニークインに……」
「やっほい!はーちゃん、うちの次代女王は元気してるよねー?」
「あ、おかーさんだよー!?」
更に天井裏から降り立つ"姉"に辟易とした表情を見せる。
長い年月は様々な物を変えてきたがこれは数少ない変わらないものの一つだ。
当人としてはそこは変わって欲しいと願ってやまないのだが……。
「そのとおり、です」
「月面コロニーからこんにちはであります!」
「これはこれは二代目クイーンのおば様がたなのですよー。乙なのですよー」
長い年月が流れ、今ではリンカーネイト王国時代の仲間はハイムの他にこの三匹しか残っていない。
だが、それでも何一つ変わらぬ"姉"の姿。
自身も背が伸びた十代後半辺りからは何一つ変わらぬ姿を保っているが、そう言うレベルではない。
唯一変わったのは次世代の女王アリが生まれた事ぐらいか。
「む?姉どもか……どうした?」
「いやねー。流石に隠居生活は寂しくてさー。たまには一緒にお茶でも飲みたいなー……ってねー」
「はーちゃん。おちゃ、おごれ、です」
「お茶菓子はもって来たであります!」
魔王が静かにパチリと指を鳴らすと、周辺の空間が歪み、虚空より熱い緑茶が三人分現れた。
絶大な魔力は今も健在なようだ。
空中をふわふわと浮かぶ湯飲みは狙い違わず蟻ん娘達の手元に飛んで行く。
「ありがとねー。ズズズ……熱っ!?」
「にがい、です」
「甘いのを希望であります」
「贅沢言うなボケェっ!……まったく、姉どもは三千年経っても何一つ変わらんな」
「まあまあ、何時ものこみゅにけ~しょんなのですよー」
「おかーさん達の行動は気にしたら負けだよねー?」
「ま、確かにそうか……む?」
「あ、星が崩れて来たであります!」
その時、正体不明の振動が宇宙に浮かぶ巨大円筒に伝わってきた。
……本来なら3千年ほど前、父親であるカルマの時代に起きる筈だった大崩壊である。
魔王はその存在意義を果たす為、今まで必死にやって来ていた。
だが、それも限界に来ていたのである。
今や他の管理者達すら見放した彼の世界は、この日終わりを迎えるのだ。
「遂に、と言うべきか……それともここまでよくやったと思うべきか?」
「……あたしはよくやったと思うけどなー」
「おかーさん?」
感慨深げに呟く魔王の横で、かつてと寸分違わぬ姿の女王蟻が言う。
さらにその横では母蟻と全く同じ姿の三代目クイーンアント・クイーンがそれをじっと見つめている。
「父は、母は……わらわを褒めてくれるかな?」
「生きてたら、多分ねー」
かつての英雄は既にこの世のものではなく、
その存在を偲ぶ記念碑さえも、世界の崩壊に巻き込まれて消えようとしている。
「……こんな所においででしたか、女王陛下」
「あ。スケイルであります」
「守護隊隊長スケイル=レッドスケイル参上致しました……早く月面にお戻り下さい」
「えー、やだよー?」
「姉よ。さっさと帰っておけ……部屋の外にクゥラ家のタカ坊も待機してるようだぞ?」
「細かい事だけど村雨と呼んでください」
だが、そんな事はそれを尻目に出来る者達にとっては関係の無い事なのかもしれなかった。
……既に崩壊する世界の欠片を迎撃する為の準備も整っている。
少なくとも、こちらで生まれた若い世代にとっては故郷の世界の崩壊と言ってもピンとこないのだろう。
「はいはい……全く。故郷が今にも崩壊するというのに何なのだこのグダグダ感は?」
「ま、それもまた、あたし等らしさでありますよね……!?ごほごほっ!」
「アリサ!?」
「だ、大丈夫でありますか!?」
ただ、現実に生きているものの不調はすぐにピンと来たようだが……。
「あはははは、ちょっと咳き込んだであります」
「おかーさん、寿命はとうに過ぎてるし気をつけてよー?記憶継承も完全には済んでないんだよー?」
「……やはりか。タカ殿、陛下をお連れしろ!」
「了解。後自分の事は村雨と……」
その時だ。
天井に黒い穴が開き、その中から幼女が一人落ちてきたのは。
ぼたっと音を立て地面にめり込んだそれは、暫く足をじたばたさせた後ようやく穴から抜け出し、
無駄にびしっとポーズを決めた。
「……すたっ。三千年前からアルカナ参上!世界崩壊を見物しに来たお!」
「ぼたっ、という、おとが、したです」
「よりによって隔離都市物語を読んでないと誰だかさえわからない娘が来たのですよ!?」
「この忙しい最中に末妹だと!?おやつやるから帰れ馬鹿妹!……あ、これはクレアへの土産な」
その名はアルカナ。
カルマの四番目の子であり勇者マナの後継者と目される問題児な末っ子である。
二千九百年程前に寿命が尽きて死んでいるが、
今回はお子様時代の彼女が世界崩壊見物の為にやってきたのであった。
なお、必然性は全く無い。
「だお!とりあえず数時間したらおねーやんが魔法で引き上げてくれるからその時帰るお!」
「さすが、くーちゃん、です」
「召喚、送還術をそこまで使いこなすとは驚きであります。と知りつつも言ってみるテストであります」
「あーっ!あーちゃん!あーちゃんだよー!?って待って、まだ挨拶もしてないよー!?」
「陛下、もう肺が持ちません!」
「細かい事ですが危険なんで勝手にお連れします!」
そしてそんな異常事態を気にもかけずにご老体の蟻ん娘を容赦なく運んで行く側近集団。
……慣れているのか?
「折角来るから会いに来たのにー……待って!あーちゃんとはこれが今生の別れなんだよー!?」
「二千九百年前に今生の別れは済ませてるはずなのですよー?何言ってるのですよー?」
「「いそげっ!集中治療室、準備して待っていろ!」」
「にゃーーーーーっ!?」
「まって、です」
「あーあ、こうなるのは分かってたくせに、であります」
こうしてアリサはその場から運び出されていったのである。
最後に残った旧世代ロードの生き残り達は暢気に手を振っているが。
「ふう、全く騒がしい連中だ……」
「だお?ところで世界は何処なのら?」
「……言いにくいけど……とっくに壊れて無くなったのですよー」
ハニークインの台詞に口元をひくつかせながら魔王様が振り向くと、
確かに眼下に見えていた世界が一つボロボロと崩れ去った後だった。
物理法則自体がおかしくなっていたせいか、
世界、というか惑星自体が特に周囲に影響を与える事も無く消え去っていく。
「何だと?」
「魔王様達がドタバタしてるうちに……こう、ボロボロっと……なのですよー」
「……来た意味無いお……こうなったらハー姉やん!ご飯奢るお!おなか空いたお!だおだおだおっ!」
……かっちーん。
魔王様の脳裏で何かがブチリと切れた音がしたが、それに誰も気付かなかったのは幸か不幸か。
「ふ、ふふ……よかろう……存分に食らわせてやろうではないか馬鹿妹!」
「やっほいだお♪……ハー姉やん?なんでおじーやんの斧を構えるんだお?……だおぉぉぉっ!?」
「あちゃー。これはもうスプラッタでありますよ……」
「ま、すうふんでふっかつする、です。しんぱいむよう、です」
……こうして宇宙の片隅に斧で脳天をかち割られた幼女の叫びが轟く中、
一つの世界が何となーくgdgdの内に終わりを迎えたのである。
残った人々がどうなったかは知るよしも無いし、知る必要も無い。
ただ、彼らの終わりに相応しい終幕だった、とだけ言わせて貰う事にしよう。
幻想立志転生伝
エピローグ
完了
……。
さて、ここからは本編終了後のその後についてお話しよう。
<リンカーネイトの竜王 カルマ>
王国の、と言うよりそこに暮らす自分を慕う者達のために生涯働き続ける。
特訓に次ぐ特訓により最強の力を得るも、それを生かす機会には遂に恵まれなかった。
世界の管理者を配下に置いた後は故郷や別時空から様々な技術や物品を持ち込んでいる。
……ネットがやりたいと言うのがその主な理由だったが、
そのせいでこの世界は二十年程の間に現代に近い文明レベルを持つに至ってしまった。
享年60歳で死因は竜の心臓の枯渇による事実上の心臓停止。
どうやら自分の為に"我が子"を殺そうとは思わなかったらしい。
子供は人間型4人+αとドラゴン百数十頭。
結果的に全ての管理者を復活させると共にこの世を去った。
善人か悪人か、歴史化の中でもその評価が一定しない人物であり、
ドラマなどでの人物像も時代によりかなりのぶれが生じている。
ただ家族を何より大事にしていた事だけは疑う余地が無い。だって当の娘がそう言っているし……。
<誰よりも愛された狂妃 ルン>
常に夫を立て夫を愛し、そして狂的に夫に執着していた彼女は夫の死の翌日に死んだ。
カルマの厳命により自害こそ禁じられていたが、自然死だったので誰も何も言えなかったと言う。
10台半ば頃より狂気に取り付かれていたと言われるが、配下や家族からの評価は高く、
生涯彼女を追い落とそうとする者は遂に現れなかった。
なお、彼女の最大の功績は急造りの国家に尊い血筋と譜代の臣、
と言う成り上がり者には決して持ち得ない要素を持ち込んだ事。
後年の美化が最も激しい人物でもあり、後に伝説の賢婦人とも呼ばれた。
<傭兵王妃 アルシェ>
カルマの幼馴染であり、故郷の数少ない生き残り。
生んだ息子は文字通り最強の中の最強。
息子が王国を継いだ後は第一線を退き、カルマやルンの墓を守っていたと言う。
夫から貰った赤い外套を何より大事にしていて死の間際に息子に相続させたが、
息子は必要無かったせいかそれをさっさと部下への恩賞にしてしまったという。
なお、後世の歴史学者は彼女と傭兵王に血縁が無かった事を突き止めると大変驚いたらしい。
<王妃と言うより総帥の妻 ハピ>
交渉の場では引く事の無い粘り強いものを見せる彼女だが、その本質は控えめであった。
内心喜んではいたが、王妃に列せられる事が決まった時もかなり困惑していたらしい。
老境に至る時まで財務を預かり続けた。
サンドールの王家に連なる身だが、墓は極めて質素なものだったと言う。
後に見つかった彼女の墓には遺体の代わりに裏帳簿と愛用の算盤が収められていた。
自身の亡骸の行方は不明だが、リンカーネイト王家の墓にある公算が高いという。
<色んな意味で黒い黒幕 アリサ>
人のフリをして長い時を生き抜き、遂にその正体を隠し通した"伝説の黒幕"。
普通の人々が彼女の正体を知る頃には"だからどうした?"と言う雰囲気が出来上がっていたという。
決して表には出ず、控えめに。ただし実利は根こそぎ持って行く。を信条としていた。
趣味はB級グルメの食べ歩き。
何気に人類を絶滅から救っている偉大な虫けらである。
<はたらくあたしら アリシア>
クイーンアント族の労働力を統括する働き蟻のロード。沢山居るが一人扱い。
カルマが成功できた最大の要因は彼女達を味方につけた事なのは言うまでも無い。
やっぱり食欲魔人である事は間違いない。
<戦うあたしら アリス>
クイーンアント族の戦力を統括する兵隊蟻のロード。沢山居るが一人扱い。
後にその一匹が内務卿ルイスの嫁さんになった。
食う事に命を賭けたのは他の同族と一緒である。
<まおー様ここにあり ハイム>
伝説の"魔王"であり神聖教団の"女神"として世界の中心となる。
幾度と無く死と転生を繰り返していたが竜王の子として生まれたのを最後に殺される事は無くなった。
だが家族で唯一"寿命"から解き放たれた存在であったため世界崩壊までそれを見つめ続ける事となる。
家族の死後も世界の管理を続けていたが、限界を察知してアリサと協力し世界からの脱出計画を立案。
世界崩壊の数百年後に完全な異世界へ人々を脱出させた後、自らは故郷の跡地で機能停止を選択する。
必殺技は下の妹を超音速で敵陣目掛けて投げ飛ばす"超音速アルカナ"。
<物腰柔らかなれど覇王なり グスタフ>
父亡き後のリンカーネイトを治める。だが、甘すぎる政策は人々を堕落させ、増長させた。
後に厳格な反動政治に走るがそれはただいたずらに敵を増やすだけの結果に終わる。
老境に至ったある日、配下の反乱が現実味を帯びてくると、
信頼できる部隊を妹達の国に引渡し、わざと隙を作って反乱を起こさせる。
そしてそれを一人で壊滅させ、連合王国の解散を宣言すると悠々と歩いて国を出て行った。
その後、妻の故郷であるトレイディアで余生を過ごす。
なお彼の治世は法こそ厳しかったが彼は己にも厳しく統治自体は公平感のあるものだったという。
だが、人の心の機微が読めず、それが問題の根となった。
……名君か暗君か。後世の歴史家の間でも評価が分かれている。
ただ一つだけ。彼が去った後のリンカーネイトはただ滅びへの道をひた走ったのは事実である。
必殺技は末妹の脚を握り締め、光よりも早く敵に叩き付ける奥義"超光速アルカナ"であるが、
故郷で使う事は無く、それを使った世界はほぼ例外なく破滅していると言う。
<太陽の女王 クレア=パトラ>
民の熱狂的な支持の元サンドール女王に就任する。
人々を引き付ける異常なまでのカリスマを持って居たという。
だが一番有名なエピソードは従姉妹や妹との恋の鞘当……。
召喚術のエキスパートであり、
後世の召喚士のためにと被召喚物との関わり方やマナーを書いた書物を残している。
召喚契約制度の確立や、被召喚物の権利と義務などの法整備を行ったのも評価が高い。
サンドール第二期王政の礎を築いた偉大な女性である。
危険を察すると妹に盾となってもらう"アルカナバリア"を展開した。
<魔法王国の復活 アルカナ>
クレア=パトラに遅れる事10年、旧マナリア地方を継ぐべき彼女が生まれる。
ルンの第二子でありマナリア王家の血を最も強く引く事になった彼女は、
生まれながらにルーンハイム王国と名を変えた新生魔法王国の初代国王となる義務を負っていた。
性格は極めて暢気で歌うのが得意だったという。
趣味はまおー弄り。
反撃でよく殺されかけていたが寿命以外では死なない特異体質なので問題は無かったらしい。
<宰相王 ホルス>
カルマの事実上最初の家臣であり、実はサンドール王家の血を引いていた傑物。
奴隷剣闘士として名を馳せていたが、カルマの下に付いてからはむしろ後方での働きが目立つ。
物語開始時点でハピ以下4名の子供の父親でもあった。
奴隷から解放され王国を取り返すも自らが王となる気は無く、生涯王家の一家臣として生を全うした。
誰にでも礼儀正しい人格者、と伝えられる。
死後、祖国サンドールでは第二期王政の初代国王とされた。
<獅子将軍 レオ>
父ライオネルがカルマと事実上の義兄弟であった縁でレキ大公国建国時より仕える事となる。
と言う事になっているが、実は聖俗戦争当時からの生え抜きの部下である。
マナリアの名門リオンズフレアの出身で、後にリンカーネイトに分家を立ててその当主となる。
自身に指揮官としての才は無いと公言するも、率いた守護隊は後に不敗の最強部隊と謳われた。
色狂いであり20人の子が居たと伝えられる。特に長男が優秀であったらしい。
後にその長男はルーンハイム王国(旧マナリア)のリオンズフレア本家を継ぐ事となる。
<伝説の内務卿 ルイス>
元はマナリアの魔法学院院長だったが、何時の頃からかリンカーネイトに仕えるようになる。
内政面で多大な功績を残し、王からも一目置かれていた。
……でも筋金入りのロリコン。
後に功績が認められて王の妹を娶り、王家の一員となる。
<竜騎士 オド>
マナリア時代からのルーンハイム家家臣。当初は気取り屋な部分だけが目立つ男だったが、
レキ陥落時の失態より己を律する事を覚えて一皮剥けた。
聖印魔道竜騎士団を率いて戦い続け、晩年は全軍の指揮を任される事もあったという。
<老騎士 ジーヤ>
ルンが生まれるより前からルーンハイム家に仕えていた宿将でルーンハイム公自慢の魔道騎兵指揮官。
何時の頃からか自身の限界を感じ、別部隊を指揮する事になったオドの代わりの指揮官を育てた後引退。
それから程なくして死亡した。死因は老衰だが疲労により多少寿命が縮まって居た可能性があると言う。
<メイドコンビ モカ&ココア>
ルンと共にレキにやって来たメイドさん。生涯をルンの傍で生き、メイド長として生涯現役を貫いた。
両者共にレキ時代に結婚していて、後に子供達は各家の当主に一人づつ仕えるようになった。
<傭兵王 ビリー>
伝説に名高き五大勇者最後の生き残り。かつては不死身のビリーと呼ばれた。
実は人形のような存在なのだが本体であるタクトが生涯表に出ることが無かった為、
その事実が世に知られる事は無かった。
傭兵達の権利向上という命題は、傭兵達が各国に正式に仕える事になって行く事によって解決した。
かくして成すべき事をやり遂げた彼は、その後趣味で射的の店を開いたらしい。
孫であるグスタフが自慢で自慢で仕方なかったと言われている。
なお、彼の墓の隅からは正体不明の男女が惨殺死体で発掘されている。誰のものかは不明。
<狂信者トリオ ゲン リーシュ&ギー>
神聖教団教皇と枢機卿の子であるリーシュとギー、そして世話役のゲン司教の三人組。
サンドール占領下の大聖堂地下で隠れ暮らしていたが、限界が来た所でハイムに救われる。
その後は彼女の忠実な僕となり、神聖教団の復権を成し遂げた。
後に敵対していた商都の"竜の信徒"を取り込み教団名を"聖竜教団"と改める。
これは、信仰対象がいつの間にかある種同じものと言える様になった為であり、
勢力を失った竜の信徒の起死回生の巻き返し策でもあった。
その後は信仰対象が直接加護を与えてくれる稀有な教団として世界中に広まって行ったと言う。
<二代目結界山脈の火竜 ファイツー>
カルマが取り込んでいた竜の心臓から生まれた最初の竜であり、火竜ファイブレスの生まれ変わり。
幼竜の頃はルンが世話をしていたため彼女には一生頭が上がらなかった。
後に先代の敗北を高い能力に胡坐をかいていたためと判断し、己を鍛え上げるようになる。
結果先代の持ち得なかった飛行能力などを得て、先代以上の強力な竜に成長する。
竜王カルマをして"お前、その姿はもう竜の神じゃないか?"とまで言わしめた。
先述の聖竜教団の生けるご神体の一つ。
二度目の世界崩壊(2900年の時のもの)を食い止めた後、一族のあまりの被害に愕然とする。
もうこれ以上延命は不可能と判断した彼は仕事は終わったと宣言し、
同胞の生き残りを連れ異世界へと消えていった。
<四天王筆頭 アイブレス>
復活後、暫くはリンカーネイト王家のペットのような立場だったが、自我を取り戻すと同時に
管理者としての責務を果たすべく魔王の側近、魔王軍四天王筆頭として働き始める。
暑い夏は大嫌いだったようだが、周囲からは頼りにされていた。
2900年時の崩壊を食い止める為に力を使い果たし死亡。再び卵に戻る。
<風の竜 ウィンブレス>
建国時には数少ない"死んだ事の無い竜"の一頭で後に風のエンシェントと称される。
古参の管理者として長らく世を見守っていたが、寿命の無い筈の竜にも拘らず2000年ごろ突然死亡した。
死した後の心臓を調べると修復しようの無いほど破損していて、彼の過酷な半生を感じさせたという。
砕けた心臓はその後魔王ハインフォーティンが装身具として肌身離さず持ち歩く事になった。
<要塞竜 グランシェイク>
歩くだけで地震の起きる大地の竜にして背中に城を乗せた巨大な陸亀。
何時の頃からか全く動く事が無くなっていて、最後にはすっかり風景の一部と化していた。
世界最後の日に100年ぶりで起き出し、一声悲しそうに泣いた後世界と運命を共にしている。
彼自身が逃げる事を良しとしなかった為だが、同時に彼を逃がす術もまた無かったと言う。
リンカーネイト成立前から生きるエンシェント、その最後の一頭であった。
<正宗の異名を持つ ライブレス>
かつて竜の信徒に正宗様と呼ばれていたナーガタイプの竜。
古竜であるエンシェントクラスだがその知能は失われていて、生涯戻る事は無かったと言う。
2900年の崩壊時、アイブレスを庇うように力を使い果たし消滅。
彼女の場合心臓=卵すら残らなかった。
<リザードの族長 スケイル>
カルマの武術の師でもあるリザードロード。カルマが冒険者になった時点ではギルドに飼われていた。
後に新生した魔王軍にも参加したが、実は五大勇者が活躍していた当時からの魔王軍古参兵でもある。
その後老境に至って後進に道を譲り、緑鱗族だけではなくリザードマン全ての繁栄に力を尽くした。
リンカーネイト王国成立後は巨大塩田エンカナトリウムの領主もしている。
<鎧の巨人 オーガ>
この地では数少ない巨人族オーガの一員。彼等以上の力を持つ巨人族もいくつか存在したが、
魔王軍として戦ううち、人の手によって絶滅させられ、彼自身半ば見世物のような状態に陥った。
聖俗戦争の混乱の中、蟻ん娘の手引きでレキに逃れた彼は魔王の復活と共にその配下になる。
実はかつての魔王軍にも参加していて当時の事を知っていた。
それ故四天王に選ばれた事を誇りに思うと共に先人と比べた己の力不足を嘆いていたとも伝えられる。
もっとも、彼自身は喋れないので本当かどうかは定かではないが……。
<食料で資材で燃料で兵力 ガサガサ>
増え続けるうちに神聖な植物だと言われるようになり"レントの聖樹"の異名を賜る。
だが本人達はマイペースに今日も元気に繁茂している。
<最強ニワトリここにあり ハイラル&コホリン>
馬並みの巨体に脚力と毒、更に飛行能力を備え美味い卵をも提供するコケトリス一族の始祖。
彼らも繁栄を続け、この世界でもっともポピュラーな移動手段になる。
お陰でこの世界には自家用車が殆ど普及せず、
車両=戦闘用と言うイメージを持たれる様になってしまった。
なお……高速飛行時に異臭をばら撒くので道路交通法で通勤時間帯の飛行は禁じられている。
<やっと出番なのですよ ハニークイン>
かつて魔王に愛飲されていた"魔王の蜂蜜酒"を作れる唯一の種族の女王蜂。
でも、スズメバチの因子を取り込んだ蟻ん娘達には敵わず肩身が狭かったりする。
蜂の怪物だというと人間から忌避されるので姿形から判断し、妖精と名乗るようになった。
魔王軍の軍師を自称していたが、本当の軍師になるのには100年以上の時間が掛かっていたりする。
<シバレリア大公 スー>
勇者マナの義理の娘。つまりルンの義理の妹である。血の繋がりは無い。
……筈なのに容姿はそっくりだった。どこかで血が繋がっているらしい。
粘り強いの交渉の末ようやくカルマを諦めモーコ大公テムの元に嫁いだが、
その数年後、ハイムと異世界の魔王との間で戦端が開かれた際に戦死する。
ルンも大層悲しみ、残された一人娘はハイムが責任を持って育て上げたと言う。
<モーコ大公 テム=ズィン>
北方騎馬民族モーコの族長。ハイムはシバレリアの二代目皇帝を兼務する事になるのだが、
その際にモーコ大公として正式に配下に加わった。
巨大な後宮を持ち、レオ以上の子宝に恵まれていたという。
モーコ族自体はその後も先祖伝来の遊牧を続け衰退する事も無くあり続け、
2900年の崩壊の際に一族全員がハイムに従って空の新天地へと旅立っていった。
<商都の王 村正>
本名コジュー=ロウ=カタ=クウラ。商都トレイディアの大公の息子として生まれるも、
放蕩癖があり冒険者として生活していた。その際にカルマと出会う。
父の死や複数回の戦争と言う苦難の果てに領土を増やし、トレイディア大公国を王国とする事に成功、
商都中興の祖として国民や軍部から多大な支持を得るに至る。
マナリアのティア姫との結婚後は放蕩癖も収まり、政務に専心した。
不意打ちとは言え一度はカルマを討ち取った男でもある。
<伝説の凡愚 ボン=クゥラ男爵>
村正の叔父でありカルマの故郷カソの領主だった男。
名の通りボンクラであり、自身の治める土地を次々と滅ぼしている。
最終的には隣の大陸に得た領地を任されるもそこでも失敗、
海外植民地を失った責任を取らされる形で男爵位を追われる。
その後は経営していたカレー屋に専念し、経営の才能は(部下の邪魔にならない程度には)あったのか、
世界中に支店を持つ巨大外食産業を作り上げる事になる。
なお実は当てる気が無い限り百発百中と言うある意味神がかった弓の腕を誇っていた。
<最後のマナリア王 ティア>
様々な不運が重なり何年もの間氷漬けにされていたマナリアの姫君。
弟との和解後、攻め込んできた北の皇帝との戦いで皆を逃がすため殿となる。
……のだが運命の悪戯で逆に自分だけ生き延びてしまった。
期せずして最後のマナリア王となった彼女は、村正と結婚すると同時に王位を退き、
ここに古き魔法王国マナリアの滅亡が確定したのである。
無事長女を出産したものの、体に負担がかかり過ぎたらしく数年後に亡くなっている。
<初代獅子の男 ライオネル>
トレイディアの冒険者だが、かつてはマナリアで功を上げた一代の英雄であった。
だが魔法が使えないと言う理由で排斥され、遂には北の皇帝の配下としてマナリアを滅ぼす一因となる。
戦後、その際に生死不明になった実の娘の事に責任を感じて姿を消した。
後の歴史に全く姿を現さないので自殺したと思われがちだが、
伝えられる人柄からするとそれはありえないと論争が良く巻き起こる人物でもある。
<隻眼の公女 レン>
かつてルンを虐めていた彼女は帝国の猛攻をさり気なく生き延びた。
仲間を殺害された蟻ん娘に復讐の為片目を抉られた際、
代わりに埋め込まれた複眼の目玉に意識を半ば乗っ取られていて、
それからは商都へのスパイのような働きをしている。
周囲の者の手記などから判断するにさり気なく商都を裏から支える縁の下の力持ち的存在だったらしい。
<考えてみれば最良に近い身の振り方 ガルガン>
冒険者から酒場の親父に転進したガルガンさんだが、ノウハウがないせいか店をつぶしてしまう。
後にカルマの出資でかつて忘れられた灯台のあった場所に作られた街に新店舗をオープンさせる。
晩年商都にあった首吊り亭跡地を買い取り、聖俗戦争の戦没者慰霊碑を建てたらしい。
なお、後年彼の名は忘れ去られている。
<彼もまた生き恥を晒す男 ブルジョアスキーの副官>
本名セーヒン=バリゾーゴン。主君を失い、流れに流れてボンクラの下に付いていた男。
何だかんだで面倒見が良かったらしく、ボンクラとカレー屋を生涯支える事になった。
なお、ボンクラの下に付いた理由は上手く操縦して迫害されつつあった神聖教団信徒を守るため。
教団の復権後は、何だかんだで世話になったボンクラを見捨てられなかった為である。
……はっきり言って、ボンクラが生き延びたのは半ばこの男のお陰。それは。万人が認める所である。
<サンドール最後の宰相 イムセティ>
ホルスの四人居る子供の二人目でレキ大公国以来の家臣。ハピの弟の為外戚にも当たる。
アヌヴィス将軍と弟達と共に王不在のサンドールを守るが、
ハイムと共に異世界の魔王と戦い、戦死する。
その後サンドールの総督に就任し、姪が成人するまでの間のサンドールを任される。
その後は宰相として歴代のハラオ王に仕え、その滅亡まで宰相であり続けた。
……なお、この文面には矛盾があるようで、無い。
<寡黙なる闘将 アヌヴィス>
犬の仮面を被ったサンドールの将軍。リンカーネイト建国と時を同じくして配下に加わる。
物静かで殆ど喋らないが、代わりに任務に誠実な男であったという。
クレア=パトラ女王即位の辺りに現役を引退、その後は悠々自適な生涯を送ったと言う。
<砂漠の守護神 スピンクス>
後に量産されたがコストパフォーマンスが悪く、最後には象徴としての一機を除いて解体された。
そもそもキャラクタですらない。
以上。……長きに渡るご愛顧、まことに有難う御座いました!