幻想立志転生伝
74
***最終決戦第五章 世界崩壊の序曲***
~そして混乱へ~
≪side カルマ≫
「……先生!」
「どうやら、全て終わったようですな」
「ルン……そっちはどうだ?」
クロスとの決着が付いてから少しして、今俺は合流してきたルンたちを出迎えている。
「……敵の影は、もう無い」
「左様。モーコの生き残りも馬を捨てて逃げ去り……対岸まで三割辿り着ければ良い方かと」
そうか。
……残された馬達はそのまま近くで放牧するとしよう。
黒翼大公国(旧傭兵国家)の荒地でも、干草や野菜を用意すれば飼える筈だ。
後々馬達の糞尿で土地が肥えればそれも必要なくなるだろうが、
国民を兵として切り売りするしか無いあの付近も、
いずれは立派な酪農地帯として機能することだろう。
……サンドールの方は地下水を引いて肥料を与え、いずれは穀倉地帯にしたいと思っている。
これで公平感も出るだろうさ。やはり与えるなら魚より釣竿だ。
しかし。ま、あれだな。
俺は戦争してるよりこうやって内政してる方が好きなのかも知れん。
戦いは得意だと思うし、策は練り慣れた気もするが、どうにもあらが出てくるのがな……。
まあいい。戦いは終わった。
指揮官、と言うか国家の中枢を失ったシバレリアに最早侵攻能力はあるまい。
未だちらつく"熱い雪"の対処もあるし、近いうちに帝国本国へ逆侵攻せねばならないだろうがな。
……問題は、あれか。
「あー、ところでルン……大変言い辛い事があるんだが」
「……問題ない」
え?
何その力強い断言は。
「……先生が完全にヒトで無くなっても、私の気持ちは変わらない」
「左様ですな。お嬢様……いえ妃殿下のお心を疑われる必要は無いですぞ」
あ、そっちか。
半竜化してた時の戦闘は遠くからでもある程度見えただろうからな……。
それはそれで嬉しいが、問題はそこじゃない。
……チラリと脇を見る。
横に建てられた天幕の中には今もマナさんの亡骸に縋りつくスーが居るのだ。
ルンにはどう言えばいいのか……俺はまだ決めかねていた。
「先生?」
「あ、ああ……実はな……マナさんの事なんだが」
「知ってる。使徒兵にされてたって」
「……うん、まあそうなんだけどな……」
あー、その後幼児化して蘇った挙句、よりによって青山さんに討たれた。
なんてどう説明すればいいんだよ……。
「……お母様は……完全に……?」
「……そうだ。こういう言い方はどうかと思うが……もう動く事は無い」
説明するまでも無いか。
俺の態度からしても状況としても当然だ。
……ただ、二回も死ぬ羽目になったとは相変わらず言い辛いな。
ルンは気丈に振舞っているが、それでも小さく唇を噛んだ。
やはり辛いのだ、娘としては。
俺は旦那としてコイツに何をしてやればいいんだろう。
「青山殿……ですかな?」
「……ぐっ!?」
考え事をしていたら、ジーヤさんが呟いた名に思わず反応してしまった。
……どうして判る?まさか蟻ん娘が話したのか!?
思わず天を仰ぐが、事実はその斜め上を行った。
いや、ある意味予想通りともいえるがな?
「……彼は私どもの代表として奥様の元に参りましたので……やはりこうなりましたか、残念です」
「ジーヤさん?どういう意味だ。やはり……最初からそのつもりだったのか!?」
「左様です。奥様が我が国に対し本格的に害を及ぼすようなら……討つと」
「……爺!?」
ジーヤさんの顔に表情は無い。
だが、唇は青ざめていた。
だが……恐ろしい事に、背後の兵達も……そして俺自身も言葉ほどには驚いていない。
さっきも言ったが、ある意味予想通りと言ってもいい告白だったからだ。
何年にも渡って蓄積された鬱憤は傍から見ただけでもそれを納得させるだけの物を持っていた。
思いつめたとしても何らおかしくは無いだろうさ。
そも、あの状態での出奔で真意を察する事の出来ないほど俺も馬鹿ではない。
ただ……何故あのタイミングだったのか。
何せ相手は子供に戻った。やり直しも不可能では無いように思えるからだ。
「奥様が亡くなられたと聞いた時……内心、もう歯がゆい思いはせずに済むと感じました」
「……そう」
「その言い方は酷いのだナ!馬鹿母さんに謝るのだナ!?」
ただ、それはあくまでマナリアでのマナさんを知るものの考えである。
当然、そんな臣下の覚悟が伝わらない者も出てくる。
立場も違うしマナリアでのご乱行も知らない人物なら尚の事。
……そう、それはスー。
マナさんが祖国を出てから引き取った養子であるスーはその言葉に怒りを隠しきれず、
篭っていた天幕から飛び出て来たのだ。
「不忠ダ!主の不幸を喜ぶなんて酷すぎるゾ!?馬鹿母さんは悪い人じゃないとスーは言うのダ!」
「貴方は……はい。奥様は悪人ではありません。性根としてはむしろ善人であらせられます」
「ならなんでダ!?なんで馬鹿母さんは部下に殺されるのダ!?馬鹿母さんが何かしたのカ!?」
「……左様ですな。強いて言うならば、公爵家が傾いた責任の半分はあの方にあるから、かと」
……スーは泣き出しそうになって言った。
「だからって、命まで奪う事は無いと思うのだゾ!?馬鹿母さんは馬鹿だけど優しい人だったゾ!」
「……その優しさが事態を良い方向に持って言ったことがありましたかなスノー様」
スーが一瞬沈黙する。
それはジーヤさんの問いに対する明確すぎるほどの答えだった。
「え?えっと……なんか何時もとんでもない方向に話が進んでた気もする。けど、悪気は無いのダ」
「……でしょうな。悪気まであったら既に私が斬っていたでしょう」
「でも、でもだナ……」
「もう無理です!庇い立て出来ません!故国での放蕩はまだ止むを得ない所がありましたが!」
涙ながらにマナさんの弁護を必死に行うスー。
だが、それに対し突然ジーヤさんが一喝した!
「サンドールを無茶苦茶にした挙句、遂に故国を滅ぼしてしまったあの方をどう弁護せよと!?」
「ひっ!?」
「呪いで片付けるには話が大きくなりすぎました!あの方が"いる"というだけで国際問題です!」
「……そ、そんな。酷すぎるゾ」
「もしこれで匿う等と言う事になったら余りに大きな荷物……主君が許せても我等が許せません!」
「「「「……」」」」
その時、魔道騎兵全騎が一斉に剣を胸元に掲げた。
……それは儀礼に乗っ取ったものではなかったが、明らかな"肯定"の意思の現れであった。
そして今度は一斉にルンの方を向き、深く頭を垂れた。
「お嬢様、申し訳有りません……ですが、ですが……っ!」
「「「お嬢様……」」」
譜代の臣下からの言葉だ。
それにルンの事を心配して言葉なのは判りきっていた。
だからルンは勤めて気丈に言う。
……ただし、かなり遠い目で……。
「……判ってる。お母様の存在が百害あって一利無しなのは……」
「ルン!?お前までそんな事を言うのカ!?」
いや、ルンだからこそだ。
まだ生きていたのならルン自身が国の為にマナさんを害していた可能性は高い。
ただ、誰かに殺されるというのは流石に色々思う所が有る……と言うだけで、
ルン自身の覚悟はとっくに決まっているのだ。
だからルンは青山さんを責めたりはしないし、そもそも責める事など出来ない。
「スー!そこまでだ!ルンの辛さも判るだろ!?ルンはコイツ等の長なんだ……」
「……長……そうか。そうだナ……皆の幸せが優先するのだナ。なら、当然だゾ……」
だからそれを知っている俺は、思わず口を出してしまった。
そんな俺に対しスーは更に悲しそうな顔をする。
「でも、馬鹿母さんは……無垢な子供に戻ったちっちゃな馬鹿母さんに罪があるのカ?」
「……子供に、戻った?」
その言葉にルンはピクリと反応する。
そう、まだルンはその事を知らなかったのだから。
「そうだルン。馬鹿母さんは子供に戻った……スーの事も覚えてなかったけど、とても素直な子ダ」
「どういう、事!?」
「その、クロスが何かしたらしい、な」
「……見てくる」
「ああ」
本当の所は判らない。
全盛期クロスの"力ある言葉"で無理やり復活させ若返らせたのかも知れないし、
嫁召喚を使ったのかもしれない。
もしくは俺の知らない何かが有った可能性もある。
だが既に当のクロスが居ない今、それを論ずるのはナンセンスだ。
……ただ、そこに5歳時の姿で永い眠りに付いたマナさんが居る。
現実はもうそれだけで十分過ぎるほどに重い。
正直言って直視したい類の出来事では無いだろう。
それでもルンは天幕へ消えていった。
きっと……どうしても自分の目で確かめたかったのだ。
「……五歳、と言う事は……呪われる前でしょうかな?」
「さあな」
ジーヤさんが尋ねてくるが、それは判らない。
ただ、クロスの方は明らかに呪いから逃れられた様子が無かったがな。
……マナさんがどうだったのかについては、もう確かめる術は無い。
「……どちらにせよ、同じっすよ」
「レオ?」
今度は敵の掃討を終わらせたらしいレオがやって来た。
いや、ルンが居なくなるのを待っていたのかも知れない。
どうやら途中から聞き耳を立てていたらしく憮然とした顔で言い放つ。
但し、天幕の中には届かないよう、小声で。
「ルーンハイム公爵夫人マナ様は国を売った裏切り者っす。置いておけば最悪……」
「最悪、どうなるのダ?」
レオの答えは明確、かつ辛辣だった。
「ルーンハイムの姉ちゃんも同じ穴の狢だと思われるっすね。親子だし」
「左様でしょうな。そうならざるを得ない」
「そんな事、ある訳が無いのだナ……」
「あるっす」
「……なっ!?」
またスーは絶句した。
レオは普段の軽めの態度が嘘のように肉食獣の目で周囲を見据えている。
「良いっすか?ルーンハイムの姉ちゃんへの国民からの支持は高いっすが、何故だか判るっす?」
「当然ですな。尊敬に値する行動をきちんと取り続けておられます」
「そうなのカ?」
そうだな。
オドやイムセティの暴走の時もそうだが、俺なんかよりもずっと王家の自覚を持っている。
別段贅沢する訳でも無いし支持率に関してはかなりのものでは無いだろうか?
無論、幼少時からのろくでもない経験で身に着けたであろうという悲しい話でも有るがな。
因みに、多少病んでるのは今や誰も気にしていなかったりする。
「もしマナ様が暴れたとしたら良く知らない人はこう思うっす。あれが"ルーンハイム"だって」
「左様ですな。良くお分かりで……所詮人はカテゴリーで決め付け易いものですから」
「そうなれば当然ルーンハイムの姉ちゃんへの風当たりは悪くなる、最悪アニキもヤバイっす」
「……そう。奥様一人の為に国が転覆する恐れもあるのですよ……それは何としても避けねば……」
考えすぎ、という部分もあるだろう。
だが俺は……その意見を笑い飛ばす事など出来なかった。
何せ、この間のマナさん暴走でサンドールでのマナさんに対する風当たりは酷い。
幸いルンの方は止めようとしたと判断されているらしいが、もし今後同じような事があった場合、
何時ルンの評価が反転するか知れたものではないのだ。
当然だが人は一度受けた苦痛は中々忘れない。
それ以前に信用の無い人物を庇うと言うだけで信頼を損ねるものなのだし、
疑心暗鬼に陥るものが出たり、野心家に火を付ける事にもなりかねない。
……即ち、マナさんを置いておくという事は国家運営をも著しく阻害する事になる。
こっそりと匿うにしても、
身内にそれを良しとしない人物も多いし、
金だけ渡して放逐するにしても他国で問題がおきるのは目に見えていた。
第一、例え鎮圧できる目処があるとしても、無用な軋轢をわざわざ持ち込むのは下作も下作。
……結局の所選択肢はそう多く無いのだ。
そして、既に選択はなされてしまった。
マナさんはもう居ない。
……それは覆らないし、覆しても良い結果にはならないだろう。
「うわあああぁぁん!皆酷いのだナ!馬鹿母さんなんて居ない方が良いと思っているのダ!」
「……否定できません」
「言いたく無いっすが……やりすぎたっすよ、マナ様は……」
スーはとうとう泣き叫びだしてしまった。
……正直俺も泣きたい。
だが、百万もの人口を預かる身としてはマナさんが助からない事を是としなければならない。
そして、それを是とする以上……俺にも、悲しむ権利は……。
「スー……お母様に、二人で……お別れを」
「ぐすっ……そうだナ……ルンもお別れをするのダ……」
誰もが居たたまれない思いをしている中、
ルンがすっと天幕から現れ、スーを抱きかかえるように再び天幕の中に消えていく。
……自分でも泣きたいだろうに、ルンはスーをこの針の筵から逃がすのを優先したのだ。
姉妹と言うには余りに接点の薄い二人だが、それでもマナさんに対し思う所が有るのは一緒だ。
こうなってしまえば数少ない母の死を悲しんでくれる同志と言う事なのか。
それとも、あいつなりに義理の妹の事を案じたのか……それは判らない。
ただ、個人的感傷を脇に置いておけばリンカーネイトとしては最善に近い結末ではあったし、
少なくとも、もう結論は出てしまっていたと言う事は確かだ。
傍迷惑な義理の母はもう、今後は誰に迷惑をかけることも無い。
裏切りの公爵夫人はその報いを受けて倒れた。
傍から見れば当然としか言いようの無い顛末……それだけの話なのだ……。
「……お嬢様……ぐっ……」
「ジーヤさん、泣くなっす。悪気が無いのはルーンハイムの姉ちゃんならわかってるっすよ」
レオの言葉にも元気は無い。
苦々しい顔を隠そうともしないのは、こいつにも色々思う所があるためだろう。
しかし、その言い方は……。
「……悪気が無かろうが、結果が悪ければ同じです……奥様のように」
「そう……っすね……」
ティア姫がせめて道連れ、と討ち果たした時に終わっていれば良かったのにと今にして思う。
…・・・死人が生き返ってもろくな事は無いな……本当に。
「せめて遺体は公の元に連れて行こう……それぐらいは良いよな?」
「……有難う御座います、若様……いえ陛下」
「そうっすね。余り大っぴらには賛成しかねるっすが……まあそれぐらいなら」
俺に出来るのはもうこれ位しか、無い。
……ため息を深くついた時、視界が急に明るくなった。
「朝日か……」
「もう、朝なんすね……長い一日だったっすよ本当に」
「左様、ですなぁ」
サンドールの方向から昇る朝日は美しかった。
南の砂漠の地平線から顔を覗かせた太陽に照らされ周囲が眩しく輝く。
ああ、人はこんなに醜くても世界はこんなにも美しい……。
……あれ?
「なあ、太陽……南から昇ってないか?」
「……そういえば、左様ですな……」
「厳密に言うと南南西からっすね……え?」
……血の気が引いた。
おもむろに近くでゴロゴロしていた蟻ん娘を引っつかんで叫ぶ。
「ハイムを呼べえええええええええっ!」
「つかれてねてる、です」
「叩き起こせえええええええええええっ!」
「了解であります!」
そうして鼻ちょうちんをブラブラさせ、
襟首を掴まれたハイムがアリスにズルズルと音を立てて連れてこられたのは、
それから五分程した時の事であった……。
……。
眠り魔王を眼前に据えると鼻先を引っ張る。
鼻ちょうちんが割れ、指が汚れるが気にしてなどいられない。
ぎにゃああ、と妙な叫びを上げてキョロキョロと周囲を見回すハイムに俺は叫んでいた。
「ハイム!世界の大ピンチだああああああああっ!」
「なぬ!?い、今世界の寿命を……ガガーン!父、昨日だけで合計五百年も減ってるぞ!?」
ご、五百年!?
たった、一日でか!?
「何でだよ!?俺の竜化のせいか?」
「今回の竜化自体ではせいぜい一年だ。火を吹いた時に一気に数年減ってるがな……ま、誤差だ」
ヲイ、竜化するだけで世界の寿命がゴリゴリ削れてたんじゃ……。
あ、いやあんな短時間で一年減ってたんじゃ敵わんか。
やはり今後は自重……いや、今はそれどころじゃない。
「じゃあクロスのせいか!?」
「あ奴の分は全部合わせても精々200年だな」
「じゃあ誰のせいだよ!?」
「えーと。わらわの不正術式緊急停止命令で100年減ってるから……」
そうなると200年ほど用途不明なのか。
クロスのあれに匹敵するほど世界の寿命を無駄遣いするとは……どういう事だ?
「どうなってる?何が起こってるんだ!?」
「知らぬ!だが魔王城だ、魔王城で何か異変が起きておる!今もだ……何が起きて居るのだ!?」
ハイムの額には冷や汗がだらだらしている。
寝てる間にとんでもない事になって焦っているのが良く判る。
よし、こんな時こそ蟻ん娘の出番だ!
「アリサ!」
「ねてるです」
……駄目じゃん!
「じゃあアリシア!魔王城の現状報告!」
「はいです!」
「何か変な生き物がゾロゾロと魔王城をうろついてるであります!」
「あ。ほうこくのおしごと、とられた、です」
「早い者勝ちでありまーす!」
横をウロウロしていた蟻ん娘をとっ捕まえて聞いてみるが、
流石に徹夜明けで変なテンションだ。大丈夫なのか本当に。
しかし、ふむ……変な生き物だって?
「そうでありますね。数日前から妙なのがうろついてるであります」
「新型の魔法生物か?」
「ありえる、です」
「待てクイーンの分身ども。管理者権限無くして上階封印区画の施設は使えんのだぞ」
「でも、上から降りて来てるで有りますが……あ、危なくて上の階には近づけないでありますね」
『なっ!?うちの諜報網がばれたのか!?』
思わず本来の言語体系で叫んでしまったが……それは、ありえないぞ!?
一体誰がただの蟻に注目したと言うのか……。
『んにゃ。ありくいの、おばけ、いるです……がくぶる』
『小蟻達が食われまくるで有ります!だから逃がしたであります!』
ああ、そう言う事か。天敵相手には流石に分が悪いわな?
だが、だとすると謎の生物が現れた理由は謎だな。
いや、厳密に言うと例の秘密部屋で造られたのは間違い無いだろうから、
問題は誰が、どうやって施設を使ったのかだが。
「……むう。そうなると敵に管理者権限のある者が味方に付いていると?そんな奴は居らんぞ」
ハイムが首を捻っているので、
俺も推論をぶつけてみる事にした。
「クロスの奴がまだ他にも居て、そいつが自分に権限を付与したとかは?」
「無理だな。管理者権限を正規に得る方法も、外部から追加する事も出来ん」
「にいちゃの手段が最大の裏技だったでありますが、もうここいらの管理者は全部あたし等の味方」
「つまり、それは、ないです」
じゃあ一体何が……って簡単か。
要するに、直接見に行くしか無いって事だ。
「そこに何が有るのかは判らない。だが、俺達は先に進まないとならない、か」
「俺様は知ってるぜ?」
くるりと首を90度回すと、傭兵王が居た。
ああ、内情なら幹部に聞くのが一番か。
……と言うか、道理で蟻ん娘が機密部分を古代語で喋ってた訳だな。うん。
まあいい。とりあえず、疑問をぶつけてみよう。
「じゃあ教えてくれ。敵の現在のトップは誰だ?再生クロスか?復活アクセリオンか?」
「んな訳無いぜ。それに流石に同じ奴を二人も作り出したりはしねえさ、クロスの奴も」
流石に最低限の倫理は残っていたと言う事か。
だが、そうなると……。
「じゃあ、指揮官は誰だ?」
「ククク。アイツが……クロスが代役で満足できるタマだと思うか?」
代役?
代役って言うと……兄貴か?
いや待て、そうなると……。
「敵は俺達と戦ってない唯一の勇者……即ち、勇者ゴウ!?」
「その通りだ。アイツは五大勇者を復活させるつもりだったのさ。理想の具現化としてな」
なるほどねぇ。
兄貴の存在はその目くらまし程度の認識だったのかも知れんな。
何せ、戦略的に考えるとあんまり大事に扱ってなかったし。
……その結果が余りに理不尽で泣けてくるがな。
ふむ。しかし"商都の聡き兵"と呼ばれるほどの男だ。
絵本の話でも結構小細工を弄するタイプのように思うし、
ここは傭兵王から人となりを聞き出し、対戦準備をするのが上策だろう。
「ところで勇者ゴウとはどんな奴なんだ?」
「……いやいやお前……まあいいか」
傭兵王は少々困惑したような顔をしたが、それでも気を取り直して語り始めた。
「とりあえず腕は立つ戦士だぜ。頭も回るから俺達の参謀役を努める事もある策士だったな」
「ふむ、厄介だな」
「基本的にズルかろうが何だろうが勝てれば良しと言うタイプだ」
「手段は選ばない、と」
「あれで結構身内には甘いな。特に愛妻家でかなりの子煩悩だったんだぜ?ククク」
「へぇ、俺が持つ勇者ってイメージとは違うな」
何せ、俺にとっての勇者のイメージはここ数年でかなり様変わりしてしまった。
もし今某有名RPGの典型的勇者でも見たら、
"で、裏では何やってます?"とか思わず聞いてしまうかもしれない。
まあ、そういう一癖ありそうな人物像が今俺の考える勇者なのである。
「で、だ。策士の割りに結構間が抜けてて、大事な所で自爆してピンチに陥る事も多かったぜ」
「間が抜けてる!?それは良い事を聞いたが……策士としてそれはどうなんだ……?」
つまり優秀な戦士であり策士でもあると。
そしてどんな策でも躊躇しない割りに、身内には甘く、
けど、結構間抜けてて自爆するタイプ、と。
……いねぇよこんな奴!
なあ、アリシアたちもそう……。
「じーっ。です」
「じっと見るであります」
「アニキ……」
「左様ですか……まだお気づきでなかったので?」
え?何この反応。
まるで俺がそんな奴だって言いたそうじゃないか?
ヲイヲイ。俺は魔法も使えるだろうが!
……うん、それ以外はそっくりだと自分でも思うけど……。
「「リンカーネイト王、余りお気に病まれません様に」」
「うん。そうだな当代の教皇及び枢機卿……」
ちょっと鬱に入っていると、リーシュ&ギーの姉弟が腰の辺りをポンポン叩いてきた。
……なんて純朴なんだろう。
先代の枢機卿なんかは凄い銭ゲバだったのに……。
まあ、枢機卿なんて言っても僅かな期間だったし教団自体が忌避された時期だったから、
20年前に死んだらしい先々代を先代だと勘違いしてる奴も多いがな。
……まあ、それは余談だが。
「「ともかく世界を救わねばなりません」」
「そうですね。ぼくもそう思います」
「うむ!リーシュ、ギー、それにグスタフも……よく言ったぞ!」
「あたしらも、まざる、です」
「大集合であります!」
ハイムを中心にちびっ子どもが一同に集まり謎の戦隊風ポーズを決めた。
「「「「「「しゃきーん」」」」」」
するとチビどもの背後が軽くズドンと爆発。
その横の方で何時起きたのか、アリサが爆弾を持ってニマッと笑っている。
……仕込みはお前か……。
「何にせよ、魔王城まで行かねばならんな……封印区画……魔法生物の生成施設を止めるんだ」
「うむ。急いだ方が良いな、父よ」
そうだ。ふざけている暇は無いのだ。
急がないと世界の寿命が尽きる。
……現在でさえ雪が熱く太陽が南から昇るという異常気象なのだ。
これで更に限界が近づけばどうなる事か……。
要するに、魔王城を何とかせねば俺達はおろか全人類の一大事となってしまう。
俺は俺と仲間達の為にもそれを何とかせねばならないのだ。
……え?世界?
まあ、そっちは……ついでって事で。
……だが、現状は俺をその勢いのまま北に向かわせる事を良しとしないらしい。
朝日の昇った方向。即ち南からおかしな空気が流れてきたのである。
「焦げ臭い……?」
「いえ……これは違います!」
ホルス!?
血相変えて走りこんできて……どうした?
「幼い頃の記憶にあります……ピラミディオン火山が、噴火しようとしているのです!」
「……は!?火山の噴火の前触れ!?」
「ちょっと調べてみるよー……ふにゃああああああっ!?」
暫くの間触覚をピコピコとさせていたアリサが突然飛び上がる。
そして冷や汗をだらだらさせながら慌てだした。
『サンドール地下の全ロード!急いで噴火対策……何時でも地上に逃げられる場所に退避だよー!』
「おい、アリサ……そんなにやばいのか!?」
『兵隊蟻は地下の荷物を逃がせー!働き蟻は機密書類を処分後各自脱出!急げーっ!』
「……マジかよ……ホルス!避難指示だ、急げ!」
「ははっ!判りました!」
サンドールの地下表層近くにマグマ層があるのは以前から周知の通りだ。
これにより本来冷え込む筈のサンドールの夜は砂漠としては意外なほどに温かい。
だが、今回はそれが仇となる。
サンドールは活火山の火口の上にあるも同じ。何処から噴火するのか判らないのだ。
北には行かねばならない……だが……。
「一度下がるぞ!避難民の収容と仮設住宅の建設を急ぎ行え!」
「父!魔王城の魔物たちはどうする!?下手をしたら……」
確かにそうかもしれない。
だが、俺はあえてハイムの言葉を遮った。
「こんな大災害時に王が逃げ出した、と思われるような真似が出来るか!若い国なんだぞ!?」
「ぐっ!」
そうだ。ここで疑われるような真似は慎みたい。
国民がもう要らんというなら何時でも出て行くが、
無能を理由にされるのは我慢ならん。
……時間の方は、ウィンブレスに乗れるだけの人数で向かえばいい。
なに。シバレリアまでの行軍時間を災害の救援に宛てるだけだ。
それに……恐らくだが一般兵は余り当てに出来まい。
ならば大して変わらないってもんさ。
第一、今まさに死にかけている人間に世界がやばいから放っとくね?
なんて論理が通用するものか?
……と、強がりを言っておく。
実際の所として、世界を救っても俺達に居場所がなくなったんじゃ本末転倒だ。
俺にとっては世界よりも自分達が優先。
なにせ、自分達が生き延びられなくなるからついでに世界も救うってだけなのだから。
「ともかく国民を不安にさせるな!」
「"こんな事もあろうかと!"溶岩の流れに巻き込まれない地点はあたしの頭に入ってるよー」
「急いで避難させるであります!」
「おとしより、こども、にんぷさんは、ガサガサにのせる、です!」
本当は地下の開発時に、溶岩を逃がすための策を用意しておいただけなんだけどな。
まあ、元々カルーマ商会時代に関係者と蟻達を噴火から逃がすためのものだったのだが……。
その為に用意したデータは地上の避難にも容易に流用できるだろう。
最低限の食料は勝手に歩いて付いて来るだろうし……よし、いける!
「サンドールの民を救え!国翼大公国に臨時の本陣を構える……守将はアルシェ?いやルンに」
幾らなんでも昨日母親が死んだばかりで部隊に組み込むわけには行かないだろう。
ルンの氷壁(アイスウォール)は是非にも欲しいが我が侭を言ってる場合じゃ……!
「駄目。私も行く……」
「ルン!?」
その時、ルンが俺の横に現れた……腕を血で濡らして。
あー、またリストカットかと横目で見ていると、ルンは真摯な笑顔でこう言ったのだ。
ただし目からハイライトを消した状態で。
「……お母様は私と共に有る」
「えーと、その指は……」
「お守り」
「お守りならせめて遺髪に……いや、なんでもない」
……余り考えない方がよさそうだと判断して頭からさっきの光景を消し去ろうとしていると、
今度はスーもゆっくりと天幕から出て来ていた。ただし冷や汗かきつつ。
そして、スーはルンに話しかける。
「馬鹿母さんはスーが守っているゾ……行って来い」
「……ん」
この短い時間に色々話し合ったのだろうか。
何処か距離の近づいたような二人はぐっと固い握手を交わしていた。
「あと、たまにはカーを分けて欲しいゾ」
「却下」
……ちょっと握力が強すぎるような気もしないでも無いが、な。
「取りあえず、頭を切り取らなかっただけマシっすね」
「左様ですな。私どもとしては腕一本までは許容範囲内でしたが……」
「そうだな。と思ってしまう自分が悲しい」
後、レオにジーヤさん。
その言い草は自重してくれ。
……。
さて、そんなやり取りをしている間にも出発の準備は整っていく。
今や唯の荒野と化した旧大聖堂は拠点としては使えない。
よって、最寄の自軍拠点である黒翼大公国首都ブラックウイングに移動したのだ。
その後の事はそこで決定する事にして。
……そして、数日後。
俺は更なる衝撃に見舞われる事となる。
国翼大公国内で救助と援助物資の手配をしていた俺達に、更なる混乱が襲い掛かってきたのだ。
「瞬間移動(テレポート)だと?」
「そうだ。父よ、世界中で使用された痕跡があるのだ」
この間マナさんが使った帰還呪文とはまた別物の転移術が世界中で次々と使われつつあるらしい。
……どう言う事かと言うと、こういう事だ。
「世界中でも今回の異変は観測されておる。まあ当然だがな……それに合わせて噂が来た」
「アクセリオンのおじちゃんが檄を飛ばした"魔王討伐令"だねー」
「主殿。確かに時期的に世界中に話が伝わっている頃ではあるかと」
設置された仮本陣には俺、横にホルスとルンがいた。
そして目の前でハイムと蟻ん娘が騒いでいる。
……他の連中は色々忙しく動き回っているのだ。
俺達は出来るだけ早く今後の方針を決めねばならない。
よって、トレイディアからも代表を呼んで今後の動き方を決める会議を開いているのだ。
「それについてで御座るが、我がトレイディアでは事の真相を伝えているで御座る」
「で、結局……魔王城をどうにかしないとって事になってぇ。集まった勇者達は行っちゃったわぁ」
商都側からの代表は三人。
村正、レン。
そして……。
「瞬間移動術は魔法を扱うものの間では禁忌とされている。だがこの異常事態に対抗すべくその封印を解いたのだろう……もしくは大司教クロスがその術式を知っていて、世界各国にマナのような個人用の術では無い、軍隊を送り込むための大規模術を手土産代わりに伝えていたのかも知れん。先立っての戦での、奴等の本当の切り札はこれだったのだろう。誤算は、魔王討伐といいさえすれば世界中の国々が動くと勘違いした点だな。愚かしい事だ、国という化け物が正義などと言う曖昧な概念で動く訳が無かろう?もし檄文を書くなら豊かな国を侵略しよう、で良かったろうにな。まあ何にせよ……これでお前達の言う世界の寿命とやらは恐ろしいほどに削られた事になるか。最早余は戦える体ではない。お前達に全て任せるぞ」
……奇跡の生還を遂げたティア姫である。
「女王よ、折角拾った命だ。体は大事にしてたもれ」
「……はーちゃんの言うとおり」
「ああ、判っておる。だがそもそも余にはもう戦う力は無いと言った筈だ。先日の戦いの最後に自分の自爆術で吹き飛ばされ結界山脈で長らく気を失っておったのだからな。腕が上手く動かん、最早まともに印を結ぶ事も出来そうも無い故魔法を使う事も出来ぬし、歩く事も叶わぬであろう。まあ、余は飛べるからまだ良いがな。……口惜しいが祖国も祖国を次ぐべき者も最早無い。奴等が豚どもと手を結んでいる事を知っていればとも思うが何を今更だ。今後は商都で静かに娘を育てるとするさ」
そう、あのクロスとの決戦の最中、
スエズパナマ大運河(仮)をぷかぷか流されていたティア姫を見つけたハイム以下ちびっ子軍団が、
必死になって救出していたのだ。
いや、良くあの爆発の中で生きていた……と言うか話を聞いたところ、
あの自爆魔法では吹っ飛ばされるけど自分は死なないのだとか。
結局落ちた時の打ち所が悪くて生死の境を彷徨う羽目になったが、
ともかくティア姫はこうして生き延びた訳だ。
いや、その事を知った時の村正ときたら喜びの余り娘を抱き上げながら、
奇声をあげてクルクル回っていた程だ。
そう言えばクロスが"正しき者が勝利する"とか言ってたが、
今回の戦争で一番正しかったのは他ならぬ村正だったかもしれない。
そうなるとコイツが本当の勝利者と言えないことも無いか。
まあ、そちらは慶事なのでよしとする。
……当の本人は逃がそうとしたリチャードさん達の訃報を聞いて気落ちしていたがな。
「ともかく瞬間移動で大量の兵士が魔王城の周囲に集まっている訳だな?」
「主殿。恐らく彼の城の周囲は混沌としている筈です。何せ彼等の間には縁も縁も無いのですから」
「そうでありますね。各軍同士でも小競り合いになってるところもあるっぽいであります」
「うむ。付近の魔物とも凄惨な殺し合いが行われておる……父よ、何とかできぬか?」
何とかと言われても。
それにこれって何もしなくても解決フラグじゃないか?
まあ、突然現れた援軍でこちらを粉砕しようと目論んでいたクロス達の本拠地を、
その"援軍"が潰そうとしているという笑えない事態な訳だが。
「それだけではないよー」
「アリサ?」
「世界中で戦争が起き始めてるよー」
「何でだ!?」
「…………今なら、奇襲できる」
ルンの言葉に血の気が引いた。
そうだ。瞬間移動で何処でも飛べるなら敵の中枢に飛んでいけば楽に勝てる。
と言うか、うちは大丈夫か!?
「あ、リンカーネイト首都は他所に場所が知られて無いから安全だよー」
「魔王城は30年前の戦いのお陰で世界中に場所が知られてたでありますがね」
流石に場所を知らないところには来られんか。
「……サンドールは大丈夫でしょうか?大司教が援軍を呼ぶならそこしか無いような」
「きてる、です。でも、ふんかみて、にげた、です」
「……レキは?お父様のお墓は?」
「全員乾き死にしたであります。安心するでありますよルンねえちゃ」
『ほんとは、あたしらが、ぜんいん、たべちゃ……やっつけた、ですが』
……何が幸いするか判らん物だな。
しかし、最悪後方から挟み撃ちを受けていた可能性もあったわけか。
短期決戦になって幸いだった。
まあ、この状態を見る限りその場合後方を襲われるのは向こうも同じだったと思うけどな。
「ともかく、世界中で戦争が起きるわ異常気象は酷くなるわで世界がやばい訳か」
「あちこちの穀倉地帯で一瞬にして作物が枯れたりしてるよー」
「ガサガサ達は全然平気でありますが、水場が突然毒水に変わったりもしてるでありますね」
「もう、さきのみえるひとたち、ごはんのかいしめ、はじめてる、です」
……それに追い討ちをかける食料難か。
唯でさえ不足する食料は一部の持てる者が必要以上に買い漁ってるだろうし……。
本気で滅びのカウントダウンを始めてないかこの世界!?
まあ、家にはガサガサ達が居るから餓死者は出ないだろうがな……。
「因みに父。まさか傍観してれば問題が解決するとか思っておるまいな?」
「違うのか?」
「そんな訳があるか。良いか?魔王城を完全に粉砕したとて異常がなくなる訳も無い」
「……成る程な。いずれはお前に突き当たるか」
「姫様を害しようと言う輩……即ち世界全てが敵に回る事になりますか」
「そうだ。まあ、わらわが行けば良いだけだからこのまま魔王城に向かって」
「……駄目」
あ、ハイムをルンが抱きしめた。
……逃げられないように全力込めてるし。
「はーちゃん。駄目……行っちゃ、駄目!」
「ギュムーーーーーーーッ!母!死ぬっ!つぶれて死ぬ!離して、離してたもれーーーっ!?」
「おーい、ルン。白目剥いてるから離してやれってば!」
「駄目……行ったらはーちゃんが殺される……!」
「ルーンハイムさんが殺してどうなさるのですか……」
はっとしたルンがハイムを離すと、ぽてっと床にハイムが落ちた。
……襟首を掴んで膝の上に乗せておく。あ、泡吹いてるし……。
ともかく、世界中から攻め込まれたくなければ魔王城が落ちる前に事を収拾せねばならないか。
正直留まっている暇も無いと言わんばかりに村正一行は引き上げていく。
ここから先は俺達の仕事。決まったのはそこまでだったがそれで十分だ。
「ホルス……サンドールの避難状況は?」
「ご心配無く。各地方都市に全員避難させました。ご命令どおり衣食住は確保しております」
「トイレなど衛生面もな。それと何時ごろ元の生活に戻れるか等先の見通しはキチンと示しとけ」
「はっ。不安にさせない事が重要なのですよね?」
そういう事だ。
まあ、サンドールの民の方はホルスに任せとけば問題なかろう。
村正達は今から商都に帰る。
自国の舵取りだけで精一杯だろうが、こちらに頼ってこないだけでありがたい。
で、街の方だが……。
「ルン、ハイム、アリシア、アリス……お前達は俺と共にサンドールまで来い」
「……ん」
「了解であります!」
「はいです」
「……はにゃらぱぴー……む!?待て父!さっきの話を聞いておったか!?」
「ああ、だからこそ先にこっち側の懸念事項を何とかするんだ……アリサ!」
「ういうい。何の用かな兄ちゃ?」
「例の瞬間移動のスペルと印、調べ上げとけ……出来るだけ早くな」
「あー、成る程。了解だよー」
「ふむ……世界への負担が心配だが、まあ使わん手は無いかこの場合は」
そういう事だ。
それに、蟻ん娘地下通路が無意味になるのも腹が立つから、
移動次第即刻破棄してやろうとも思っているのだ。
「でもさ兄ちゃ。どうやって噴火と戦うのさー?」
「まあ、見てろって」
『では、見させて頂きましょうか。貴方の暴風の如き策とやらを!』
轟、と音がして表にウィンブレスが降り立った。
流石に風の竜だけあって空気を読む事に定評がある……のか?
まあいい。ともかく事態の収拾を付けるには北まで行かねばならないが……。
……まずは南、サンドールへ。
そう、最初に足元を固めないといけない。
「では、ぼくは先遣部隊としてさきに北へ行きますね。ハイラルの息子を一羽かります」
「おいグスタフ!?何処行くんだ?あー仕方ねぇ……おい、爺ちゃんを置いてくな!」
「ちょっと、まつです」
「行っちゃったであります……仕方ないから近くのあたし等を合流させるでありますよ……。」
はて?何か下が騒がしいような……。
まあいい。ともかく急いで向かうとするか!
***最終決戦第五章 完***
続く