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No.6980の一覧
[0] 幻想立志転生伝(転生モノ) 完結[BA-2](2010/08/09 20:41)
[1] 01[BA-2](2009/03/01 16:10)
[2] 02[BA-2](2009/05/14 18:18)
[3] 03[BA-2](2009/03/01 16:16)
[4] 04[BA-2](2009/03/01 16:32)
[5] 05 初めての冒険[BA-2](2009/03/01 16:59)
[6] 06忘れられた灯台[BA-2](2009/03/01 22:13)
[7] 07討伐依頼[BA-2](2009/03/03 12:52)
[8] 08[BA-2](2009/03/04 22:28)
[9] 09 女王蟻の女王 前編[BA-2](2009/03/07 17:31)
[10] 10 女王蟻の女王 中篇[BA-2](2009/03/11 21:12)
[11] 11 女王蟻の女王 後編[BA-2](2009/04/05 02:57)
[12] 12 突発戦闘[BA-2](2009/03/15 22:45)
[13] 13 商会発足とその経緯[BA-2](2009/06/10 11:27)
[14] 14 砂漠の国[BA-2](2009/03/26 14:37)
[15] 15 洋館の亡霊[BA-2](2009/03/27 19:47)
[16] 16 森の迷い子達 前編[BA-2](2009/03/30 00:14)
[17] 17 森の迷い子達 後編[BA-2](2009/04/01 19:57)
[18] 18 超汎用級戦略物資[BA-2](2009/04/02 20:54)
[19] 19 契約の日[BA-2](2009/04/07 23:00)
[20] 20 聖俗戦争 その1[BA-2](2009/04/07 23:28)
[21] 21 聖俗戦争 その2[BA-2](2009/04/11 17:56)
[22] 22 聖俗戦争 その3[BA-2](2009/04/13 19:40)
[23] 23 聖俗戦争 その4[BA-2](2009/04/15 23:56)
[24] 24 聖俗戦争 その5[BA-2](2009/06/10 11:36)
[25] 25[BA-2](2009/04/25 10:45)
[26] 26 閑話です。鬱話のため耐性無い方はスルーした方がいいかも[BA-2](2009/05/04 10:59)
[27] 27 魔剣スティールソード 前編[BA-2](2009/05/04 11:00)
[28] 28 魔剣スティールソード 中編[BA-2](2009/05/04 11:03)
[29] 29 魔剣スティールソード 後編[BA-2](2009/05/05 02:00)
[30] 30 魔道の王国[BA-2](2009/05/06 10:03)
[31] 31 可愛いあの娘は俺の嫁[BA-2](2009/07/27 10:53)
[32] 32 大黒柱のお仕事[BA-2](2009/05/14 18:21)
[33] 33 北方異民族討伐戦[BA-2](2009/05/20 17:43)
[34] 34 伝説の教師[BA-2](2009/05/25 13:02)
[35] 35 暴挙 前編[BA-2](2009/05/29 18:27)
[36] 36 暴挙 後編[BA-2](2009/06/10 11:39)
[37] 37 聖印公の落日 前編[BA-2](2009/06/10 11:24)
[38] 38 聖印公の落日 後編[BA-2](2009/06/11 18:06)
[39] 39 祭の終わり[BA-2](2009/06/20 17:05)
[40] 40 大混乱後始末記[BA-2](2009/06/23 18:55)
[41] 41 カルマは荒野に消える[BA-2](2009/07/03 12:08)
[42] 42 荒野の街[BA-2](2009/07/06 13:55)
[43] 43 レキ大公国の誕生[BA-2](2009/07/10 00:14)
[44] 44 群雄達[BA-2](2009/07/14 16:46)
[45] 45 平穏[BA-2](2009/07/30 20:17)
[46] 46 魔王な姫君[BA-2](2009/07/30 20:19)
[47] 47 大公出陣[BA-2](2009/07/30 21:10)
[48] 48 夢と現 注:前半鬱話注意[BA-2](2009/07/30 23:41)
[49] 49 冒険者カルマ最後の伝説 前編[BA-2](2009/08/11 20:20)
[50] 50 冒険者カルマ最後の伝説 中編[BA-2](2009/08/11 20:21)
[51] 51 冒険者カルマ最後の伝説 後編[BA-2](2009/08/11 20:43)
[52] 52 嵐の前の静けさ[BA-2](2009/08/17 23:51)
[53] 53 悪意の大迷路放浪記[BA-2](2009/08/20 18:42)
[54] 54 発酵した水と死の奉公[BA-2](2009/08/25 23:00)
[55] 55 苦い勝利[BA-2](2009/09/05 12:14)
[56] 56 論功行賞[BA-2](2009/09/09 00:15)
[57] 57 王国の始まり[BA-2](2009/09/12 18:08)
[58] 58 新体制[BA-2](2009/09/12 18:12)
[59] 59[BA-2](2009/09/19 20:58)
[60] 60[BA-2](2009/09/24 11:10)
[61] 61[BA-2](2009/09/29 21:00)
[62] 62[BA-2](2009/10/04 18:05)
[63] 63 商道に終わり無し[BA-2](2009/10/08 10:17)
[64] 64 連合軍猛攻[BA-2](2009/10/12 23:52)
[65] 65 帝国よりの使者[BA-2](2009/10/18 08:24)
[66] 66 罪と自覚[BA-2](2009/10/22 21:41)
[67] 67 常闇世界の暗闘[BA-2](2009/10/30 11:57)
[68] 68 開戦に向けて[BA-2](2009/10/29 11:18)
[69] 69 決戦開幕[BA-2](2009/11/02 23:05)
[70] 70 死神達の祭り[BA-2](2009/11/11 12:41)
[71] 71 ある皇帝の不本意な最期[BA-2](2009/11/13 23:07)
[72] 72 ある英雄の絶望 前編[BA-2](2009/11/20 14:10)
[73] 73 ある英雄の絶望 後編[BA-2](2009/12/04 10:34)
[74] 74 世界崩壊の序曲[BA-2](2009/12/13 17:52)
[75] 75 北へ[BA-2](2009/12/13 17:41)
[76] 76 魔王が娘ギルティの復活[BA-2](2009/12/16 19:00)
[77] 77 我知らぬ世界の救済[BA-2](2009/12/24 00:19)
[78] 78 家出娘を連れ戻せ![BA-2](2009/12/29 13:47)
[79] 79 背を押す者達[BA-2](2010/01/07 00:01)
[80] 80 一つの時代の終わり[BA-2](2010/01/14 23:47)
[81] 外伝 ショートケーキ狂想曲[BA-2](2010/02/14 15:06)
[82] 外伝 技術革新は一日にして成る[BA-2](2010/02/28 20:20)
[83] 外伝 遊園地に行こう[BA-2](2010/04/01 03:03)
[84] 蛇足的エピローグと彼らのその後[BA-2](2010/08/10 14:03)
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[6980] 70 死神達の祭り
Name: BA-2◆45d91e7d ID:5bab2a17 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/11/11 12:41
幻想立志転生伝

70

***最終決戦第二章 死神達の祭り***

~死を嘲笑う者と命を嘲笑う者~


≪side アリス≫

すにーきんぐ、みっしょん!

おばちゃんの安置されてる天幕に隠れて、大司教が入ってきたらすこーっぷ!

そしてボッコボコ!であります。

アレが居なくなったら後は凄く楽でありますからね。

流石に蘇生のスペルを他人に教えるとは思わないでありますから、多分蘇生の時は一人きり。

しかも、こんな大地に接したあたし等のテリトリー近くで一人っきりなんて、自殺志願も同じ!

要するに、一人になった所をさっくり殺っちゃおうって訳でありますね。


「と、言う訳でお昼も食べずにずーっと待ってるでありますが……来ないでありますね」


もうすぐ日が暮れるであります。

蘇生は日没までにやらないと駄目って制限があるのでありますが……。


あ、日が暮れた。


……結局、その日はもう一時間だけ粘ったけど大司教は来なかったであります。

おばちゃんには可哀想でありますが、

あの狂気のお馬鹿魔法使いが居なくなっただけでありがたいでありますね。

仕方無いので帰るであります。


「宰相ーっ!馬鹿母さんを助けるんだゾ!」

「はいはい、押さないで下さいね。今行きますから」


遅いでありますよ。

もうおばちゃんは手遅れであります。

それに残念ながら護衛付きでありますか。仕方ないから今日は諦めるであります。

はあ、あたし等全員で行ければ楽でありますがね。

ただ、リンカーネイト以外で一杯居るのを見られるのは余り良く無いであります。

ま、人間のふりも大変だって事でありますね。


……取りあえず帰ってご飯であります。

ルンねえちゃにハンバーグ作ってもらうのでありますよ、はふー。


……。


≪side カルマ≫

俺は今、トレイディア軍から貸与された大型天幕の中に居る。

ランプで照らし出された目の前にはアリシアとアリスが座っていて、今日の報告を行っていた。


「報告は以上か?」

「はいであります!」


そのアリスからの報告は、俺を驚愕させるのに十分過ぎた。


ひとつ、マナリア王家壊滅。

ふたつ、マナさん戦死。

みっつ、その上蘇生されない上に……。

よっつ、敵所有分の魔王の蜂蜜酒を敵はもう既に二本まで使用済み。何に使ったかは不明。

いつつ、敵の中に何故か死んだはずのブラッドが居る。

むっつ、オーク軍団南下中。


既にマナリアどころかトレイディアの国境を侵犯する勢いで突き進んでいるらしい。

しかし逆に兄貴とスーの率いる部隊はマナリア国内を縦横無尽に駆け巡っている。

国内を強制的に纏める気らしいな。ま、当然と言えば当然の流れか。


しかし、不気味だ。

30年来の仲間を見捨ててまで何に魔力を使ったんだ?

まあ、蜂蜜酒の内一本はブラッド司祭関連だろう。

生き返ったのか、それとも……まあ、それも実物を見ればわかるだろうさ。


「しかしこうなると、反魂、蘇生、嫁召喚の三つを消せないのが痛すぎるな」

「ごめんなさい、です。みつけたとき、じょうほう、のこしとくべきだった、です」

「反魂はあたし等で使用するから仕方ないでありますが、蘇生が消せなかったのが痛いであります」


そうなんだ。

実は一度、試しに蘇生を消し去ろうとしたんだけど、弾かれたと言う経緯が有る。

調べた所、俺の知っている蘇生術は要するにアレンジマジックだった、

と言う結論に落ち着いた。

別な魔法の例で言うと"火球"は消せるが俺の"爆炎"は消せないって事だ。

ただし、火球を消すと爆炎まで使用出来なくなるけどな。

威力とかが違うけど、爆炎の本質は火球の強化版でしかないのだ。

要するに"復活の呪文が違います"と言う事になる。

世界に登録されたスペルで無いと、術式の廃棄は出来ないのだ。


「ともかく、敵がこっちまで来る前に軍をここまで進めておかねばな」

「ガサガサ達はどうするでありますか?」


「そっちはまだだ。まだ動くなと伝えろ」

「はい、です」


現在位置だが、丁度結界山脈の西端から南に少し行った辺りだ。

ここから東に行けばトレイディア、西に行けばサクリフェス等の旧都市国家郡。

そして南に行けば旧大聖堂に辿り付く。


敵の狙いは明らかだ。

トレイディアの国土を二分してその力を弱め、

そして神聖教団の総本山である大聖堂を取り戻すつもりなんだろう。

あわよくばサクリフェスまで取り戻す気なのかもしれない。

多分、アクセリオンの発案ではあるまい。あの人は余り策略に長けているようには思えないしな。

……要するに、まだクロスは何だかんだで理想と過去を捨てきれて居ないって事だな。

今回はそこに勝機を見出したいと思っている。


「アルシェの部隊の展開は終わったか?」

「あしたには、なんとか。です」


この日の為に用意していた銃兵部隊だ。

相手側に銃の情報が漏れている可能性は否定しないが、

それでも大規模運用時の超火力に考えが至っている可能性は低い。

……やはり対策を考えられる前にどれだけの被害を与えられるかが勝負になるだろう。


「守護隊は?特にレオは今回父親との戦いになる可能性が……」

「気合十分であります。肉食獣系のすっごいイイ笑顔してたでありますよ?」

「はいちは、とっくに、おわってる、です」


今回の戦闘にサンドール系の部隊は連れて来れなかった。

故に、コイツ等が前衛の生命線。

まあ、硬化を使う事もあり、防御力には定評があるのだ。

はっきり言って、かなり頼りにしている。


因みに今は旧サンドール国境辺りに集まっている筈で、

無口なアヌヴィス将軍が後詰として率いてくる事になっているが、

バリスタや投石器などの大型兵器の移動に手間取っているようである。

ま、今回の戦いでは温存したものだと考えよう。

敵の後詰が来るまでに辿り着いてくれればいいさ。


他のルーンハイム系の部隊はルーンハイム城(旧大聖堂)を守らせるふりをしなければならない。

要するに魔道騎兵と魔道竜騎兵は前線に出せないのだ。

後はハイムの働き次第だな……。


「で、ハイムの部隊の準備は出来てるのか?」

「勿論であります。ゴブリン、コボルトの各隊も準備万全との事であります」

「でも、やくにたつ、ですか?」


アリシアの不安ももっともだ。

何せゴブリンやコボルトの戦闘能力は小動物並みでしかない。

端的に言うとコボルトが犬並みでゴブリンはそれにも劣る。

だが、使い道はある。

小心者の弱兵を怖いもの知らずに変える裏技がな。


「ま、連中も絶対安全圏からなら攻撃できるだろ?」

「なるほど、です。だからあのぶたい、です?」

「そうであります。敵の最前線がこっち来たら出撃させるであります」


OK。

敵の指揮官は……ブラッド司祭か。

一度は法王まで名乗って死んでいった男が何故かここに居る。

替え玉か、それとも時が経っても蘇生できるように術式を魔改造したか……。

ただ、まるで何年か時が戻ったかのような物言いが気にかかる。

……嫁召喚?

いや、しかしアイツは元々モブキャラだとアリサ達が言っていた。

いきなり呼んだ所で特別な技能があるわけでも無いし、

そもそもクロスにアイツの元ネタである本を探し出せるとも思えない。

そもそも呼んだキャラの部分の絵は消えるので、

二冊同じものが無ければモブの同一人物は呼べないだろう。


だが……じゃあ、あれは何なんだ?


「まあ、いいか……直接この目で見て確かめるか……アリス!敵の到着予定は?」

「明後日に先鋒のオーク軍団一万がやってくるであります……敵本隊六万人の到着はその半日後」

「そうぜい、7まんの、たいぐん。です」


兄貴たちに二万の兵を与えても、オークを含めた総数は七万名。

前衛部隊としては破格の数字だ。

急ピッチで軍を立て直しているがトレイディアの全軍は九千そこそこ。

しかも商都や各都市の防衛もあるので、動かせるのは精々四千から五千程度だ。

俺の直属に至っては、現在手元にレオとアルシェの五百名づつしか居ない。


つまり表向きの戦力比は5000対70000(つまり的は14倍)と言う酷い数字だ。

だが、こちらは隠し玉を多数用意している。

相手の手札は八割がた見えているんだし、そうそう負けてなるものか。


「……念のため陣地前方に油撒いとけ」

「あいあいさー、であります」


とは言え……敵の前衛部隊の更に先鋒だけでもこちらの倍。

戦争は数だよ兄貴という名言もあるし、それを埋める努力は怠ってはならないだろう。


「失礼するで、御座るよ……」

「村正!?大丈夫なのか!?」


村正が幽鬼のような顔で天幕に入ってきたのは丁度その頃だ。

明らかに目の焦点が合っていない。

……無理も無い。まだ一緒に暮らしても居ない嫁さんを殺されてしまったのだ。

狂乱しないだけマシと言うもの。


「……ティア殿は亡くなりお菊は行方知れず……拙者、幸せにはなれないので御座ろうか?」


声にも力が無い。

……と言うか、行方不明?


「あれ?お前の娘は無事だぞ?レンが抱きかかえてこっちに向かってると連絡が」

「ソースは?」


村正はボーっとしたような顔でポツリと呟く。


「え?」

「ソースは何処で御座るか!?」

「ちゅうのう?うすたー?です?」


「あ、情報ソースか?うちの優秀な諜報網からの信頼できる情報だ」

「……嘘付いたら針千本飲んでもらうで御座るよ?」


魂が半分抜けていたような状態が豹変。

村正は突然ギロリと凄まじい表情でこっちを睨む。


「心配すんな!本当だから!」

「村正、落ち着くであります!」

「本当で御座るな!?嘘付かないで御座るな!?」


ええい、顔を近づけるな!

流石に怖いわ!

……と、思っていたら突然へたり込んだ。


「……お菊は、無事なので御座るな?信じていいので御座るな?」

「ああ。明日にはこっちに」


ガタッといきなり村正が立ち上がった!?

そして天幕の外へダッシュして声を張り上げる。


「衛兵!拙者の娘を迎えに向かうで御座る!精鋭部隊で向かうで御座るよ!」


凄い剣幕だ。

だが、痛いほどその気持ちは判る。

こりゃ、見つからない事を優先するより急いで合流する方を優先させた方がいいな。

……アリシア経由でレンに伝えるか?

一度はとんでもない事になった割りに、どうしてだかあいつ等異様に仲がいいからな……。


「……道案内が要るよな。アリシア、行ってやれ」

「はいです。あたしが、いどころ、わかるです!」


その言葉を聞いた村正の顔に生気が戻る。


「かたじけない!では兵に道を教えてやって下され!」

「はいです」

「……って、村正が直接行くんじゃないのか?」


なんか、意外だ。

てっきり取るもの取りあえず突っ込んで行くと思ったんだが。


「拙者、一応王で御座れば。我が子を養う為にも国は失えぬで御座る」

「……成る程、ごもっともだ」


俺だったら気にせず突っ込んで行きそうだな。

多分、ここが生まれた時からの"上に立つもの"との違いなんだろうなと思う。


「それに、我が子の為に国を失うようではティア殿が居たら怒られそうで御座るしな……」

「……そうかも、知れないな……」


何だか村正が少し大きく見えた。

まあ、俺が真面目に国を治めている理由は、

聖俗戦争の頃あたりから俺が巻き込んでしまった皆に対する補償のような意味合いが大きい。

俺個人の望みはほぼ叶っているのだ。

次は俺の為に動いてくれた連中に甘い汁を吸わせる番ってもんだろう?

だから、俺は俺が必要とされている内は真面目に王様家業をこなそうと思っている。

それが俺の頑張る理由。

だから、必要ないと皆が言うなら何時でも出て行くし、

それ故に生まれた時から国を背負っていた人間の気持ちをまだ理解出来ないのかも知れない。


「時に、カルマ殿。言い忘れていたで御座るが弓矢の手配かたじけない」

「いや、うちの射撃は少々強烈でな。連携を取れない前衛はかえって危険だ。遠慮なく持ってけ」


実は、と言うほどでもないが今回の開戦に当たり、こちらから商都軍へ弓矢の供与を行っている。

こいつらにだって、こんな所で被害を出してもらいたくない。

野戦陣地は着々と完成に近づいているし、

出来れば中に引っ込んでいて欲しい所だ。

……因みにある程度の射線が無いと敵に突破されるから、

そうして貰えるのが一番助かるって本音もあるわけだがな……。


「陣地も順調に構築されているようで御座るな。……拙者達はここに篭ればいいので御座るか?」

「一応そうなる。ただ、突破されそうな時はさっさと撤退してくれ……囲まれたら終わりだ」


敵の進軍を遅らせる目的で構築された防御陣地は、

その存在理由ゆえ蛇のように細長い形をしている。

そして要所要所に土塁を積み上げ空掘を作り、更にレンガで壁を構築、簡易的な砦としていた。

篭る本陣も分厚いレンガ造りで弓矢程度ではびくともしないように出来ている。

だがはっきり言えば、これだけでは守りきるのは不可能だ。

相手もそう考える公算が高い。

……陣地を無視して海路等で回りこむという可能性もあったが、

今回の場合敵の数が尋常では無く船を準備しきれ無いだろうし、

外海は魔物の住処という事情もある。

逆に結界山脈の山越えをすると言う可能性もあるが、

そちらは何時でも雪崩を起こせるようにセッティングしてあるので安心だ。

ま、数に物を言わせて陣地ごと粉砕してくる可能性が一番高いがな。


「ここを抜かれれば一気に商都まで来られてしまうで御座れば、ここで死守せねばならぬで御座る」

「そうだな。こっちもルーンハイム城(旧大聖堂)まで一直線だからな……」


何か騒がしいので、ふと表を覗き込む。

……表では見張り台の建築が始まっていた。

同時に北の街道沿いに油が撒かれていく。


「カルマ君!?遅くなってごめんね!さあ、皆……配置を決めるよ!」


続いては到着したばかりの銃を担いだ射撃部隊。総勢五百名が次々と自分の配置場所へ向かう。

彼等の配置されるのは砦の壁の裏……その砦の壁には小さな銃眼を開けておいている。

弓矢でここを狙うのは至難の業。かなり安全で射撃に集中できる筈だ。


「じゃ、うめてくる、です」

「行ってくるでありますよ!」


……そして、北に地雷の敷設が始まった。

これでどれだけ足止めできるかが勝利の鍵を握るので、アリス達に指揮を取らせる。

今回の場合時間は俺達にとってプラスに働く。

敵の補給は時間が経つに従い急速に悪化していく。そういう風に細工しているのだ。


そう、色々な意味で敵陣が崩壊するまで耐える事。

これが、今回の勝利条件のひとつなのだ。

勿論それだけで勝てるとは思ってないけどな?


……。


そして、運命の朝を迎える。

頭上を南に向かって白い影が多数駆け抜けていく中、俺は天幕内で目を覚ました。


「カルマ君、北の空が赤いよ?」

「ああ、そうか……第一次攻撃は成功みたいだな……」


南の方へ向かう影を軽く目で追いながら、

まだ太陽も上りきらぬ早朝から赤く染まった北の大地を思う。

……再び白い影。

今度は北に向かって飛んでいく。


「はーちゃん、大丈夫かな?」

「ああ。アレを防げるとはとても思えんしな……」


勇者達が居れば奇跡の一つも起きるだろうが、生憎敵将は人間だ、と思う。

何だかんだで上手く立ち回っていたあのブラッドである事を考えると一抹の不安もあるが、

それでも事前情報なしで防げる類の攻撃ではないのだ。


「コケトリス爆撃隊の成果は上々、と」


ポツリと俺は呟き、そして天幕を出ると指定の陣地へと向かう。

……敵はまだ、視認出来る距離にすら辿り着いていなかった……。


……。


≪side シバレリア帝国軍、ブラッド司祭本陣の一兵士≫

……私は悪夢を見ている。

天から降り注ぐ炎、何が起きたかもわからず倒れていく戦友達。

そして。


「クヒヒヒヒヒ!いいですか?信じなさい、信じるものは救われるのですよ!ヒャハハハハ!」


地獄から這い出してきた私達の指揮官の口から吐き出される的外れな言葉の数々……。

おかしい、彼はそんな人ではなかった筈だが。

私は元々ブルジョアスキー団長の配下であり、司祭の行動の一部始終を見ていた男である。

一介の司祭が遂に法王まで名乗ると言う暴虐。

雪崩に巻き込まれ、麓で何とか救い出された私が耳にしたのは彼が死んだという噂でした。


……当時の私は彼に天罰が下ったのだと喜んだものだが、結局彼は死ななかったということか。

神よ、貴方は何故彼のような人物を生かしているのでしょう?

彼の配下になる時まで、私はそう考えていました。

けれど、違います。

彼は、彼は私の知る異端審問官の司祭殿とは違いすぎる!


「アヒャヒャヒャ!信仰!信仰!信仰!ヒーッヒッヒッヒ!」


……狂ったような行動とは裏腹に見事としか言いようの無い動きで漁夫の利を拾い続けていた。

そんな彼はもう居ません。


「ヒャッハー!前進あるのみです!死後は幸せになれますよクックックック!」


ただひたすら信仰を叫び兵を前に唯闇雲に進ませるだけ。

……これはもう指揮では有りません。

そもそも、元の司祭に信仰心など欠片も無かったような気がします。

……では、ここに居る彼は、一体誰なのでしょうか……?

いえ、彼の事です。

こんな無茶な行動もきっと意味のある事に違いが……あ、りゅ!?


……。


≪side ハイム≫


「わんわん!」

「うむ!敵本陣に一つ命中だぞ、喜んでたもれ!」


……わらわは今、雲より高い空中に居る。

ハイラル達コケトリス一族にコボルトやゴブリンを乗せ、

荷物の花火や油壺、果ては石ころまで、

とにかく何でも背負って上空まで持って行き、地上に向かって落とし続けておるのだ。

防寒着を着込んでもまだ寒いが、安全には代えられぬ。

ともかく敵が居る所に落とし続けるだけだ。


「うむ。大戦果だ……兵を損なわぬ良い作戦だな」

「はーちゃん、おごっちゃ、だめ、です」

「そうでありますよ。何が起きるか判らないのが戦場であります」


そんな事を言いながら、わらわ達は次々と手持ちの荷物を投げ落とす。

石、ひび割れ壷、油、花火……何でもありだ。

例え花瓶一つでも、山より高いこの空から落とせば凶悪な武器と化す。

そして、流石にここまでは矢すら届かないのだ。

今頃地上は大混乱であろう。


「ぴー!」

「よし、アイブレスよ。氷のブレスを吐いてたもれ!」


続いてニワトリ数匹に吊り下げられて飛んでいる氷竜アイブレスが氷のブレスを吐く。

多少降下して雲の中でな?

すると……氷の粒が雲の水分を吸収し急速に成長しながら落ちていく。


「今日の天気は曇りのち雹。所によっては氷の塊が降ってくるであります」

「あ、ゆきやまでみたひとに、あたった、です」


普通ならこんな高さから自分の戦果を確認など出来る訳も無い。

上から見ただけだと人が居るのかすら良く判らないほどなのだ。

だがそこはクイーンの分身達が何とかしてくれているのもありがたい。


「おべんとうの、から(鉄製)」

「ゴミ捨てであります!」

「お前ら……いや、ある意味これもリサイクルか?」


千近いコケトリスの群れから一斉に投げ落とされると唯のゴミでも凶悪な兵器と化す。

精神的な部分も含めて酷い攻撃ではあるがな。

だが、こういう地道な攻撃がいずれ功を奏す。のだと思ってたもれ?


「よし、もう投げるものは無いな?では一度帰還する」

「はいです!」

「次は毒をまくであります!」


さて、勇者ども。この攻撃をどうかわす?

まずはお手並み拝見と行こうか。

空からの襲撃はまだまだ続くぞ……!


……。


≪side カルマ≫


「何の策も無く突っ込んで来ている様に見えるのは俺の目の錯覚か?」

「そうで御座るな。いや、これがたぶん最善手で御座るよ」


俺達は本陣を兼ねた簡易砦の中から望遠鏡で敵の動きを見ていた。

村正が居る事もあり蟻ん娘情報網からの情報はここでは話せない。

ただ、見ただけで判る情報だけでも、

敵はまるで空中からの攻撃を無視するかのように突き進んでいるようだった。

だが、同時に村正の言うとおり最善手でもあったかもしれない。

どちらにせよ高高度への迎撃手段などありはしないのだ。

だったら、留まるよりは先に突き進んだ方がまだ被害が少なくて済むと言うものだろう。


「負けられぬで御座るな。我が子のためにも……」

「そうだな、俺も同じだ。何せ負けたらうちのハイムは間違いなく殺されるしな」


俺も村正もお互い神聖教団、いや……クロスとは因縁がありすぎる。

ようやく合流して商都に後送したお菊……いやガーベラの為にも村正は負けられない。

そして俺は主にハイムの為、そして財産を奪われない為にも負ける事など許されなかった。


……大地の果てよりオークの群れが点のように見え始めた。

士気崩壊を起こして逃げ出した連中もいるようだが、

それでも死に物狂いで突っ込んでくる輩も多いか……。


「大した数で御座る。まずはこの者どもを出来る限り被害を出さないように迎撃するのが肝要か」

「そうだな。お、そろそろ花火の時間だ」

「たーまやー、です!」


一体何の事だと言わんばかりの顔で村正が怪訝そうにこちらを見るが、

次の瞬間背後からの爆発に驚いて逆を向いた。

……この陣地からでも見えるレベルの炎が、敵の足元から吹き上がっていた。


「これは、一体何事で御座るか!?地面が爆ぜた様な気が」

「地雷って言うんだ。ま、罠の一種だな」


独立戦争以来のご無沙汰兵器。

遥か彼方より眼前近くまで、誘爆しない程度にぎっしりと敷き詰められた地雷が、

まさしく運の悪い兵士から順番に地獄に叩き込んでいく。

……気が付けば、前線に立っているのはオークではなく人間の兵隊になっていた。

ここまでで地獄の地雷原を三割まで突破されている。

この分だと減らせるのは後二万……合計三万がいいところか?

いや、それ以前に正体に気付かれたら解除されるか……。


と、思っていたのだがどうも様子がおかしい。

爆撃と地雷原でその数を減じながらも、

敵は戸惑う事も無いかのようにじりじりと前進を続けている。

やはりおかしいな。

あのブラッドなら、降参したふりしてこっそり反撃準備を整えていそうな気がする。

……やはり別人か?


「つっ!カルマ殿!敵は前進を止めぬで御座る!」

「ならばそれなりの対処をするのみ!」

「よおし!じゃ、行って来るねカルマ君?」


さっと手を上げる。

アルシェが軽くキスをして陣から飛び出し壁の後ろに移動。

続いてアリスとアリシアが東西に分かれて走り出す。

そう……準備の為だ……火力戦のな。


「良し!では、拙者は弓隊の指揮を……!」

「いや、村正は敵が地雷を突破したら前線で敵を迎撃してくれ!」


続いて手を叩く。

……咆哮と共に天より竜が舞い降りた。

長く伸びる尾は蛇の如し。

その名はライブレス。雷の吐息を吐き、天を行く。


「雷竜ライブレス……お前としては竜神正宗の方が通りがいいよな?」

「まさか!?」


「今日は特別にコイツが馬の役目を担う。竜の信徒としてはこれ以上無い名誉じゃないか?」

「お、おお、おおおおおっ!ま、正宗様、宜しいので御座るか!?」

「ギャオオオオオオオオッ!」


因みにまだ理性は戻らない。

だが、他の竜の言う事はある程度(動物的にだが)理解できるらしく、

今回村正を騎乗させ守って貰う事にしたわけだ。


……リチャードさんがやられちまった今となっては、

実は村正、俺に残された同格では唯一の友達だったりする。

だから、殺させる訳には行かない!


「では、拙者は敵が弓の射程に入ると共に天より敵を牽制するで御座る」

「ああ、それまでは弓の手入れをしといた方がいいだろうな。途中で弦が切れたら笑えもしない」


そして、しばし陣内から音が消える。

……アルシェ達の他にも何人もの指揮官が出て行った後の陣地には俺と村正のみ。

特に明かりも無いのでレンガ造りの陣内は微妙な暗がりとなっていた。

俺は無言で前を見つめる。

村正は弓の手入れを始めた。


そして、暫しの時が流れる。


……。


地雷原は既に四割まで侵食されていた。

だが、敵の波はまだ衰える気配を見せない。


ふと思い魔剣を抜いて素振りを始める。

今日の分の鍛錬をしていないのを思い出したのだ。

……周りの動きを見ていると自分の才能の無さを実感させられてばかりだ。

だからその差を埋める為にこうして地道な行動は欠かせない。

実力と才能に恵まれた連中と言うのは、それをしているのが上手く行くから楽しい。

楽しいから更にやるのが苦にならない。努力が辛くないので上達も早い。

上達が早いから褒められたり尊敬されたり。

だから更に楽しくなる。楽しいから努力が苦にならない……とループする。

苦手な事柄ならその逆だ。

……そんなただ普通にしているだけで上手く行くような連中を相手にするには、

身を削るかそもそもの前提を崩すかしなければならない。


「ふんっ!ふんっ!」

「……精が出るで御座るな」


そして今回。敵の最精鋭はそんな才覚に恵まれまくった存在の筆頭。

どんなに警戒してもし足りるなどと言う事は無いだろう。

……無心に剣を振るう。

……振るい続ける。


敵のときの声はまだ遥か先だ。


……。


「……ぅはち……きゅうひゃくきゅうじゅうきゅう……せー、ん!」

「時にカルマ殿」


「ん?どうした村正」

「……全軍の指揮、其方に委ねても宜しいで御座るか?」


いきなり何を言い出すんだか。

……気持ちは判るがそれだけは拙い。


「敵陣内に特攻するつもりか?だったら絶対首は縦に触れないな」

「しかし!奴等はティア殿を……!」


やっぱりか。

そう思って村正を見ると小刻みに震えている。

……今まで溜め込んだ怒りと鬱積が湯気のように立ち上って来かねない雰囲気だ。

やはり思うところはあるんだろう。それがこの先頭前の緊張感で爆発したか。

だがもし突撃した場合、この心境では絶対生きて帰れないだろうな……。


「……自分で言ってたろ。娘さんの為にも無理しちゃ拙い」

「カルマ殿も、拙者のような立場になったら判るで御座るよ……!」


かも知れんな。

ま、その時は敵の国土自体が無くなってそうな気もするが。

取りあえず有りえないから、それ。

美味い飯を食わせてくれるルンをアリサ達が死なせるわけが無いだろ、

どんな手段を使おうが絶対助けるに決まってる。

……常識的に考えて。


そして常識的に考えればここで何も言わないようでは友達なんて名乗れはしないと思う。


「ティア姫の遺体も見つかって無いんだ。敵に捕らわれても居ないようだし……希望はある」

「そうで、御座るな……うん。まだ無理はせんで御座る。上空から敵を狙い撃ってやるで御座る!」


ただ、大爆発を起こして自爆したと言うから生きている可能性は限りなく低そうだけどな。

……勿論、そんな事村正には言えんが。


「カタ様!敵が弓の射程付近まで近づいてきました!」


伝令が駆け込んでくる。

そうか、とうとう来たか。


「敵の兵数はいかほど残ったで御座るか?」

「はっ、少なく見積もっても四万、かと」


地雷原と空爆で予想通り三万は減らせたか。

これを多いと取るか少ないと取るか……。

いや、どっちにしろ敵の総兵力は文字通り未知数。

しかも、恐らくこの兵は森の南方部族を取りあえず南下させただけの代物らしい。

お陰で展開速度は速く、こちらに気取られる可能性も低いと踏んでいたようだ。

挙句が難民を使ったかく乱だ。

事務仕事に力を取られて諜報が少しばかり後手に回った事は否めない。

つまり、敵にはまだ十分な余力が有ると言う事だ。

故に今回の敵兵七万は確実に排除しておきたいと思う。


「カルマ殿……先ほどから爆音が止んでいるようで御座るが?」

「ああ、地雷は突破されたな」


表から爆音が消えつつある。

地雷原を突破された証拠だ。

代わりに敵のときの声が響いてきた。


「まあ、随分と数は減じたようで御座る。アレだけの被害を出して何故突き進めるのかは知らぬが」

「……理解して無いんだろうな。味方全体の損害を」


そうでなくてはおかしい。

まともな頭があるならこの状況下で突っ込んでこられる訳が……。


『……貴方は私の事を、好きになぁる、好きになぁる』


そんな時、俺の耳に届く詠唱の声。

望遠鏡を覗き込むと、髭面の修道士達が大声で詠唱を続けている。

この詠唱は……慮心(テンプテーション)か?

成る程、戦場特有の高揚感に精神操作術を重ねたか!


「こりゃ、少々の被害では引いてくれそうも無いな……」

「引けぬは拙者達とて同じ事……先に戦場に出ておるで御座る!」

「ギャオオオオオオッ!」


意外と馬が合うのか

軽く尻尾を陣に垂らすライブレスにいつもの装備にプラスして弓と矢束を背負い、

腰に縄で大盾をくくり付けて引き摺る村正が飛び乗っていく。

さあ、頼むぞ村正。

お前の活躍にこの戦いの行方がかかっている……。


……なんて事は無いが、村正が頑張ってくれれば確実に味方の被害は減るんだよな。


「なんだあれは?」

「敵将だ!」

「矢を射掛けろ!手柄を立てるんだ!」


天高く飛び上がった村正とライブレスを狙って弓が一斉に射掛けられるが、そこは竜。

見事に鱗で弾き返す。


「うおおおおおおっ!?何か凄まじい矢の嵐で御座る!?」

村正の盾はハリネズミで矢を射返すどころでは無いようだがそれでいい。

村正一人が狙われてくれればこっちの陣からは一方的に攻撃し放題だ。

ま、万一村正が死にそうになったらライブレスが勝手に後方に搬送してくれるし問題は無いだろ。


と言う訳で、商都兵に軽く一喝を入れて戦闘開始だ!


「今だッ!商都の精鋭達、お前らの主君が敵の攻撃を引き受けているうちに……敵を討てっ!」

「「「「おおっ!」」」」


「僕らもそろそろ行くよ?皆、ガンガンぶっ放してね!フェイスさん、エヴェさんもよろしく」

「今、この瞬間は……力こそ全てだ!」

「行くわよ。貴方もよデイビット……」


タクトさんの紹介でやって来た元傭兵王配下の凄腕傭兵達が次々と銃撃を開始する。

その中でも彼等は特に銃器に対する適正が高かったのでここに配置した。

かつて傭兵王の側近だった彼等がこちらに来てくれた理由は定かではない。

だが、傭兵たるもの依頼人と契約期間を裏切る事はしないらしい。

今後はうちの兵として戦ってくれるそうなのでそれを考えると尚更だろう。

元々は先祖が召喚されたという連中らしいが……何にしても、心強い事は確かだな。

因みに弓の射程内に入るまで待っていた理由は、

使わせている銃がコルトSAA(リボルバー式拳銃)のレプリカだから。

流石に拳銃じゃあそんなに射程無いんだよな。

かといって外様に最新火器渡す訳にも行かんし……まあそれはいい。


「敵が陣の眼前に来た時が勝負だ……」

「判ってるよカルマ君。この部隊にはまだ抜かれちゃいけないもんね」


ふと下を見ると、敵の先鋒が遂に陣の下に辿り着こうとしていた。

だが、五百の兵から放たれる銃弾により、次々と倒れていく。

しかし、それでも敵はひるまない。

味方の屍を乗り越え、前へ、前へ。

歩くよりもゆっくりと、だが、確実に前進してくる。

……これが、何の訓練も受けていない名ばかりの兵の力なのだろうか?

敵は普段強力な魔物の徘徊する深い森の中で暮らしていると言う。

要するに、RPGで言う最後の村の村人な訳だあいつ等は。


……敵がこちらに情報を与えないためにこっそりと行動してくれたことは幸いだった。

もし、この大軍が過酷な訓練を潜り抜けた、いっぱしの兵士だったらと思うとぞっとする。

なにせ他国の事だ。ただの訓練と軍の編成作業にけちを付ける事は出来ない。

その時はその時で別な策を考えただろうが、多少動きが読めない事よりも、

相手が"軍人として素人"の群れを送り出してくれた事を感謝せねばならない。


何故なら。


「全軍六段撃ち!全弾打ち尽くすまで打ち続けろっ!」

「相手が引かないなら全滅するまで打ち続けるだけだよ、皆頑張って!」

「商都の兵の意地を見せるで御座る!拙者も空から……うおっ!また撃たれたで御座る!?」


軍としての訓練を受けていない相手は複雑な動きが出来ない。

即ち、こちらのペースに巻き込めるって事だ。

……敵はただ真っ直ぐ本陣まで向かって来ている。


そして、こちらは文字通り連射している。

射撃兵500に商都弓兵4000の猛攻たるや凄まじい。

地雷原を抜けた辺りからは敵の死体で地面が埋まって見えないほどだ。

だが、それでも敵は進む。

そして、遂に空掘をも乗り越え陣地を囲むレンガの壁に敵が取り付き始める!

だが、まだだ……敵本陣は、


……良し!

殺し間に入った……!


「カルマ君!」

「レオ!準備しろ……出撃の時間だ!」

「委細承知っす!」


守護隊が大盾を構えつつ陣の外に並ぶ。

そしてそれを見届けた俺は……!



「やれえええええええええっ!」



大声で叫びを上げる!


「あいあいさー、です」

「ぶっ飛ばすでありますよ!」


叫びと共に陣の左右から飛び出す小さな影と巨大な獲物。

顔を隠した小柄な姿とそれに反比例して巨大な大砲が印象的である。

敵を半包囲するように地下から現れたのはそう、蟻ん娘砲兵隊その数1000!

それが左右500づつ、六連射可能な大砲を地下から引きずり出し一斉に砲撃を開始する!


「それそれーーっ!僕らもアリシアちゃん達に合わせるよーっ!」

『我が炎に爆発を生み出させよ、偉大なるはフレイア!爆炎(フレア・ボム)!』


三方から一斉に攻める大火力。

勿論俺も爆炎で援護を行っている。

このまま敵本陣もろとも全軍を一斉撃破だ……!


「ぎゃあああ!?」
「うげええええええっ!」
「ぐはっ!」


左右からの砲撃はおよそ十秒に一回、計六回行われる。

大砲……リボルバーカノンは台車に固定されている。撃鉄をスレッジハンマーで起こし、

更に引き金もハンマーで引く、と言うか叩き込むのだが、

それを人間で出来る者は少ないだろう。

事実上蟻ん娘専用武器だ。一発ぶっ放すたびに凄まじい煙が発生するが、

観測役の子蟻のお陰でそこは考慮に入れずに済んでいる。

まあ、予想以上に威力、連射性能共にかなり優秀な兵科に育ったものだと思う。


当然一撃一撃が一撃必殺の威力を誇るが流石に戦闘中弾の詰め替えは出来ない。

故に、一度の戦闘で六発撃ち尽くせば後は地中に潜るのみ、がコイツ等の運用法だ。

因みに今回は撃ち尽くした後は拳銃での射撃戦に移行する事になっているがな。


巨大な弾丸が敵陣に突き刺さるたび、人の肉片が周囲に散らばっていく。

左右双方から迫る死神の群れ……敵陣は正しく地獄絵図だ。


「僕らのほうもまだまだ行けるよね?弾切れの心配は要らないから!」

「射掛けるで御座る!拙者も放つで御座る!……おおっ!正宗様まで!?」

「ギャアアアア……オオオオオオオオオン!」


竜の雷と銃撃音、そして大量の矢が飛び交う。

俺もこっそり完全凍結(パーフェクトフリーズ・Hard)を歌い上げ、敵を氷付けにしていく……!

次々と倒れる敵、

だが倒れた敵の屍を踏み越えて、敵はまだ先に進もうとする。


「お前らさえ、お前らさえーーーーっ!」

「俺達が貧乏になったのはお前らがあこぎな商売してるせいだって言うじゃねぇか!」

「許さない、許さないぞーーーーーーっ!」

「この戦いで勝てさえすれば今の現状はよくなるんだ!皆、気張れーっ!」


……ふーん、そういう事。

成る程、不満を他国に向けるのは常套手段だよな、特に戦争時は。

その感情を慮心を使って扇動したと言う訳か。

でもな、今回ばかりは……。


「相手が悪かったな」


油の撒かれた大地と雑草に、天から降り注ぐ火種が火をつける。

降り注ぐ花火は最早爆弾、いや、とうとう本物の爆弾まで投下を開始される。

燃え盛る紅蓮の地獄にのた打ち回るかつて敵だったもの達。

……敵本陣の旗が倒れた。

だが、まさかこれで終わりな筈は無いよな……なあブラッド?


「フヒヒヒ!大司教様ーーーーーっ、ケハッ!?」


え?死んだ?

何で?


コイツはもっと……なんて言うか生き汚い奴だった筈だぞ?

何か、潔良さ過ぎないか?

……いや、それはいい。好機だ。

あいつが俺の目の見える場所で死んでくれた……これが好機を言わずして何が好機だろう?

ブラッド"らしくない"のはこの際置いておく。ともかく止めを刺すことが肝心だ。


故に俺は……敵陣に向かって、突撃。

そのまま燃え盛る業火の中を倒れ臥すブラッドに向かって駆け抜け、

周囲の敵が右往左往する中、その両腕をその体に叩き付けた!


『侵掠する事火の如く!……火砲(フレイムスロアー)!』


重ねた両手から噴出す炎がブラッドの死体を瞬く間に焦がしていった。

俺は更に骨のみになったそれを魔剣で叩き潰す。


「カルマ殿、何を……!?」

「万一にも復活させない為の措置だ……下衆と笑わば笑え!」


偽者だろうが関係ない。

こいつには何度煮え湯を飲まされたか……。

生かしておいてはこっちの計算に狂いが出るからな!


「にいちゃ!ぜんだんうちきった、です!」

「あたし等は撤退であります!」

「おう!じゃあ次は自分等の出番っすね!?」


アリスたちが一斉に兵を引く。

前上左右からの十字砲火から逃れたと敵が安堵した時、

満を持して硬化をかけた守護隊を戦場に投入。

剣を通さず弓を弾く兵隊。

総指揮官を失った事もあり、敵は遂に恐慌状態に陥った……!

だが、これで終わりだと思うなよ!?


「うああああああっ!?逃げろおおおおっ!?」

「ひいいいっ!」

「あ、あれ?あれは何だ!?」

「……魔物!?」


『緑鱗族前進だ。各部族もそれに続け……ああ、心配するなオーガ。お前の分も腐るほどある』


緑の鱗のリザードロードを中心に、リザードマンを主力に多種多様な種族が敵の退路を塞ぐ。

……リチャードさんの意趣返しだ。

そう、スケイル率いる混成部隊の参上である。

ハイムから件のオーガも借り受け、備えは万全。

敵がこちらの陣地に取り付いたときに後ろへ回りこませたのだ。

迎撃にあたり防御施設こそ与える事が出来なかったが、

装備にはかなり気を使ったつもりだ。

そう、彼等には使いやすく人間には使い辛い……そんな武具を装備した魔物たちは、

その戦力を大幅に底上げしている。

そして……。


「な、何でこんな所にリザードマンが!?」

「ゲゲゲゲゲゲッゲゲゲゲ!」(知る必要は無い、消えろ!)


「スケイル達に手柄を掻っ攫われる訳には行かないっす!敵を逃がすなっす!」

「後ろから不死身の兵士が来たぞ!?」

「畜生!こっちにも不死身の兵は居る筈なのに……!」

「ぶっひいいーーーーーーっ!?」


恐慌に陥ったままで組織的な反撃など出来る訳も無い。

シバレリア帝国軍の第一陣7万は、文字通り一騎残らず……。


「そう上手く行くと思うなよカルマーーーーーーーっ!」

「私が居る限り帝国は負けない……モーコ騎兵団、突入せよ」


「兄貴ーーーーーーっ!」

「親父が来たっす!ぶっ潰すっすよ!?」

「にいちゃ!後ろから歩兵も来てるでありますよ!」

「ちほうきぞくのとうばつ、とちゅうできりあげてた、です!」


……殲滅できると確信した時、後方から騎兵一万が乱入。

魔物の兵を蹴散らしつつ敗走する友軍の撤退を援護しだした。

後方から追いかけてきた蟻ん娘からの情報では、

更にその後方からは二万の歩兵が迫りつつあると言う。


モーコの騎兵一万と兄貴の率いていた兵士二万がその正体か。


しかし、計三万の兵が追加だと!?

今から撤退するか……罠は半壊しているが、それでも陣に篭ればまだ耐えられる筈。


「駄目!その更に後ろから敵の主力が続々と森を出て来てるで有ります!」

「かず、いっぱいです!」


あうあうと報告を続けるアリシア達。

そして、兄貴が口を開く。


「多分、この三万を相手してるうちにこっちまで来るぜ?」

「……そうかい兄貴」

「親父、随分嬉しそうっすね?」


兄貴はニヤリと笑った。


「応よ。お前らがここまででっかく育ってくれた。それが嬉しいのさ」

「……では、打ち合わせどおりに」


「応!頼むぜモーコの大酋長さんよ……俺は俺の部隊を率いてまた来るからよ!」

「了解した。私はテム=ズィン。モーコの騎兵の強さ、思い知ってもらう」

「顔合わせだけかよ!?」

「いや、違うっす!アニキの居場所を確かめに来たっすよ!見るっす、敵の本陣が!」


何だと!?

……見ると確かに兄貴は自分の率いていた二万の兵の方向ではなく、

森から出てきた兵のほうへ向かっている。

明らかに装備の質も……そして兵の雰囲気も違うあの兵団は……使徒兵か!

敵主力のお出ましって訳だな?


「波状攻撃っすね……トリは皇帝自身が務めるつもりっすか?」

「だろうな。戦力の逐次投入は下作だが、ここまで戦力差があると関係ないんだろうな……」


スケイル率いる魔物兵と突っ込んできたモーコ騎兵との戦闘は既に乱戦。

いや、段々と騎兵達がこちらから離れていく……。

ああ、そうか……拙いな。あいつ等は弓騎兵だ。

このままだと援護の無い状態で駆け回る馬から放たれる矢に一方的に撃たれまくる事になる。


「ここは俺が殿を務める!スケイル、こちらの陣地前まで下がってくれ!」

『判った……カルマよ、お前が居なくては王国はそれだけで瓦解する、それをけして忘れるな』

「守護隊もじりじり下がるっす!硬化の有効時間も無限では無いっすよ!」

「にいちゃ、あたしらもさがる、です!」

「無理だけはしちゃ駄目でありますよ!?」


指示を出してじりじりと味方が下がりだしたその時、

相手は隊列を整えなおし、馬上で弓を構えた。


「大義はまやかしで正義は無し。だが私達は今動かねば滅びるしかないのだ!」

「そんな適当臭い国家運営しておいて何を言ってるんだかな!」


猛然と走り出す弓騎兵。

動きながらも猛然と矢を放つ。

だが、その矢の雨は決して濃い物でもなければ致命的なものでもない。

なにせ、相手の射撃回数は決まっている。

背中の矢束を使い果たしたら一度戻るか接近戦に切り替えるしかない。

そこがこちらの付け入る隙になるだろう。


今はまだ俺に攻撃の矛先が向いている。

だが、硬化で強化された俺に対し放たれた矢は空しく弾かれるばかり。

少しでも有能な指揮官なら気付くだろう、このまま俺に攻撃していても無駄だと。

だがまだだ、まだ抜かれる訳には行かない。

敵の主力……俺が真にぶつかるべき相手はまだ遥か視線の先で、点の様に動いている。

その主力を削るまでここから下がる訳には行かない。

……罠の数も限界と言うものが在るのだから。

削るべきは敵兵ではない。代替不可の戦力を削る事、それが肝要なのだ。


しかし、ここで兵力を損なうような真似もまた出来る訳も無い。

味方が死ぬ、そして死地に送り込む覚悟は出来た。

だが、流石に味方を犬死させる覚悟は出来ていないしするつもりも無い!


『召喚・炎の吐息!(コール・ファイブレス)』


敵を俺に引き付けておかねばならない。ならば、狙いやすくしてやるさ!

既に味方は後方に下がりつつあり、敵の射程から逃れたものから順に全力後退に入っている。

さあ、デカイ的だぞ!?狙って来い!


「これが、結界山脈の火竜か……」

「モーコの大酋長!勝負だ……!」


ファイブレスの巨体に驚いたのも一瞬、モーコの弓騎兵たちは一斉にこちらに矢を向ける。

そして一匹の蛇のように戦場を駆け抜け、矢を射掛けだした。

俺も駆け出し、その隊列に向かって火竜のブレスをお見舞いするが、

走り続ける騎兵には思ったよりもダメージを与えられないようだった。

ならば直接追い縋って踏み潰すのみ!

だが……速い!

流石はモーコの大草原を駆け回っていただけの事はある。

まるで一匹の蛇のように動き回る騎兵達はこちらの追撃をあざ笑うかのように、

右へ左へと華麗に走り回りこちらからの被害を最小限に食い止めている。

ファイブレスの爪が振るわれるたびに一騎、また一騎とは薙ぎ払うものの効率が悪過ぎる。

踏み潰そうにもどうやってなのかは不明だが上手く急制動をかけて来るので、

逆にこちらが勢い余って前に飛び出し、尻に矢を受ける始末。

振り向くと今度は俺と竜の顔に矢が集中するし……。

隊列の分断も狙ってみたが、そうすると一時的に蛇が二匹になるだけで終わった。

切られた隊列の先がそのまま頭になりそのまま此方の死角に回り込むように走り続けると、

いつの間にかまた一匹の蛇のような隊列に戻っているのだ。


馬を文字通り体の一部のように扱うその技は正に神業であるし、

一部には明らかに何かがおかしい、某彗星の如き高機動性を誇る馬も居て、

足元をチョロチョロ併走したり馬糞を浴びせてきたり……。

クソッ、怒らせるための策だとは判っているが腹が立つし、

そもそもこれではきりが無い……!


あまつさえ先回りしようと動いた途端に脚が泥沼にはまり込んだりもした。

あー、もしかして俺ら誘導されてる!?完全に向こうのペースかこれ?


更に相手は挑発まで行ってきた。



「どうやら我等の方が足は速いようだな?私の馬には少し離されているぞ竜よ!」

「……手はある。舐めるな」



そう、後の策はある。

まずはこの場を凌ぐ事だ……我が身を止められると思うなよ!


『人の身は弱く、強き力を所望する。我が筋繊維よ鉄と化せ。強力(パワーブースト)!』


気が付けば効果範囲がファイブレスにまで拡大されていた強力を使う。

全身の筋肉が激しく脈動し、脚力も文字通り強化された。

咆哮を上げつつ敵の背後から突っ込むと、

突然一気に詰められた距離に、敵最後尾の兵の動きが明らかに動揺したものに変わった。

それを見て俺は更に加速。騎兵に追い縋り、敵の隊列を文字通り蹂躙する。

今度は避ける時間も考える時間も与えはしないぞ……!


「更に、速度が上がっただと!?」

「止められると思うな!」


瞬く間に騎兵の隊列は崩され、四方八方に散っていく。

物理的に蹴散らされたものは元より、そうで無い者達も一気に組織的な動きを失っていった。

これで……組織的な反攻は暫く出来まい……!

さて、次は……。


「流石だなカルマよ……」

「アクセリオンか。ようこそ勇者様、お前の死に場所へ」


駿馬に跨り此方に駆けて来るその数五騎。

兵すら置き去りに此方に急行してくる。

早くも来たか、本命が……!


皇帝アクセリオン

宰相クロス

傭兵王ビリー

そして戦士ゴウの代理である兄貴

最後に……マナさん!?


「…………」

「マナさん、死んだはずじゃあ……」


返事が無い。

目がうつろだ。

そして……ティア姫の自爆時に出来たと思われる頬の傷に、

かさぶたが出来ていないにも拘らず……出血が無い。


思わず顔から血の気が引く中、ふと周囲の連中に目をやる。

兄貴は顔をしかめながら一つ頷く。

アクセリオンは瞑目し、

傭兵王は首を横に振った。


「クロス……お前ーーーーーーっ!?」

「残念ですよ。私としても本意では有りません」


仲間を……使徒兵にしやがったな!?

幾らなんでも、それはないだろう!


「……こちらとしても手段を選んでいられないのですよ、被害が大きすぎてね」


唇を噛む位ならやるんじゃねぇ!

と声を大にして言いたいが……それどころじゃないか。

テムは南西に逃げ去ったが、それでも俺は一人なのには変わり無い。

それに対し敵は勇者とその代理で合計5人。


「さて、正々堂々戦おうか、リンカーネイト王よ」

「一対五のどこが正々堂々……いや、勇者の基本か」


下馬して取り囲む五人に少々辟易する。

ラスボスってのは何時もこういう気持ちなんだろうか?

と言うか……兄貴まで混ざるなよこんなのに。


「兄貴、幾らなんでもこれは卑怯じゃないか?こっちの手伝いしてくれよ」

「悪ぃな。魔王の鎧を使わないよう説得するので精一杯だった。あ、言っとくが手加減無しだぜ?」


「……幾ら兄貴でもボコるぞ」

「面白ぇ。そうだ、それでいいんだぜ……一度お前とは全力で戦っておきたかったんだ」


一応、援護はしてくれてたわけか。

なら、それ以上を求めるのも酷か……。

いいだろう。

ここで一気に決めてやるさ。

予定とは違うが、ここで全員どうにかすればそれでこっちの勝ちだ!


ファイブレスの頭上で魔剣スティールソードを構える。

対する皇帝の剣は吸命剣ヴァンパイヤーズエッジ。

奇しくもぶつかり合う事となった兄弟剣が、

悲しげな、と言うには少々物騒すぎる光を共鳴するかのように放っていた……。


***最終決戦第二章 完***

続く


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