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No.6980の一覧
[0] 幻想立志転生伝(転生モノ) 完結[BA-2](2010/08/09 20:41)
[1] 01[BA-2](2009/03/01 16:10)
[2] 02[BA-2](2009/05/14 18:18)
[3] 03[BA-2](2009/03/01 16:16)
[4] 04[BA-2](2009/03/01 16:32)
[5] 05 初めての冒険[BA-2](2009/03/01 16:59)
[6] 06忘れられた灯台[BA-2](2009/03/01 22:13)
[7] 07討伐依頼[BA-2](2009/03/03 12:52)
[8] 08[BA-2](2009/03/04 22:28)
[9] 09 女王蟻の女王 前編[BA-2](2009/03/07 17:31)
[10] 10 女王蟻の女王 中篇[BA-2](2009/03/11 21:12)
[11] 11 女王蟻の女王 後編[BA-2](2009/04/05 02:57)
[12] 12 突発戦闘[BA-2](2009/03/15 22:45)
[13] 13 商会発足とその経緯[BA-2](2009/06/10 11:27)
[14] 14 砂漠の国[BA-2](2009/03/26 14:37)
[15] 15 洋館の亡霊[BA-2](2009/03/27 19:47)
[16] 16 森の迷い子達 前編[BA-2](2009/03/30 00:14)
[17] 17 森の迷い子達 後編[BA-2](2009/04/01 19:57)
[18] 18 超汎用級戦略物資[BA-2](2009/04/02 20:54)
[19] 19 契約の日[BA-2](2009/04/07 23:00)
[20] 20 聖俗戦争 その1[BA-2](2009/04/07 23:28)
[21] 21 聖俗戦争 その2[BA-2](2009/04/11 17:56)
[22] 22 聖俗戦争 その3[BA-2](2009/04/13 19:40)
[23] 23 聖俗戦争 その4[BA-2](2009/04/15 23:56)
[24] 24 聖俗戦争 その5[BA-2](2009/06/10 11:36)
[25] 25[BA-2](2009/04/25 10:45)
[26] 26 閑話です。鬱話のため耐性無い方はスルーした方がいいかも[BA-2](2009/05/04 10:59)
[27] 27 魔剣スティールソード 前編[BA-2](2009/05/04 11:00)
[28] 28 魔剣スティールソード 中編[BA-2](2009/05/04 11:03)
[29] 29 魔剣スティールソード 後編[BA-2](2009/05/05 02:00)
[30] 30 魔道の王国[BA-2](2009/05/06 10:03)
[31] 31 可愛いあの娘は俺の嫁[BA-2](2009/07/27 10:53)
[32] 32 大黒柱のお仕事[BA-2](2009/05/14 18:21)
[33] 33 北方異民族討伐戦[BA-2](2009/05/20 17:43)
[34] 34 伝説の教師[BA-2](2009/05/25 13:02)
[35] 35 暴挙 前編[BA-2](2009/05/29 18:27)
[36] 36 暴挙 後編[BA-2](2009/06/10 11:39)
[37] 37 聖印公の落日 前編[BA-2](2009/06/10 11:24)
[38] 38 聖印公の落日 後編[BA-2](2009/06/11 18:06)
[39] 39 祭の終わり[BA-2](2009/06/20 17:05)
[40] 40 大混乱後始末記[BA-2](2009/06/23 18:55)
[41] 41 カルマは荒野に消える[BA-2](2009/07/03 12:08)
[42] 42 荒野の街[BA-2](2009/07/06 13:55)
[43] 43 レキ大公国の誕生[BA-2](2009/07/10 00:14)
[44] 44 群雄達[BA-2](2009/07/14 16:46)
[45] 45 平穏[BA-2](2009/07/30 20:17)
[46] 46 魔王な姫君[BA-2](2009/07/30 20:19)
[47] 47 大公出陣[BA-2](2009/07/30 21:10)
[48] 48 夢と現 注:前半鬱話注意[BA-2](2009/07/30 23:41)
[49] 49 冒険者カルマ最後の伝説 前編[BA-2](2009/08/11 20:20)
[50] 50 冒険者カルマ最後の伝説 中編[BA-2](2009/08/11 20:21)
[51] 51 冒険者カルマ最後の伝説 後編[BA-2](2009/08/11 20:43)
[52] 52 嵐の前の静けさ[BA-2](2009/08/17 23:51)
[53] 53 悪意の大迷路放浪記[BA-2](2009/08/20 18:42)
[54] 54 発酵した水と死の奉公[BA-2](2009/08/25 23:00)
[55] 55 苦い勝利[BA-2](2009/09/05 12:14)
[56] 56 論功行賞[BA-2](2009/09/09 00:15)
[57] 57 王国の始まり[BA-2](2009/09/12 18:08)
[58] 58 新体制[BA-2](2009/09/12 18:12)
[59] 59[BA-2](2009/09/19 20:58)
[60] 60[BA-2](2009/09/24 11:10)
[61] 61[BA-2](2009/09/29 21:00)
[62] 62[BA-2](2009/10/04 18:05)
[63] 63 商道に終わり無し[BA-2](2009/10/08 10:17)
[64] 64 連合軍猛攻[BA-2](2009/10/12 23:52)
[65] 65 帝国よりの使者[BA-2](2009/10/18 08:24)
[66] 66 罪と自覚[BA-2](2009/10/22 21:41)
[67] 67 常闇世界の暗闘[BA-2](2009/10/30 11:57)
[68] 68 開戦に向けて[BA-2](2009/10/29 11:18)
[69] 69 決戦開幕[BA-2](2009/11/02 23:05)
[70] 70 死神達の祭り[BA-2](2009/11/11 12:41)
[71] 71 ある皇帝の不本意な最期[BA-2](2009/11/13 23:07)
[72] 72 ある英雄の絶望 前編[BA-2](2009/11/20 14:10)
[73] 73 ある英雄の絶望 後編[BA-2](2009/12/04 10:34)
[74] 74 世界崩壊の序曲[BA-2](2009/12/13 17:52)
[75] 75 北へ[BA-2](2009/12/13 17:41)
[76] 76 魔王が娘ギルティの復活[BA-2](2009/12/16 19:00)
[77] 77 我知らぬ世界の救済[BA-2](2009/12/24 00:19)
[78] 78 家出娘を連れ戻せ![BA-2](2009/12/29 13:47)
[79] 79 背を押す者達[BA-2](2010/01/07 00:01)
[80] 80 一つの時代の終わり[BA-2](2010/01/14 23:47)
[81] 外伝 ショートケーキ狂想曲[BA-2](2010/02/14 15:06)
[82] 外伝 技術革新は一日にして成る[BA-2](2010/02/28 20:20)
[83] 外伝 遊園地に行こう[BA-2](2010/04/01 03:03)
[84] 蛇足的エピローグと彼らのその後[BA-2](2010/08/10 14:03)
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[6980] 07討伐依頼
Name: BA-2◆63d709cc ID:515c5899 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/03/03 12:52
幻想立志転生伝

07

***冒険者シナリオ3 討伐依頼***

~いわゆる普通にゃ程遠く~

《side カルマ》

商都トレイディアより森の中に分け入ること丸一日。

昼なお暗いその奥にその洞窟はあると言う。

ライオネル兄貴に誘われて俺はその地に脚を運んでいる最中だ。

現在パーティーは四人。兄貴と俺。それと同じ首吊り亭に世話になってるCランク二人組みだ。

戦士ガルガンさん(ランク詳細CCC)と侍の村正(ランク詳細CBE)だ。

ランクから判るとおりガルガンさんは何処にでも居るような一般的な冒険者である。

ただ、結構なお年で色々経験も積んでるためか人格的には信用できると思う。

逆に村正。あいつはどうだろう。

腕は悪くないけど、どこか怪しい。と言うか保有技能が鍵開けと気配遮断とか盗賊臭い。

その他何か隠しの技能か何かがあるようだしな。じゃなきゃ技能Bランクまで行くもんか。

信用ランクEって所も怪しさを助長している。それ以前に名前が危なそうなのがまあ何とも。


まあ、冒険者なんて一歩間違えれば山賊に早変わりしかねない連中なのは子供でも知ってることだ。

俺も人の事は言えんしな。しかし女っけの無いパーティーだ。若造3人と爺さんとは。

もっとも、家の酒場に所属してる女冒険者は件の一人しかいないわけだが。

そんな訳で野郎だけの一団で突撃かけてる訳で。


「ふう、さすがにこたえるの」

「ご老体。隠居には未だ早いのではあるまいか?」


ガルガンさんは既に初老。流石に山道は堪えるんだろう。

逆に軽々と登っていく村正。侮れねぇな、俺でも少しは息が上がるってのに。

え?兄貴?兄貴ならもう上。やっぱあの人は異常だ。

何にせよ洞窟までもう少し。気を入れていきますかね?


……。


「これが常狩り洞窟?」

「左様。定期的にギルドからの討伐依頼が下るゆえ、付いたあだ名が常狩りと申す」


洞窟の奥は当然ながら暗い。

だが入り口にはギルドが設置したと言う松明が焚かれている、

周囲には無数の靴跡。ここが幾度と無く攻略されたと言う証だ。


「けどさ村正。なんで定期的に討伐なんてするんだ?」

「貴殿ともあろうものがそんな事も調べておらなんだか」


悪かったな。元々討伐依頼なんか受ける気は無かったんだよ。

でも兄貴が回復役が必要だって言うから止むを得なくてな。

そういう訳で昨日いきなり連れてこられたんで何の下情報も無いわけだ。


「ふむふむ、成程。それは悪い事をしてしまった」


なぬ、と思って聞いてみれば元々この依頼、眼前の村正が持ってきたとの事。

それでガルガンさんに声をかけ、兄貴→俺の順でお声がかかったわけか。

うわーい、コイツ疫病神か!?


しかしだ、俺も以前とは違う。

かつて立てた計画では比較的安全な仕事を数多くこなして行くと言うのが基本だった。

大した実力が無い俺にはそれがお似合いだったはずだ。

けどさ、今は違うと思う。

魔法の力って奴は本当にすげぇ。習いたての俺でも一気に戦闘が楽になった。

もしかして。いや、もしかしなくても才能があるのかも知れん。

それなら……一晩で一攫千金を狙える討伐依頼に手を出すのも悪くないと思い始めていた。

何せ、なし崩しとは言え一度成功させているからな!

今回の依頼も一人頭銀貨150枚。相手はゴブリンか強くてもコボルトなんだとか。

楽勝だ。楽勝じゃないかこんなの。


「やれやれ、本当にそう思うのかのう」

「ま、アイツは洞窟の何たるかを判って無ぇからな。その為に連れてきた」

「成程、過保護な事ではある。しかし貴殿も大して危険を理解しておらぬと見受けられるがな?」


うわーい、いきなり慢心を咎められたんだけど?


「そもそもお主は少し調子に乗りすぎ……いや、やめておくとしようかのう」

「左様ですな。落とし穴には一度嵌らぬと理会出来ぬ物ゆえ」


何か酷い言い方だよな?まあいいか、じゃあいっそ嵌ってやろうじゃないかその落とし穴とやらに。

と、思った瞬間俺の周囲の床が一気に抜けた。


「ぬなあああああっ!?」

「早速嵌りましたな、未熟な」

「んな事よか早く助けるぞ!」

「む?ライオネルよちょっと待たぬか!」


あ、兄貴も飛び込んできてら。

うん、まさに落とし穴。嵌るまで気づかないって……早く言ってくれよ!

殺す気かお前ら!?


そして程なく下の階に付いた、と言うか落ちてきた。

兄貴も落ちてきた。

って……ま、また床が抜けやがったっ!?


落ちて叩き付けられてその衝撃でまた落ちて。

それを幾度と無く繰り返し、遂に最深部まで落ちてきました。

うん。何だよコレ。これが幾度と無く討伐される洞窟か。

成程、確かにゴブリン共とかが何度も住み着くわけだ。

要するに守り易いんだなここ。

だってさ、周囲は白骨だらけ、周りは弓ゴブリンの群れ。

しかも土塁まで築かれてますけど?

なるほどねぇ。これで襲撃者を返り討ちにするわけか。

数十本の矢で射抜かれたらそりゃ普通は死ぬわな?

ただ、ここに居るのが俺だったことが不幸って訳だ!


「奥義ハリケーンストームソード!」

「グギャアアッ!?」

「ゴブェエエエッ!」


って兄貴がもう特攻してるよ。しかもやたらと手馴れてないか?


「はっはっは!何度も引っかかってりゃそりゃ対処も覚えるってもんよ!」


あ、やっぱり。毎回引っかかってるのか。

けどまあ、今回は俺のせいだから何も言えねぇよ。……追いかけて来る方も来る方だが。

さて俺も行きますか。……硬化をかけて、突っ込む!


正直ゴブリン位では元々俺を止められない。

大して威力のある訳でもない弓で射殺されない内に肉薄できれば勝負ありだ。

まあ念の為防御を固めたわけだが、その必要も無い位にあっさり敵は片付いた。


「やっぱり楽勝じゃないか」

「応!……いや、後もう一つ何かあったはずだ」


とは言え、ゴブリン位が何を仕掛けようが大して怖くは無いと思うんだが。

ん?何かゴロゴロと言ってる。ああ、なんだ坂の上から無数の丸太が転がって


「ちょっと待てぃ!逃げる場所、無ぇええええっ!」

「思い出した!これだ!」


思い出すの遅いよ兄貴!うわ、早いよ跳ねてるよこっち突っ込んでくるよ!?

お、押しつぶされるっ!?


「お、応。生きてるかカルマ」

「鉄の肌じゃなかったら死んでた」


うん、やっぱり事前情報無しはまずいわ。

相手がゴブリンってだけで何処か舐めた考えになっちまう。

こりゃあ予想以上に苦戦しそう。


まあとりあえず兄貴、ここから出してくれませんかね?


「んじゃあ前回付けた目印があるからよ、それを辿って戻ろうぜ」

「兄貴、今日は冴えてない?」


「そりゃ何度も引っかかってるからな!」

「……あー、なるほど」


なんて言って納得し、兄貴に頭脳労働を期待した俺が馬鹿だった。

本当に、本当に馬鹿だった!


「あ、ありゃ?おかしい、ぜ?」

「何で全部の道に目印が書いてあるんだよ兄貴……」


いや、よく見ると少しづつ違う気がする。

ただ良く考えればここは敵の陣内。敵の残した物をそのままにしておくだろうか。

俺なら細工する。ゴブリンでもそうした、それだけだろう。

まあどうやっても俺自身あんな単純な罠に引っかかった時点で人の事はとやかく言えん訳だが。


「取り合えず上へ行こうぜ。前回もそうやってたらいつの間にか出られたからよ」

「前回それで出られたんならそれでいいけど」


まあ、それ以降はある意味予想通りといった感じだ。

坂を上がっても行き止まりなんてこともザラ。

酷い時には天井が剥がれて落ちてきたり視覚を利用した落とし穴になっていたり。

要するに一度入り込んだ異物は出さないってのがここのコンセプトな訳か。

あー、何つー陰険な。

しかもいきなり壁から槍が突き出したと思ったら、よく見りゃ壁に小さく穴が開いてたりとか、

二階ぶち抜きの吹き抜けの下で上の階から弓を射掛けつつ逃げてったりとか。マジで要塞じゃねぇか!

篭ってる連中がゴブリンとかで本当に良かったと切実に思うわけだ。


何はともあれ、何とか元の階層と思われる場所にたどり着けた。

うん。今回は事前準備なしの恐ろしさを再認識できたことが一番の収穫だったな。

正直早く帰りてぇ。多分半日近く洞窟に潜りっぱなしだ。


「おう、戻ったか」

「早かったなと申すべきか?」


二人とも、全くここから動かなかったのかよ。

いや合流してから動くつもりだったのか?

もっとも俺と兄貴だけで多分全部のフロア回った後だけどな!


「流石の貴殿も疲れたのか?」

「当たり前だ。もう殆ど回り終えてるし、もう帰ろうぜ」


「うむ。だがその前にカルマ殿。剣を抜かれよ」

「何でだよ。まだ敵がいるのか?もうゴブリンの気配はしねぇよ」


ちゃきっ、と刀が眼前に突きつけられる。

ヲイヲイ待てよ。この展開はまさか。


「実は貴殿の討伐依頼を拙者が承った。よって勝負を所望する」

「……罠か」


「左様。策と呼ぶもまた良し」

「応!村正っ!カルマに手出しするならこのライオネル様が相手に」

「ライオネル。お前の相手はわしがする」

「ガルガンさん。アンタもかよ!」


クソッ、何てこった。しかし一体黒幕は誰だ!?

恨みを買う覚えは……あー、一つでっかいのがあるな。

それにしてももう賞金首かよ。コレで平穏な暮らしはもう無理って訳だな。

だからって、なぁ。いきなりコレはないだろ。

もっとも弱った相手を襲うのは常套手段としちゃ悪くない。

ただ、おかしな事にどうもコイツを殺す気になれないんだよな?

何でだ?いつもの敵と何が違う?

シスターもそうだが明らかに敵対されてる割に殺意を抱けない奴がいるのは何でだ?

ま、襲ってくる以上容赦はしないけどな!


……。


《side ライオネル》

カルマと村正が殺しあってやがる。

俺はと言えばガルガンの奴と睨み合ってて止めに行く事もできねぇ。

何ともなさけねぇ話だ。


「おいガルガン。このままじゃどっちか本当に死んじまう!」

「かも知れんが、わしが村正に依頼されたのはおぬしの足止めじゃからのう」


普段なら負けるはずがねぇ相手だけどよ?

正直今の俺はボロボロだ。今下手に隙を見せたらやられる。


いや待て。相手も俺を殺す気は無いようだ。

だったら!


「ぐああっ!?」

「ほれ、おとなしくしとれ」


ち、畜生!構えを崩したらあっさり剣を弾かれた!

やっぱガルガンの奴を倒してからでもないと助けにゃ行けんか!


「俺の硬化(ハードスキン)を破れるのかよ!?」

「破れぬのならここにはおらぬ!」


あ、あの馬鹿!奴の刀の事を知らねぇのか?

けどまあ紙一重でかわしたか。

薄皮一枚切れてるな?

よしよし、それならあの刀のやばさは判るだろ。


使い手と同じ名を持つ妖刀村正。

鉄の鎧くらいならあっさり輪切りにしちまうほどの切れ味だ。

あれがあるだけで奴の技能は一ランク底上げされてると言われるんだよな。


あ、何やってるんだカルマ!脇の下のガードが甘いぞ!?

あー、やっぱり突きが来た。でも、あれなら浅いか。

おいおいおいおいおいおい!何を自分から当たりに行ってるんだ!?


まさか、お得意の刺されて相手を固定作戦か?

無茶だ!胴体ごと輪切りにされるぞ?

並みの剣でないのは切られたお前が一番良く判る筈じゃないのか!?


……あー、成程……な。


なんつうえげつない戦い方だよ。

ぐさーっと刺さって根元まで来た刀に対し、持ち主の指を狙うとはな。

鉄の拳骨を食らっちゃ手の骨がボロボロだろあれ。

流石の村正も手の骨が逝かれて刀を放しちまった。

うわ、なんつー痛そうなリアクションだよ。……もしかしてアイツ、派手なダメージ食らった事が無いのか?


んで、カルマはと言えば妖刀を手にして。

おい。まさかそれで村正を切ろうとか思ってないよな?

切るな!と言ったら頷いて刀を遠くに投げ捨ててくれた。ふう、一安心だ。


っておい、カン、カラ、カンって……あ、落とし穴に落ちた。わざとじゃないよな?

そしてその後を追う村正(人)と来たもんだ。

愛刀を大事にするのはいいことだが。大丈夫かよ?


あ、一番下にたどり着いたか?凄い音がしたが。

ガルガンも血相変えて降りて行った。まあこちらは普通の道でだが。


そう言えば飛び込むときに村正の懐から何か落ちたような気がするぜ。

そして俺の目の前にひらひらと舞うのはもしやカルマの討伐依頼書?

丁度いい。誰の依頼なんだか?

そもそもあの酒場のマスターが自分の所の奴同志を戦わせようなんて思うはずが……。

おい、嘘だろ!?


「カルマ!急いで酒場に戻るぞ!いや、まずは教会だ!」


この依頼主は。まさか、嘘だろ?

それだけはあっちゃいけねぇ。それだけはあっちゃいけねぇんだ!


……。


《side カルマ》

俺に向けられた刺客は同じ宿の冒険者だった。それだけならまあ、仕方ない事かも知れない。

所詮は冒険者なんて金次第でどんな仕事でもやる奴が大半なんだ。

ただ。これはどういう事だ?何で兄貴はシスターに詰め寄っている?

まさか、俺を狙ってた奴ってのは!?


流石に冗談だろ?あのシスターだぞ?

俺は覚えている。医者の居ないカソに季節の変わり目毎にやってくる見習い修道女。

まだ魔法を使うことも出来ず、せいぜい出来る事と言ったら診察と薬草を煎じて飲ませる程度。

正規のシスターとしての訓練とかで遠くの聖堂に行っちまうまで数年間も続けてくれていた。

衰弱するお袋を保たせてくれていたのはあの薬草だった。

森の奥から滋養強壮に良いと言う薬草を一緒に取りに行った事もある。

あの薬草は今でも使っているし街で結構な高値で取引されていて驚いたもんだ。

勿論幾らか持って帰ったとかそういう事は無かった。全部村のために使ってたさ。


……久々に会って金に汚くなっちまってたのは正直堪えた。あの人根っこは善人だと思ってたからな。

まあそれでも信じたいとどっかで思ってたけど、間違いだったか?

それとも。既にあの頃からろくでもない人間だったのか?


何ていうか。判りきってた事だけど汚れたのは俺だけじゃないって事だな。

いやー、何か必死こいて助けようとしたのってもしかして無駄?


「ふざけんなよ、シスター・フローレンス?」

「はい?」


「なんで、何で俺を狙った!?少なくともアンタに恨まれる筋合いは無いぞ!」


あ、もしかしてあれか。あの地下室の秘密を知った者はって事か?

それとも盗って来た魔道書二冊目の口封じ?

幾らなんでもそれで殺されたら死んでも死に切れないぞ?


「あ、もしかして何か勘違いしてませんかカルマ君?」

「別にコイツが犯人って訳じゃねぇぞ?」


って、ここまで来て違うのかよ!?


「今日の私はシスターでも冒険者でもなく一介の情報屋さんです」

「こいつの情報は早いし正確なんでな。先に確認しときたかったんだよな」


あー、そういえばこの人がリチャードさんから頼まれてたのも情報だったっけ。

知れば知るほど色んな顔が出てくる人だね全く。

なるほど、きっと色んな人の弱みとか握ってるんだろな。

……考えるんじゃなかった、うん。


「弱みはともかく身を守る為の切り札くらいは持ってますよ」

「俺のも?」


「勿論。飛び切りのネタがあります。これが世に出ればカルマ君一生平穏には暮らせませんよ」

「シスター、ぶっちゃけ殺してもいい?」


我ながら今の俺の顔実にイイ感じの笑顔だと思う。


「大丈夫。このネタは私にとっても致命的なんです。それと灯台での一件とはまた別の話です」

「何それ?やっぱ切っていい?主に俺の平穏のために」


「それはご勘弁願いますね。それに私を殺すと教会から聖堂騎士団辺りが来ますよきっと」

「あー、やっぱり?」


「勿論私の為でなく面子とかプライドとかそう言うのを死守する為ですけど」

「うん、判る。判りすぎるほど判る。て言うか子供時代のトキメキを返せ」


む、肩にゴツイ手が。


「気持ちは判るけどよ、今はお前の現状をどうにかするのが先じゃねぇか?」

「ごもっともですライオネルの兄貴」


そうだ。俺が今問題にすべきは俺の命を狙った連中の事だ。

正規のルートで出された依頼書だ。最初の奴が失敗したからといって次がないとは限らない。


「で、やっぱりこの内容は間違いないのか?」

「はい。間違いないです。因みに理由まで調べ上げてますよ」


兄貴がシスターに銀貨を握らせた。


「正直、やり過ぎって奴です。まあ親心と言う事で」

「あー、そういう事かよ!脅かすんじゃねぇよ。本気で消しに来たんだったらどうしようかと思ったぜ?」

「全然判らんわ!」


何、今の会話。暗号か何かか?さっぱり意味がわからないんだけど。

ただまあ、兄貴の緊張が解けたって事はもう問題は解決したって事だよな?

え?もう手配は解けてるから普通にしてOKってどういう事?


「カルマ君は自分のやった事に気づいていますか?」

「知らん。シスターこそ自分が今までやってた事に気づいてるのかよ」


「銀貨一枚」

「それにまで金取るのか!」


「いえ、カルマ君のしたことに関する情報です」

「……ほらよ」


銀貨一枚を取り出した。

正直恨まれるのは覚悟で入った世界だし、とは思うが、

何か色々気になる単語が多かった。ここは聞いておくべきだと思う。


「カルマ君。あなたは割りのいい仕事を残らず持って行かれたら、相手をどう思いますか?」

「気にくわねぇな」


「では今のカルマ君はどうですか?」

「……理解した」


まあ、つまりそういう事だ。

俺のやり方は効率こそ良いが回りの仕事を次々と持って行ってしまうという欠陥があった。

宅配中心に一度に数件、時に数十件。まさしく根こそぎ持っていってたっけ。

他人に取られない様に朝早くから依頼の一覧ガン見してさ。

一回くらいならともかく何時もだと?うん、当然恨まれるわな。

そして周囲の怒りが爆発する前にガス抜きを思い立った人が居たと言う訳か。


「まさかマスターがカルマの為に骨折りしてくれたとは思わなかったぜ」

「既に依頼は取り下げられています。あの二人もすべて承知の上だったんですよ」


成る程。仕掛け人は酒場のマスター。

まあ、冒険者の宿の主人だけあって面倒見がいいな。

等と宿に戻って言ったら兄貴から叩かれた。

いや、俺のせいだって事はわかってるけどね?


酒場に戻ったら、注文もしてないのに酒が一杯出てきた。

マスターの奢りだとさ。


「ともかくカルマ。君はもう少し一度に受ける仕事数を減らすか難度の高い物に切り替えるべきだ」

「だがマスター。だったら何で最初に止めなかった?」


「まあ、新米冒険者が一度はかかる麻疹みたいなもんだから。大抵失敗するけど」

「それじゃあ恥かくだけじゃないか?」


「それを皆で酒の肴にする所までが一つの儀式みたいなもんだったけどな。まさか成功する奴が出るとは」

「それで周りがぶちきれる前に止めようとこんな大掛かりな事をしたと?」


「ああ。言葉で言って判ったか?上手く行ってる時にそんな台詞は耳に入らないだろ」

「まあ、たしかにそうかもな」


「ちょっと待て!だったら何で俺に話が来なかった!?」

「ライオネルに腹芸は無理だろ?」

「兄貴に腹芸は無理だな。うん間違いない」


どっと周囲が笑いに包まれた。

どうやら騒動は収まったらしい。あー、何かやり切れん気持ちでいっぱいだが。

それに、明日から別な稼ぎ方を考えねばならないかと思うと嫌になる。

とは言えこう言う喧騒も別に悪くない、よな?


……。


正直飲みすぎたので表に出て夜風に当たる。

いやしかし、まさか独占禁止法?に引っかかるとは想定外だ。

どうしろと言うのかこれ。まあ、もう少し危険度の高い依頼に回れって事なんだろうけどな。


「はいカルマ君、繕っておきましたよ」

「シスター?って俺のマントか」


うん、ここいらの連中はシスターに服を直してもらう事が結構ある。

これはシスターとしてのボランティアだとかで無料。

因みに冒険者としての仕事外での怪我の治療も無料。(仕事中は銀貨2枚)

基本的に貧乏人には施しをして金を持ってる所から毟り取るのがこの人のやり方だと理解した。

そんな訳で世間一般的から見れば無償で人助けする人に見えるんだな。

……まあ、逆に言えば俺もそれだけ高額所得者になったって事だ。

ただこんな金持ちステータスはいらねぇよ!と声を大にして言いたい。

いっそぶった切ってしまうかとも思うが……わざわざ街の連中を敵に回すのもどうかと思うし。


そうだ。どうせ情報屋やってるならちょっと聞いてみるか。

銀貨一枚手のひらに載せてと。


「なあ、今日村正と戦った時、余り殺す気にならなかったんだが、何故だか判るか?」

「それはあなたの心の持ちようの問題ですから情報屋には判りません。ですが推測は出来ます」


「それは?」

「結局の所向こうにカルマ君を殺す気が無かったからでは?」


要するに向こうに害意が無いからこっちもって事か。

まだまだ俺も甘いって事かよ。

いや、あの場合止めさしてたら更にマズイ状況になってたから良いのか?


「それじゃあ灯台で、あれだけやってくれたシスターを殺そうとか思わなかったのもそういう事か」

「まあそうでしょうね、こちらにはカルマ君を監視とか試す意図はあっても倒す意図はありませんでしたし」


いや待て。ちょっと待て。今何か不吉極まりない事言い出さなかったかこの人!?


「試す?」

「ええ。教会から直々の指令です」


教会から直々って俺何かしたか?

宗教関係者と事を構えた事は特にないはずだぞ!?

よし、もう一枚銀貨追加だ!キリキリ白状しろこの守銭奴!


「以前私の傷を手当して頂いた時がありましたよね」


覚えてたのか!?いや、気絶前に自分の腕が吹っ飛ぶ所を覚えててもおかしくないか。

でもそれがどうして目を付けられる羽目に?

逆に褒められても良い事したと思うんだけど!


「ええ。上に報告したらカルマ君に何かお礼の品でも来るかと思ったんですけど、逆に危険人物として監視指令が」


自分で金出す気は無いんですね、判ります。

うわーい。何か善意が裏切られた気分だ!

て言うかただの修道女に危険人物の監視させるなよ教会。


「そういう訳で申し訳なくて心苦しいんですよ。どうしようもなく恩知らずですよね」

「いやそもそも何で俺が危険なんだ!別に善人狙って攻撃してる訳じゃないぞ!?むしろ悪人キラー?」


「ええ。ですから抹殺指令ではなく監視で止めているんです」

「まさかあれか!詠唱速度速すぎとか何とか」


誰かが世界最速かも知れんと言ってたしな。

うん、強い力は持つだけで危険視されるってなんと言う王道。


「いえ?教会の神官団の専用と言って良かった治癒の魔法をあっさり覚えられた事が直接の原因みたいです」

「問題はそっちかよ!?」


ああ、もうやってられん。治癒魔法で危険視されるとは思わなかった。なんと言う想像の斜め上。

俺にとってシスターは間違いなく疫病神決定。


「いえ、そんなに心配しないで下さい。今の所教会からの討伐依頼が出るとは思えませんし」

「今の所って何!?何なの?て言うか下手したら俺にそんなのが回ってくるのか?」


「カルマ君の場合怒らせ方が判りやすくて感情の制御がしやすそうに見えますし」

「色々聞かなかった方が幸せだった台詞だな本当に。と言うか猛獣扱いか俺?」


まあ聞けば、俺は自分の物が傷つけられそうになるとぶちきれる傾向があるらしい。

あー、そう言えば手塩にかけた畑や家畜・後は金とかで切れた記憶があるなぁ。

俺のもんに手を出すなーってか?

誰にでも譲れない一線ってあるよな。うん。

逆に言えばそこに踏み込まなけりゃ本気で怒らないと?ホントにそうか?

どっちかって言うと自分の権益を侵す奴は排除しても良心が痛まないとかそっちだと思うが。


「本当はこんな事言ってはいけないんですけど教会上層部からしたら大して変わりません」

「それでも神の僕か?と言うかあの拉致換金も上からの指示か!?」


「いえ、あれは普通に私からのお願いでしたけど」

「あれはお願いじゃねぇ。脅迫だ。と言うか本当に最低だよシスター!」


なんと言うかもう、何時かドギモ抜いてやると言う気分だ。

教会自体もこの性悪シスターも噛み付く相手が悪い気もするがもう気にしない!

今は何も思いつかんが今に見てろ!討伐されるのは俺じゃなくお前らだ!と言う感じ。

面従腹背!面従腹背!いつかやってやる!やってやるぞ!


とりあえず、本屋で教会関連の書籍でも漁ってみるか。

派閥争いとかあればめっけもんだし。

とりあえず疲れたからもう今日は寝る。山積みの問題は明日から考えるさ!


……まあ一つだけ決まってる事があるか。

もう今までみたいに低ランクの仕事をかき集めるのは出来ない訳だし。

ランク再認定、受けてみるか。


***冒険者シナリオ3 完***

続く


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