幻想立志転生伝
52
***レキ大公国のへっぽこな日常シナリオ3 嵐の前の静けさ***
~大公国の日常とその終わり~
≪side カルマ≫
「ホルス。この話からすると東西マナリアの内乱は収まったと見ていいのか?」
「はい主殿。後ろ盾を失った西側が折れる形で一応の国境線を確定しております」
「領土比率は8対2でリチャードさんのほうが大きいよー……でも」
「そうだな。マナリア台地の入り口をティア姫に握られた形だ。国外との連絡は難しくなる」
「それに全ての貿易を西に握られる形になるでしょう。結果的には痛み分けです」
「でも、当の西側にそれ以外の資金源は無いからね。それが無いと何も出来ないと思うよ」
国に帰ってきてから暫くして、北でのマナリア内乱終結のニュースが飛び込んできた。
先日の戦いで神聖教団上層部は文字通り全滅。
その為都市国家サクリフェスは大混乱で、
とても隣国の内乱に手を貸すどころではなくなってしまったのだ。
後ろ盾を失ったティア姫は止む無くリチャードさんと和解。
……ここにマナリア王国の分割が決定した訳だ。
さっきの話の通り、領土的には大半をリチャードさん側が保持する形となったが、
マナリアは高原地帯で山脈に囲まれ、その形はカタカナの"コ"に良く似ている。
故にその入り口は基本的に西側にしかない。
その為国外から仕入れる全ての物資……塩などの戦略級も含めて、
その全てを西側の領地を経由して仕入れざるを得ない形となった。
例外はマナさんが森を焼いたせいで出来た北部領地に向かう北側か。
北部領地は元々森の焼け跡で平地である。当然そっちには下に抜けられる間道もあるが、
今度は街道に辿り付くまでに距離がある上、蛮族の襲撃も怖いだろう。
とても大事な荷物を運ぶのには使えんだろうさ。
対する西側……ティア姫の方はと言うと、これまたさっきの話の中にあったが、
保有する兵数に対し領土は不足し、しかも領地は無人地帯に近い有様で税収も僅かだ。
東マナリアへ向かう荷に対する関税が主な収入源になるだろう。
……つまり、お互いが相手に依存せねば生きていけない微妙な関係となるわけだ。
しかも、お互いの問題点が相手が居なければ全て解決すると言う始末。
「何時爆発するか判らない時限爆弾かよ」
「……それが一体何を意味する言葉なのか判りかねますが」
「とりあえず、兄ちゃの言うとおりだって事が判れば良いよホルス」
「行くぞハイラル。領土の見回りだ」
「コケー」
「……だがまあ、それはいい。問題はこちらだ」
「サンドールよりの書状ですね。……段々と要求がきつくなってきたようで」
「調子乗りすぎだけど、これぐらい無いと破綻するのも事実だよー」
しかし、こう言っては何だがマナリアの事情は対岸の火事のようなもの。
問題はこっちだ。
昨日届いたばかりのサンドールよりの親書、とは名ばかりの脅迫状である。
届けに来た使者の人が最初から涙目で、挙句親書を手渡してきて次の一言が、
"どうか命ばかりは"だという辺りで内容は推して知るべきか。
「とうとう強請る金額が金貨5桁に達したか」
「ま、家にとっちゃどうとでもなる金額だけど、正直面白くないねー」
「二ヶ月以内に金貨一万枚を届けろですか。全く、こちらを財布と勘違いされても困ります」
「……ま、自軍の戦力に自信が有るからだろ強気なのは」
「向こうでも兄ちゃの戦力を知ってる人は冷や汗物みたいだけどさー」
「しかし、これが無いと遠征が続けられない……は、事実でしょう。相当切羽詰っていますね」
傭兵国家は北部アークの街に首都機能を移転してからと言うもの頑強な抵抗を見せ始めていた。
本来の首都は元々廃都であり防戦に適している筈も無いが新首都は十分な防備が出来ていたし、
しかも領土が小さくなった事により一点に戦力を集中できるようになったからだ。
しかも此方からサンドール宛の支援物資を残らず奪い、資金量もある程度回復して来ている。
……まあ、俺が奪わせたんだけどな?
「サンドール軍内は最後まで戦おうという派閥と現状で満足すべきと言う派閥で真っ二つか」
「和平派は日に日にその発言力を高めているそうです」
「……でもね。傭兵国家から撤退した場合、その矛先がこっちに来るのは明白だよー」
「ひよこー。ひよこは何処だー。出てきてたもれ?」
「ぴー」
「まあ、それは最終的には仕方ないだろう……元々が仮初の主従だしな」
「後は破綻が先か後か、だけですね」
そう。今回金貨一万枚を払って暫くの平和を楽しむか、
それとも断って一気にカタを付けてしまうか、二つに一つ。
「天に太陽は二つも必要ありません。……少なくとも主殿がおられる限り負けは無いでしょう」
「正面から来るなら竜で薙ぎ倒せば良いしね」
「問題は、俺は一度に一箇所の敵しか相手に出来ないという事だ」
部隊を分散させられると面倒な事になるな。
俺を抜かせばこっちの実働戦力は守護隊500に魔道騎兵200、そして決死隊が100か。
初期決死隊の子供達に志願者が出たので訓練しているが完了するまであと一年はかかる。
魔道騎兵は色々有って補充が利かないし、
予備兵でもある警備兵はその他に200名居るが数に入れるだけ間違っているだろう。
「母は何処だ?腹が減ったぞ」
「ちょ、姫様。アニキ達は会議中っす。こっち来るっすよ」
相手の戦力?
サンドール軍は現在戦争中だが恐らく最終的に一万五千ほどの奴隷兵が残ると予想されてる。
これが大挙してレキに攻め込んでくるわけだ。
……戦わなくて済む可能性?
全財産無くして良いならあるが、それを認められはしないだろ?
「ま、取り合えず一言。……時間が空けば戦力差は開くだろうな」
「そうですね。それに戦争終結後のサンドールは恐らく面の皮を厚くし傭兵を雇おうとするはず」
「傭兵国家だから仕事に私情は持ち込まないだろうしねー」
そうなると資金が許す限り兵力を増強してくるだろうな。
何せ、勝てば金が手に入ると考えているだろうし。
「つまり、相手に資金をやるのは拙い、で決定だな」
「判りました。資金援助に関して断りの手紙をしたためましょう」
「うにゃ。手紙なんか無視しちゃえ」
「アリサ様?……ああ、時間稼ぎですね」
「そだよー。いざとなったら手紙が届いてないって言い張れるしさ」
「よし、ではこの親書は無かった物とする。戦争準備、急げよ」
「あいあいさー」
「はっ。防衛用に地雷の敷設は順調に進んでおりますのでご安心を」
さて、これでこれからの流れは決定と。
今日の仕事はこれでおしまい、だな。
……書類仕事は別にしても。
「と言う訳でハイム、取り合えず仕事終わったから遊んでやるぞ?」
さっきから謁見の間をウロウロと暇そうにしてたからな。
……まあ、子供と遊んでやるのも父親の仕事と言う奴だろう。
「別にわらわは遊んで欲しいなどと言っておらんぞ!……で、かくれんぼだ。父が鬼!」
「にげる、です」
「わーい、であります!」
そしてチビどもは風のように去っていく。
ふむ。かくれんぼか。
ま、それなら探す振りして適当にゆっくりしてれば良いか。
……ふう、ありがたい事だな。
正直面倒な事が多くて肩がこってかなわんしな。
……。
さて、そんな訳で城の見回りついでにかくれんぼの鬼をやる事となったわけだ。
そんな訳で取り合えず、アルシェの部屋まで来てみた次第。
……実はお腹の子の事が気にかかっていただけだが。
「アルシェ。具合はどうだ?」
「カルマ君?うーん、取り合えず元気かな。まあ、ルンちゃんが付いててくれるし心配ないよ」
「経過は順調」
アルシェは部屋でベッドに腰掛けながら自分の腹を撫でていた。
横ではルンが編み物をしている。
……何故だかこの二人が揃うとルンの狂気成分が急速に薄まる気がする。
もしかしたらルンがアルシェと仲が良いのは無意識にそれに気付いているのかも知れない。
「ところで……先生。名前は決めた?」
「まあな。取り合えず生まれるまで内緒だが」
「残念」
「……名前候補考えてたのか」
ルンは最近紙の量産に成功した為大々的に売り出し始めたノートを懐から取り出している。
中を見せてもらうと色々な名前がびっしりと書き込まれているようだ。
……とは言え息子の名前は俺が決めるつもりだから……ん?どうかしたか?
「……なら、これは二人目以降の分」
「あはは、ルンちゃんそれが言いたかっただけじゃないの?」
「違いない」
「です」
む。今アリシアの声が……。
姿を見せないという事はかくれんぼ参加者か。
「アリシア発見!ベッドの下」
「ばれた、です」
のそのそとアルシェのベッドの下から這い出すアリシア。
……窓の外からは掃除中の別なアリシアがこっちを見ている。
「みつかったです。ひとりめ、ですか?」
「うん。取り合えず謁見の間で待機な?」
「はいです!」
「よぉし、では次のチビ助を探しに行くか……」
「行ってらっしゃい。休み時間も家族サービスとは父親の鏡だねカルマ君?」
「先生、はーちゃん見つけたら伝えて欲しい」
「何を?」
「怪我したひよこ、見つけたから預かってるって」
「了解だ」
では次は何処に向かうか?
……意表をついてあそこかな。
……。
さて、次はルイス達の執務室にやって来た。
別名変態の巣窟。
メイド達すら近寄りたがらぬ狂気の部屋である。
「よお、ルイス。……ん?魔法研究って事はお前も休み時間か」
「これは殿下。ええ、今日はフレイムベルト宰相の無詠唱魔法についてです」
ルイスの趣味はチビ娘の鑑賞と魔法研究。
それが両方とも好きなだけ出来るこの国はコイツに言わせれば天国なのだとか。
まあ、有能だし一応紳士なので俺から言えることは何も無い。
「時に、頼まれていた衣装、出来上がりましたよハイ」
「……おお、この制服は正に注文どおり……早速今夜ルンに着せてみる」
色々と、まあ世話になってるしな。うん。
よーし、今夜はユニークとか言わせちゃうぞー?なんてな。
「それはさておき、宰相の魔法か。確かに無詠唱の秘密は知りたいな」
「ええ。取り合えず現在判明しているのは……」
ふむ。つまり、宰相の魔法の場合……魔法名=詠唱そのものな訳か。
短くて当然だ。
「ティア姫様が使用した事から、個人限定の特殊魔法であるという線は消えました、ハイ」
「しかし、印らしきものは結んでいなかったぞ?」
実際に戦った俺が言うのだから間違いない。
するとルイスは考え込む。
「そうですか。ですが印が無いとは考え辛い。何せ、すぐに真似られてしまいますし」
「そうだな。と言う事は印は極めてさり気ない動作なのか?」
「偶然成功してしまう可能性を考えれば、作成時に簡単な印を設定するとは思えませんね」
「……正に謎だな」
その時、急に引き締まった顔でルイスが言った。
「実は、我が国には古来より宰相に関する言い伝えがあるんですよ」
「どんな?」
「宰相を殺したくばサンダルを履かせよ。さすればその術を封じられる」
「なんだそりゃ?」
「……さあ?ですが私はそこにヒントがあるのではないかと思ってるんですよね」
ふむ…………あ、判ったぞ。
サンダルだと魔法が使えない、と言う事は足が関係している訳だよな。
つまり、あの無詠唱魔法の印は……足の指で組むんだ。
うん、確かにそれなら目立ちやしないし宰相が飛んでいたにも拘らず、
靴をきちんと履いていた説明にもなる……まあ、こじつけだけどな。
「成る程、勉強になった。……かくれんぼのチビ娘達も見つからんし次に行く。邪魔したな」
「何ですと!この部屋に幼女が潜んでいると!?それは一大事!」
突然ルイスが恍惚の笑みと共に家捜しを始めた。
いや、だから潜んでないから帰るって言ったんだけど……。
「……居ましたあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「むぅ。ここには居ないだろうと踏むかと思っていたが……」
ハイム!?
いきなり薬品棚の中から転がり出てくるとか、どうやって入ったお前!?
……取り合えず捕獲っと。
「いやあ、充実した時間を過ごさせていただきましたよハイ」
「……まあ、俺の台詞だと思うが……どういたしまして」
「わらわも話は聞かせてもらったが実に有意義な研究であった。今後も頑張ってたもれ?」
「それはいいが、ルンがひよこを預かってるって言ってたぞ?」
「おお、母のところか!後で取りに行くぞ……最後の一人が見つかってからな」
と言う訳でルイスに手を振りながら執務室を後にする。
……さて、最後はアリスか。アイツは行動範囲が広いからなぁ。
……。
と言う訳で先ずは街に出て大通りを進んでみる。
「君、可愛いっすね!今度何処かに遊びに行くっすよ!……ニコッ」
「ぽっ……き、騎士様がそう仰られるのでしたら……」
すると、何か知らんがレオのナンパにぶつかった。
……会話開始3秒で陥落かよ。
イケメンは得だねぇ……というレベルを凌駕してるんだが。
「レオ、ナンパは良いが刺されるなよ……」
「ち、父よ、レオの後ろでハンカチ噛んでる娘は……」
気にするなハイム。
さて、ここには居ないなーっと。
「ウギャアアアアアアーーーーッす!」
「父!後ろで惨劇が!」
「気にするな」
さて、次は市場か?
いやあ、今日は良い天気だよなぁ……。
おっと。そうでもないか。
雨が赤いし。
……。
「安いよ安いよ!新鮮な果物!リンゴ10個で何と!銅貨一枚!」
「……死ぬほど安いくせに客が飛びつかないな」
「いや、それはそうだろう父。あれ見てたもれ?」
ん?と思って見てみると、街中を闊歩するガサガサ。
その通った跡にはバナナやらミカンやらが散乱している。
……あ、子供達が拾い集めてら。
「この国は果物なぞ殆どタダで手に入る。今更金など払う奴はおらんよ」
「成る程な」
「確かに!でもね、綺麗な傷の無いリンゴばかりだよ!」
確かにそれは魅力だが、ちょっとばかりの傷を気にするような輩がこの国に居るのか?
……オド辺りなら有り得るが、アイツだってこの間自分で梨をもいで食ってたしな……。
「ヒントだよ!うちの果物は特殊なお客向けなのさ!数をまとめておく、これが大事!」
「ふむ?父はわかったか?」
「……あー、そう言う事か」
その時、城門から馬車が入ってきた。
商人かな?……あの服装は……わざわざトレイディアから来たのか?
ご苦労な事で。
「おおい、問屋さん。何時もの頼むよ」
「はいよ!リンゴ百箱とバナナ二百箱……このドリアンはおまけだ!腐る前に帰れれば良いな!」
「うん、代え馬は十分用意してるから大丈夫さ……じゃあ急いで帰るか!」
「まいどありー」
馬車は一分一秒が惜しいと再び城門を潜っていった。
成る程な。国外向け、しかも仕入れ用なのか。
考えたもんだな。
「しかし、荒野のど真ん中に果物の一大産地……我が国ながら異様ですよね大公様!」
「気付いてたのか……」
「へへっ。この国で大公様の顔を知らない奴は全部モグリですよ……」
「わらわはー?」
「無論姫様もでさ。感謝してるんすよ皆。こんな良い所に連れて来てもらってね……」
「そう言ってもらえると嬉しいがな。……さて、次に行くか」
「アリスは武闘派だからな。意外なところにいるやもしれんぞ父?」
ふむ……あ、居た。
「アリス、見つけたぞ」
「見つかったであります、と言いたい所でありますが、隠れてるのは別なあたしであります!」
城門の上、見張り台にアリスを見つけたが別個体のようだ。
と言うか見張りまでやっているのかコイツは……。
……まあ、隠れてる奴がこんな目立つ場所に居る訳無いか。
「とは言え、隠れてる奴が嘘言ってたら絶対見つからないよな」
「むむっ!にいちゃとは言え見逃せない言い方であります!」
「そうであります!あたしが嘘を付くとでも!?見つかったら素直に見つけられるであります!」
あ……今、同じ声が二つ……。
ふと気付いておもむろに背中に手を回してみると……ぷにぷにの足。
「ずっと背中にいたのか!?」
「みつかったであります!」
「喋らなければもう少し父に気付かれなかったのにな。残念だ」
これはまあ見つからない訳だ。と言うか、
俺の背中にアリスが乗っかってても誰も疑問に思わない辺り何と言うか……。
まあいい。取り合えず後は……いや、これで全員か。
「時に父、そろそろ家に帰るぞ」
「うん、判っている。そろそろ地獄の書類との戦闘タイムだ」
「頑張るでありますよ!」
うん、頑張るさ。
何て言うか日に日に周囲からの期待の目が大きくなってるし。
……気が付けばここは地上の楽園扱いだ。
出来ればそれを壊したく無いという気持ちは俺にもあるさ。
「そう言えば最近の意見に、お昼ご飯の支給を求める声が大きくなって来たであります」
「それぐらいならやってやれるのではないか父よ」
「いや、それは却下だ」
しかし、繁栄の裏で確実に破綻は迫る。
……そうか、昼飯も欲しいと言い始めたか。意外と早かったな。
「何故だ?今の父の商会ならばそれぐらい容易かろう?」
「人の欲望は成長するのさ……次を考えるとこの辺りで天狗の鼻を早めに折っておいた方が良い」
「そうでありますね…………さあ。はーちゃん、お城に帰るであります」
そう。人の欲は肥大化する。
昨日までの贅沢は今日の当然であり、明日の不満だ。
……多分、俺の役割の本当の部分はそんな肥大化する欲求を上手くいなして行く事なんだと思う。
適当にやっていざとなったら放り出す、をやるには少々この街の皆に愛着も持ってしまったしな。
全く、面倒くさい事だ……。
まあ、俺が生きている間位は皆で幸せな現状を維持していきたいもんだ。
……多分後10年か20年……そんな長くない期間だと思うしな。
所詮は軽自動車に宇宙戦艦のジェネレータ乗せてるような身の上だ。
どんなに補強しようが所詮元々が人の肉体。
……そうそう長持ちする訳も無いわな。
……。
さて、その日の夜。
俺はアルシェの夜の散歩に付き合っていた。
妊婦ながら元々傭兵と言う事もあり、動かないと体が鈍り過ぎて心配になるんだそうだ。
とは言え、砂漠特有の驚異的な暑さの日差しに身重な体を晒すのは容認できかねる。
そんな訳で家族の誰かが付き添いながらの夜の散歩が日課になっているというわけだ。
「うーん。良い感じで涼しいね」
「本当は極寒の筈なんだがな……水の力は偉大だよな」
物流の要でもある水路は同時にこの国の気温の制御にも役立っている。
これは以前語った通り。
「ふふ、そうだね。……ルンちゃんには悪いけどこうやってカルマ君を独り占め出来るし」
「ルンはトレイディアの大使と会食中だ。……俺、外交は出来ないからな」
出来ない訳でもないが、全て艦砲外交になりそうだからな。
穏便に済ませたい相手ほどルンに任せきりになりやすいんだよこれが。
ふっふっふ。ご褒美にルイスに用意させた服で可愛がってやらねば。
「あー、カルマ君。なんか悪党っぽい顔してる。何か企んでる?」
「まあな。国の今後を左右する大事な謀略だ」
「嘘でしょそれ。すっごくいやらしい顔してたよ?」
「スミマセン」
悲しいくらいバレバレですか、そうですか。
……いつの間にか尻に敷かれてる?……気のせいだ。
「……良い星空だよね」
「いきなりどうしたんだよ」
「いやね、幸せすぎて怖くなってきちゃった」
「何でだよ」
「うーんとさ。ほら、僕って傭兵だったじゃない」
確かに、命の切り売りで食っていく職業だ。
そのくせ給料は安いと踏んだり蹴ったり。
確かに傭兵上がりと考えれば過大なほどの境遇だな。
「一生子供生むなんて事は無いと思ってたしさ。もし有ったとしても……」
「暗い地下牢で誰の子とも知れない……ってか?今更そうはならないから安心しろ」
「うん。それは判ってる。でもね、時々これは夢で本当は敵に捕らわれて妄想の中にとか……」
「アルシェ、それは……」
……突然、地面が爆ぜた。
「ない、です」
「夢オチは阻止するであります」
「あたし等がいる限り兄ちゃが戦略的に負ける事はありえないから安心しれー」
蟻ん娘が一瞬だけ現れて言いたい事だけ言ってまた地下に帰って行った。
相変わらず神出鬼没だな。
……何処から聞いてた?とかは、
この国であいつ等に調べられない事は無いから気にしないでおく。
「……戦争、始まるんだよね。でも僕は……」
「いいから子供の事だけ考えてろ」
「でもさ。僕が率いる予定の部隊さえあれば」
「うぬぼれるなアルシェ……小部隊一つで戦況が変わるほど戦争は甘くないだろうが」
俺が言えた義理じゃないけどな?
色々な意味でさ。
まあ、余り気に病まれても仕方ないって事で。
それに……アルシェの指揮する予定の部隊はもっとでかい舞台で使いたい所だしな。
片田舎の歴史しかない国の馬鹿将軍率いる軍勢に使うのは勿体無い。
「そうだね。僕は戦う事しか出来ないから、それも出来なくて焦ってたかも」
「生まれてくる命を守るのも大事な戦いだぞ、と一般論を言ってみるテスト」
そうして二人で顔を見合わせて笑いあってみる。
そうだ、現状あるもので戦うしかない。
無いもの強請りしても仕方ない。とは何時もの台詞だしな。
……っと、目的地に着いたぞ。
「今夜もやってるねカルマ君」
「毎日毎日よくもまあ飽きないもんだ」
「よーし、コホリン……そこのレンガはそこに積んでたもれ」
「コーッコッコッコ」
「秘密基地か。女の子なのにそういうの好きだよねあの子」
「アイツ曰く魔王城だけどな」
俺たちが物陰から覗くその先には粗大ゴミの捨て場がある。
そして数日前からその脇に、小屋のようなものの建設が始まりつつあった。
……ハイム曰くの魔王城だ。
例の犬小屋を天辺に置きその周囲に輸出入に使われる巨大な木箱(穴あき)で壁や柱とする。
基礎や床はレンガを何処からか調達してきたようだな。
そして最後に全体を破れた天幕を無理やり縫い合わせたもので包み込んで完成だ。
……結構本格的でびっくりである。
「ふははははははは!我が覇道の拠点、ここに完成だ!」
「ぴー」
「アイブレスよ。父やクイーンには絶対に知らせるなよ?」
「ぴー!」
スマン。既に知ってる。
と言うかアリサの情報網から逃れられる訳が無いだろうに……。
……まあ、どうせサンドールが攻めてきたら壊れる運命だ。
それまではせめて好きにさせてやろう。
「コケー」
「ハイラル。ハイムを頼むな?」
因みに今回の密告者は足元に居るコイツだ。
……理由はもうすぐ判る。
「コケー」
ん?ああ、頼まれた物は持って来てるから心配するなニワトリ父。
さて、それじゃあ気付かれる前に帰るとしますか……。
「ふふ。僕らの子もあんなのを作るのかな?」
「多分作るだろ。と言うかハイムが用意しそうだ」
そんな訳で寝冷えしないようにと、こっそりとゴミ捨て場に寝袋を置いて俺達は去った。
枕代わりの芋虫も居るし、まあこれで一晩のお泊りくらいは出来るだろう。
明日は使用可能な水瓶でもここに捨てておくかね……。
まったく、ニワトリにしておくには惜しい逸材だよハイラルの奴は。
……。
さて、翌日の昼過ぎ。
……今日は主要メンバーを集めての勉強会、及び新部隊長の顔見せである。
決死隊に数名ほどの新規補充メンバーが入隊したが、その中から隊長が選出されたのだ。
何で既存メンバーから隊長を選出しないのかと言うと、
今までホルスが直接指揮を取っていたので問題にはならなかったが、
実はコイツ等、これで結構反骨心が強い。
自分より明らかに強い奴で無いと従ってくれないのだ。
ところが俺としてはホルスはどっちかと言うと内政面や外交に使いたい。
だがホルス以外のメンバーは基本的にどんぐりの背比べ……つまり命令伝達に問題が出かねない。
その為新規メンバーに一人だけ居るホルスの代行者となり得る男に白羽の矢を立てたわけだ。
「紹介する。イムセティだ。ホルスの息子に当たる」
「イムセティです。若輩者ですが決死隊を率いる者として全力を尽くします」
名はイムセティ。元々は奴隷剣闘士となるべく訓練中の奴隷だった。
それをこの国で買い取って更に訓練を重ね、何度かの試験を経て部隊に配属されたばかりだ。
なお、魔法こそ使えないがその戦闘センスは皆が認めるところである。
「オウ、ボーイ!決死隊には人が居ないのですか?こんな少年を隊長に据えるなんて」
「オド団長代理ですね。指揮官の居ない部隊を率いるのは大変でしょう?尊敬しますよ」
「ホワッツ!?まるで私の指揮に問題があるような物言いですね!?」
「失礼。奴隷出身故、言葉遣いに問題がありました。別に貴方が無能だなんて言っていません」
……実力はあるんだ。それこそホルスが認めるくらいには。
ホルス程ではないにせよ、戦闘能力も決死隊で頭半分くらいは突出しているしな。
ただ、この皮肉屋な部分はどうにかならないものか?
特にオド……と言うか魔道騎兵との折り合いが悪いのが気にかかる。
「ふはははは!良いぞセティ!お貴族様にもっと言ってやれ!」
「ふう。最下層のそのまた下の出身者は品が無くて困るな」
ただでさえ貴族階級の代表である魔道騎兵と元奴隷剣闘士中心の決死隊は仲が悪い。
……あー、ホルスが額に指を当ててるし、ルンは眉をひそめている。
ま、この二人が双方の代表者扱いになってるからな。余り大声も上げられないか。
何せ、何処にどんな声をかけようが火種になってしまうからなぁ……。
「ザッツ、フール。貴方の部下は言葉遣いがなってませんね?所詮は下賎、ですか」
「そんな最下層相手に皮肉を言わねばならない貴族と言うのも惨めですね、おっと失言でした」
最近、何だか軍内にサンドール閥とマナリア閥のような物が出来上がりつつある。
宰相派と妃殿下派、もしくは下層系と上層系の代表と言っても良い二つの派閥は、
まるで水と油のように反発しあっている。
……当のホルスとルンは仲が良いんだけどな。
双方の言い争いは何時しか剣を抜くか抜かないかと言うレベルにまで発展していた。
さて、こうなると俺が出るべきか……と思うところだが、
幸いにも危なくなると毎回動いてくれる頼もしい奴が居るのだ。
「二人とも止めるっす!」
「オウ……リオンズフレア殿」
「あ、先輩。申し訳ありません」
「元の国籍も貴賎も細かい事っす。この場に居る人間は基本的に平等っす!」
「そうだな、レオの言う通りだ。お前ら毎回喧嘩ばかりして……」
「は、はい!カルマ様にご迷惑おかけするつもりは無かったんです!申し訳ありません!」
「ノォ……殿下やお嬢様にもご迷惑をお掛けしてしまいました……ソーリー、軽率でした」
二人とも一斉に頭を下げたが、その後も微妙に視線を合わせようとしない。
……困ったもんだ。
……元々の身分が違いすぎるんだ。付ける薬なんか無いか。
ただしこの国の強みとして俺に対して反抗的な将兵は居ないので、
いざとなったら、俺が強権で黙らせれば良いんだけど。
まあ、それはそれとして舎弟口調のレオが一番まともな事を言っている姿は結構笑えたりする。
「……のう。わらわの話は何時始めれば良いのだ?教えてたもれ?」
「オゥ、ノウ!姫様、大変失礼をば!」
おっと、忘れる所だった。
今回の講義内容は"正規術式"についてだ。
講師は魔王でもあるハイムが務める事となっている。
「よし、では始めてくれハイム」
「うむ。では先ず正規術式とは何かと言うとだな……」
ふむふむ。
要するに、ハイム……魔王を作り出した古代人が初めから用意していたデフォルトの魔法なのか。
現在俺達が使っている魔法の大半は、それからするとMODか海賊版のような物だな。
「本来はわらわ達"管理者"が認めた者しか使えないようになっていたのだ」
正規術式起動、から始まる正規術式。
かつては管理者によって使用者が厳格に管理されていたらしい。
家伝クラスの短い詠唱の他に、
印を組みつつ術者の登録番号と魔法固有の暗証コードを詠唱。
その手続きを経て魔法が発動するのが本来の姿なのだとか。
なお、暗証コードは数十桁。しかも詠唱の癖に大文字小文字を分けろとか言う始末。
登録番号に至っては百桁を超える場合がある、のだとか。
未来永劫に渡って使い続けられるようにとかなり余裕をもって桁数を設定したようだが、
……そこの所の使い勝手の悪さは現代出回ってる魔法と大して変わらんかも知れんな。
「だが、わらわが実力行使を開始した時より、魔法を使えるよう認めたものはおらん」
それこそが非正規の術が増殖した理由の一つか。
登録番号が無ければ原則として正規術式は一切使えない事になるからな。
「更に、わらわに抗った魔法使いからは登録番号を取り上げた」
先ほども言ったが登録番号を持たなければそもそも魔法が使えなくなる。
……本来はこの事実が抑止力となり、魔王はその権限をもって魔法の管理をしていたのだろう。
なにせ、逆らうと言う事はその次の瞬間から魔法が一切使えなくなると言う事だからな。
ところが……その登録番号が無くても魔法を使う方法を、
例の初代様が見つけ出しちまったからさあ大変と言う訳だ。
認証回避の方法は色々有るが、
いつの間にかそもそも認証のプロセスを入れない魔法が出回り始めた。
……ところがそうなると今度は魔法が余りに簡単に使えるようになってしまった。
まあ当然既存の魔法使いにとっては面白くない事態だな。
「故に、宰相辺りが情報操作し、糞長い詠唱を覚えきれた者だけの特権としたのであろう」
まあ、制御されない力は余りに危険だ。
結局、人間自身が魔法の管理を始めざるを得なかったって訳か。
……そして中枢の人間でも本来の魔法を失伝し、
結局、宰相一人が秘密を保持したまま現在に至る、か。
本当の詠唱を糞長い偽詠唱の中に隠し、
もしくは魔道書の解説など不要な部分までも詠唱だと言ってのける。
ともかく一般には余分な詠唱を含めて一纏めにして教えた。
そして一部の特権階級にのみ中核部分を教える。
こうする事により余計な部分ごと憶えられる程記憶力がずば抜けているか、
秘密を知り得るほどに高位の家の人間かのどちらかで無いと魔法が使えない事となった訳だ。
何せ、魔法を発動させる際には本人の意識と言うか認識が重要になる。
そう、あの森で同じ詠唱からシスターが治癒と硬化を使い分けたように。
……真実を知らない人間にとってはその糞長い詠唱こそ本当の詠唱だと信じざるを得ない。
そして信じている以上余分な所のスペルミス一文字でさえ魔法が発動しないのだ。
要は人の心理とこの世界における魔法の特性を利用した訳だな。
管理者と敵対したばかりに面倒を自ら背負い込む辺り、人の業を感じる。
「因みにわらわ達管理者は、正規術式詠唱時に認証の必要が無い」
そうなると、正規の術が殆ど家伝級の連射速度で使える訳か。
本来はそれもアドバンテージだったんだろうな。
だが、それを物ともしないような魔法も次々と作られていったに違いない。
「更に管理者が特別に認めた者は、その旨を宣言する事により認証回避が可能だ」
……なんですと?
「……一応俺も管理者扱いだよな」
「うむ、竜達でもいいぞ。例えばわらわが認めた場合"魔王の名において"と言えば良い」
何でそんな機構があるんだよ。
……いや、緊急避難用なんだろうけどな、本来は。
「無論、認めるも取り消すもわらわ達次第だがな。基本的にもう誰にも認める気は無い」
「まあ現状では意味無いか……今までから考えると正規術式って廃れて久しいっぽいしな」
「父よ、使用可能な者が居なくなって数百年。残ると思うか?」
「だよな。何せあれだけ大陸最強クラスと戦い続けて正規術式と出会った事無いし……」
その後……最後にハイムから新規術式作成についての危険性を語ってもらい、
その日の勉強会はお開きとなった。
で、以下は出席者の中でマナリア出身者の感想。
「へぇ。知らなかったっす!勉強になるっすね!」
「サプラーイズ!魔法に隠された過去!学院の教科書にも載らない真実を私達は知りました!」
「はーちゃん凄い。先生も凄い……」
「……長年謎だった秘密が今日だけで幾つも明かされましたねハイ。私の研究は一体……」
「「「「「姫様サイコー!」」」」」
それ以外。
「いや、僕は門外漢だからさっぱりだよ?」
「主殿達はともかく、どちらにせよ私達は魔法が使えませんからね……」
「父さんの言うとおりです。ですが取り合えず現代の魔法使いには使えない力なのは判りました」
「イムセティ?父の顔を潰すつもりですか?……もう少し言い方を考えなさい」
『ふぁぁ……ん?終わったか?俺達緑鱗族は魔法を使わん、関係ないから寝させて貰ったぞ』
「兄ちゃ、そろそろ晩御飯だよー」
「おなかすいた。です」
「あたしもであります!」
とりあえず有意義だったのか違うのか……微妙すぎるな。
……そうだな。取り合えず飯にするか。
ちょっと思いついた事があるのだが、それは明日でも良いし。
……ふと気付いた。
どうでもいいが、赤ん坊にものを習っている俺たちって一体……?
……。
しかし楽しい時間はすぐに過ぎ去るものだ。
……それから二ヶ月もしないうちに驚愕の事実が俺たちを襲う。
そう、何処かへっぽこだが楽しかったレキ大公国の日常は終わりを迎えたのだ。
「……傭兵国家、陥落だと!?」
「はいです!ビリーのおじちゃんとかタクトおじちゃんとか、ゆくえふめい、です!」
馬鹿な!
物資量などから逆算するとあと一年は戦える筈だが?
「……信じられないけどさー、あたし等の情報網でもまだ見つかってないんだよー」
「大陸中の町や村々に敷いた情報網に傭兵王の情報が一切入って無いであります!」
「おそるべし、ちからぜめ、です」
言ってる事がちぐはぐだが、情報を纏めるとこうなる。
……サンドール軍、焦土戦術解禁。
その結果として傭兵国家は陥落し、傭兵王ビリー以下首脳部は行方知れずだと言う。
「何もかも燃やし尽くして前進したのか!?」
「……継戦限界って奴だよ。セト将軍はもう傭兵国家から何かを得るのは諦めたっぽいねー」
「斥候が既に此方を伺い始めたで有ります」
「だから……みち、けした、です」
そして、連中は間違いなく次に此方を狙っている。
……今更宗主国らしい顔をする気は無いのだろう。警告の書状一つすらない。
明らかに、こちらを……潰す気か。
「アリシア、道は消したと言ったよな?」
「はいです。ひとのとおったあと、きれいに、けしたです」
「立て札なんかも場所を変えた上で向きも無茶苦茶にしておいたであります!」
……お互い臨戦態勢、か。
意外と早い破綻だったと言うべきか、それとも今まで良く保ったと言うべきかな?
「……いいだろう。ホルスを呼べ」
「主殿、既にお傍に」
気が付くと各隊の隊長格と共にホルスが俺の前で頭を下げていた。
……周囲がにわかに騒がしくなっていく。
皆が皆、戦闘や逃げの準備を始めたのだ。
「かねてよりの予定通り、防衛戦争を開始する。皆に周知徹底を」
「既に伝達は終了しております……兵の配置は予定通りで宜しいので?」
「ああ、本陣の兵は薄くなるが……そんなの関係ねぇ」
「判りました。では私はレオ隊長と共に前線に赴きます。ご武運を」
……ホルスとレオは守護隊と共に特別任務に就く。
そのため一足早く部屋から出て行った。
「イムセティ!決死隊はレキの警護だ。命令あるまでは城門を死守してくれ」
「任せて下さい大公殿下。私の初陣、必ず勝利で飾ってみせますので」
そしてイムセティが城門に向かう。
……いきり立っている所悪いけど今回はあまり出番は無いと思う。
先ずは戦場の空気に慣れて欲しいのだ。
「そして……オド、魔道騎兵は本作戦の要だ。アウトレンジから敵を削る。先ずは俺に続け」
「ムフフフフ!承知しました殿下。まあ、彼等には悪いですが手柄は全て我々が頂きます!」
最後はオドだ。
機動力のある騎兵によるアウトレンジ戦法。
俺は正面から竜で突っ込めば良いが、他方面はそうは行かない。
幸い相手は歩兵ばかり。
兵を損なう事無く敵戦力を削れる筈だ。
「イッツ、ショウタイム!私も出撃準備に参ります!」
「……頼んだぞ」
皆が出て行った後、窓から外を見る。
ガサガサ達の枝に乗り、皆の避難が始まっていた。
……さて、そう言えば自身が総大将の戦争は初めてか。
こんな所で大事な部下を死なす訳にも行かないよな。
「兄ちゃ……」
「アリサか。どうした?」
突然声をかけられたので振り向くとアリサが居た。
「国境線越えてサンドールの馬鹿が来たよー」
「……そうか。早いな」
「主力はまだ傭兵国家からの帰還最中だしね」
「それだけ余裕が無いって事だろうな……いいだろう、先鋒部隊を潰す!」
日常が終わり、戦乱の季節がまた、訪れたのだ。
***レキ大公国のへっぽこな日常シナリオ 完了***
続く