幻想立志転生伝
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***魔法王国シナリオ9 大混乱後始末記***
~むしろ問題は増えるばかり~
≪side リチャード≫
王宮地下から脱出して半月ほど。
僕とレンちゃんは何とか王都まで戻ってきていた。
一時はどうなる事かと思ったけど、リンちゃんが軍を即座に動かしてくれたそうで、
何とか混乱を当日のみで収める事に成功していたらしいね。
……そんな報告が届いたので急いで戻ってきたんだけど……。
「この腐れ父親が!今まで何処をほっつき歩いていたんですの!?」
「仕方ねぇだろ!?そもそも俺は追放されてた身の上なんだしよ!」
「親父、姉ちゃん!二人とも止めるっす!周りが見てるっす!つーか、一体何日続けるっす!?」
リオンズフレア一同は大喧嘩の真っ最中。
……それにしてもライオネル君があの大英雄ライ将軍だったとは。
まあ……僕の憧れを返せと言いたいね、うん。
そして更に問題な事に、
「……お父様の行方はまだ知れない?」
「はい、お嬢様……ですが見つからないと言う事はまだ無事な可能性も御座います」
「そうね~。パパがそう簡単にやられちゃったりはしないわよ~」
「……実の所を言えればどんなに良いか」
「爺?どうかした?」
「その手紙は、何かしら~」
「いえいえ、何でも御座いませんとも」
あろう事かルーンハイム公は行方知れず。
遺体すら見つかっていないのは僥倖なのか不運なのか……。
その上、だ。
「殿下……主だった貴族の内三割とどういう訳か連絡が付かない。領地には居る様だが」
「ラン、現状は極めて危機的だ。各家に緊急援助の要請を送って欲しい」
「そうしたいのだが……こちらの書状を無視している節が。しかもその数が段々増えている」
「何故なんだ……故国の危機だというのに……」
そう、その上に何割かの貴族がこちらとの連絡を絶って来た。
……この中央の混乱を見て、独立でも狙っているのかも知れないね。
意外な事に古来からの忠臣と言われる家のほうにその傾向が強いのが残念だけど……。
今は現実を受け止めるほか無い。
……これはもう、笑うしかない。
しかも、しかもだ。
もう一つばかり話し辛い話題があったりするんだよ。
「ところでラン。カルマ君はどうしているかな?」
「……目が見えなくなっているようだが……それ以外は元気なものだ」
「そう、か……少し彼と話がある。暫く人払いをしてくれないかな」
「判った。……殿下から話すのか?」
まあね。でも仕方ないだろう?
こんな話、他の人間には任せられないよ……。
……。
≪side カルマ≫
……あの謁見の間で気を失って、気付いたら三日経っていた。
アルシェが無事だと聞いた時は心底ほっとした物だが……代償はけして安くなかった。
それから何日もたったが、未だに俺はベッドの上の住人だったりする。
「にいちゃ……目の方はまだ見えないでありますか?」
「いや、光は感じ取れるようになった。……少しづつ回復はしてるな」
あれから暫く目が完全に見えなくなっていたのだ。
……ルンが駆けつけてくれたので助かったが、
あのまま治癒を使用し続けていたらと思うとぞっとする。
まあ、そういう訳で怪我人扱いされた俺は王宮の一室に軟禁状態となっている。
現在は身の回りの世話を殆どアリス達に任せている状態だ。
仕方ないとは言え正直部屋から出られず身動き取れないのは堪える。
……ん?誰か来たな。
ドアが開き、入ってきた足音は……恐らく二人分。
「やあカルマ君。具合はどうかな?」
「その声はリチャードさん……そっちこそ大丈夫なのか」
うっ、と言う声が聞こえた。
恐らく今頃金髪の貴公子は顔を引きつらせているのだろう。
……やはり状況はよくないのか。
「すまない。無神経だったな……」
「いや、事実だからね。状況は最悪、それしか言えないよ。それに……」
……なんだか歯切れが悪いな。
何か言いづらい事でもあるのだろうか?
「……悪いけど、君の指名手配を解除する事が出来なかった」
「……何でだ?」
「それに付いては私から話そう。……指名手配は我が国から出たものでは無かったのだ」
今度はラン公女か。
どう見ても某騎士王としか言いようの無いその顔で、
眉間に皺でも寄せているのだろうか?
……かなり苦々しい口調でそう彼女は言った。
「因みに賞金をかけた相手はトレイディアに居るらしいね」
「つまりだ。懸賞をかけた主でも無い以上、規定に従い賞金の十倍を支払わねばならぬのだが」
「OK判った。とても現状では支払える額じゃないよな」
「……確か金貨五百枚でありましたよね、にいちゃの賞金」
そう、何処の誰かは知らないが俺に対しかけられた賞金額は金貨五百枚。
日本円に換算するとおよそ五億円だ。
ギルドの規定に従い賞金額の十倍を支払えば無罪放免となるが……普通支払える額ではない。
今の俺なら払えない事も無いが……正直そんな事に金を使うのも馬鹿らしい気がする。
何故なら、
誰か知らないが敵は金貨五百枚もの賞金をかけられる相手だ。
またすぐに次の賞金をかけてきてもおかしくない。
……そんないたちごっこは御免なのだ。
「仕方ないさ……で、要するに庇いきれないからどこか消えてくれと言う事か」
「まあ……その通りだね。君を引き渡した賞金でこの難局を乗り切ろうという意見もあるんだ」
「だが、殿下はそれを良しとしない。……このままでは殿下の人望にも悪影響が出かねん」
「……仕方ないよなぁ……じゃあ明日にでもこっそり逃げ出すか」
「了解。移動の準備をするであります」
「済まないね。元をただせば我が国内部の問題だった筈なのに」
いや。ルンが関わった時点で、俺は関わらないという選択肢は消えている。
よってこれは必然と言う物だろう。
……しかし、賞金首か。これからどうするかね?
予定通り傭兵国家に向かうにしても、魔法も使えず目も見えないじゃあ自殺行為だ。
「取り合えず、私達はもう行く……出来れば人の見て居ない隙を見て移動してくれ」
「取り合えず明日までは誰にも手出しさせないよ……この裏の意味を良く考えて欲しい」
ああ、判ってる。
逆に言えば明日には誰か動き出してもおかしくないんだな?
……さて、リチャードさんたちは出て行ったが……。
「アリス、誰か近くに見張りはいるか?」
「怪しいのが三人居るでありますね」
アリスの耳元で囁くと即座に答えが返ってくる。
蟻の情報網は聞いた事に関しては直ぐに情報が入ってくるが、
向こうからのアクションに関しては脆い部分がある事が露呈されつつある。
……まあ、直接の情報収集役はただの蟻だから仕方ない。
人間の僅かばかりの怪しい動きなんぞ、理解できる訳が無いのだ。
当然蟻ん娘の誰かが常に気にしていなければ見落としてしまう事も多い。
……後でそこのところも改善せねばならんだろう。
既に監視対象が増えすぎて蟻ん娘達の手に負えなくなりつつあるのだ。
何匹も居るといっても、ロード一匹で監視できるのは精々数名。
更に商会の仕事とかで人手を取られていると言う事情もある。
そう。既に教会、と言うかシスターだけ見張ってれば良いという状態ではないのだ。
今後を考えると監視対象を絞り込むなりして、アリサ達の負担を軽減する必要がある。
どこか安全な場所に着いたら一度じっくり考えてみよう。
「……取り合えず、アルシェを呼んでくれ。今後の打ち合わせをしたい」
「あいあいさー、であります」
恐らくピコピコとアホ毛を揺らし通信したのだろう。
その後数分もしない内に部屋のドアが開く。
「カルマ君、呼んでるって聞いたけど、どうしたの?」
「……先生、何かあった?」
「よんできた、です。それとルンねえちゃ、ついてきた、です」
どうやらルンも付いてきたようだが……まあ、ちょうどいいか。
出て行くにせよ断りも無しでは、また置いていかれたと騒ぎ出しかねないのが今のルンだ。
話は聞かせてやらねばならんだろう。
「取り合えずドアを閉めてくれ」
「あいあいさー、です」
しっかりとドアと閉めたであろう音がする。
そして、俺の寝ているベッドに腰を降ろす感触が二つほど。
「それで、どうしたのかなカルマ君?」
「ああ……どうやら俺の指名手配、解除出来ないらしいんで逃げる事にした」
「……何で!?」
ルンが両肩を掴んできた。
少し手が振るえているが、きっと顔まで真っ青にしているのだろう。
とは言えこれでは話が進まんな。
……さっさと本題に入るか。
「どうやら、俺に賞金をかけたのは国外の人間らしい。今のマナリアでは解除できんそうだ」
「……酷い」
「僕の分は解除されてる。後カルマ君の賞金でも宰相がかけた分は解除されてるよね」
そうだ。だがそれを考慮に入れてもまだ俺には金貨五百枚分の賞金がかかっている。
一般人にしては一生もの。街一つの予算にもなりかねない大金だ。
今後俺が狙われるのは火を見るより明らかと言うもの。
「まあ、そんな訳で何処に行くかを決めようと思うんだ……悪いけどアルシェには暫く」
「いいよ。ボディガードでしょ?お安い御用。望むところだよ」
だが弱りきっているこの現状では直接傭兵国家に行く訳にも行かない。
向こうは他国の犯罪者でも捕まる事は無いにせよ、無法者の天国らしい。
そんな所に今の俺が行くなど自殺行為以外の何物でもない。
では、肉体が回復するまで何処に居れば良いか?
マナリアに留まるのも危ない。
トレイディアではお尋ね者。
……ではサンドール、と言いたい所だがそうも行かない。
「……にいちゃ、言っとくけどサンドールに滞在するのは危険であります」
「ああ。判ってる……まさか、足元から火を吹くとはな」
実は先日の雪山……ドラゴンキラーの一件の為、
アブドォラ家がフレアさんからの報復を受けていたのだ。
まともな物を納めた筈なのに詐欺師呼ばわりされたアブドォラ氏には災難であったが、
ホルスを通してこちらからの資金援助は行っていたので最悪の事態は避けられると踏んでいた。
……ところが予想以上にリオンズフレアの力は大きく、
あちこちの市場から締め出しを食らったアブドォラ商会は遂に解散を余儀無くされたのである。
そう、あの家潰れちまったんだよこれが!
その後、不安に思ったホルスからの依頼でロードを一匹アブドォラ氏専属で付けていた所、
サンドール王宮に赴き、俺の事を洗いざらい喋ってしまったと言う。
とは言え、既にサンドールの税収のうち二割はカルーマ商会関連からのもの。
……今更それがどうしたと言う事で追い出されてしまったそうだ。
ただ、それを利用しようと言う勢力は居るらしい。
もし俺がサンドールに入ったことが確認できたら捕縛し、
難癖付けて財産の没収を狙っているのだと言う。
俺達の最大の支援者はサンドール下層階級。
それ故に他国の人間である事がばれると、可愛さ余って憎さ百倍にもなりかねない。
意外なほどに足元が脆いのは新興勢力の弱みではあるが、
この際それを言っても仕方が無いと思う。
向こうも今のところ大々的に発表する気は無いようなので、
俺が入国さえしなければ大丈夫だろうが……。
まあ、巨大な不安要素を抱えてしまった訳だな。
因みにホルスは危険を感じ、商会の中枢を別な場所に移している最中だと言う。
既にいつ、財産の没収があるか判らない。
もうサンドールには商売に必要最小限の物しか置いておけないとの事だ。
「俺がサンドール国内に入るのは論外だな……居るだけで恐らくばれるだろ」
「そうでありますね」
「でも、どうするの?商都も傭兵国家も、ここすら駄目だって言うなら行く所無いよ?」
「……酷い」
いざとなったら一生を地下で暮らすのも手なんだけどな。
まあ、まだ行き先はある。
いや、いざと言う時の為に備えておいて本当に良かったと思うよ本当に。
「……隠れ家を作ってある。暫くそこで身を潜めるさ」
「そっか。じゃあそこまで護衛すれば良いんだね」
「…………私も、行く」
え?
「ルン?言っておくが一度行ったら暫く帰って来れないぞ?」
「学院は壊れて無くなった。それに……もう離れたく無い」
気持ちは嬉しいが……行き先は荒野のど真ん中だぞ?
しかも、俺自身行くのは初めて、と来たもんだ。
どんな場所なのか。安心して過ごせるレベルまで完成してるかの確約すら出来ない訳だが。
「……最悪、家出する」
「うわ、覚悟完了してるよルンちゃんってば」
「別に良いと思うでありますよ。お部屋は余ってるでありますし」
アリス、煽るな。
後……ルン、縋り付くな。ほお擦りするな我慢できなくなるからマジでヤバイから頼む!
あ、離れたか……それはそれで……ちっ。
「……先生を守る手段は考えている」
「気合入ってるねルンちゃん……これはもう嫌と言っても付いて来るっぽいよカルマ君?」
……まあ、いいか。
どうせ地下滑り台で移動する訳だし、里帰りは一日で出来る。
……そろそろルンにも地下の秘密を教えても良い頃かも知れんしな。
まあ、マナリア王家にばれた時の為、蟻の事は上手く誤魔化しつつになるだろうが。
「……行き先は大陸最南端、レキ砂漠。そこに俺の隠れ家が建設されている」
「あんな不毛地帯に!?水とかは大丈夫なの?」
「井戸を掘ってるでありますから無問題であります」
「……レキ?……遠い」
だが、彼の地には盗賊はおろか世捨て人すら住んでいない。
場所は広いし、昼は蜃気楼で夜は極寒の上暴風吹き荒れる大地。道に迷う要素もてんこ盛り。
だが……距離と不毛さが最強の防壁となってくれる。これ以上安全な場所もあるまい?
「じゃあ、明日早朝に出立するから用意しておいてくれ……他人に気取られるなよ」
「うん、判った。じゃあ、明日ね!」
「……急いで準備しないと」
ぱたぱたと走っていく足音が二つ。
……そしてドアの閉まる音。
うん。やっぱり見えないってのは不安を煽るものだな。
「やっぱり、目が見えないと不便だな」
「首輪が無いならもっと回復も早いと思うのでありますが」
まあ、そりゃそうだろう。
体の異常は魔力不足によるもの。
……母親が魔法生物な俺特有の栄養失調のような物だ。
とは言え、贅沢は言っていられん。
何時賞金稼ぎが襲って来るかも知れないのだ。
それに、早くこの場を離れたいと言う思いもある。
……今回のマナリア訪問は後手に回って失敗が続いたし。
それにしても、今後このような状態に陥らない為にはどうすればよいのか?
「やはり俺は、安全な所で十分に策を練ってから動くのが性に合っているな」
「へ?身勝手オンリーで好き放題に動くのがにいちゃであります!……じゃ無かったっけ?」
「ううん。ルンねえちゃいわく、ほんとはやさしい、とのこと、です」
うわっ!?
アリシアも居たのか?全然気付かなかったぞ!?
「ふぇ?むしろ場の雰囲気に流されまくりだと思うでありますが?」
「ちがうです。けっこう、せきにんかん、あるです!」
おいおい!……皆して、俺の事をどう思ってるんだよ!?
まあいいけどな。……どの台詞にも思い当たる節があるし……。
「……適当臭い所もあるであります。むしろ行き当たりばったりというべきでありますか?」
「よく、かんがえた、ときは、すごく、けいさんづくで、うごくときも、あるです」
「むしろ怖がりで敵対者にだけは容赦ないとも言えるでありますよね」
「たぶん。とりあえず……きほんは、こもの。ちゅうぼうの、かんがえかた、です」
それにしても今回の反省をするつもりが、周囲からの評価を聞く羽目になっているが……。
うん、気にしない事にしよう。周りの評価なんか気にしてる余裕は無いしな。
……それに、まともに聞いてたら多分俺は凹む。
さ、さて。明日の為に今日は早く寝ようかね?
……。
そして翌朝早朝。
合流地点に選んだのは王都西の平原にそびえる大きな針葉樹の下。
……そこで俺は絶句していた。
「ルーンハイム直属魔道騎兵整列!お嬢様と若を無事に南へ送り届けるのだ!」
「この青山も付いて行きたいのですが……奥様のお世話がありますのでモカとココアを付けます」
「……有難う、皆」
なあルン……この大所帯は何だ?
「……これなら安全」
「目立ちすぎるっての!」
「この戦力なら……目立っても、問題無い」
「……いやまあ、そうかも知れんが……」
「カルマ君。もう秘密裏に移動は無理だから連れてくしか無いよ……」
「と、取り合えず移動にかかった経費は商会から出せるよう言っておくでありますね」
「よそうがい、です」
実に誇らしげに胸を張るルンの頭を小突いておく。
向こうは涙目だが今回ばかりは突っ込みを止めんぞ?
「せんせぇ……酷い」
「アホかあああああっ!」
なあ……何処の世界にこんな大規模な夜逃げがある!?
こちとら世をはばかるお尋ね者だぞ?
魔道騎兵の半数……約五百名が付いて来て、隠密行動なんか出来る訳無いだろうに!
ああ、頭痛い。
「爺に相談したらお母様からアイディアが来た。たまには良い事を言う」
「……悪いがぶん殴って良いか、あの義母?」
悪気が無いとかそういう問題を超越してるんだけどこれは。
あの人、頭悪いんだろうな。そうとしか思えん。
しかも……これじゃあもう地下が使えんな。
このまま普通に地上を行くしか無いじゃないか。
「でも、考えてみれば安全な陣内でゆっくり目の回復を待てるであります……よね?」
「そうとでも思わんとやってられないんだが……」
呆れかえりながらももうどうしようも出来ず、
とりあえず、そのまま旅が始まってしまったわけだ。
道のりは約一ヶ月。やれやれ、どうなる事か……。
……そう言えば、あの地下で出会ったお姫様はどうなったんだろうな?
まあ、もう俺には関係ないと思うけど一応な。
「なあアリス。あのティア姫ってあの後どうなったんだ?」
「んにゃ、あの後暫くしてブラッド司祭が近づいてきたんで、あたしは逃げたであります」
ほほう。それでそれで?
当然監視はしてるんだよな?
「そんで、死んだ公爵のおじちゃんと一緒に連れていかれたであります」
「おいおい、遺体を回収されたのか!?何に使われるか判らんぞ?」
あの神官とは名ばかりのカルト死霊術師の群れに身内の遺体なんぞ渡しておけん。
後で取り返す算段をつけないといかんな。
「実は教団が半壊してから監視対象としての優先順位を下げてたでありますが」
「こんかいの、いっけんで、また、さいじゅうようたーげっとに、ふっかつ、です」
「と言うか、優先順位下げろといった記憶は無いんだが……」
あ、ほっぺた膨らんだ。
「むりいうな、です!いそがしくて、たいへん、です!」
「にいちゃ、あたし等に死ねというでありますか!?」
……ぞ、そうか。俺が悪かった。
そりゃあ確かに色々指示を出しすぎたかも知れん。
流石のお前等も物を考えられる個体の数には限界があるよな……。
「要は、トコロテン方式か」
「はいです。ふるいの、おしだされる、です」
「前に頼まれた優先順位の低そうな仕事は後回しにしたであります」
成る程……これは恐ろしい。
取り合えず神聖教会は絶対に目を離しちゃいけない相手だ。こいつ等もそれはわかってる筈だ。
だが、目先の忙しさに負けたに違いない。
……俺も最近目先の事ばかり考えてたよな。
ファイブレスに無茶な突撃かましたり先生の真似事してみたり……。
少し頭を冷やさねばならないだろう。
『愚かしい事だな。それに仕える羽目になった我が身も相当な阿呆だが』
『しっ!五月蝿いぞファイブレス。取り合えず今は普通の馬のふりしてろよ……』
明らかに周囲から頭一つ抜け出した巨体を誇る竜の化身ファイブレス(馬)のぼやきが聞こえる。
街道をぽっこらぽっこらと進みながらなのでどうにも緊張感に欠けるがな。
「ジーヤ団長。斥候より報告。この先三里までに敵の姿無し」
「同じく後方三里、敵の姿無しです」
「左様か。お嬢様方に不安を感じさせぬように頼む」
……その妙に緊張感漂うやり取りだけで不安が増大するんだけどな。
随時何騎かの斥候が四方八方に散って安全の確認を怠らない。
主君を守る騎士団の姿としてはとても正しいと思うのだが……あんた等一つ忘れてないか?
「……ルンは今現在、絶賛家出中の筈なんだが……しかも当主行方知れずなのに」
「左様ですな若様。ええ、良く存じておりますとも……ですが、一つ訂正があります」
ほう、それは何なんだジーヤさんよ。
「閣下の安否の確認は取れております。閣下ご本人より書状を頂いておりますゆえ」
「……へ?」
ちょっと待て。
確かあの人死んだと聞いたぞ?
しかも蟻ん娘ネットワーク経由で今さっき。
……背中に張り付いているアリスを手元に持ってくる。
『……アリス。公は死んだって言ったよな』
『はいであります……他のあたしが直接確認したであります』
宰相の魔法を食らって死亡した所を、
アルシェと骨との戦いの最中に骨の群れに外に押しやられ、地上に落っこちたと聞いている。
当のアルシェ曰く「かなり悲惨な状態だったと思うよ」だそうだ。
『じゃあ手紙とか言ってるのはどういう意味だ?』
『死んだおじちゃんからあたしがお手紙預かって来たであります!』
そうか、お前がもってきたのか。
しかし流石は公だ。死んでも手紙が出せる……。
「んな訳無いだろうがああああっ!?」
「んにゃあああああ!五月蝿いでありますにいちゃ!」
「確かに行方知れずと言われる閣下よりの書状……おかしいと言われても仕方ありません」
「司祭の馬車の下に張り付いて行って、向こうでおじちゃんから直接渡されたであります!」
それは当然別なアリスなんだろうが……待て、と言う事は奴等の本拠地に一匹居るって事か!?
危なくないのかそれは!?
『元から地下に何匹かは常時駐屯してるでありますから無問題であります』
『何匹も付いてて、なんでこの動きを察知できなかったんだよ……』
『商会のお仕事の方が忙しいでありました』
『ほっとくと、てんいんさんに、しんじゃ、まぎれこむから、そっちのかんし、です』
ひょいと馬に飛び乗ってきたらしいアリシアが補足説明を行う。
そうか。確かに諜報より防諜の方が大事だもんな、うちの場合。
防諜ってのはつまりスパイに対する防御だ。これだけは絶対におろそかに出来ない。
……要するに、仕方ないって事か。
『けど、ブラッド司祭と……意識が無くてもシスターへの監視は怠るな』
『はいです。もう油断しない、とおもう、です』
『もうシスターじゃなくて枢機卿であります。目覚め儀式の準備がされてるし要注意であります』
『え?マジで?邪魔は出来ない?』
『何度もやってるでありますが、遅滞させるのが精一杯でありますね……』
そうか、あの人復活するのか。
嬉しいような恐ろしいような……微妙な気分だな。
……と、そこへ差し出される何か。
「おじちゃんからの手紙であります。……一応覚悟して読んで欲しいであります」
「あまりのこと、だから、いままで、だまってました。ごめんなさい、です」
「若の目はまだ治らないとの事ですので、掻い摘んでご説明いたします」
……どうやら手紙らしい。
死んだ公が寄越した手紙、と言う事は遺書と言う事なのか?
良く判らんが、国内で開けない内容なのは確かだろう。
「お嬢様も……色々とお覚悟を」
「……お母様と青山から聞いてる。爺、心配無用」
ルンの声が震えている?
……これは、一体どう言う事なのか……。
……。
騎馬の隊列は、先ほどと変わらない速度で進み続けている。
良く耳を澄ますと時折車輪の音もある以上、馬車が随伴しているのだろう。
……周囲には蹄と車輪の音しか聞こえない。
そう、皆黙り込むしかなかった。
それだけ手紙の内容は……重かったのだ。
「なあ、ジーヤさん。この事はここに居る五百人全員知って……」
「全員知った上でここにおります」
「要は……ルーンハイム家は第一王女側に立つって事だよな?」
「左様です。現王家に対しては……事実上反旗を翻す事になります」
そこまでは宜しくないにしても……まあ良いと言える。
だがその後にどうしても看過出来ない内容が含まれていた。
「それで……何でルンが勘当されねばならんのだ?」
「それが、お嬢様を反逆者にしない、と申しますかこの内乱から遠ざける唯一の手段でした」
「先生。……勝手だけど……私を、捨てないで……」
心配するなと言う答えの代わりに横の馬に跨って併走していたルンの頭を撫で、
ついでにこっちに抱き寄せて、俺の前に横座りさせておく。
家名を失う?それがどうした。俺だってそんな大層なもの持っては居ないぞ?
むしろ余計な家名とかが付いてこない方が身軽で俺としては助かる部分すらある。
公爵家の人間じゃなくなった?何の問題があるって言うんだ。
「……安心しましたよ若。それでこそお守りする意義があるというもの」
「下手な答えしてたら五百人が一気に敵になってたでありますね?」
「ずるっこい、です」
『まあ、その時は我が身の餌食になるだけだがな……魔法使いの血肉は我が魔力の足しになる』
約一頭不穏な台詞をぶっこいているが、
そうでなくても十分洒落にならない話だったと思う。
……要するにだ。この部隊は俺の護衛ではなくルンの護衛なのだ。
放って置けば反乱軍側に付いた公の代わりに、
ルンは新しい当主としてルーンハイムの旗頭として擁立させられていただろう。
そうしないためには一度マナリアとの繋がりを絶つ必要があった。
……俺に付いていくと言う話は渡りに船だったんだろうな。
その為にわざわざ私有する部隊の半数をも付けて寄越したという訳だ。
……だが、だとすれば疑問が一つ残る。
「けどさ、そうなるとルーンハイムはどうなる?誰か分家が継ぐのか?」
「……お母様が動いてる」
成る程、一時的な当主なのかは知らんが、勇者なら公爵家の当主として問題ないだろう。
まあ、敵対する奴等は公を含めて哀れな気もするが、
こちらとしてはさっさと対岸の火事になってくれた方がありがたいと言うもの。
「今頃……家名断絶を上奏してる筈」
「断絶ウウウウウウウウッ!?」
「……苦渋の、決断で……御座います。……何と不憫な……」
「おばちゃんも、お母さんで奥さんだったでありますよ……」
「パパとはたたかえない。って、いってた、です」
「……上奏後、お母様も国外へ退去。……ルーンハイムは、私の、代で、終わる……」
「取り合えず、北に行かれると聞いております。奥様もお辛いでしょう」
ガクガクと震えだしたルンを抱きしめて落ち着かせようと試みる。
……旦那とも実家とも戦えないのは判るが……少し無責任じゃないのかマナさん!?
いや、家族の事だけで精一杯なのか。
ルンの行き先を考えてくれただけでも上出来なのかもしれない。
「……この爺、既に公爵家に仕えて30年を越えております。まさかこのような……」
「爺、ごめん……」
「ちゅうりつ、まもっただけ、えらいです」
「そうそう。既に国内の三割は向こう側に付いたでありますし」
保守層は意外と多い、と言うことか。
もしくは、いわゆる敬虔な信者って奴だな。
「リチャードさんには伝えたか?」
「まだ、です」
「にいちゃ達の国外脱出が終わってからじゃないと危なくて言えないでありますよ」
まあ確かに、そうなったらそのまま軍に編入されかねない。
じゃあ、後で言うんだな?
それならそれでいいさ。
しかし、公がアンデット化して敵対か……こんなの予想できる訳無いだろうに!
……ただ、あのブラッド司祭の動きを察知できなかったのは失態だ。
商都城門戦、北部都市国家侵攻……。
あの人今までさんざん漁夫の利を掻っ攫い続けてたじゃないか。
現在大陸で一番警戒せねばならない人物を放っておいたのが俺の不覚だ。
それとあのティア姫。
良く考えてみればかなり危険な事を念話で口走っていた。
……本当はさっさと消しておくべき人物だったかも知れない。
本当に余計な問題を増やしてしまったもんだ。
「兎も角トレイディア南部国境までは命に代えてもお送りいたします。急ぎましょう」
「おいおい、南部って……トレイディア国内までは普通に侵入する気か……」
「……商都の軍が、先生を狙っていると言う噂がある」
え?マジで?
「本当であります。数百の部隊がマナリア国境線を超えんばかりの勢いで動いてるで有ります」
『でも、うごき、あたしらにはつつぬけ、です』
それはまた、厄介だな。
……商都の軍には知り合いも多い。
あまり戦いたくは無い連中だ。
交戦を嫌った俺達は敵を避けつつ南へと進んでいった。
そうして一ヶ月ほどの時を、俺は移動に費やしていく。
ゆったりとした時間は視力こそ回復させたものの、
俺はその時間を有効活用出来たのではないかという疑念を捨てきれずに居た。
そして、南部国境まであと僅かと言う所で、
遂に、俺達はトレイディア軍に捕捉されたのである。
南部国境沿いに部隊が展開していた。
明らかに待ち伏せ、と言うか迎え撃つ体制が整っている……。
……。
「ふっふっふっふっふ!いつぞやの借りを返させて貰うぞ。正義はわしにあり!」
「そういう台詞は勝利してから言いませんかタコ団長?」
ちっ、ブルジョアスキーとその副官か。
相変わらずのタコ頭だが現状こちらは不法に国境を越えてきた上に賞金までかけられている。
確かに正義は向こうにあるか。
だが、士気の高さではこちらも負けていない。
「左様か……だが、こちらにもこちらの都合と正義がある。全軍、矢の陣!」
「「「お嬢様達を突破させれば我等の勝利だ!」」」
「ふん。兵数は互角……ならば、わし等はまず鱗陣!後続が来るまで耐え抜くのだ!」
「了解しました。良いご判断です。ところで……腹巻姿では格好付きませんよハゲ」
突撃力の高い陣形同士が真っ向から向かい合う。
一見すると互角に見えるが既に相手は戦闘準備を完了しているようだ。
しかも、こちらの騎兵は衝力で突き崩すのではなく機動力で一撃離脱を信条とするタイプ。
正直な所こちら側の不利は否めない……。
ならばどうする?
いつもなら俺自身が突っ込めばいいと結論付けられるが今回ばかりは自殺行為だ。
今回の場合馬は良くても、俺自身が恐らく致命傷を負う。
陣地の奥で縮こまってるしかないのか……!?
……その時、聞きなれた声が轟く。
「騎士団長!待たれよ!彼等と話がしたいで御座る!」
「む!カタ子爵か……ならばやむをえんな。わし等は敵を通さない事のみ考えよ!」
ブルジョアスキーの軍が横一文字に広がりそこで動きを止める。
そして……彼我の軍の中央に割り込む一人のサムライ。
その名はカタ=クゥラ子爵!
トレイディア次期大公にして事実上のトレイディア軍最高司令官でもある。
そして、またの名を……、
「村正参上!カルマ殿に用が有って参った!通されよ!通さねば力づくで通る!」
「村正!?来てくれたのか!」
「あ、カタ子爵だ!……皆、あの人はカルマ君の戦友だよ!」
アルシェの声に、周囲から歓声が上がる。
「居たかカルマ殿!……ブルジョアスキー、手出し無用で御座るぞ!」
「了解ですな。ま、わし等は義務を果たしたのみ。もう撤収しますぞ」
波が引くようにトレイディア軍が引いていく。
そして、村正はこちらの陣内に相当に急いで馬を走らせてきた。
「はぁ、はぁ……カルマ殿、お久しゅう御座る」
「済まない村正、助かった!」
「全く、もう少しであの蛸にカルマ殿の首を持って行かれる所で御座ったぞ?」
「いや、まあちょっと余裕がなくてな。……国境侵犯は大目に見てくれ」
やれやれと言わんばかりに額に指を押し当てながらゆっくりと村正はやってきた。
そして、
「それは構わんで御座る。拙者たちは友人で御座る故」
「いやあ、マジで悪いな村正」
「そう思うなら……何故拙者を裏切った!?」
「………え?」
神速の抜刀。
相手が相手で気が抜けていた事もあり、それに反応など出来なかった。
いや、妖刀の切れ味の前には多少の回避など無意味だったろう。
兎も角今の俺に判る事はあまり多くない。
それは……。
「せん、せええええええええっ!?」
「か、カタ子爵!?カルマ君に何してるの!?……何してるんだよーっ!?」
「に、にいちゃ?せ、背中から刀……カタナ生えてるでありますよ!?」
「ふぇ?ふぇ?!ふえええええっ!?」
『し、心臓を破られたぞ!?おい、しっかり、しっかりせよ!わが身まで滅ぼす気か!?』
ひとつ。
俺の胸元から背中にかけて、深々と、深々と刀が突き刺さっているという事。
そして。
「なあカルマ殿……何故で御座るか!?何故、何故拙者を裏切るような真似を!?」
「なに、いってるんだ、よ……?」
ふたつ。
俺の胸に刀を突き刺しながら、男泣きに泣く村正の姿が見えると言う事だった。
いったい、何が……どうなって……?
白く染まりつつある視界の中、走馬灯のように今までの事が脳裏を駆け巡る……。
……あ、そうか。
みっつ。
そういや確かに俺、コイツの事、裏切ってた、な……。
……。
≪side 魔法王国のアリシア≫
今日もお城の隠し部屋。
ルンねえちゃが「ここで待ってて」言うからずっと待ってるです。
もう骨も居ないし安全だと思うけど、ねえちゃはまだ迎えに来てくれないです。
昔の王様の内緒のお部屋らしいです。
色んな物が無造作に置かれてるのです。
多分他のアリシアを勘違いして、もう居ないと思ってる可能性高いけど、
ねえちゃは迎えに来ると言ってたので一応まだ待ってるのです。
取り合えず、お仕事休めるので後一週間くらいはここに居るつもりです。
お城の厨房で貰ったお菓子、とってもうまー、です。
牛乳もいっぱい貰ってます。早くおっきくなりたいです。
……まあ、種族的な問題であんまりおっきくはなれないんだけど、気分の問題です。
ぺたんこよりぼよよんのほうが良いです。個人的にはそうです。
取り合えず無理なのはわかってるけど一応試すです。
そして人知れず泣くです。
まあ、それはさておき。
ひまです。
待ってる時間は結構長いです。
お昼寝してもやっぱりひまです。
……だからお部屋の物を色々物色するです。
ごそごそごそ。
えっちいご本がありました。
「じさくどうじんし、***はまじでおれのよめ」
よくわかりません。
それにしても変なご本です。
明らかに人が書いて無いとおかしい所が所々抜け落ちてて……あ、メモ発見。
ふむふむ、にじげん?から女の子を取り出す魔法を作ったらしいです。
……ふむぅ。
とりあえず、この魔法は廃棄です。アリサもそう言ってます。
これがあると色々と現実の女の子がやばそうです。真実の危機です。
メスとしては見過ごせません。
つぎです。ごそごそごそ……。
「こるとしんぐるあくしょんあーみー、れぷりか」
鉄砲です。にいちゃの記憶にありました。
横のご本は弾薬の作り方だそうです。
……これは役立ちそうなので回収。
まだ何かありそうです。家捜しです。
……あ、これ。多分冷蔵庫です。
でも、開かないです。鍵穴があるです。
絶対にいつか開けてやるです。
中身はお菓子だと良いです。凄く良いです。
他にもいろいろ面白そうなものがあるです。
皆を呼んで後で残らず回収です。
どうせ、おたしら以外誰にも読めない文字で書いてるし、
魔法文明には不要なものばかりっぽい。
ちょっと、一冊読んでみるです。
『マジパネェのヤバイ位作ったけど、魔法あればいらねぇ、マジ無駄、マジウゼェ』
「まじぱねぇのやばいくらいつくったけどまほうあればいらねぇまじむだまじうぜぇ」
『偉大な先人様とやら涙目、漏れ最強wwwwwwww』
「いだいなせんじんさまとやらなみだめ……あれ?」
……もれさいきょうだぶりゅーだぶりゅーだぶりゅー……なんぞこれ?
高度すぎて読めないです。きっと凄い暗号に違いないのです!
後でにいちゃの所に持って行って読んでもら……、
……あれ?何か皆が騒がしいです。
「大変だーーーッ!二十年前の第一王女が神聖教団を後ろ盾に挙兵したぞーっ!?」
「き、北の森からシバレリア帝国皇帝なる者より親書が!」
「サンド-ル軍、傭兵国家に侵攻!我が国の傭兵達も引き上げるとの事です!」
「リオンズフレア公爵家、レオ公子が行方不明です!」
「トレイディアよりカルマ殿の引渡し請求がまたきました!」
「マナ様が逐電されたぞーーーーーっ!?こんな時にーーーっ!」
「ルーンハイム、レインフィールドの両家が第一王女側に離反したと報告が!」
「心労で殿下が倒れたぞ!どうすりゃいいんだ!?」
……なんか、大変です。
しょせんは他人事なんだけど、大変そうだなと思うで……他のあたし達が騒いでる?
『アリシアちゃんーーーー!にいちゃが刺されたでありますーーーーっ!』
『みんな、たすけて!たすけれ!にいちゃ、たすけえええええですーーーー!』
……ふぇ?
『にいちゃから、血がどばどばどばどば……誰か、誰か、誰かでありますでありますーーー!』
『うえええええええん!にいちゃ、しんじゃう、です!いや!です!アリサーーーーっ!?』
「ふぇ?…………ふええええええええええええええええっ!?」
……結局、ドタバタしてるだけで何も出来なかったです。
にいちゃの所にはアリサが竜の心臓を持って直接向かったです。
あたしに出来る事は……多分お祈りだけでありますね。
神様は信じないです。
だからにいちゃに祈るです。
……お願いだから助かって、です……。
***魔法王国シナリオ 終了***
続く