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No.6980の一覧
[0] 幻想立志転生伝(転生モノ) 完結[BA-2](2010/08/09 20:41)
[1] 01[BA-2](2009/03/01 16:10)
[2] 02[BA-2](2009/05/14 18:18)
[3] 03[BA-2](2009/03/01 16:16)
[4] 04[BA-2](2009/03/01 16:32)
[5] 05 初めての冒険[BA-2](2009/03/01 16:59)
[6] 06忘れられた灯台[BA-2](2009/03/01 22:13)
[7] 07討伐依頼[BA-2](2009/03/03 12:52)
[8] 08[BA-2](2009/03/04 22:28)
[9] 09 女王蟻の女王 前編[BA-2](2009/03/07 17:31)
[10] 10 女王蟻の女王 中篇[BA-2](2009/03/11 21:12)
[11] 11 女王蟻の女王 後編[BA-2](2009/04/05 02:57)
[12] 12 突発戦闘[BA-2](2009/03/15 22:45)
[13] 13 商会発足とその経緯[BA-2](2009/06/10 11:27)
[14] 14 砂漠の国[BA-2](2009/03/26 14:37)
[15] 15 洋館の亡霊[BA-2](2009/03/27 19:47)
[16] 16 森の迷い子達 前編[BA-2](2009/03/30 00:14)
[17] 17 森の迷い子達 後編[BA-2](2009/04/01 19:57)
[18] 18 超汎用級戦略物資[BA-2](2009/04/02 20:54)
[19] 19 契約の日[BA-2](2009/04/07 23:00)
[20] 20 聖俗戦争 その1[BA-2](2009/04/07 23:28)
[21] 21 聖俗戦争 その2[BA-2](2009/04/11 17:56)
[22] 22 聖俗戦争 その3[BA-2](2009/04/13 19:40)
[23] 23 聖俗戦争 その4[BA-2](2009/04/15 23:56)
[24] 24 聖俗戦争 その5[BA-2](2009/06/10 11:36)
[25] 25[BA-2](2009/04/25 10:45)
[26] 26 閑話です。鬱話のため耐性無い方はスルーした方がいいかも[BA-2](2009/05/04 10:59)
[27] 27 魔剣スティールソード 前編[BA-2](2009/05/04 11:00)
[28] 28 魔剣スティールソード 中編[BA-2](2009/05/04 11:03)
[29] 29 魔剣スティールソード 後編[BA-2](2009/05/05 02:00)
[30] 30 魔道の王国[BA-2](2009/05/06 10:03)
[31] 31 可愛いあの娘は俺の嫁[BA-2](2009/07/27 10:53)
[32] 32 大黒柱のお仕事[BA-2](2009/05/14 18:21)
[33] 33 北方異民族討伐戦[BA-2](2009/05/20 17:43)
[34] 34 伝説の教師[BA-2](2009/05/25 13:02)
[35] 35 暴挙 前編[BA-2](2009/05/29 18:27)
[36] 36 暴挙 後編[BA-2](2009/06/10 11:39)
[37] 37 聖印公の落日 前編[BA-2](2009/06/10 11:24)
[38] 38 聖印公の落日 後編[BA-2](2009/06/11 18:06)
[39] 39 祭の終わり[BA-2](2009/06/20 17:05)
[40] 40 大混乱後始末記[BA-2](2009/06/23 18:55)
[41] 41 カルマは荒野に消える[BA-2](2009/07/03 12:08)
[42] 42 荒野の街[BA-2](2009/07/06 13:55)
[43] 43 レキ大公国の誕生[BA-2](2009/07/10 00:14)
[44] 44 群雄達[BA-2](2009/07/14 16:46)
[45] 45 平穏[BA-2](2009/07/30 20:17)
[46] 46 魔王な姫君[BA-2](2009/07/30 20:19)
[47] 47 大公出陣[BA-2](2009/07/30 21:10)
[48] 48 夢と現 注:前半鬱話注意[BA-2](2009/07/30 23:41)
[49] 49 冒険者カルマ最後の伝説 前編[BA-2](2009/08/11 20:20)
[50] 50 冒険者カルマ最後の伝説 中編[BA-2](2009/08/11 20:21)
[51] 51 冒険者カルマ最後の伝説 後編[BA-2](2009/08/11 20:43)
[52] 52 嵐の前の静けさ[BA-2](2009/08/17 23:51)
[53] 53 悪意の大迷路放浪記[BA-2](2009/08/20 18:42)
[54] 54 発酵した水と死の奉公[BA-2](2009/08/25 23:00)
[55] 55 苦い勝利[BA-2](2009/09/05 12:14)
[56] 56 論功行賞[BA-2](2009/09/09 00:15)
[57] 57 王国の始まり[BA-2](2009/09/12 18:08)
[58] 58 新体制[BA-2](2009/09/12 18:12)
[59] 59[BA-2](2009/09/19 20:58)
[60] 60[BA-2](2009/09/24 11:10)
[61] 61[BA-2](2009/09/29 21:00)
[62] 62[BA-2](2009/10/04 18:05)
[63] 63 商道に終わり無し[BA-2](2009/10/08 10:17)
[64] 64 連合軍猛攻[BA-2](2009/10/12 23:52)
[65] 65 帝国よりの使者[BA-2](2009/10/18 08:24)
[66] 66 罪と自覚[BA-2](2009/10/22 21:41)
[67] 67 常闇世界の暗闘[BA-2](2009/10/30 11:57)
[68] 68 開戦に向けて[BA-2](2009/10/29 11:18)
[69] 69 決戦開幕[BA-2](2009/11/02 23:05)
[70] 70 死神達の祭り[BA-2](2009/11/11 12:41)
[71] 71 ある皇帝の不本意な最期[BA-2](2009/11/13 23:07)
[72] 72 ある英雄の絶望 前編[BA-2](2009/11/20 14:10)
[73] 73 ある英雄の絶望 後編[BA-2](2009/12/04 10:34)
[74] 74 世界崩壊の序曲[BA-2](2009/12/13 17:52)
[75] 75 北へ[BA-2](2009/12/13 17:41)
[76] 76 魔王が娘ギルティの復活[BA-2](2009/12/16 19:00)
[77] 77 我知らぬ世界の救済[BA-2](2009/12/24 00:19)
[78] 78 家出娘を連れ戻せ![BA-2](2009/12/29 13:47)
[79] 79 背を押す者達[BA-2](2010/01/07 00:01)
[80] 80 一つの時代の終わり[BA-2](2010/01/14 23:47)
[81] 外伝 ショートケーキ狂想曲[BA-2](2010/02/14 15:06)
[82] 外伝 技術革新は一日にして成る[BA-2](2010/02/28 20:20)
[83] 外伝 遊園地に行こう[BA-2](2010/04/01 03:03)
[84] 蛇足的エピローグと彼らのその後[BA-2](2010/08/10 14:03)
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[6980] 28 魔剣スティールソード 中編
Name: BA-2◆63d709cc ID:5bab2a17 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/05/04 11:03
幻想立志転生伝

28

***冒険者シナリオ9 魔剣スティールソード***

~金炎の雌獅子と勇者の遺産 中篇~

《side カルマ》


……次に目を覚ましたのは、首吊り亭のベッドの上だった。

肉体的な問題は無さそうだし、魔力も回復しきったようだ。

さて、残る問題はどれだけ寝てたかって事だが。


「……フレアさん?」

「んん……レオ。もう少し姉さんを寝かしてくれません事?」


何でフレアさんが俺のベッドの脇に居るんだ?

しかも濡れタオルまで持って。


「うあああっ……にいちゃが起きた!にいちゃが起きたでありますよぉ!?」

「アリスか?ご苦労さん。で、現状の報告を聞きたい」


……いて。

何かポカリと叩かれたんだけど。


「にいちゃ!どれだけあたしらが心配したか判ってるでありますか!?」

「あー、済まん。俺が悪かった」


「むがぁ!だったらもう少し怪我人らしくしてるであります!」

「心配かけて本当に済まん。で、状況はどうなんだ?」


アリスは、はぁと大きくため息をつくと現状の報告を始めた。


ふむ。俺は一週間ほど寝込んでいたわけだな。

フレアさんがここに居るのは自分のせいで俺が死に掛けたと思って申し訳無く思った為と。


あー、判った、アリサ達も怒ってるのはわかった。

後で謝っとくから許せ。


「以上であります。とにかくもう無茶はしない事であります!」

「ああ、そうだな。こんな事で命をかける必要は無いもんな」


「あ、あら?……カルマさん、どうやら目を覚ましたようですわね?」


あ、フレアさんも目を覚ましたか。


「全く。貴方の仕事は私の援護。命までかけろとは言っておりませんのに!」

「それで、看病までしてくれたのか?」


あ、びくってしてる。何か焦ってる?恥ずかしいのか?

まあ、手に濡れタオル持ってる時点で何してたのかは明白と言う物。


「おーっほっほっほ。まあ、頑張った人へのご褒美の一環ですわ!」

「……何だかんだで責任感じてオロオロしてたくせにー、であります」


「おチビちゃん?細かい事は良いんですわ!……さて、貴方も目を覚ました事ですし」

「まさか……またあの竜に挑むつもりか!?」


フレアさんは「勿論ですわ」と答えた。

……正直、まともだとは思えない。


「ああ、貴方に付いて来いとはもう言えませんわ。謝礼はおチビちゃんに渡しておきましたわよ」

「……じゃあ、今度はまさか一人で!?」


「それこそまさかですわ。今度は傭兵団を雇いましたの。結構な腕利きらしいですわ」

「よ、傭兵団まるごと!?」


正気じゃない。それこそ正気じゃないぞ。

傭兵団まるごと雇うって……ピンキリだが最低でも一日金貨10枚はかかるぞ!?


「……そこまでして手に入れる価値が、万能とは言え……ただの薬にあるのかよ」

「ええ。ありますわ。少なくとも私にとっては」


「聞いてもいいか?そこまでこだわる理由を」

「おーほっほっほ!大した理由ではありませんわ。不治の病にかかったライバルに使いますの」


は?

不治の病まではいいが……ライバル!?

家族恋人とかじゃなくて!?


「ええ。10年来の宿敵ですわ。同年代では私と唯一まともに渡り合える娘ですの」

「こう言っちゃ何だが、アンタにライバル視されてるだけで不幸な気がするな」


廃村とは言えうちの村を一撃で焼き尽くすほどの魔力。

そして極めて峻険な結界山脈を悠々と登りきる体力。

……どう考えてもまともに渡り合える奴がどんな娘なのか想像出来ない。


「それになんでだ?敵対してる奴に塩送るようなマネをなんで……」


「何ていうか、その。見るに見かねただけですわ……辛そうでしたし」

「それなら敵対するのを一度やめてやれば?」


あ、首を横に振った。

嫌なのか?


「ふん。あの子が悪いんですわ。これ……私の宝物を勝手に持ってくんですもの」

「それか?なんともまあ古ぼけたヌイグルミだな」


胸元から取り出されたのは小さなライオンのヌイグルミ。

正直言ってそこいらの露天で売っているレベルの代物だろう。

だが随分大切にされている。幾度と無く補修された跡が見えるな。


「ルーンハイムさんも意地を張らずにひと言謝ってさえくれれば私も許しようがあるのですが」

「……ストップ。もしかしてアンタ……リオンズフレア公爵?」


あ、目を見開いた。


「なんでそこで判るんですの?顔を知ってたわけでも無いでしょうに」

「……えーと、マナリア近衛隊の連中から、色々」


以前森の中での一騒動あった時、

リチャードさんの護衛たちから、ちょっとな。


まあ、まさか本人とぶち当たるとは思いもよらなかったが。

と言うか、だとしたら同じ学園の高等部で15~18歳ということになるぞこの人。

何ていうか。…………大人っぽ過ぎて年齢相応に見えなかったんだが。


「おーっほっほっほ!近衛の連中は保身しか考えていなくてよ?きっと禄でもない事ばかりでしょ」

「まあな。だが……クラスの仲間操ってルンを孤立させるのは流石にやりすぎだと思うぞ」


だがまあ、いい機会だ。この際なので言いたい事をぶちまける事に決定。

どうやら悪い娘では無い様なので、取りあえず言葉での説得にかかる。


……もし駄目なら……最悪アリサを動かして行方知れずにでもなってもらうが……。


「はい?私そんな事しておりませんわよ?」

「……じゃあ、ルンを虐めてるとか言うのはどういう事だ?」


うわ。本当に何言ってるのか判りませんわって顔してる。

これは一体どういう事だ!?


「表立って敵対はしておりますが、反撃できないような行動はしておりませんわ」

「え?嫌ってるわけじゃないのか?」


「逆に尊敬している部分もありますわ。使用人達の給金を払うために危険を冒したりとか……」

「ああ、そういえば冒険者になった理由がそれだったな」


「本当に稼ぎきって来たと聞いた時は不覚にも影で感涙してしまいましたわよ」

「……よく考えれば異常事態だよな。公爵令嬢、しかも当時14~15歳だった筈だし」


うん、やっぱりルンはいい娘だ。

……あれ、いや待て。


「……じゃあ不治の病なのは、ルンの奴なのか!?」

「帰って来てから様子がおかしいと思いまして、昔馴染みの使用人が居るので聞いてみましたの」


「そうしたら?」

「……手の付けられない病だと、言われてしまいましたわ」


馬鹿な。

数ヶ月前まではあんなに元気だったじゃないか!?


「学園でも見る度に憔悴して行く様子が見るに耐えませんでしたの」

「それで薬を?……なんて、こった」


ルンが憔悴してる、だと!?

一体どんな病気に侵されてるんだあいつは……。


「ふふ、皮肉な物ですわ。あの娘が元気無いと、こちらまで調子が狂ってしまいますの」

「だから。その為に、こんな……危険を?」


「ほーっほっほっほ!あの子に出来て私に出来ない理屈などありませんことよ?それに」

「……それに?」


ふっと、フレアさんの表情が緩んだ。

表情が高慢っぽい高笑いから、母性を感じるような微笑に変化する。


「数ヶ月前帰国した時……彼女、ご両親の前で笑っておりましたの」

「それが、どうかしたのか?」


「多分……10年ぶり位ですわね。あの子の笑い顔を見たのは……だからかも知れませんわ」

「…………」


言葉も出なかった。

俺にとってルンは。良く笑い良く泣く、甘えん坊の女の子だったんだ。

……けれど、そう言えば初めて会った頃のアイツは……。


「今は……今はアイツ、笑えているか?」

「さあ。何せ二か月前に国を出ましたから判りかねますわ。ただ……」


「ただ?」

「挨拶代わりにお互い憎まれ口を叩き合った時……あの子、酷く表情を歪めましたの」


……表情を歪めたって、それは一対どういう意味で


「私にとって、あの子は何があっても無表情な娘でしたわ……だから違和感を覚えましたの」

「無表情娘の感情的な顔か。精神的な壁って一度崩れると脆いからな……」


「要するに、良くも悪くも感情豊かになってたって事でありますね」


突然アリスが話に入ってきた。

そして咎めるような口調で続きを口にする。


「一応聞くでありますが……幼馴染でありますよね」

「ええ。そうですわよ。あんな事があるまではとても仲良しでしたのよ」


俺の寝ているベッドの上に立ち、顔の高さを合わせて、

アリスはフレアさんと向き合っていた。


「……だったら、当然ルンねえちゃが受けてる虐め、どの程度か知ってるでありますよね?」

「え?ええ。周りから無視されたりしていますわね」


「それだけでありますか」

「それだけって……ああ、後は色々周りから言われていたような気がしますわ」


……今、何て言った?

気がします?

アンタ、首謀者だろ……一体どういうつもりなんだ?


「それが、自分の指示って事になってるって……知ってたでありますか?」

「は?知りませんわ。第一やるとしてもそんな回りくどい手を私は使いませんことよ!?」


あ、ああ……言われてみれば確かにそうだな。

何か気に入らない事があったら鉄拳制裁に持ち込みそうな感じの人だ。

伊達にレスラー体型してる訳じゃ無さそうだしな。


「……やっぱりおかしいであります。アリサに調べてもらうでありますよ」

「それは良いが……何がおかしいんだ?」


「だから!マナリアではフレアねえちゃがやるように言った事になってるのでありますよ?」

「弟辺りには言われるんですわ。幾らなんでもやり口が卑怯過ぎだって……私はそんな事」


ああ、そう言う事か。

誰だって自分が指示して無い事を非難されれば訳判らんわな。

けれど……ここは言っておくべきだろ。


「……いや、卑怯だと思う。アンタ、周りの連中を止めたか?」


きょとんとしてるな。

あー、こりゃ何もわかって無いか。

他ならぬアンタが止めないって事で、話が個人同士の問題じゃ無くなってるって事に。


「偉そうな事言ってしまうが、他の奴の立場になって考えてくれ。」

「……は?」


そう、国一番の実力者が大手を振るって攻撃中の相手だ。

何だかんだでルンの家が気に入らない人間が居ればどういう行動をとるか?

なんて火を見るより明らかだ。


「赤信号、皆で渡れば怖くない、って奴だな」

「アカシンゴウ?よく、判りませんわ」


ああ、その例えをここの人間が判るはず無いか。

ええと、ここで理解してもらうには……。


「つまり、便乗してる奴が居るって事だ」

「便乗?何の?」


「なあ、マナリアの七割を派閥に持つリオンズフレア公?」

「む、何かいやみな言い方ですわ!」


「今、ルンに味方する奴って、同年代に居るか?」

「え?そうですわね。レインフィールドさん辺りがたまにもう許してやれと私に言ってきますわ」


え?たった一人?


「え?他には?仮にもルンの家も公爵だろ?」

「……とは言え没落してあちこちに借金持ち。最早馬鹿にされてる家系ですわよ」


「どんだけ?」

「既にマナ様の名声のみでもっている、公爵と言う肩書きだけの家、ですわ。それに……」


その後、フレアさんから飛び出す言葉一つ一つに俺は打ちのめされた。

一つ一つは良くある事なんだが、全てあわせると相乗効果で酷い事になっているんだけど。


……聞くんじゃなかった。

予想よりずっと酷い状況じゃないかこれ?


「そうそう、マナ様が余りにツケで買い物されるので……マナリア商業組合から締め出しが」

「あ……まさか、ルンの行く所店が閉まり続けるって話は」


「そう。マナ様のとばっちりですわ。……あの方、未だにお姫様時代の癖が抜けておりませんの」

「あー、そう。そうなんだぁ。あははははは」


予想以上に難題のようだな。

……多分、だれも勇者に意見なんか言えんだろうし。

もし言えるとしたらそれは誰かと言えば……。


あれ?もしかしてルンが虐められてる理由ってフレアさんとのイザコザじゃなくて。

実は……母親の身代わり?


まあ、それだけとも思えんが。

きっと色んな条件が運悪く重なってるんだろう。


だがとりあえず今は置いておく。

……彼女を説得できればルンの状況を大分改善できるはずだし。


「えーとつまり。影響力が高い人間がやってるから回りも釣られてしまう」

「……よく、判りませんわ」


「アンタが敵対してる人間は国内の七割を敵に回すわけだよな?」

「そうなんですの?……別に誰にも一緒に戦えなんて強制していませんわよ」


確かにそうなのかもしれない。

だが、周りから見ればどう思うかな?

国の七割が敵対するのが確実な人間に誰が近づくだろうか。

例外はあるだろうが間違いなく孤立するだろう。

孤立した個人相手ならば……弱者でも多数であれば、叩くのは容易い。

誰だって自分が攻撃対象にされたくは無いさ。

当然孤立した人間は更に孤立を深める事になる。


……誰に命令される必要も無い。

弱った獲物に襲い掛かるために必要なのは好奇心と機会、そして免罪符。

そして、罪の意識を麻痺させる免罪符は……彼女が用意してしまった。


そう。皆がやっている。なら自分もやって構わないだろう。

むしろやらねば自分も弾かれてしまうかも。


そう……それこそが追従と不安と言う名の免罪符。

悪意と恐怖の織り成す闇の螺旋回廊だ。


「強制は無い、だがそれに便乗して動く人間は居るだろう?」

「……周りの方達の行動は……私が止めなかったせい、ですの?」


さて、ちょっとは状況に気付いてくれただろうか。

関わったのは僅かな時間だが、彼女は誰かに似て曲がった事が嫌いな人間だと感じた。

例のヌイグルミの件も長年の懸案になっているのは、

要するに向こうからの謝罪が無い事に彼女として納得が行かないからに違いない。


「そして、皆でやっているから私も僕もと追随する連中が出てくるわけだな」

「でもおかしいですわ。それがなんで私からの指示になるんですの?」


「……伝言ゲームさ」


要するに"彼女がやってるから良いんだ"が回りまわって"彼女がやれって言った”

に変換されちまってるわけだろうな。


「人から人へ伝わる内に、話の内容が変わってしまった。と言う話だと思う」

「……でも疑問は残りますわ。だったらあの子は何故やり返さないのか理解しかねますわ」


「それだが……多分。ルンはやり返す気力がなくなってるんだと思う」


これは、今の話の中で思い付いた事だ。

正直、俺の認識ではルンへの虐め=優秀さを妬まれての無視、と言うレベルだった。

けど、どうやらそれでは済まないレベルらしい。


数の暴力は酷いもんだ。特に周囲全てに否定され続けて自信を失う事が怖い。

何故ならそれは、行動の自由を阻害する形無き鎖だから。

解決の糸口すら失わせるという意味において最悪の行動といえる。

明らかに殺されるだろというレベルに至っても被害者がやり返さないと言う事態は、

多分そんなレベルまで追い詰められているからだろう。


ただ、今回の場合……もしかしたら、連中も恐れてるのかもな。

……牙を抜き続けないと体勢を立て直した猛獣に襲われるかもと。

勇者の娘と言う肩書きにはそれぐらいの恐れを持たせるだけの力はあるだろうし。


「兎に角、ルンは精神的に弱ってる故に病魔に取り付かれた、というのが俺の推測だ」

「……病気も虐めも私のせいだった、と仰りたいの?……まあ否定出来ませんわね」


そういう訳ではない。

けど、一因ではあるかも、ぐらいには思って欲しい。

それに俺のせいでもあるのさ。

……さっきから忙しく動き回る壁の子蟻達を見ているとそう思わざるを得ない。


「ルンも理由無く人様の物を持っていくような奴じゃない。出来れば腹を割って話し合って欲しい」

「判りましたわ。……周りの連中のやり口が私のせいならば、話をする義務がありますわね」


それだけ言うと、フレアさんは少しよろめきながら部屋を出て行く。唇が青ざめているが。

ああ、それに俺の方も青ざめている事だろう。


……俺は馬鹿だ。


ルンは強い娘だと思っていた。

甘えん坊だけど芯は強いと勝手に思い込んでいた。


ああ。そう思っていただけだ。


けど実際ルンは強い娘だった。

……少なくとも自身の限界直前まで頑張れる程度には。


少なくとも、平日の昼間からベッドに篭って顔面蒼白で震えてるルンを見て、

平然としていられるほど俺の情は薄くない!


「どしたの!?いきなり膝から崩れ落ちるとか……何があったでありますか!?」

「……自分の馬鹿っぷりに愛想が尽きただけだ」


先ほどから、フレアさんの死角となる場所で子蟻が忙しく走り回っていた。

そして、今も。

……光の三原色のように染め上げられたそいつ等は、

まるでスライドショーのように最近のマナリアの様子を映し出す。


そう。それは先ほどアリスがアリサに"調べてもらった"結果。

アリサ自身、悲壮な感じで「全然気付いてあげれなかった」と嘆いていたらしい。

クソッ……なんで俺達はアイツから目を離したりしたんだ?


忙しかったから、なんて言い訳にもならない。

蟻のネットワークは俺達が知りたいと望んだ事しか調べてこないが、

逆に調べようと思えば大抵の事は調べられる。


ルンが苦しんでいた。

泣きながら俺を呼んでいた。

……俺は叫び声にすら気付いていなかった。


だが今は気付いている。何とかしてやりたいと思っている。

では、今の俺に出来る事は何だ?


「……アリス。俺達も竜との再戦に同行するぞ」

「当然でありますね。薬貰うで在ります……ルンねえちゃ、心配でありますし」


親父の形見の剣を見る。

……見た目はただの鋼の剣だが、造り自体はかなり丈夫な物だ。

それに絶対不壊の呪いとやらも、こうなると頼もしくすらある。

多分あるであろう副作用も恐れている場合ではない。


「兎に角、明日にでもフレアさんとこに行こう。今度は仕事抜きで同行させて貰う」

「もし、駄目だと言われたらどうするでありますか?」


「無理にでも付いて行くさ……もう他人事じゃないからな」

「はいであります。……でも今は先ず英気を養うでありますよ」


ああ、全くその通りだ。

……あの竜を倒してルンの病気を治してやらねばなるまい。

それが、アイツの為に今の俺が出来る唯一の……唯一?


「アリス。その前に一つ頼まれてくれ。手紙を書く」

「ルンねえちゃにでありますか!?」


当然だ。

まあ、気休めだがアイツにも味方が居る事を教えてやらんと。

孤独が毒として全身に回る前に、何とか応急処置を施しておかねば。


後、そう遠くない内にルーンハイム公に対しそれとなく現状を伝えないとまずいかもな。

何か、子供の事に親が口出しすべきじゃないって教育方針みたいだが、

もうそれでどうにかできる段階はとうに過ぎ去ってしまってる。

マナリアへ、一度行かねばならんだろう。


急いでペンを動かし、取りあえずルンに宛てた手紙を用意する。

……未だマナリア行きの地下通路の整備は終わっていない。

だが、手紙一通届ける程度の力はあるはずだ。


「すまんが早ければ早いほど良い。明日までに何としても届けるんだ」

「委細承知であります!」


今後の予定は決まった。

体を休め、竜から薬を奪い取ったら直ぐにでもマナリアまで行こう。

……ルンの苦しみをを何とかしてやりたい。

絶対に助けてやりたいんだ……。


「そうだ……アリス。ついでに魔道書も取ってくれ……火竜に効きそうな魔法が無いか調べる」

「了解。でもにいちゃ……ひと言言いたい事があるでありますが」


確かに無理はしているだろう。

だが、俺にとって使い勝手のいい魔法が火炎系ばかりなのは問題だと思ったんだ。

……ルンの家の魔法を使うのは愛弟子から盗み取っているようで嫌だしな。


「ああ、無理はしない。それと明日の為の装備を準備しておいてくれ」

「いや、そうでは無いでありますが……まあ取り合えず準備はしておくでありますよ」



そして翌朝。

俺は準備を万端整えフレアさんの所に向かう。


「お嬢様なら、もう出かけられましたよ」


流石に、もう出かけた後だとは思わなかった。

こんな所でオチ付けてる場合じゃないだろうに。

……急いで追いかけないと!


ルン、辛いだろう。でももう少ししたら助けに行く。

だからもう少し待っててくれよ?


……。


《side ルン》

気が付けば朝。今日も変わらず目が覚める。

……けれど今日もベッドから出て行く気がしない。


「お嬢様、お食事の時間ですよ?」

「……いい。いらない」


食欲は無い。ベッドから起き上がる気力も無いのに食事する気力なんてあるわけ無い。

最近は起き上がるのも億劫だ。それに全身がだるい。


「学校は……いかがされます?」

「休む」


今では三人しか残っていない使用人の一人が心配そうに声をかけてくれた。

でも、正直放っておいて欲しい。

……皆の忠誠は嬉しいけれど、もういっそこのまま消えてしまいたいとすら思っている。


「まだ、お加減は宜しくありませんか?」

「……ん」


最初はただの仮病だった。

なのに三日もする頃には本当に体が動かなくって居た。

……お医者様にも原因がわからないらしい。


「多分……天罰だから」

「お嬢様!冗談でもおやめ下さい!?」


ううん、これは多分天罰。

嘘付いて学園を休んだから罰が当たったんだと思う。


「だから……放っておいて。……今日は誰も通さないで」

「あの、お友達がいらしてますが、それでもですか?」


友達?

私に友達は居ない。

からかいに来ただけの人間と会っても不愉快なだけだ。


「そう、ですか。でしたらあの小さな子にはお帰り願うしか無いですね」

「……小さい子……誰?」


少なくとも、親族以外で私に小さな子供の知り合いは居ない筈……


「あたし、です。おひさです、ルンねえちゃ」

「……アリシア、ちゃん?」

「え?あ、あのお客様……勝手に寝室まで入ってこられては困りますが!?」


ガタンと音がして床板が外れる。

そして、そこから顔を出した懐かしい顔は……!


「だめ。むりやり、おしいらないと、けっきょく、いれてくれなかった、です」

「……それは当然な気がするんですけど。メイドとしては」


この子はアリシアちゃん。先生の妹。

トレイディアに居るはずのこの子がどうしてここに?


「……モカ。彼女は大事なお客様。そのままでいい」

「え?良いんですか?土と埃で汚れきってますけど」

「にいちゃからおてがみ、です……きのう、ねてない。つかれた、です」


そう言って差し出されたのは手紙。

……先生からの、手紙……先生から!?


思わず跳ね起きると手紙をその手からひったくっていた。

土の付いた封筒を開けるのももどかしく感じ、破った先から手紙を引きずり出す。



―――拝啓、我が愛弟子ルン。可愛いマジカルプリンセスへ。

ようやく雪解けの季節となりました。そちらはいかがお過ごしでしょうか。

さて、前置きはこの辺にしておく。あまり良く無い噂を聞いたので筆を取った次第。

最近元気が無いようだが周りと上手くやっているか?

もし何かあったら俺が何とかしてやる。余り気に病むな。

辛かったら何時でも頼る事。俺は、俺達は何時でもお前の味方だ。

……今まで気が付いてやれなくて、済まん。

カルマより。愛と勇気と希望を込めて。



「しょうじき、はずかしい、です。にいちゃ、ぼうそう」

「なにこれ……もしかしてラブレターですか?」


「んにゃ、ちがう。いちおう、げきれいのおてがみ、です。……ねたなんか、しこむから」

「どの辺がですか?あー、ココアー!?見てこれ!お嬢様に春が来たよ!」


メイドのモカが相方のココアに読ませようと手紙に手を伸ばしてきたので、

体を丸めてガードした。持っていかれる訳には行かない。


「……これは私の」

「ルンねえちゃ、げんきでた、です?」


当然。

先生が心配してくれていた。それだけで何よりも嬉しい。

……安心したら、すこしお腹がすいた。


「モカ……スープを」

「あ、はいお嬢様!青山さーん、お嬢様が朝ごはん食べるそうですよ!」


慌てたようにモカが部屋から走り出る。

心配しなくても、別に逃げないのに。

けど、食事をするのは二日ぶりだ。

心配されていても仕方ないのかもしれない。


「ルンねえちゃ?おびょうき、だいじょうぶ、ですか?」

「……ん」


アリシアちゃんの格好は相変わらずぶかぶかのローブ。だけど今日は妙に汚れていた。

よほど急いで持ってきたのだろう、この手紙を。

……わざわざ、あんな遠くから。


「もう、大丈夫……先生が、見守っててくれる、から」

「はいです。にいちゃも、もうすぐ、たすけにくるです……それまでがんばれ、です」


……先生が、来てくれる?


「……本当?」

「ほんとう、です!」


アリシアちゃんは首を縦にぶんぶんと振っている。

……本当に、本当に来てくれるんだ。


じっと、再び手紙を見つめてみた。

急いで書いたような跡があちこちに見受けられる。

文法も何もかも無茶苦茶だ。……けれど、それがまた嬉しい。


「……ありがとう」

「むぎゅ、です」


アリシアちゃんを思わず抱きしめていた。


……いつの間にか小鳥のさえずりが聞こえている。

それに今日は風が強いようだ。風の音が窓を叩いている。

そんな当たり前のことに今、初めて気が付く。


そしてもう一度、もう一度文面を読み直した。

存在するだけで私の心を暖めてくれるそれを。


「先生……私も、あいしてる……」

「ふえ?」


急速に戻っていく活力を全身から感じ、私は数日振りにベッドから立ち上がった。

……私の先生にだけは、こんな姿を見せたくない。

せめて、こけた頬くらいは何とかしておかなければ、先生の前になんて出られない。


……駄目だ、よろめいて立っていられない。

仕方ないので悪いとは思いつつアリシアちゃんに声をかける。


「……服、取ってくれる?」

「はいです、おきがえ、てつだうです」


取り合えず、お母様のお古である薄桃色の部屋着を持ってきてもらう。

とは言え私の服は制服以外お母様のお古ばかりなのだが。

まあ、私の服なんて仕立てさせている余裕は我が家には無いし仕方ない。


……それに、今思い出したがもうじきリンも帰って来る筈。

きっとまた勝負とか言って私を地べたに這い蹲らせるつもりだろう。

それに、その後ハイエナのように勝負を挑んでくるであろう卑怯者も居る筈だ。


けれど、先生の目の前でだけは無様な姿を晒したく無い。

それまでに何とか体調を元に戻しておかないと……。


……。


≪side リオンズ"フレア"≫

早朝、太陽すらまだ上っていないこの時間帯。

ですが私は百名を越える傭兵団を引き連れて、

今再びあの結界山脈の火竜に挑もうとしているのですわ。

愚かしい事ですわよね?

昔馴染み一人の為に一度敗北した竜に挑むなんて。


けれど、後に引く気はありませんわよ。

私はリオンズフレア公爵家当主。

王国宰相フレイア=フレイムベルトより分かたれた、獅子の一族を率いる焔。

私は幼き頃より誰よりも誇り高くあれと言われ続けてきた。

そして母上亡き後、巨大な我が家を支えてきたと言う自負があるのです。

当然、敗北なんて認めませんわよ。


今回は迷う事も無いでしょうし人数も桁が違う。

これなら流石の竜も一網打尽ですわ!


「アルシェ隊の移動準備出来たよ、依頼人さん」

「おーっほっほ!宜しいですわね?竜退治ですわよ!」


ですからルーンハイムさん。

勝手に死んだりなんかしてはいけません事よ?


「はいはい。それでさ、一応聞くけど作戦はどうなってるの?」

「細かい事は良いんですわ。数の暴力で一網打尽ですわよね!」


あら?どうなされましたのアルシェ隊長?

笑顔が固まっておりますわ。


「えーと。僕が事前に聞いてた話だと……相手は竜だよね?」

「おーっほっほっほ!そうですわ。その通りですわよ」


「えーと、竜相手に策無しで人間が挑む?それ、ありえないから」

「まあ、でしたら何か策はありますの?」


これだけの数が居れば作戦なんていらないと思っておりましたが、

傭兵の皆さんの様子からすれば、それは間違いのようですわね。

正直作戦を用意するなんて面倒な事は余り好まないのですけど。


「うーん。そもそも人間が竜に挑もうとか言うのが無茶なんだけど……強いて言えば」

「強いて言えば?」


「竜に魔法は効かない筈。よって効果的な装備を整えとくべきだね」

「一度勇者の武具を探しましたわ。結局ただの鋼の剣でしたけど」


「じゃあ、せめて出来るだけ強力な前衛を用意して欲しいな」

「……心当たりは現在療養中ですわね」


その言葉に先日私を逃がすために犠牲となった冒険者……カルマさんの事を思い出しました。

けれど、一度死に掛けた彼をこれ以上連れまわすのも気が引けますわね。

もし……この世の何処かに居るであろう父上がここにいらっしゃられたなら。

そんな益も無い事を考えてしまいますわ。

まあ、所詮は母を棄てて消えてしまったような男ですけど。


「カルマ君も何か寝込んでるみたいだし、タイミング悪すぎだよ……」

「そうですわね。まあ、せめてもと思い竜殺しの剣を買い込んでおきましたからお使いなさい」


指を弾いて使用人達を呼ぶと、幾つかの木箱を持って現れましたわ。

どうやら、手に入ったようですわね?


「お嬢様、注文していた竜殺しの剣が届きました」

「判りましたわ。さあ傭兵団の皆さん、これをお使いになって」


……あら?どうされたんでしょう。皆さん微妙な顔をされておりますわね?

この剣は一本で金貨一枚する高級品ですわよ?

全員分ありますし、そのまま差し上げますから遠慮せずお使いなさいな。


「いや。それ……儀礼用の剣だよ?」

「ギレイヨウ?」


「要するに、見た目だけ」

「……ハーレィ?」


ちょっと私兵の三人組の一人を呼び出して睨みつけてみますの。

さて、一体どういうつもりなのかしら?

怯えて無いで何かおっしゃい。


「え?いやしかしお嬢様、竜をも殺せる武器が欲しいと言ったらこれが出てきましたが」

「……その商人は何処の愚か者ですの?」


「えーと、サンドールのアブドォラ家とか」

「おーっほっほっほ!……後で潰しますわ」


全く、こちらは真面目にやっておりますのに偽物を掴ませるなんて!

いいですわ、いずれ我がリオンズフレア総力を持って叩き潰して差し上げます。

……我が家の影響力、祖国のみにしか及ばないとは思わないで欲しい物ですわ。


「……まあ、仕方ないですわね。これは後で棄てますわ」

「取り合えず値は張りそうだし、僕は一応貰っておくけどね」


アルシェ隊長が剣を手に取りましたわ。

……私も取り合えず一振り手にして見ましたが……綺麗ですけど確かに張りぼてですわね。

軽く岩に叩きつけただけで折れてしまうなんて、なんと言う粗悪品なんでしょう。


「ふぅ。要するにさ……本当に正面から行くしかない訳?」

「おーっほっほっほ!武具や装備に頼らず最初からそうすれば良かったんですわ」


「いや、良くないよ!?」

「さ、取り合えず行きますわよ?細かい事は考えてられませんもの」


私の生き方は正面突破。

まあ、駄目なら駄目で……生きていれば出直すことにしますし。


「少しは考えようよ?僕らも生きてるんだよ!?」

「おーっほっほっほ!細かい事はいいと言った筈ですわよ?ではそろそろ行きましょうか」


大丈夫ですわアルシェ隊長。傭兵なら依頼人が居なくなったら逃げるんでしょう?

……今度は私自身が最前線で竜と相対しますわよ?

自分だけ安全な場所にいようなんて思っておりませんの。……ですから。


「さあ、参りますわよ?今はただ、私の後に続くのですわ!」


続く


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