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No.6980の一覧
[0] 幻想立志転生伝(転生モノ) 完結[BA-2](2010/08/09 20:41)
[1] 01[BA-2](2009/03/01 16:10)
[2] 02[BA-2](2009/05/14 18:18)
[3] 03[BA-2](2009/03/01 16:16)
[4] 04[BA-2](2009/03/01 16:32)
[5] 05 初めての冒険[BA-2](2009/03/01 16:59)
[6] 06忘れられた灯台[BA-2](2009/03/01 22:13)
[7] 07討伐依頼[BA-2](2009/03/03 12:52)
[8] 08[BA-2](2009/03/04 22:28)
[9] 09 女王蟻の女王 前編[BA-2](2009/03/07 17:31)
[10] 10 女王蟻の女王 中篇[BA-2](2009/03/11 21:12)
[11] 11 女王蟻の女王 後編[BA-2](2009/04/05 02:57)
[12] 12 突発戦闘[BA-2](2009/03/15 22:45)
[13] 13 商会発足とその経緯[BA-2](2009/06/10 11:27)
[14] 14 砂漠の国[BA-2](2009/03/26 14:37)
[15] 15 洋館の亡霊[BA-2](2009/03/27 19:47)
[16] 16 森の迷い子達 前編[BA-2](2009/03/30 00:14)
[17] 17 森の迷い子達 後編[BA-2](2009/04/01 19:57)
[18] 18 超汎用級戦略物資[BA-2](2009/04/02 20:54)
[19] 19 契約の日[BA-2](2009/04/07 23:00)
[20] 20 聖俗戦争 その1[BA-2](2009/04/07 23:28)
[21] 21 聖俗戦争 その2[BA-2](2009/04/11 17:56)
[22] 22 聖俗戦争 その3[BA-2](2009/04/13 19:40)
[23] 23 聖俗戦争 その4[BA-2](2009/04/15 23:56)
[24] 24 聖俗戦争 その5[BA-2](2009/06/10 11:36)
[25] 25[BA-2](2009/04/25 10:45)
[26] 26 閑話です。鬱話のため耐性無い方はスルーした方がいいかも[BA-2](2009/05/04 10:59)
[27] 27 魔剣スティールソード 前編[BA-2](2009/05/04 11:00)
[28] 28 魔剣スティールソード 中編[BA-2](2009/05/04 11:03)
[29] 29 魔剣スティールソード 後編[BA-2](2009/05/05 02:00)
[30] 30 魔道の王国[BA-2](2009/05/06 10:03)
[31] 31 可愛いあの娘は俺の嫁[BA-2](2009/07/27 10:53)
[32] 32 大黒柱のお仕事[BA-2](2009/05/14 18:21)
[33] 33 北方異民族討伐戦[BA-2](2009/05/20 17:43)
[34] 34 伝説の教師[BA-2](2009/05/25 13:02)
[35] 35 暴挙 前編[BA-2](2009/05/29 18:27)
[36] 36 暴挙 後編[BA-2](2009/06/10 11:39)
[37] 37 聖印公の落日 前編[BA-2](2009/06/10 11:24)
[38] 38 聖印公の落日 後編[BA-2](2009/06/11 18:06)
[39] 39 祭の終わり[BA-2](2009/06/20 17:05)
[40] 40 大混乱後始末記[BA-2](2009/06/23 18:55)
[41] 41 カルマは荒野に消える[BA-2](2009/07/03 12:08)
[42] 42 荒野の街[BA-2](2009/07/06 13:55)
[43] 43 レキ大公国の誕生[BA-2](2009/07/10 00:14)
[44] 44 群雄達[BA-2](2009/07/14 16:46)
[45] 45 平穏[BA-2](2009/07/30 20:17)
[46] 46 魔王な姫君[BA-2](2009/07/30 20:19)
[47] 47 大公出陣[BA-2](2009/07/30 21:10)
[48] 48 夢と現 注:前半鬱話注意[BA-2](2009/07/30 23:41)
[49] 49 冒険者カルマ最後の伝説 前編[BA-2](2009/08/11 20:20)
[50] 50 冒険者カルマ最後の伝説 中編[BA-2](2009/08/11 20:21)
[51] 51 冒険者カルマ最後の伝説 後編[BA-2](2009/08/11 20:43)
[52] 52 嵐の前の静けさ[BA-2](2009/08/17 23:51)
[53] 53 悪意の大迷路放浪記[BA-2](2009/08/20 18:42)
[54] 54 発酵した水と死の奉公[BA-2](2009/08/25 23:00)
[55] 55 苦い勝利[BA-2](2009/09/05 12:14)
[56] 56 論功行賞[BA-2](2009/09/09 00:15)
[57] 57 王国の始まり[BA-2](2009/09/12 18:08)
[58] 58 新体制[BA-2](2009/09/12 18:12)
[59] 59[BA-2](2009/09/19 20:58)
[60] 60[BA-2](2009/09/24 11:10)
[61] 61[BA-2](2009/09/29 21:00)
[62] 62[BA-2](2009/10/04 18:05)
[63] 63 商道に終わり無し[BA-2](2009/10/08 10:17)
[64] 64 連合軍猛攻[BA-2](2009/10/12 23:52)
[65] 65 帝国よりの使者[BA-2](2009/10/18 08:24)
[66] 66 罪と自覚[BA-2](2009/10/22 21:41)
[67] 67 常闇世界の暗闘[BA-2](2009/10/30 11:57)
[68] 68 開戦に向けて[BA-2](2009/10/29 11:18)
[69] 69 決戦開幕[BA-2](2009/11/02 23:05)
[70] 70 死神達の祭り[BA-2](2009/11/11 12:41)
[71] 71 ある皇帝の不本意な最期[BA-2](2009/11/13 23:07)
[72] 72 ある英雄の絶望 前編[BA-2](2009/11/20 14:10)
[73] 73 ある英雄の絶望 後編[BA-2](2009/12/04 10:34)
[74] 74 世界崩壊の序曲[BA-2](2009/12/13 17:52)
[75] 75 北へ[BA-2](2009/12/13 17:41)
[76] 76 魔王が娘ギルティの復活[BA-2](2009/12/16 19:00)
[77] 77 我知らぬ世界の救済[BA-2](2009/12/24 00:19)
[78] 78 家出娘を連れ戻せ![BA-2](2009/12/29 13:47)
[79] 79 背を押す者達[BA-2](2010/01/07 00:01)
[80] 80 一つの時代の終わり[BA-2](2010/01/14 23:47)
[81] 外伝 ショートケーキ狂想曲[BA-2](2010/02/14 15:06)
[82] 外伝 技術革新は一日にして成る[BA-2](2010/02/28 20:20)
[83] 外伝 遊園地に行こう[BA-2](2010/04/01 03:03)
[84] 蛇足的エピローグと彼らのその後[BA-2](2010/08/10 14:03)
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[6980] 26 閑話です。鬱話のため耐性無い方はスルーした方がいいかも
Name: BA-2◆63d709cc ID:5bab2a17 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/05/04 10:59
幻想立志転生伝

26


《side ホルス》

主殿が再び冒険者として旅立っていかれたその翌日。

私はサンドールに戻る前にアリサ様に呼ばれました。


地底を走る巨大な坂を滑り降り、はるか南へ。

見えはしませんが森を抜け、広い荒野へ。

そして、たどり着きます。レキと呼ばれる不毛地帯へと。


特別な資源があるわけでもなく。

流通に必要な訳でもなく。

オアシスすらないこの荒野を訪れる人間など、

最近まで誰もおりませんでした。


……ですが、現在は違う。

そう、この地は生まれ変わろうとしていたのです。


……。


「アリサ様。ホルス、参りました」

「あー、ホルスだー。お疲れー」


主君が妹と呼ぶ魔物の娘、アリサ様。

この方が生れ落ちた時はそれはもう驚いた物です。

……ですが、この方を味方に引き込んだ時、全てが変わりました。

少なくとも、私にとって全てが良い方向に。


「それで、一体いかなる用件でしょうか?」

「うん、見て見て!町が出来たんだけど、そろそろ待機させてる人たち呼んでもいいかな?」


ああ、そういう事ですか。


今、私達の視線の先には無数の規則的に並んだ屋根が見えています。

そう。ここは主殿の命令で作られつつある街の中心。

主殿が己と己の為に働いた者達の為に用意し始めた別天地なのです。

そして……今私達が立っているのは、

その中心となる主殿のために建築中の屋敷……いえ、城です。


「私の意見が必要ですか……それでしたらもう少し街を広げ、城壁で覆うべきかと」

「なにゆえ?決死隊の人達とその家族、それとスラムの人達の分のお家は確保したけど」


「主殿はいざと言う時の隠れ家と仰られておりました。つまり、自給自足が必要です」

「じゃあ、地下水脈をもう少し持ってきて、畑くらい作れるようにしないとね」


「はい。それにあなた方の事は機密。蟻達は人が越して来たら表に出さない予定でしたよね?」

「なるへそ。要するに今の内、余裕を持って建設しとくべきと」


「はっ、その通りで御座います」

「ういうい。ならも少し広げておくか……ところで何で城壁必要なの?」


アリサ様らしくも無いですね。

まだ子供ですから仕方ないのでしょうが……地下の魔物たちを統べる身の上としては心配です。

少し苦言を呈しておきましょうか。


「いいですかアリサお嬢様。まず第一に、埃塗れの風から街を守るためです」

「防風林代わり?なるほど、判ったよー」


「そして、もう一つは……国防の為です」

「へ?なんで?こんな不毛の地に誰か攻めて来るの?」


「不毛の地なのは恐らく今だけ。いずれここは他者が羨む地となるでしょう」

「うん。そりゃあ兄ちゃの街だからね。でも、移民は秘密裏に行われるから誰にも知られないよ」


……ああ、その考えは甘いのです。


「アリサ様。人の欲望を甘く見てはいけません。いずれきっと誰かがこの街を見つけ出します」


そう、人にとって住みよい場所があれば、人は必ず見つけ出すでしょう。

そして……主殿は恐らく頼ってくる者達を邪険にする事は無いはず。


「私は……短い間ですが主殿を見ていて気付いた事があります」

「ほぉほぉ。それは何?」


「意外と……あの方は自分に敵意を向けない物に対し、甘い」

「え?味方には優しい、じゃなくて?」


「はい、シスター・フローレンスの一件を見ても判るでしょう?」

「まあ。あんだけやられて結局最後まで明確な殺意無しって……普通でもありえないよね」


そう、あの方が非情に徹する事が出来るのは、基本的に己に害意を持つ者。

そして余り関わりの無い者達に限られるような気がします。

そうで無い場合、「殺意が沸いた」と己で仰られた事でも恐らく本心ではそう思っていない。


「……私が恐ろしいのは、主殿はそれに気づいておられないと言う事です」

「まあ、確かに不安定な人だよね、兄ちゃってさ」


そう、主殿は不安定な方だ。

私どもの様に、完全な味方にはお優しい。

それは良いのですが、

敵には非情に徹しているように見えて……時折ぽろりと情けを出すことがある。


私はそれが常々疑問でした。

そして、様々な事象を鑑みて一つの結論に至ったのです。


主殿の敵意は、相手側の害意に比例するのではないか、と。


言い換えるなら、理屈では非道に徹するべきと己を律しようとしているのですが、

感情では……他者を害さないで済む事を望んでいるように思うのです。

そして反面、不安を極端に嫌っても居ます。

自分に敵意を向ける相手には容赦できなくなると言うか……。


上手く言葉に出来ませんが、主殿は怯えているように思うのです。

まるで泣きながら巨大な剣を振り回していると言いますか。


「……まー、元々虐められてたみたいだし、仕方ないかもね」

「仕方ない、と仰られますと?」


「ホルスなら信用できるから言うけど……兄ちゃはね、力を手にした虐められっ子なんだよー」

「……あの、あの主殿に虐めを行える猛者がこの世に存在するのですか!?」


「昔の話だよ?ずっと、ずーっと昔。力が無かった頃の話」

「そうでしたか。それなら納得です……後悔しておられたのですね?」


「そだよ。黙ってても止まらなかった。だから壊してるの、徹底的に」

「それでも、生来の気質は変わっていない、と」


人は、恐ろしい物です。

虐待で死んでいった奴隷たちを私は数多見て来ました。

その大多数は過酷な労働や事故によるものでしたが、

時折……そう時折、主君の無体の果てに散っていった命もそれこそ沢山ありました。

それも面白半分で。


「加害を加える者は軽い気持ちなのですよね。それで相手がどう思うとかまで考える筈が無い」

「そだね。しかも大抵やられる方は心が折れて無抵抗になってくから行為は加速する……」


そして、一人の人間が終わる。

傷を負った心に、やり返さなかったお前が悪い。と言う侮辱まで受けて。

心に傷を負っても、肉体の傷と同じく人は身動きできなくなる物なのです。

なのですが……実体験無しでそれを理解するのは難しい……。


……しかも、人を傷つけたほうは人を害した行為を行った事すら忘れていく。


ですがそれは当然なのです。

何故ならそれは狩猟本能の一環。ただの遊びだから。

人間と言う種にとって不幸だったのは、

同族に対しそれを行うようになってしまったことでしょう。


「でもね?それでもたまーに、逆襲に打って出る人も居るんだよね」

「一万の内一つ程度の確率では無いですか?」


「そだねー。でもさ、もしそれで"恨みを完全に晴らした"らどうなると思う?」

「奴隷が主君に牙を剥いたらと考えると……消されますね、確実に」


「そうだよ。……兄ちゃはそれで岩戸に篭った。世間の非難を浴びながら」


アリサ様の異形の瞳が剣呑な光を帯び始める。

これは……相当にお怒りですね。


……しかしおかしいですね。

主殿の半生を振り返るに、そんな目にあった記録など何処にも無いです。

いえ、アリサ様の仰りように嘘偽りは感じられない。ならば真実なのでしょう。

そして、それならば私はそれをただ受け入れていれば良い。


「それから幾年……とうとう耐え切れなくなった兄ちゃは……己の一生を終わらせた」


さて、どうした物でしょうか。

何か、私には理解できかねる事情があるご様子。

……いえ、今はただ話が終わるのをただ待つべきでしょう。


「おかしくない?やられた事を一度に返しただけだよ?それで非難されるっておかしくない?」

「アリサ様!?お、落ち着いて下さい!」


「でも、責められたのは兄ちゃだった。だから兄ちゃは……大事なのは初めなんだって決めた」

「……初めから反撃を忘れなければ、無闇に無体を受ける事も無い、と?」


「そゆこと。でもね、やっぱり無理が来てる。本当は怖がりな癖に自分を騙して生きてるから」

「それは……まるで主殿がいずれ破綻する、そういう風に聞こえるのですが」


アリサ様は否定なされませんでした。

広大な大広間。涼しさを得る為に循環し続ける水の音だけが周囲を包みます。


「……希望はまだあるよ。でも、このままじゃいずれ兄ちゃの心は砕け散る」

「そういえば、この地は予想より大きな街になりましたよね?もしやアリサ様は」


ここを、主殿が砕けた時の為に用意したのでは無いでしょうか?

私も人の事は言えませんが、この街は恐らく主殿の想定している規模からかけ離れています。


「違うよ?この街は兄ちゃにいずれ必要になるから作った街……もし、兄ちゃが壊れたら」

「壊れたら?」


「……今度は、あたしが守るよ。あたしが赤ちゃんの頃、危険を冒して助けてくれたみたいに」


そうでした。

主殿は己の腹に寄生していたアリサ様に気付いたとき、助けると言う道を選ばれていました。

ご本人からすれば利用したとか仰られるのでしょうが。

……今のあの方とその可愛がりぶりを見るとそれは嘘だとわかります。


「兄ちゃが傷ついて動けない時はあたしが守る。それが妹と呼んでくれた兄ちゃに対する恩返し」

「不詳、このホルスも微力ながらお手伝いいたします」


「うん、期待してる。……でも、兄ちゃが冒険に戻ってくれてる内は大丈夫だと思うよ」

「それはどういう意味でしょうか?」


「兄ちゃはね。冒険者として……個人の域での事にはそれなりに折り合いつけてるから」

「……問題は、話が大きくなった時、ですか」


理解しました。

主殿が揺らぐのは己のせいで他者の死があった時。

いえ、自己正当化が出来なかった時なのですね。


「覚えておいて?兄ちゃは甘いの。非情に徹するのはそれが自分だと無理に思い込んでるから」

「時折こぼれ出る甘さ、その為に危機に陥る時にフォローするのが私達の役割なのですね」


甘い事をすれば自分に帰ってくると理解していても時折思わず素が出てしまう、ですか。

私も含めてですが、生まれ持った性分とは……本当に度し難い物ですよね。


「しかし……何故その事を主殿に伝えないのですか?もし真実を知れば主殿なら」

「兄ちゃなら、確かにどうにかしようとすると思うよ。でも、それをさせちゃ駄目だよー」


「何故でしょうか」

「無理の度合いが上がるだけだから。塗り固める嘘が分厚くなって問題が更に深刻になるから」


……そうですか。

成る程、それでしたらこういう対応をせざるを得ないのでしょう。


「でしたら、主殿が好きに出来るように、力を蓄える必要がありますね?」

「そゆこと。この街はその為の物なんだよー」


大広間から歩み出て、これまた広々としたテラスから眼下の町を眺めました。

一面に広がる見渡す限りの荒野。

しかし、眼下には幾つもの無人の家々が連なっています。

そして、その周囲を取り囲むように地下から汲み上げられた新鮮な水が水路と言う形で

無人の街を縦横無尽に走っているのです。

空にその外側では巨大蟻達が新たなる水路を切り開き、乾ききった大地に潤いを与え続ける。

もうじきそこには農地と酪農地が出来上がるでしょう。

更にその外側には重厚な城壁が。

……そして、そこに住まうのは世界から棄てられた者達。


「そうそうアリサ様。トレイディアからの移民希望者用の仮設住居が森林地帯に完成しました」

「了解。何とか半年以内にこっちに連れてこられる形にするよ。それと資金も必要だから」


「お任せ下さい。商会の総力を挙げて移住計画は成功させてご覧に入れます」

「ういうい。あの仮設住居も一年後には取り壊される事になってるし、時間は大切にねー」


時間は大切、ですか。まあ、その通りでしょう。

ならば別口の懸念も払拭しておくべきでしょうか。


「でしたら、いかがしますか?魔物達にも光の元で暮らしたいと願う者もいるのでしょう?」

「うーん。最近コボルト族とかの地底亡命者多いし……いっそ同時進行させちゃうかー」


「委細承知です。何、主殿のご威光があれば誰も文句など言いませんよ」

「そだねー。じゃあ、住まわせる地区をそれぞれの種族ごとに割り振っておくよー」


「……いえ、完全に混ぜてしまうほうが宜しいかと。閥を認めてはなりません」

「ホルスって、時々政治家みたいなこと言うよねー。まあ正論だしそうするね?」


「……ははっ!お聞き入れくださり有難う御座います」


ふと、背後から気配がしました。

振り返ると、アリサ様の下へ最近やってきたリザードマンが歩み寄っています。


『アリサ*********マナリア*****カルーマ*********』

「あ、了解判ったよ。支店設置は順調なんだよね?何時もご苦労様だよー」


古代語は相変わらず良く判りません。

ですが単語から察するに、どうやら我が商会の支店が遂にマナリアまで進出した模様です。

実に喜ばしい。

何せ、私の予想では次に歴史の舞台となるのは彼の国と思われますしね。


「……ハピをトレイディアからマナリア支店長に異動するよ。ホルス、商都もよろしく」

「承知いたしました。娘なら必ず商会を彼の地に根付かせてくれる事でしょう」


思えば、暫く前の私は無体な主君の元で無為な時を過ごしていました。

それに疑問をはさむ事も無く。

……それに比べれば今の自分のなんと恵まれている事か。


「全ては主殿の為に!」

「全ては兄ちゃの為に!」


その誓いを新たにすると、私はアリサ様に一礼し本来の配置に戻る事にしました。

なにせ、やるべき事は山のようにありますから。


さあ。先ずは移民を募る事にしますか。

これからも、ただ生きていくだけでも力は必要ですからね。


……そう言えば、ルーンハイムさんはお元気でしょうか?

あの荒野で別れたっきり、一度もお会いしておりませんが……。

あの方が居れば、主殿もきっとお喜びになられるでしょうに。


……。


≪side ルン≫

憂鬱だ。学園の自分のクラス、そのドアを開けるだけだと言うのに。

それだけなのに酷く憂鬱になる。

……意を決してドアを開ける。


誰も居ないが当然だ。

何故か。何故ならそれは今がまだ早朝だから。


「…………やっぱり」


視界の先には何時も通りの光景。

私の机は教室の隅。

そして、それ以外の机は逆の隅に集められている。

そう、そんな事何時もの事だ。気にしてなど居られない。


教授たちが来る前に元の位置に戻しておかないと。

……クラスの皆が私のせいだと声を揃えるから、何時も私だけ怒られる。


なんで、私なんだろう。


陰口くらい構わない。聞こえない振りをすればいい。

靴にガラス片を入れられるのも、気を付ければそれでいいから構わない。

教科書を隠されても全部暗記したから問題なんか無い。

ダンスの練習で誰も組みたがらないのだって、どうせ教授と組む事になるから構わない。


だけど、だけど……。


「…………なんで、こんな事が出来るの?」


私の机にナイフで傷が付けられていた。

……書いてある文字は理解したくも無い。

そして、机の上には壷と花。

これが何を意味するかなんて聞くまでも無い事だ。


……やめよう。考えるだけ辛くなるばかりだ。

急いで机を直さないと……直さないと!


……。


ようやく机を元の位置に戻しなおした。

……その辺りになると流石にクラスの皆も集まり始める。


「皆!、おはよう御座いまーす」

「ええおはよう。あら、新しいリボンですか?」

「綺麗な柄よね!何処で売ってたの?」

「キャー、可愛いですぅ。私もぉ帰りに色々買っちゃおっかなぁ?」


でも。今年高等部に進学し制服の色だけは変わったけれど、

私の扱いは変わらない。


「でねでね!男子中等部のレオ様が……」

「やだぁ!?もしかしてリン様がそんな事をすると思うわけ!?」


騒がしくなったクラスで私の周りだけ誰も居ない。

……話かけて来る人も居ない。


「それで……次のテストは火球の詠唱でしょ?」

「あはははは。まだ半分も暗記できて無いや!」

「こっちは万全!さあ来いって感じ?」


私は、何でここに居るんだろうか。

もう、何もかもが無意味に思えるこの場所に。


「ねぇ?ルーンハイムさんはぁ、今度の試験どう思のぉ?」

「やめなよレン。優等生様なら余裕に決まってるじゃん」

「そうそう。国外を遊び歩いて単位貰えるとか……なんで戻ってきたんだろ」


たまに話しかけられたと思ったらこれだ。

……勿論それも予想通りではあるが。


「あ、朝礼が始まる時間!」

「それぇ!汚い所からぁ机を逃がしましょうねぇ?」

「「「「キャハハハハハハハハ」」」」


……教授が入ってくる直前に、クラス全員で机を私の方から遠ざける。

もういい。もう慣れた。


「こら……また勝手に机を動かして……」


「えぇ?私達がぁ悪い訳じゃないんですよぉ?」

「ルーンハイムさんがまた勝手に動かしましたぁ!」

「自分勝手って嫌ですよねぇ?」

「勇者様の子供だからって特別扱いは駄目ですよね、教授?」


……教授のほうを見ると申し訳無さそうにこっちを見ている。

判ってる。判ってるから申し訳なさそうな顔はやめて欲しい。

教授達が事実を理解してる事も。

その上で私の方を擁護できない事も、よく、判ってる。

だから、上辺だけ済まなそうにするのは止して欲しい。

なまじな期待はもう持ちたくない。


「えーと。それではルーンハイムさん?少しお話がありますのでこちらに……皆は自習で」

「怒られろ!怒られろ!」

「あはははははははは」

「嫌ですよねぇ。他人とぉ同じように出来ない方ってぇ」

「どうせ習う事なんか無いんでしょ?辞めちゃえばいいのに」


……助かった。もう、ここに居たくない。

そうして立ち上がった私に、誰かが声をかけて来る。


誰かと思えばレンだった。

レンはマナリアに四人居る公爵の一人、レインフィールド公の一人娘だ。

いやみな娘だが、私に話しかけてくれる数少ない子でもある。


それで今度は何?何でそっとしておいてくれないの?


「判ってると思うけどぉ。全部ルーンハイムさんが悪いのよぉ?あのリンを敵に回すからぁ」

「……リンとの確執は、個人的な事」


「ふぅん?四大公爵最強のぉリオンズフレア公を敵に回しておいてよくもまぁ」

「……私も四大公爵ルーンハイムの娘」


「あは!没落してぇまともな領地ももう無いんでしょぉ?プライドだけ高いって不幸よねぇ?」

「…………っ!」


それは事実だ。

お父様の投資話の失敗が続き、気が付いたら我が家の領土は誰も欲しがらないような荒地ばかり。

公爵と言っても名ばかりなのは子供でも知っている事。


「ま、後三年もすれば成り上がり者の箔付けに使われる家名だしぃ。今の内大切にしとけばぁ?」


成り上がりの箔付け、か。


まあ当然そうなるのだと思う。

今のルーンハイム家にあるのは建国時からの名家と言う看板だけ。

欲しがるのは歴史を持たない新興の家くらいだろう。


私の婚姻と引き換えにルーンハイムは資金を得て復活する。

だが、代わりにその成り上がり物に我が家は乗っ取られる事になるのだ。

……だが、それも家名を残す為。

止むを得ない事なのだ。そう、もう私ではどうしようもない事実でしかない。


「可哀想にねぇ?リンに一回頭でも下げれば全部解決するんじゃないのぉ?」

「……それは……出来ない」


幼い頃、私の大事にしていたドレスがあった。

死んだお婆さまから買っていただいた物だ。

……それを私の知らない間にリンが勝手に持っていってしまった。

挙句、代わりだと言って置いていったのは汚れきったライオンのヌイグルミ。


出かけていて家に戻った私が、それにどれだけ落胆したか。


更に、返してもらおうとリンの家に向かった私は、

無残に破り捨てられて玄関先に打ち棄てられたドレスを見つけてしまう。


そして、翌日リンから言い放たれた言葉。


「私は貴方を絶対許しませんわ!」


一体、何様なのその物言いは?

私の宝物を勝手に持って行った挙句、破り捨てたリンが先ず言うべきは、

ごめんなさいのひと言の筈……!


それが私の感じた全てだった。

……ともあれ、その日から私達は不倶戴天の敵となった。

それまでは仲が良かったと思っていたのだが、全てが変わったのだ。


「……レン。謝るのはリンの方」

「意地っ張りねぇ?リンの力があればぁ、貴方の家の危機くらいどうにでもなるでしょぉ?」


そう、それは確かに事実。

リオンズフレアが国内に持つ影響力と資金量は膨大。

我が家へ援助する事ぐらい容易い筈だ。

……それが無いのはひとえに私達の仲が悪いからに他ならない。


「レインフィールドさん?すいませんがルーンハイムさんと話がありますので……」

「あぁ、教授ぅ。申し訳ありませぇん。……ほらぁ、寄り道して無いでさっさと行きなさいよぉ」

「……判った」


取りあえず、この教室から抜け出せた事に感謝する。

……でも、何時までこんな状態が続くのだろうか。


「ルーンハイムさん。貴方の状況は理解しているつもりです」

「……教授。ならせめて注意を」


「え?いや……流石にリオンズフレア家を敵にする訳にも」


我が国では初等教育はそれぞれの家庭で家庭教師を付けて行い、

中等部、高等部の六年間で、魔法研究者でもある教授陣から実践的な魔力の使用法を学ぶ。


だが、教授陣は同時に各有力者をパトロンとして研究を行っていると言う弱みがあり、

実力者の師弟には逆らえない。実質言いなりなのだ。

現にまともに登校もしていないリンは普通に出席扱いになっているし、

既に卒業試験も免除が決まっていると言う。


……だから、この学園に私の味方は居ないのだ。

私は一人でここを乗り切らなくてはならない。


そして……卒業できた暁には。

もういい。止めよう。考えるだけ辛くなるだけだ。


「あ、あはははは……取りあえず、今日は図書室で自習してください。出席扱いにしますので」


そう言って教授はそそくさと去っていく。

もういい。もういいの。この学園に期待なんかもうしていない。

ただ、しきたりで通う事になってるから来てるだけ。


……図書室の隅に座り、適当な本を開く。

私自身、先日提出したリポートが評価され卒業試験免除となっている。

今は残りの高等部三年間を乗り切ればそれでいい。

だから、ただ耐えるだけだ。

今さえ乗り切れば……乗り切れば、きっと……きっと……。


……ふと、先日提出したリポートの写しが図書室に追加されている事に気付き、

思わず手に取っていた。


「…………」


何もかも懐かしい、そう思う。

数ヶ月前まで私が居た世界は、危険と隣りあわせだったけど……優しい人達が居た。


子供の喧嘩だから手を出せぬと無視を決め込むお父様。

話をすると対処はしてくれる、

けど国を揺るがし余計な被害も出るから話も出来ないお母様。

そして、リンにそそのかされるまま私を仲間外れにするクラスメイト。


街に出ても同じだ。

私が行く所、次々と店が閉まっていく。

こんな事が出来るのは国最大の実力者リオンズフレア公ただ一人。

正直、そこまでやるかと言うのが私の感想。


「……なんで、だろう」


なんで、こうなってしまったのだろうか。

……お父様は小さな頃からよく言っていた。


清く正しく生きていれば、必ず報われる日が来るのだと。

無駄な暴力を振るってはいけないと。

そして、従ってくれる者達を守る事を忘れるなと。


私は全力でそれを守っていると思う。

使用人達の給金が払えなくなったと聞いて、外の世界へ資金を集めに行った。

クラスメイトの意地悪に対し、反撃したら大怪我負わせてしまうから黙っている。

使用人達からは感謝もされたし、そうでなくとも清く正しく生きているつもりだ。

でも、なんで報われないのだろう。


「……せんせぇ」


留学期限が切れる間際。

私は先生を探していた。

……個人的な家庭教師になって貰いたかったのだ。


資金は集める事が出来た。

私が頼めばきっと先生は来てくれる筈だ。

そんな確信があった。


「……でも、居ない」


そう、それなのに肝心の先生が見つからない。

必死に探してる内に時間は尽きてしまい、

私は一人、帰国の途に付く事となってしまったのだ。


そして今、私は再び牢獄のような現実の中に居る。


「……助けて、せんせぇ……」


冷たいだけの世界なら、それだけなら耐えられたと思う。

けれど、今の私は暖かいものを知っている。

あの温もりを忘れられないで居る。


何かの本で読んだとおりだ。

暖かさを知った者は、もう寒さに耐えられない。


気が付けば、部屋の隅で震えている私がいた。

……こんな姿、他の人に見られる訳には行かない。

けれど、どうしても体は震えてしまうし、

仕方なく、こっそりと、部屋の隅に腰を下ろす。


最近、ずっとこうだ。

寒い……そんな訳が無いのに寒すぎる。


「…………もう駄目……帰る」


駄目だ。もう耐え切れない。

誰とも無く呟いて私はそのまま学園を飛び出していた。


「……これで、10回目、か」


もう私は駄目なのかもしれない。

明日も登校を続けられるだろうか?

……正直、それすら自信が無い。


今年も学園は新たな新入生を迎えているのに。

私の春は……一体何時来るのだろう……。


続く


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