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No.6980の一覧
[0] 幻想立志転生伝(転生モノ) 完結[BA-2](2010/08/09 20:41)
[1] 01[BA-2](2009/03/01 16:10)
[2] 02[BA-2](2009/05/14 18:18)
[3] 03[BA-2](2009/03/01 16:16)
[4] 04[BA-2](2009/03/01 16:32)
[5] 05 初めての冒険[BA-2](2009/03/01 16:59)
[6] 06忘れられた灯台[BA-2](2009/03/01 22:13)
[7] 07討伐依頼[BA-2](2009/03/03 12:52)
[8] 08[BA-2](2009/03/04 22:28)
[9] 09 女王蟻の女王 前編[BA-2](2009/03/07 17:31)
[10] 10 女王蟻の女王 中篇[BA-2](2009/03/11 21:12)
[11] 11 女王蟻の女王 後編[BA-2](2009/04/05 02:57)
[12] 12 突発戦闘[BA-2](2009/03/15 22:45)
[13] 13 商会発足とその経緯[BA-2](2009/06/10 11:27)
[14] 14 砂漠の国[BA-2](2009/03/26 14:37)
[15] 15 洋館の亡霊[BA-2](2009/03/27 19:47)
[16] 16 森の迷い子達 前編[BA-2](2009/03/30 00:14)
[17] 17 森の迷い子達 後編[BA-2](2009/04/01 19:57)
[18] 18 超汎用級戦略物資[BA-2](2009/04/02 20:54)
[19] 19 契約の日[BA-2](2009/04/07 23:00)
[20] 20 聖俗戦争 その1[BA-2](2009/04/07 23:28)
[21] 21 聖俗戦争 その2[BA-2](2009/04/11 17:56)
[22] 22 聖俗戦争 その3[BA-2](2009/04/13 19:40)
[23] 23 聖俗戦争 その4[BA-2](2009/04/15 23:56)
[24] 24 聖俗戦争 その5[BA-2](2009/06/10 11:36)
[25] 25[BA-2](2009/04/25 10:45)
[26] 26 閑話です。鬱話のため耐性無い方はスルーした方がいいかも[BA-2](2009/05/04 10:59)
[27] 27 魔剣スティールソード 前編[BA-2](2009/05/04 11:00)
[28] 28 魔剣スティールソード 中編[BA-2](2009/05/04 11:03)
[29] 29 魔剣スティールソード 後編[BA-2](2009/05/05 02:00)
[30] 30 魔道の王国[BA-2](2009/05/06 10:03)
[31] 31 可愛いあの娘は俺の嫁[BA-2](2009/07/27 10:53)
[32] 32 大黒柱のお仕事[BA-2](2009/05/14 18:21)
[33] 33 北方異民族討伐戦[BA-2](2009/05/20 17:43)
[34] 34 伝説の教師[BA-2](2009/05/25 13:02)
[35] 35 暴挙 前編[BA-2](2009/05/29 18:27)
[36] 36 暴挙 後編[BA-2](2009/06/10 11:39)
[37] 37 聖印公の落日 前編[BA-2](2009/06/10 11:24)
[38] 38 聖印公の落日 後編[BA-2](2009/06/11 18:06)
[39] 39 祭の終わり[BA-2](2009/06/20 17:05)
[40] 40 大混乱後始末記[BA-2](2009/06/23 18:55)
[41] 41 カルマは荒野に消える[BA-2](2009/07/03 12:08)
[42] 42 荒野の街[BA-2](2009/07/06 13:55)
[43] 43 レキ大公国の誕生[BA-2](2009/07/10 00:14)
[44] 44 群雄達[BA-2](2009/07/14 16:46)
[45] 45 平穏[BA-2](2009/07/30 20:17)
[46] 46 魔王な姫君[BA-2](2009/07/30 20:19)
[47] 47 大公出陣[BA-2](2009/07/30 21:10)
[48] 48 夢と現 注:前半鬱話注意[BA-2](2009/07/30 23:41)
[49] 49 冒険者カルマ最後の伝説 前編[BA-2](2009/08/11 20:20)
[50] 50 冒険者カルマ最後の伝説 中編[BA-2](2009/08/11 20:21)
[51] 51 冒険者カルマ最後の伝説 後編[BA-2](2009/08/11 20:43)
[52] 52 嵐の前の静けさ[BA-2](2009/08/17 23:51)
[53] 53 悪意の大迷路放浪記[BA-2](2009/08/20 18:42)
[54] 54 発酵した水と死の奉公[BA-2](2009/08/25 23:00)
[55] 55 苦い勝利[BA-2](2009/09/05 12:14)
[56] 56 論功行賞[BA-2](2009/09/09 00:15)
[57] 57 王国の始まり[BA-2](2009/09/12 18:08)
[58] 58 新体制[BA-2](2009/09/12 18:12)
[59] 59[BA-2](2009/09/19 20:58)
[60] 60[BA-2](2009/09/24 11:10)
[61] 61[BA-2](2009/09/29 21:00)
[62] 62[BA-2](2009/10/04 18:05)
[63] 63 商道に終わり無し[BA-2](2009/10/08 10:17)
[64] 64 連合軍猛攻[BA-2](2009/10/12 23:52)
[65] 65 帝国よりの使者[BA-2](2009/10/18 08:24)
[66] 66 罪と自覚[BA-2](2009/10/22 21:41)
[67] 67 常闇世界の暗闘[BA-2](2009/10/30 11:57)
[68] 68 開戦に向けて[BA-2](2009/10/29 11:18)
[69] 69 決戦開幕[BA-2](2009/11/02 23:05)
[70] 70 死神達の祭り[BA-2](2009/11/11 12:41)
[71] 71 ある皇帝の不本意な最期[BA-2](2009/11/13 23:07)
[72] 72 ある英雄の絶望 前編[BA-2](2009/11/20 14:10)
[73] 73 ある英雄の絶望 後編[BA-2](2009/12/04 10:34)
[74] 74 世界崩壊の序曲[BA-2](2009/12/13 17:52)
[75] 75 北へ[BA-2](2009/12/13 17:41)
[76] 76 魔王が娘ギルティの復活[BA-2](2009/12/16 19:00)
[77] 77 我知らぬ世界の救済[BA-2](2009/12/24 00:19)
[78] 78 家出娘を連れ戻せ![BA-2](2009/12/29 13:47)
[79] 79 背を押す者達[BA-2](2010/01/07 00:01)
[80] 80 一つの時代の終わり[BA-2](2010/01/14 23:47)
[81] 外伝 ショートケーキ狂想曲[BA-2](2010/02/14 15:06)
[82] 外伝 技術革新は一日にして成る[BA-2](2010/02/28 20:20)
[83] 外伝 遊園地に行こう[BA-2](2010/04/01 03:03)
[84] 蛇足的エピローグと彼らのその後[BA-2](2010/08/10 14:03)
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[6980] 11 女王蟻の女王 後編
Name: BA-2◆63d709cc ID:515c5899 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/04/05 02:57
幻想立志転生伝

11

***冒険者シナリオ4 女王蟻の女王***

~いろんな意味で運命と出会った日 後篇~

《side カルマ》

集まってくれた連中の記憶や手製の地図を総動員し、この蟻の巣の全体図を作ろうと試みた。

だが、恐ろしい事に20人全員のものを足してなお、この大空洞の全体像を測る事もできなかった。


「それでも、入り口までの道のりは繋がりました」

「でも危険」


そう。それでも入り口までの経路を再構築できた事は大きい。

同時にそこまで至る道のあちこちに、

さまざまな意味で通行困難な難所が待ち受けている事も判明した。

けれど、いざとなったら脱出できるかもと言う希望を持てるのは確かだし、

なにより現在位置が判明した事が大きい。


「この空間は元々幼虫が居た場所だな。見事に片付けられているが」

「主殿のお考えどおり、蟻達は非常に高い知性を備えているようですね」

「外までは後5階層上がるといい」


ルンや半数ほどのメンバーは5階層上の出口へ直行する事を望んでいるようだが、できればそれは避けたい。

何せ後2階層下れば女王の間にまた行けるし、そもそもここに居るのは何のためだと言いたい。

……少なくとも俺は、一度地上に出たら二度とここに戻って来ようとは思わない自信がある。


「大変ですよ!」


どうやって半数も居る即帰還支持者を説得するかと考えていると、見張りを頼んでいた奴が飛び込んできた。

一体何があったんだ?


「あ、蟻がバリケードを築いてるんです!」

「はい?」


できる限り気配を殺しつつ、ゆっくりと前進する。

上層階へと繋がる坂道。その下り口近くに蟻たちが色々なごみや土砂を集め、

確かにバリケードらしき物を作り上げようとしていた。


ここから出さないつもりかとも思ったが、どちらかと言うと上からの攻撃に耐えるための物のようだ。

……まあ、ここから出られないという意味ではどちらでも同じだが。


後ろから絶望的なため息が聞こえたりもするが、俺個人としては逆に非常に価値ある情報を手にした気分だ。

連中、俺らの事に気付いてる。けど別に気にしていないようだ。


これは恐らくだが、俺達が……そしてそのリーダー格扱いの俺が余り危険視されていないという事ではないだろうか。

考えてみれば俺は別段蟻を虐殺しながら降りて来た訳ではないし、女王とは内容はともかくゲームまでしている。

これでもし最初に好戦的な蟻と出会っていたら、と思うとぞっとするがまあ結果オーライだ。


これなら付いてくる連中の士気さえ下がらなければ、

このまま下に降りて女王と交渉したほうが無事に出られそうだと思う。


最悪なのは暴走した奴が上の蟻に特攻しかける様な事態だが、殆どの奴はすっかり意気消沈しているし、

俺がどうにかできればそうそう問題にはならないだろう。


では、どうにかするしかないな。皆の為にも俺の為にも。


「皆、聞いてくれ。このまま上に行けば確実に蟻の、しかも強力な兵隊蟻の主力にぶつかる」


それを聞いて、皆の喉がゴクリと鳴った。

後は適当に上階層に上がる事のリスクを説いて下に行かせるだけ。

俺の都合もかなり入ってるが、この際これは言うまい。

上層階の警戒態勢に突っ込んで、外に出るまで戦い続けて生きて出られる自信も無いしな。


「そう言う訳で女王蟻の方へこっそりと向かう方が安全だと思う。場所は俺が知っている」


わいわいと一気に煩くなる。

やれ「自殺行為だ」だの「ちょっと落ち着いて」とか。

それに「倒せる訳が無い」って声が多いな。

どれ、ちょっと"大げさだが嘘ではない事実"で元気付けるか?


「なあに、女王蟻の護衛なんぞ俺一人で突破できるレベル。女王蟻と一騎打ちまでやったんだぞ?」

「でも負けた」


あー、ルンちゃん?ここで士気落とすような事言わない様に。

不安なのは判るが……いっちょここは格好付けてやるか。


「まあな。でも側面からの不意打ち&騙まし討ちさえ無けりゃ俺の勝ちだったかも知れんけどなー♪」


お、眼を見開いた。

もっとぼろ負けを想像してたか?

いや、まあぼろ負けはぼろ負けなんだが……嘘じゃないぞ?


そして周りの連中も……少しはやる気になったか。

情報のソースどころか、これから行う作戦の確証すら無しでマジ済まん。

だが何とか皆生きて帰れるようにするから何とか今回だけ付き合ってくれ……。


……。


半信半疑の連中も多いが、何とか全員一丸となって下層階に向かっている。

……俺自身ほっとしているが、兵隊蟻の出迎えが無いのはありがたい。


「それ、以前俺が倒した分が未だ補充されて無いぞ!」


取り合えず大嘘ではあるが訝しがる周囲の連中にはそう答えておく。

この際モチベーションを維持するほうが先決というもの。

しかしこれは良い傾向だ。

もしかしたら本当にまだゲームが生きてるかも知れん。


『一撃入れたら生かして返す』


どうにかしてこれを履行してもらう必要がある。

そしてその為にはまずその"一撃を入れる"必要があるわけだ。

その為に人手を増やした訳だがさて、上手く行くかどうか。


内心の不安を自信に満ちた表情で押し隠す。

……出来てるよな?

さあ、この先が女王の間だ。


……。


『おや、お主はこの間の』

『女王様、ゲームのリベンジに参りましたよ?』


女王の間は相変わらずだが周囲の蟻の編成が変わっているな。

以前より大型の兵隊蟻が占める割合が上がっている。

代わりに指先サイズの子蟻が殆ど見当たらないな。

まあ戦力的には大きくとも、耳や鼻から侵入される恐れが少ないのは本当にありがたい。

念の為に粘土で耳栓を用意出来るようにしておいたが無くても良さそうだ。

さて、後は先日の約束事が生きている事を祈るのみだが。


『驚いたの。まだ続ける気か?大した根性じゃが……まあよいわ』

『それじゃあまた一撃入れればこちらの勝ちと言う事で。行くぞ!』


向こうの返事を待たずに突っ込んでいく。

周囲の連中は今のやり取りが判らず目を白黒させてるが、

そちらにはあらかじめ指示しておいた通りに動くようにとだけ言っておく。

よし、取り合えず言質は取ったんだ。

後は俺一人用に設定されたルールをここの連中全員に適応させるように持っていく必要はあるが

まあ第一段階成功と言った所だ。


勝負後にまた別な勝負とは気が重いが、まずはここでゲームに勝つ事が第二段階突破の条件。

一度思考を切り替えるか!


「ルン。手はずどおりの"氷壁"を!」


詠唱中で答えられないルンが首をコクリと縦に振る。

そしてあらかじめ唱えさせておいた魔法が発動した。


『氷の壁か。何も無いところから生み出せるとは』

「悪いがこれだけじゃ終わらないぞ!」


何匹かの蟻を巻き込みながらせり上がり、降って来る氷壁達。

更にその片側が内側に傾いて倒れこんで逆側の氷壁にぶつかり、三角形の回廊を形作る。


『印の角度と向きで魔法の発動方向を変えられる事に気付いてさ。壁を傾けて生成させてみたが大成功だな』

『そうか。魔法とは便利なものじゃな?魔王が使われ過ぎぬようにと見張っておったのも道理よの』


そうなのか。まあ現在の俺には全然関係ない話だ。

大切なのはこれで上と横からの攻撃が無くなったと言う事。


即座に仲間の三分の二を背後の防御に回し、俺自身と残り三分の一で正面の女王に向かう。

氷の回廊の穴は前後にしか存在しない。

下の地盤は極めて固いし、これで相手の攻撃を制限できただろう。

そして俺達の背後は既に半数以上のメンバーで固めさせている。


「つまり!氷が融けるまでなら俺達は前進する事さえ考えりゃ良いのさ」

「主殿、私が先陣を切ります!」

「援護する」


女王と俺達の間には十重二十重の蟻の防衛網がある。

だが、今現在敵は正面からしか向かってこれない。

よって氷壁の回廊中央部に安全地帯が生まれた。


俺はその中央より少し正面寄りに位置し、治癒を使いながら戦局を見守る事になっている。

その後ろ、丁度中央付近にはルンやその他の魔法使いが陣取り、後方から仲間達への援護をはじめた。


氷の回廊を砦に見立て、入り口と出口を前衛で塞いで中央で回復と援護を行う陣形だ。

そして、チャンスと見れば俺自身が正面に突っ込む。

一応切り札も無い訳ではないし、一撃食らわす位なら行けるはず。

……後は機会を待つのみ。


「うぎゃ!腕が、腕があああっ!」

『痛みは失われ再生の時を迎えん事を祈る。砕けた肉体よ再び元へ。発動せよ治癒の力』


「あ、治ってく」

「痛みが引き次第再度突っ込んでくれ。行けるな?」


重傷を負った奴を中央付近に引きずり込み、治療を施してまた前線に戻す。

その繰り返しだ。

相手の兵隊は無尽蔵に集まって来ているし、氷が融けるまでに相手に隙を作れるかが勝負だ。

一瞬でも良い。女王までの道に蟻が居ない状態を。その気なら一騎打ち出来る状況を作らないとならない。


『ほほほ、面白くなってきた。流石にわらわが見込んだだけの事はある』


何時見込んだんだこの人?

まあいい。前方入り口の一箇所に蟻が集まっているな?


「ルン。例の奴の詠唱を頼む。時間は?」

「一分持たせて」


その言葉を聞いて俺自身も前方に突っ込んだ。

それぐらいなら兵隊の相手も出来るだろう。


『人の身は脆く、守りの殻を所望する。我が皮よ鉄と化せ。硬化(ハードスキン)!』


詠唱を参戦表明代わりに前方に特攻をかける。

最前列で頑張っていた連中を押しのけ回廊入り口で仁王立ち。

全力で腕を振り敵を引き付け続ける……!


いまや最前列は俺が兵隊を引き付け、

その後ろで今までの最前列担当メンバーが俺を抜けた相手を潰して行くような格好になっている。

……足元から子蟻が。

遂に来やがったか。何とか首より上に来る前に詠唱が終わって欲しいもんだが。


『……風精の舞踏(エアリアル・ロンド)!』


だが幸いにも予想より早く詠唱が完了したようだ。

広間で聞いた時よりずっとはっきりした声で聴こえたその声。


次の瞬間、後方から物凄い強風が吹きつけ、俺を周囲の蟻ごと吹き飛ばした!


……。


『チェックメイト……なんつて』

『前回と言い今回と言い、なんと言う出鱈目な』


暴風が吹き荒れた収まった時、俺は女王の喉に剣を突きつける事に成功していた。

そう。自ら敵ごと吹き飛ばされる事で、一気に敵を排除しつつ距離を詰める事に成功したのだ。

しかも女王は"風精の舞踏"の風の刃により、全身に小さなかすり傷を負っている。

……何だ、無理に全身切り刻まれながら突っ込む必要は無かったか。

まあ、鉄の肌のお陰で殆ど無傷だからどちらでも良いといえば良いのだが。


『まあよい。勝ちは譲りゃ?皆揃って出て行くと良いわ。うちの蟻どもは邪魔をせん』


おお!まるでこちらの考えを読んでいたかのような模範的回答!

女王蟻の女王様、話がわかる!

……少なくとも人間よりずっと話がわかるよ本当に。

まあ、何はさておき。


「よっしゃあああっ!これで無事に出られるぞ!」

「え?あの?そうなんですか主殿?」

「理解不能」


「た、確かに蟻の攻撃が止みましたけど」

「どっかに逃げてったぞ連中?」

「と言うかカルマさんよ。何でそんなことが判るんだ」

「どうでもいい!どうでもいいよ!兎に角助かったんだよね?だよね?」


全員無事か。足元に転がっているのは蟻達だけだ。

……どうやら全員生かしてここから出すと言う約束は守れそうだな。

いやしかし、仲間守りながらの戦闘は疲れる……一人で特攻してるほうが楽な気がするぞ本当に。


『さて、それでは土産をやらんとな』

『おお、忘れてた。指輪もくれるのか?』


『うむ、くれてやろう。……見事な采配であったぞ』

『お褒めに預かり光栄至極』


少しばかり疲れた顔の女王蟻が指に嵌めていた"ザンマの指輪"を投げて寄越した。

それは予想通り。約束を守る気高き女王の姿だ。想像するのはたやすい。

……ただ、その次の行動を予想する事はできなかった。


『わらわは女王蟻の女王。全ての"女王蟻"の母なり』


言葉と共に人差し指の爪が肥大化、硬化する。


『千年の時を生き永らえるも我が城の前には唾棄すべき雑兵の群れがある』


次なる言葉と共に指は天を向く。


『雑兵の前に屈する理由は無いが対抗するには力が足りぬ』


そして、女王蟻は己の指を喉に当て


『雑魚に我が首はやれぬ。勇者の子らよ、これを持ち手柄とせよ!』


己の首を、かき切った……。


……。


女王の自決。

そのあまりの超展開に誰も付いていけず呆然とする中、

幸いにも俺はいち早く精神の再構築を成功させていた。


……何故いきなり、と言う気持ちはあるが、

俺は先ほどの女王の言葉から大体の事情を察する事ができた。


「つまりさ。女王は判ってしまったんじゃないかな?」

「何が」


俺以外、誰も女王の言葉を理解できた者は居ない。

だから俺が語ってやらねばならないだろう。


「この蟻達、地上でも随分広い範囲をうろうろしてただろ?」

「そうですね主殿。キャンプも襲撃された事がありました」

「……もしかして知って、た?」


ルン、正解。


「そうだろうな。女王は総攻撃に耐えられないと理解してたんだろ」

「ですが私達に首を渡す真意が読めません」


そうだな。それは確かにそうだ。

卵管を引きずったあの体格では逃げられないのだろうが、

確かに別な解決方法は幾らでもありそうに思う。


「だから、自分を少数で打ち破った俺達なんだろ。数に押しつぶされるのは蟻の誇りが許さないとか」


だからこれは俺の私見。

実は内心これは無いだろとか思ってるけど、

ここに居る20人にとりあえずの回答を与えねばならない。

……少なくとも、俺が女王と普通に話していたと言う異常事態を余り追求されたくないし。

だから、話を無理に締めて外に出る事にした。


「ま、判らん事を考えてても仕方ない。むしろ賞金の使い道を考える事にしようぜ?」


金の話をしたら皆そっちに夢中になってる。

単純で非常に助かるよ。まあ俺も同じ立場ならそうなるだろうけどな。


……ただ、なんだか判らないが妙な不安がある。それが不気味でしょうがなかった。

それが何なのか、結局その場では判らなかったけどな。


……。


地上に出るまで一匹の蟻とも出会わなかった。

何か拍子抜けのような気持ちを抱えながらも太陽光の中に足を踏み入れる。


「やっはー!」
「太陽だ」
「生き延びたぞ俺達!」
「ついでにお金持ち決定、いえーい!」
「20分の1でも一人頭金貨50枚……遊んで暮らせるぞ」
「俺今日から神様信じる」
「ふひゃふひゃひゃ」
「カルマさんありがとな!」


皆思い思いの感想を口にしてるが、

何にせよ大喜びしてるのだけは間違いなかった。


「太陽がまぶしいな」

「これも主殿のお陰。お見事です」

「……水浴び、したい」


ふと、緊張の糸が切れて洞窟入り口に座り込む。

……マントに入れて抱えた女王蟻の頭部をそっと足の上に乗せた。

万が一にもこれ以上傷つかないように。


「やったなぁ俺達」

「そうですね主殿。……おやあれは」


おいおい、予想以上に速いぞ。ゲームオーバー直前かよ?


「連合軍」

「はい、ルン殿。数は五千は居そうですね」


各国の連合軍は既に巣の前から視認出来る位置まで進軍していた。

……思わずもう2~3日ゆっくりしておけば良かったのでは、という気持ちが芽生える。

けど、それじゃあ何一つ手に入らないどころか死んでた可能性もあるわけだし、

苦労に見合った報酬が手に入ったと考えたほうが良さそうだった。


誰かが軍に向かって走り寄っていく。

女王を倒したぞと誇らしげに。


眩しい日差しが視界を遮る。

……空はただただ青く……晴れ渡っていた。

***冒険者シナリオ4 完***

続く


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