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No.6875の一覧
[0] とある武具職人のVRMMO[クラム・チャウダー](2009/02/25 20:47)
[1] 第二話 彼の目指すもの[クラム・チャウダー](2009/02/25 21:03)
[2] 第三話 彼女の戦い方[クラム・チャウダー](2009/05/15 02:51)
[3] 第四話 彼らの流儀 その1[クラム・チャウダー](2009/05/15 02:50)
[4] 第四話 彼らの流儀 その2[クラム・チャウダー](2009/05/15 02:49)
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[6875] とある武具職人のVRMMO
Name: クラム・チャウダー◆cd275989 ID:62b9700a 次を表示する
Date: 2009/02/25 20:47
アイアンソードが売れた。
今日露店に並べた10本の中でも一番出来の良い物だった。武具作成スキルを極めた私でも100本に1本の出来だ。そこらのNPCが売っているものに比べて攻撃力と耐久力が1,3倍といえば誰にだって業物であることを理解してもらえるだろう。……自分で自分をほめるようで恥ずかしいのだが、ちょっと人に自慢したくなるほどの出来だったということで勘弁していただきたい。
……所詮、アイアンソードと言ってしまえばそれまでなのだが。

ところで購入してくれたのはいまどき珍しい、明らかに初心者とわかる可愛らしいお嬢さんだった。
いや、当然プレイヤーの実年齢はわからない。あくまで言動と初期装備の外見から判断したに過ぎない。
彼女は露店買いが初めてだったらしく、NPC売りとの性能差に驚きを通り越して戸惑っていた。
私に直接「こんなにも差があるのはなぜですか?」と尋ねてきたくらいだ。
あまりの初々しさに思わず笑ってしまった。
自作の装備品は作成者のプレイヤースキルによって性能が変わる、基本的に店売りよりも強いと教えてあげると彼女は「そうなんですか」と納得してお礼の言葉とともにお辞儀した。
少し大げさだと思ったが笑顔で言われて悪い気はしない。左頬に出来たえくぼが印象に残る笑顔だった。

――気付けば私は彼女とそのまま雑談していた。
聞けば初期装備のアイアンソードが壊れてしまったので買いに来たとのこと。
私は少し驚いた。
初期装備のアイアンソードは他の鉄製品に比べて耐久力が高めに設定されている上に、壊れる頃には別のもっと強い武器を使っているのが普通だからだ。
そのことを指摘すると彼女は恥ずかしそうに言った。
「道に迷ってしまって街に帰れなかったんです」
なるほど。私も初めたばかりのころに覚えがあった。
この『クレナシオン』はVRMMOである。それまでVRとまったく縁がなかった私はマップ表示の仕方がわからず、持ち前の方向音痴を発揮してしまったのだ。
そしてわけもわからずモンスターに囲まれて……。
最初の町への第一歩が「死に戻り」なのは私くらいだろう。
死に戻ると武器や防具は全てその場に落としてしまう。私は開始早々にステテコパンツ一丁で街中を歩く羽目になった。
その点、彼女はこうして町に辿り着いている。私に比べればずっと優秀である。
そう話すと彼女ははにかみながら否定した。

結局、彼女は並べた中で一番出来の悪い(それでも店売り品より性能は良い。ほんの少しだが)ものを手に取った。理由は値段である。
性能が良いものはそれなりに値が張る。
私の作ったアイアンソードも値段を一つ一つ変えて設定してあった。
一番出来の良いものは店売りの2倍の値段だ。彼女が手に取ったものは店売りと同額である。
正直、売れるとは思っていない。そもそもアイアンソードが売れない。
なぜなら前述の通り、アイアンソードを買いかえることなんてまずありえないからだ。
ぶっちゃければ需要が無い。
なぜ、そんなものを店頭に並べているかというと完全に趣味で作ったものを暇つぶしに並べていただけだ。そもそも売る気もなかったということである。
他においていためぼしい武器はすでに完売。これらのアイアンソードは絶賛売れ残り品。
このまま売れなければ全てNPCに売りに行くだけである。
まぁそれでも製作者としては、作ったからには誰かに使って欲しいという思いがある。
(関係ないが、プレイヤーが作った武器には製作者の名前が刻まれる。たまに街中やフィールドで私の名前が刻まれた武器を振るうプレイヤーを見かけると無上の喜びを感じる)
だから私は一番出来の良いものを彼女に同額で売ることにした。タダで渡しても良かったのだが、プロ(私はこのゲームを鍛冶屋のロールをして遊んでいる。本当に武具製作のプロというわけではない。リアルの私はしがないサラリーマンである)として対価を貰わないわけにはいかない。何より初心者に甘くしすぎてゲームバランスを崩すのも問題である。

彼女はなにやら慌てて遠慮したが、暇つぶしのお礼だと言って半ば無理やり渡した。
すると彼女は何度もお礼を述べながら町の外へ去っていった。

しばらくして彼女の名前を知らないことに気付いたが、客との会話なんてそんなものである。
私は残りの商品をすべてNPCに売り払うとログアウトボックスへと向かった。




本日の売り上げ

銀のジャイアントアクス 2k×1
シルバーランス     1,5k×2
シルバースピア     1k×2
ストームブリンガー   1M+世界樹の枝×1+オリハルコン×1
聖剣アナスタシア    2M+アダマンタイト×1
アイアンソード     50G×2+100G×1

計10本


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