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No.6858の一覧
[0] 異世界に来たけど至って普通に喫茶店とかやってますが何か問題でも?[風見鶏](2009/04/06 01:29)
[1] ダメなお姉さんの話[風見鶏](2009/03/26 12:48)
[2] もうダメだよこの幼女[風見鶏](2009/03/26 12:31)
[3] ゲームだって、人生だって、最後は体力勝負なのである[風見鶏](2009/03/26 12:31)
[4] やさぐれっ娘登場回[風見鶏](2009/04/02 00:04)
[5] 綺麗なお姉さんが大好きです。[風見鶏](2009/04/12 22:14)
[6] 真・ヒロイン登場回[風見鶏](2009/04/02 00:04)
[7] 穏やかに進行する事態[風見鶏](2009/04/02 00:04)
[8] 穏やかに進行する事態2[風見鶏](2009/04/02 00:04)
[9] 穏やかに進行する事態3[風見鶏](2009/04/02 00:04)
[10] 重なる背中[風見鶏](2009/04/02 00:04)
[11] わんこの宅急便[風見鶏](2009/04/30 22:38)
[12] 常識的に考えて非常識[風見鶏](2009/04/02 00:03)
[13] 未知との遭遇[風見鶏](2009/04/02 00:03)
[14] 違う世界に生きる君へ[風見鶏](2009/04/02 00:03)
[15] 我輩は猫かもしれない[風見鶏](2009/04/12 22:14)
[16] その日、日常、喫茶店にて[風見鶏](2009/04/12 22:32)
[17] 喫茶店の夜[風見鶏](2009/04/30 22:53)
[18] けんかするほど[風見鶏](2009/06/14 19:33)
[19] 彼の日記[かざみろり](2009/08/20 13:55)
[20] 小話集[かざみろり](2010/04/13 21:57)
[21] 変わらない日常の朝[風見鶏](2013/03/24 07:53)
[22] 登場人物メモ[風見鶏](2009/06/14 17:35)
[23] Season2 煮込みハンバーグ[風見鶏](2016/02/24 05:56)
[24] まだ夢の途中[風見鶏](2016/02/24 21:38)
[25] 彼の野望:クエスト編[風見鶏](2016/03/19 23:29)
[26] 番外編 「エイプリルフール」[風見鶏](2016/04/02 03:18)
[27] ココア色の逃げ場所[風見鶏](2016/08/23 21:57)
[28] きみのなは[風見鶏](2017/04/01 20:35)
[29] ※発売延期のお知らせ[風見鶏](2017/04/28 13:47)
[30] 第一巻発売記念 WEB版限定特典 真ヒロイン編[風見鶏](2017/06/21 00:43)
[31] ノルトリを追え![風見鶏](2017/12/17 22:40)
[32] 第二巻発売記念 WEB版限定特典「私の出番はいつなの」編[風見鶏](2017/12/20 00:01)
[33] 第3巻発売記念 WEB版限定特典「私の出番はいつなの2」編[風見鶏](2018/05/28 12:46)
[34] 第6巻発売&書籍版完結記念短編まとめ[風見鶏](2019/07/20 00:20)
[35] コミックス発売記念SS 「遠き山に日は登って」[風見鶏](2019/10/24 19:08)
[36] season3が勝手に始まってるのがウェブの良いところ[風見鶏](2020/02/18 19:25)
[37] たったひとつの美味しいカフェオレ[風見鶏](2022/03/17 18:34)
[38] 「コルレオーネさん、曰く」[風見鶏ofほぼニート](2022/06/02 12:55)
[39] 暑い日はアイスコーヒーが一番やで熱中症気をつけて[シン風見鶏はどう生きるか](2023/08/01 18:25)
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[6858] もうダメだよこの幼女
Name: 風見鶏◆cf775fa6 ID:5f8a2c72 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/03/26 12:31



「ユウちゃん! 男の人ってどうやったらヨクジョウするのっ!?」


 ある日の午後のことだった。


 僕はいつも通りに黒のエプロンをしてカウンターに立ち、コーヒーをぽこぽことサイフォンさせながらコップを拭いていた。

 渋くて味のある喫茶店に必要なのは、渋くて味のある客である。

 しかし、僕の目の前にいるのは幼女だった。


 薄桃色の髪を肩の上まで伸ばし、片側だけを深い藍色のリボンで結んでいる。くりくりとした大きな目は澄んだ光を宿していて、きっと世界を、好奇心という視点からきらきらと見つめているのだろう。

 僕にもこんな時代があったのかなあとか思いつつ、どこでおかしくなっちゃったのかなあと頭を抱えた。僕がではなく、この子がである。

 ヨクジョウ。浴場? いや、欲情なんだろう。確実に。


「……ハル。とりあえずそういうことを大声で叫ぶのはマズイ。なにがマズイって、僕の世間体がマズイ。この店の評判もマズイ。困るのはハルじゃなくて僕だから、とりあえずその口を閉じろ幼女」

「そんなことはどうでもいいの! いま重要なのは、おとーさんをヨクジョウさせることなのっ!」


 なんかもう、だめだよコイツ。

 犯罪の匂いしかしないよ。5歳を過ぎたばかりの子供が言う台詞じゃねえよ。誰か助けてくれよ。


 ハルの発言に、店内からひそひそと声が聞こえる。ああ、ちくしょう。こんな時だけ一見さんが多いんだもんなあ。やってらんねえ。


「もう、おとーさんったら、ハルがこんなにあぷろーちしてるのに、ぜんぜん相手にしてくれないんだよ? そりゃ、頭をなでてくれるのは嬉しいけど……嬉しい、けど……うれしい…………ほわぁ」


 ハルの瞳が虚空を捉え、とろーんとふやける。口元はだらしなくゆるみ、「えへ、えへへぇ」とかいう笑い声も漏れている。


 なんだよこれ。なにがあったんだよ。神様はこいつを作ったときだけ自暴自棄にでもなってたの? 嫌なことでもあったの? いじめとか受けてたの? 虚空を見ながらトリップって、これもう末期だよ。


 しかし、もう慣れたっちゃ慣れたので、僕は無視してコップを拭き続けた。こうやって拭くためだけに、無駄にコップを買った僕である。喫茶店のマスター=コップを拭いているという想像は、きっと僕だけではあるまい。


 しばらくすると、ハルが唐突に意識を取り戻した。息を荒げながら、「もうやだおとーさんったらぁ! だいたんなんだからぁ!」とか言ってるが、僕にはつっこめなかった。どちらかと言えばボケ派な僕には、あまりに高度な世界だった。


「そ、そうだった! 今日はこんなことするために来たんじゃなかった! もう、魅力的すぎるおとーさんがいけないのよ! でも好き!」


 知らねえよ。


「それで、男の人ってどうやったらヨクジョウするの?」

「……なんで僕に聞くよ?」


 とりあえず聞いてみる。


「だってユウちゃんって、キッサテンのマスターなんでしょ?」

「そうだけど、それと何の関係が?」

「キッサテンのマスターならなんでも知ってるってユイちゃんが言ってた!」


 てめえが元凶かなんちゃって幼女……っ!

 ユイとは、幼女ではない幼女、幼女に擬態した悪魔、魔性の幼女とか、そんな感じの奴である。だが、あいつのことを話すには紙面が足りないので、今は置いておく。


 上がった血圧を抑えるように深呼吸をして、僕は笑顔を作りつつ言った。


「残念だけど、僕にもわからないことがあるんだよ。とくに、成人男性が幼女に欲情する方法なんてのは特に分からない。その道の人だと呼吸をするよりも容易くそれを成し遂げるらしいけど、僕はほら、正常な人種だから」

「えー? でもユイちゃんは、『あの人は小さい女の子を見ると興奮する人間だから、きっと教えてくれるわ』って言ってたよ?」


 ―――ピシッ。


 思わずコップに罅をいれてしまったが、仕方のないことだろう。ふざけんなよ幼女。てめえ、子供だからってなんでもかんでも許されると思ってんじゃねェだろうな。女性だろうが子供だろうが、殴るときは殴るぞ、僕は。


 黒い笑いが漏れてしまいそうになるのを、必死に抑える。ほら、ハルもどことなく怯えてるし、堪えろ、僕。


 ふーっと息を吐きながら、使えなくなってしまったコップを置く。少し力が強すぎたのか、置くと同時にコップはガラスへと変化してしまった。掃除が大変だ。「ひっ」とハルが声を上げたが、なんでそんな声を出すのかはわからない。


「ハル」

「ひゃ、ひゃい!」

「ユイに言っといてくれ。『僕は女性らしい体型の方が好みであって、女かどうかも怪しいお前のようなつるぺったんには興味ない』って」

「え、その」

「復唱!」

「はいぃ! ユウちゃんは女性らしい体型の方が好みであって女かどうかも怪しいユイちゃんのようなつるぺったんには興味ないです!」

「ったく、あの幼女……いつかケリ付けてやらねェとな……」

「ひ、ひぅ……! いつものユウちゃんじゃなぁい……!」





 φ





 その後、ハルはなぜか、おとーさんが迎えにくるまで怯えた小動物のような目で僕を見ていた。

 やはり、「あの、えと……おとーさんをヨクジョウさせるにはどうしたら……」と再び言われたときに、

「いいから黙ってようね。このコップみたいになりたくないでしょ?」

 とか笑顔で言っちゃったのは不味かったかもしれない。

 子供には優しくがモットーだというのに、大人げなかった。


 でもまあ、これも日常である。





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