ここはファミルス王国で1.2を争う重要施設であるタカ魔術研究所。ここでは日々一流の魔術研究者が集まり、軍事研究、魔術アイテムの一般転用、輸出用魔術アイテムの量産、新魔術研究に勤しんでいる。
その地下には王からの勅命の紙が一枚、埃をかぶったまま無造作に転がっている。開きっぱなしの本などが散乱している所に同じように放置してあるのは、不敬と言えるのではないだろうか?いや、タカ・フェルトにとっては捨てなかっただけでも譲歩している方だ。この所長専用研究室と呼ばれる部屋で、研究所ではよくある光景が繰り広げられていた。
「ふふふふふ、やはり私は天才だ!これほどの大魔術を完成させるとは、俺は今まさに神へと至るロードを駆け上がっている。俺は神だ!神になるんだ!ふふふふふ、ふはははははははh……ゲフッゲフッ」
※ハウスダストは肺炎を起こす原因となるので、常日頃からの小まめな掃除が必要だ。みんなも注意しよう。
タカはトランス状態に入ると、いつもこんな事を口走っているので所員達はなれた物だ。
これさえ無ければ…なんてまじめに働いている所員を悩ませているのは公然の秘密である事はいうまでも無い。
一部のマッドな所員は尊敬の眼差しを向けている。やはり類は友を呼ぶのだろうか…?
まじめな職員も、郷に入っては郷に従えと言う事なんだろうかと、自分に言い訳しつつため息を漏らした。
天才は変人であると言う、ある種の定説に漏れない弾けっぷりである。
所変わって現代。何も変化の無い田舎町のある一角。しかし今、その一角でいつもと違う事が行われていた。
そう、長男、太一の葬式である。中には暑い中喪服姿で葬儀がしめやかに行われていた。仏壇にゆっくりと目をやる。
そこにいたのは、生前の兄、太一だった。仏壇の前の額縁飾られた兄は、髪を肩まで伸ばした黒髪の、かっこいいがいまいちどこか冴えない感じである。
そんな少し過去の兄を見て、悲しい気持ちが体の中に、徐々に広がっていく。
家の中の人物と言えば、両親と兄の友人とお坊さん。少人数で慎ましく開かれている葬儀の音色を聴きながら。今更ながらに思う。
私、遠藤千尋は、兄、太一の事を愛していたと。
1個下の弟、孝明が中学時代に行方不明になり、残された私と兄は結束を強くし、お互いに依存しあいながら生きてきた。
弟を失ってからこういう関係になったので、必要に迫られてそうなった。と言うのが正しい。あんな弟でも、大好きだった兄とこのような関係になるきっかけをくれた事だけには、感謝してもいいかもしれない。
それまでは、私が兄に一方的に依存していたのだが、それをきっかけにしてお互いに親密な関係になったのだ。
元々頭の回転が良かった私は、兄が困ったときにそれに気づき、いつも相談を受けていた。させていた。と言う方が正確かもしれない。
時に女性的視点から、時に一般常識的視点から答えを導き、交友関係の相談や、突拍子もない発想力まで、様々な知識を要求された。
相談を受けて、的確なアドバイスを出し。兄の役に立てるのが嬉しかったので、どんな無茶でも最大限努力し、生きる事に必要のない雑学や心理学まで手を出してその能力を伸ばしてきた。何時でも兄の役に立てるように。
もともと頭は良かったのだ。ただ、それを日常生活や、今通っている高校の成績で活かし切れないだけで。
結局、これだけ出来るのだから私は大人だと、もっと私の事を見て欲しいと、兄に意識して貰いたかったのだ。その努力が実る事はなかったが。
兄弟間で愛し合うのは現代倫理でいけない事とされていて、表向きは抑えてきたが。こんな結果になるのなら告白しておくべきだったと、今はもう何も答えてくれない兄の顔を見ながら最後の別れを告げた。
慎ましやかに葬儀は終わり、火葬場から自分の部屋に戻った千尋、改めて現実を直視すると不幸な人生だと思う。その後母も他界し、父の再婚相手とはそりが会わず、この上愛していた兄との別れ。散々だなと自嘲的に笑い、押さえ切れなくなった涙が頬を伝う。
そんな時、場違いな無駄に明るい今は行方不明な弟の声が頭に響いてきた。
(YO!姉貴!久しぶりDA☆ZE)
一瞬唖然として、ついに幻聴でも聞こえたかと、自分の部屋を見渡す。だが見渡す限り誰も居ないので、昔の苦い思い出である腐れ愚弟の姿が思い浮かんだので、頭を振り、イメージを消し去る。やはり幻聴かと呟き、いろいろあって疲弊した脳を休ませるためにベッドに入ろうかと片足を入れた瞬間。
(いや、幻聴じゃないから。かっこいい弟様が新しく開発した魔術で異世界から交信中ですよー)
どうやら頭に響く声は幻聴じゃないらしい。
…やはり何時になってもこの空気の読まなさっぷりは以前と変わらない。少々懐かしさを覚えるが、それにしても異常なほど空気が読めてないので、不機嫌になるのを隠さずに応対する。
「…お兄ちゃんの葬儀が終わって、すごいブルーになってる傷心の姉に何の用?」
(用っていうか、姉貴が喜びそうなお知らせとか持って来ましたね)
…釈然としない思いがあるが、とりあえず聴いてみる事にした。
「私が喜びそうな?…とりあえず聴いてから考えるわ」
こちらの、投げやりな態度を完全に無視して、現状を説明し始めた。
傷心の心では、孝明の空気の読まない無駄にハイテンションな声は、聴くに堪えないので、概要だけ頭に入れる。
孝明の説明によると、死んだお兄ちゃんの魂を孝明が居る異世界に召喚してて。
その兄が私を呼ぼうと孝明に依頼しているらしい。滅多に自分から頼る事のない兄が、私を必要とする事が起きているということか…。
その為にこちらの世界での体を捨てろと。いきなりそんな世迷い言をほざく孝明に怪訝な表情を浮かべる。
つまり、お兄ちゃんかこっちの世界かを選べと、選択を迫ってきてるわけね。
突然の選択に、眠気や疲れなど完全に振り切って、熟慮する。
お兄ちゃんへの現代では叶わぬ愛と、亡き別れを経験した事による、もう二度と別れたくない。と言う想い。
異世界で兄が呼んでいると言う甘美な誘惑。
しかし、いくらこの世界に絶望したからと言っても慣れ親しんだこの世界を捨てて旅立つ事は…
(兄貴スキーな姉貴には選択の余地なんてないっしょ。しかも結婚できるとか、むしろ常日頃から願ってた事だろうが。どうせ結局はこっち来る選択するんだから早く答えろよ。こっちも暇じゃないんだぜ?)
「いい加減に空気読めよ愚弟!慣れ親しんだ生活とか、現代においてくる親友とか一応居るんだぞ馬鹿ヤロー!」
(はいはい。で、聞くまでもないけど一応確認しとく。結論は?)
まったく人の話を聴く気がない愚弟への怒りに震えながらも、答えは既に出ている。私はその場で答えを出し、慣れ親しんだ生活を捨て、新たな世界へと旅立った。
どうも。気持ち的には、伝票高速判子押しに負けないくらいのスピードで、書類を処理しているファミルス国王です。
ここに来て一週間。ずっと判子と書類に囲まれて、軽いノイローゼ気味です。
今判子を押しているのは、内容が既に決定事項で、王の判子を押すだけになった書類の山々だ。
俺どうやってこの世界の文字読んでるんだろう…?どうみても日本語じゃないよな?まあ、魔術って事でご都合主義なのかもしれない。
喋ってる言語も、明らかに日本語ではないのは、読唇術を会得してない俺にもわかるが、多分気にしたら負けだ。
家臣達と相談しなきゃいけないような緊急の案件は今のところ無いので楽なものさ。
ステフが横で、ちゃんと確認してくださーい。等と半泣きで叫んでいるが、そんなもの無視だ。
いくら判子を押してもまったく減る気配の無い紙束を恨めしく見ながら。何時目処が付くとも知れない書類の束と格闘している。
え?なぜ王様は判子を押す事が仕事なのかって?それは上の思った事が正確に伝わるようにするためだ。
別にこの説明にフラグは無いから安心してくれ。子供でも分かる事を自己確認しているだけだから。
……もう無理だ!押していく書類と同じだけ新しい書類が舞い込んでくるってありえないから!
こうなったら仕方ないな。切り札のシーザーさんを投入だ。
ステフにシーザーさんを呼ぶように言いつけ、しばらくするとのんびり腰に手を当てながら入ってきたシーザーさんに開口一番。
「書類の量を分担していただけませんか?」から入った。
シーザーさん的には、いつ応援の声が掛かるかと思っていたそうなので大して驚きもせず承諾した。やはり一人では無謀な量が意図的に運び込まれていたらしい。家臣達からのいじめになんか負けないんだから!
<シーザー>
執務室に運び込まれた書類の束を見る。
貴族の一人が新しい王の能力を確かめようではないかと提案し、他の貴族達もそれに乗り、自分達だけでも処理できる類の書類をも大量に持ち込んでいると聞いていたが、執務室にはあまり書類が溜まっているように見えない。
おそらくまじめに処理しているのであろう。これだけでもこの国王を評価できる。
これだけ出来る能力があるのなら、他の貴族に口添えして書類の量を少なくさせる事を提言するのも吝かでもないだろう。
仕事を分担されて二人で判子を押す作業を始め、しばらく判子を押す音が室内を支配する。
作業していると、ふと何かを思い出したかのようにタイチ国王が顔を上げ、こちらを見て、質問を投げかけてきた。
「あ、そうだ。シーザーさんに聴くことがあるんですけど少々よろしいでしょうか?」
ステフを一時退出させ、改めてこちらを見た。くりくりと可愛らしい瞳でこちらを覗き込む。孫が居たらこのような気持ちなのだろうか。わしは子供を設けなかったが、娶っておればよかったかと内心で思っていると、いきなり核心を付いてきた。
「さて、シーザーさんに聞きたいことは一つです。タカ・フェルトについてどう思われますか?」
先ほどまでの子供らしい雰囲気を変え、こちらを値踏みするような鋭い眼光を飛ばしてくる。
わしから見たらまだまだ甘いが、5歳が出来る眼力ではない。あやつが連れて来たとは言え、あやつと志は違うと言う事か。
これは評価を改め、相応の態度を取らざるを得んか。
「…正直気に食わんの。あやつが居ないと、この国が成り立たんのは分かるが。このまま従っておったら、国としての倫理が滅びる。あやつにこの国が握られていると思うと虫唾が走るわ」
「賭けにしては自信満々ですね。タカに連れてこられた俺にそうはっきり言うとは」
「なに、あやつより分別がはっきりしていると判断したまでじゃよ。今のおぬしなら信用できるからの」
「そうはっきり発言できるならこちらも信頼できますね。この国の為に、俺個人に忠誠を誓う事は出来ますか?」
「ほう。わしに個人的な忠誠を誓わせようとしたのは、わしが仕え始めた時の王だけじゃ。その心意気は買おう。生意気な小僧は嫌いではないからの。この耄碌した老人の力でよかったら喜んで貸してやろう」
いくら長寿のエルフとは言え、いい加減わしももう長くない…。
賭けるものはこの命と国の行く末。この男に賭けるのも一興か?
だが油断して置くべきではないな。タイチ王の力、見せてもらおうか。
今扱えるすべての魔力を目に集中し、シーザーさんがタカにした事と同じ事をしたら、普段から怖い目つきがさらに鋭さを増し、こちらを値踏みし始めた。その後の会話で、どうやら俺はシーザーさんの一応の信用を勝ち取ったらしい。この信用を生かすも殺すも俺の今後次第か。
それにしても…。殺したいほど憎んでも、それの出来ない国事情は改善の余地がある。殺されて良いわけないけどな。
これからの方針が決まったな。まず俺個人を認めさせて使える家臣を増やす事と、孝明に一極集中している魔術技術を抑えてその権力を分散、それでいて孝明を守るように配慮も欠かさない。
この順番でやら無いと家臣の暴走で孝明が死んだり、国が混乱してしまうか…。
まずは使える手駒だな。シーザーさんは信頼してもいいだろう。この国の現状をしっかり理解してる。忠義も厚そうだ。
文官はシーザーさんに任せれば何とかなるだろう。武官の孝明信仰が問題なんだよな…。
戦争もすぐに起きそうに無いから武官は今は放置していいか。
しばらくシーザーさんと書類仕事をした後、これからは家臣達に書類を少なくさせるように説得に行くと言い放ち、退出していった。
これ以上無謀な書類が来ないと分かると落ち着いて休憩を取る時間も空く。
「ステフ、お茶頂戴」
「はい、ただいまお淹れしますね」
うむ、やはりストレス社会を生き抜くためにはお茶だ!もう俺にはステフの笑顔と、入れてくれるお茶しか癒しはないぜ…。
ちなみにお茶と表現しているが、中身は紅茶とかコーヒーとか様々だ。日本茶は残念ながら無い。
最初は緊張していたようだが、今では言葉もすらすら出てくるようになって、もう完璧なメイドさんだ。
等と思いながら落ち着いて優雅な休憩時間を満喫して体力回復に勤しんでいると、いきなりドアをノックする音が響いた。
アポ無しでくるとか誰だよ…。せっかく優雅な貴族ライフを演じてたのに…。
このまま放置しても仕方ないので、ステフに通すように言う律儀な俺は、相当損な性格をしてると思う。主に加害者は孝明だが。
「失礼しますタイチ王。至急王の耳に入れたい事柄がありますので参上した次第」
…嫌な予感は当たるのが常識ですよね。タカは、ステフを壁際に下がらせ、俺に耳打ちをしてくる。
一言「成功した」と。
その一言ですべてを察した。と言うより、お願いしてた事は一つだけなのでそれ以外無いんだけどね。
褒めてやろうと思い、孝明の方を向くと、孝明もまだ研究途中の案件が残っているらしく、こちらが何かを言う前に既に足が出口へ向いていた。
生意気さに定評のあるタカ・フェルトとか言われそうだな。
さて、若干申し訳ない気持ちはあるが、義理の母上である王妃の姿を確認しに行こうか。
太一はステフに先導されて、長い回廊を歩いていた。
目的地は今は故人である前王の王妃様である、イレーヌ・ファミルスの寝室。
今王妃は子供を産む為に城の離れにある自室で、静養にしているとのこと。
なし崩し的に決まってしまった王であるタイチは、まだその姿すら見ていない。
義理とはいえ、母になるのが内定しているのだから、姿を見せに行くのは当然だろう。
無限に続くかと思われた足音の連鎖は、ステフが不意に立ち止まったことによって、途切れた。
「こちらがイレーヌ王女殿下の寝室にございます」
控えめにドアを叩き。中から、おそらく王女専属のメイドと思わしき人の声を聞き、ステフが王の来室を告げると、しばらくして入室の許可が下りた。
メイド達が席を外し、タイチは失礼しますと入り口で宣言した後、部屋に入室し、イレーヌ王妃の姿を見た。
そこにはお腹をふっくらとさせた、立ち上がると腰まで届きそうな青く細長い髪を、肩のあたりでまとめているかわいいタイプの女性で、どこか親しみを覚えるような優しげな雰囲気を漂わせた美人がベッドから起き上がり、温和な表情を浮かべながら俺を見ていた。
顔色が悪い為か、どこか病弱な印象を受けるが、妊娠中の女性は皆こんなものかと、タイチは一人納得していると、不意に声を掛けられる。
「あら、今日のお客様はとてもかわいらしいわね。妊娠中のため、メイド達からは動かぬよう言われていますの、ベッドから失礼します」
そう言ってにこやかに微笑む笑みは、どこか母性を感じさせた。
「はじめましてイリーヌ王妃陛下。私がこの度王に襲位させていただいたタイチと申します。王妃陛下はこの国にとっても大切なお人。私の事等気にせず、どうぞ横になってお休みください」
イリーヌは「それでは失礼して」と言いながら再びベッドに横になった。お腹の様子を診る限り、生まれるまでもうすぐのようだ。
布団を掛けなおし、ベッド横に備え付けられている椅子に腰掛け、改めてその目を見る。
王妃から感じるのは安心と信頼の感情。タイチはなぜいきなりここまで好かれているのかを理解が出来ない。
そもそもタイチは表面的には、この国を乗っ取る片棒を担いでいると言っても良い状態なのにも関わらずだ。
孝明の思い通りの未来にする気はまったく無さそうだが。
「あなたが噂に聞く、私のみどりごの婚約者ですか?」
疑問系だが断定系であるその問いに、タイチは軽くうなずく事で答えた。
「申し訳ない。本当は王が亡くなられた後にはイリーヌ様が権利を受け継ぐというのが道理でしょうに、こんな子供に奪われてさぞやお怒りしているのでは無かろうかと思っておりました」
こんなぱっと出の5歳児に、この国の最高権利を奪われたとなれば、いくらなんでも怒るのは当然である。
「いえ、謝る事ではありません。私はただ魔力が強いというだけで町民から召し抱えられ、子供を残すという使命だけの為にここにいるのです。学もありませんし、民をまとめることなど出来ません」
王族がこの国で一番魔力があると言う事情は、こういう制度をとっているかららしい。
ならばそれほど遠慮はいらないな。と思ったタイチは、しっかりとした姿勢を崩し、出来るだけ親しそうに話す事を心がけた。
まだ説明されていないが、個人の魔力は親の魔力量に依存されると言う事らしい。ありがちだな。
「なるほど…、こんな私でよろしければ、母上とお呼びしてもかまいませんか?」
「もちろんです。こんなにかわいい息子なら喜んで、ファミルス王」
「これより私のことはタイチと呼び捨てでかまいませんよ。私も母上の家族となる事を嬉しく思います。これほどまでにお美しい方の娘ならさぞかし美しく育つ事でしょう」
「わかりました。タイチ、我が愛しい息子。こんな何の取り柄もない、普通の女に礼を尽くしていただいたこと、心より感謝しますわ。今でこそ医者やメイド達が忙しなく働いておりますが、普段は一人で寂しかったんです。時よりここに遊びに来てお話していただけると嬉しく思います」
「私が出来る事なら何なりと申し付けてください。出来る限り駆けつけますので」
「これほどまでに優しい人と結ばれるなんて、我が娘も幸せ者ですね」
うーむ。この女性は誰でも無条件に信頼するのか?この性格ならありえる話だが。
子供だと侮っているのか?これが一番ありそうだが、俺に対して敬意を払っていたのであまりそういう印象は受けなかったな。
俺が王と言う事で身分の高い人には無条件で信頼するように教育でもされているのだろうか?
俺個人に関係があるのか?初対面でそれは考えにくいし、とりあえずこの考えは保留か。これからの付き合いで見定めるしかないな。
友好な関係を築けただけで今回は良しとして置こう。
「あら、お腹の中に居るこの子も、蹴って主張してきてます。タイチの事が気になるようですよ」
それから10日後。元気な女の子が生まれ、国王の特権である命名権を使用し、チヒロ・ファミルスと名づけた。