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No.4424の一覧
[0] ダンジョン、探索しよう![山川走流](2009/06/21 12:18)
[1] その2[山川走流](2009/02/08 06:52)
[2] その3[山川走流](2009/02/08 06:54)
[3] その4[山川走流](2009/02/08 06:55)
[4] その5[山川走流](2009/02/08 07:36)
[5] その6[山川走流](2009/06/21 11:42)
[6] その7[山川走流](2009/06/21 11:45)
[7] その8[山川走流](2009/06/21 11:50)
[8] その9[山川走流](2009/06/21 11:55)
[9] その10[山川走流](2009/06/21 12:19)
[10] その11[山川走流](2009/06/21 11:59)
[11] その12[山川走流](2009/06/21 12:03)
[12] その13[山川走流](2009/06/21 12:04)
[13] その14[山川走流](2009/06/21 12:20)
[14] その15[山川走流](2009/06/21 12:10)
[15] その16[山川走流](2009/06/21 12:12)
[16] その17[山川走流](2009/06/21 12:13)
[17] その18[山川走流](2009/06/21 12:14)
[18] その19[山川走流](2009/06/21 12:17)
[19] その20[山川走流](2009/08/24 00:13)
[20] その21[山川走流](2009/08/24 00:48)
[21] その22[山川走流](2009/12/06 21:53)
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[4424] その7
Name: 山川走流◆f1f61d82 ID:957db490 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/21 11:45
 それはそれ、これはこれというのは冒険者を続けていくうちでアルマにとっても、アレッシオにとっても必要な技能だった。贅沢を言っていられないときは多々ある。特に命を掛ける仕事が多く存在する冒険者という職業はいつまでも暗い雰囲気を引きずるのをよしとしない職業だ。

 確かに非があるのはこちらだとは分かっているが、だからといって気まずい雰囲気を引きずるのはアルマの性には会わない。


「カリムさん? んー、カリムちゃん? どっちで呼んだらいいと思う?」

「どちらでも構わない。長い付き合いになるわけでもない。このまま、十九から二十階の階段までいったら今日は休んで、明日すぐに二十一階のテレポーターまでいくから」

「つれないこと。やっぱりフリードっていうとお堅いのね」

「僕の家系は関係ないだろ」

「いやね、帝国出身者としてはフリードの名は興味深いのよ」


 純粋にカリムの家系について興味があるアルマはそっけないカリムの対応に苦笑した。仕方がないのは分かっているが、やっとあの二人から解放されたのだ、もっとフレンドリーに進んでいきたい。即席とはいえ、パーティなのだ。

 事実、アレッシオと修貴は特に気まずいということはなく話している。ただ、修貴の会話何処かぎこちない。人見知りでもしているのだろうと、アルマは勝手に思うことにしていた。


「ところで、ここから下り階段まで今日中に行くっていったけど、目算はあるの? マップがあればすぐかも知れないけど、私たち持ってないわよ」


 家系関連の会話をメインに続けていても雰囲気は良くならないと判断し、アルマは実利的な話をすることにした。


「マップならあるよ。ほら」


 カリムは自身の携帯端末のマッピングを見せる。

 そのマップを、アルマは覗き込む。それにつられる様にアレッシオも覗き込んだ。

 そのマップは隙なくすでに埋まっていた。右下に表示されている階数とその次に進むという文字から、アレッシオは疑問が浮かんだ。


「何階までマップ持ってるんだい?」

「地下三百十階まで」

「…………え?」


 これは、なんと言う間抜けか。口にはしなかったがアレッシオはそう思った。本当に、あの二人は間抜けではないか。マップを売る相手を完全に見誤っている。完全に下層攻略組みだ。すでに三百階に到達している人間が、なぜこのような上層にいるのか。事前の情報収集では最前線は四百十階だという、まだそれでも完全制覇をされていないと言うのは驚くべきダンジョン、ヴァナヘイムだが、その攻略が停滞しているのには訳がある。三百五十階以降、一部の者しか先に進めないからだ。

 この事実と見合せば、カリムがもつマップ三百十階はほぼ前線といって過言はない。

 あの実力を鑑みれば、確かに妥当だろう。だが、それは修貴という学生が相方では辿り着けない階層だ。修貴は確かに将来更に強くなるだろう。だが、現状ではカリムの相方としては役者不足は否めない。


「その、これは好奇心なんだが、一つ質問をしてもいいかな。ただ、気を悪くしたら、ごめんな」

「何かな?」

「君たちは何でこの階層を二人きりで潜ってるのかな? 特にカリムさん、君の実力、それにマッピングの様子の限り、もっと下層まで他のパーティで潜ってそう──ってぇ!? アルマ何をするんだ!?」


 カリムに疑問を投げかけていたアレッシオの後頭部をアルマが叩いた。

 そのまま、首に手を回し、耳元に囁く。


「あんた、それくらい察しなさいよ。どう見てもあの子、あっちの子に気があるじゃない」

「え? いや、そうかも知れないけどさ。それだけしゃ、わざわざヴァナヘイムに潜る必要ないって」

「いやね。他にも、二人だけの秘密があるかもしれないじゃない。いいわよね、若さって」

「アルマ、君って人はね。やれやれ、迷惑をかけておいてもそれか」

「それを言ったら、あんただって自分の好奇心のために質問してるじゃない」


 う、とアレッシオは言葉につまり、特に表情が変わっていないのを見て安堵する。

 確かに、色恋沙汰と何か別のものが混ざり複雑で、他人に言いたいことではなくなっているのかも知れない。アルマに言った通り、迷惑をかけたのだ。好奇心で質問はするべきではなかった。

 ただ、と少しカリムと言う少女に同情することにする。アレッシオが話した限りでは修貴という少年は、どうやら彼女に対し、そういった類の感情を持たず、ただ信頼すべき親友、相棒、相方として見ている節があった。

 まあ、アルマの言葉ではないが彼らは若いかと、勝手に自己完結し苦笑する。


「それで、アレッシオ」

「まだ、あるのかい?」

「あんたの見立てじゃあの二人どんな感じ? 彼女、アレだけ実力に差がある相手を好いてるみたいだしどうなの、あっちの少年は?」

「あのね、アルマ。君って人は……」


 実に楽しそうなアルマの表情に対し、アレッシオはその切り替えの早さだけは見習うことにしようと、ため息をついた。

 それに、これ以上くっついて話していると何かを疑われかねない。ただでさえ疑惑の相手とされても文句を言えないのだ。共にテレポーターまで送ってくれると言った相手に疑われるようなまねは大変よろしくない。

 そう判断し、アルマから離れたアレッシオは、カリムと修貴が自分たちと似た会話をしていたということに気づかなかった。


「修貴、あの二人出来てるのかな?」

「いや、俺に聞かれても……」










ダンジョン、探索しよう!
その7









 バスタードソードが、レンガを突き破り現れたブリックワームの頭部を斬り捨てた。緑色の異臭を放つ体液が切断面から零れ落ちる。人の頭よりも一回り大きい、そのワームの頭は重力に従い、ワームが食いつぶしたため崩れた煉瓦の上に転がった。

 煉瓦の中に潜む、この人間の大人ほどの巨体を誇るワームも頭部を失えば行動することは出来ない。


「気をつけて、ブリックワームは体液に毒を持ってる」

「りょーかい」


 カリムの注意にアルマは警戒しながらも、軽く応えた。

 本来ならば、地中から不意撃ちをもらい、危険なモンスターではあるが、こうして襲い掛かってくるのが分かっていれば、それほど危険な相手ではない。それでも、何処から飛び出してくるのか自身では把握できないというのは危機感を多少ではあるがもたらしている。

 だが、自らではないとはいえ、こちらにはその場所、その飛び出すタイミングすら把握している仲間が居るのだ。

 アルマは極められた気配察知による索敵スキルの圧倒的な有用性を初めて実感していた。アレッシオと共にダンジョンに潜ることでその有効性を多少なりとは理解していたつもりではあったがこれはその比ではない。

 なるほど、これはすごい。実力を補って有り余る利点だ。不意を取られない、どころか不意を取る事が出来るというのが確実に出来るというのは、シーカーや冒険者にとっては涙が出るほどの利点になる。

 修貴という少年は、確かにカリムという少女に実力的に釣り合っていない。彼と彼女が正面から斬り合えば、一振りで決着となるだろう。それは、アルマの見立てであるが、アレッシオも同意することだ。しかし、正面からではなければ、特に場所が指定されていなければ、修貴というシーカーは厄介極まりない。

 ボーパルバニーがより賢くなった存在というのが、彼を表すに相応しいと、アルマは考えた。きっと、修貴はそのどこかに鋭い触覚と、牙を持っているに違いないと想像したところで、あまりの余裕に苦笑しそうになった。


「カリム、右の壁の中に一体いる。まだ、出てくる様子がないが、裏を取るつもりだろう」

「修貴、そいつの対応は任せる。体液には気をつけて。他は?」

「このまま四歩先に二体埋まってる。頼む」


 カリムが隠れているだろうワームに向けて前進し、修貴が不意を打とうとしているワームの対応に移った。

 そして、その連携の取れた二人の戦いには加わりにくいと、アレッシオはため息をつく。守られているだけというのは、プライドと良心が文句を言うが、入り込む余地がない。お互いにその戦い方を把握し、熟知した戦術は下手に手を出して崩さないほうがよほど正しい。それでも、アレッシオはその耳でブリックワームの動きこそ察知しているため、何もしないのは躊躇われる。出来ることをしようと判断し、アルマに一度視線を向けた。

 余裕を持って行動していたアルマもアレッシオと視線を合わせ頷いた。

 それにしても、カリムと修貴、二人を見ているとアルマとアレッシオは自信を失いそうになる。

 カリムはまだいい。あれは次元が違う。

 だが、修貴はそうではない。手が届く位置にいる。いや、総合力だけで見れば二人のほうが上のはずだ。短剣で修貴と斬り合えばアレッシオは負けないだろうし、術でアルマが戦えば修貴は手も足も出せない。だが、シーカーとして戦えば負けるだろう。修貴は気配を察知し、そのまま戦いに移行でき、尚且つ高レベルの隠行スキルを持っている。だからこそ、低くはないがけしてこのダンジョンに挑むには高いと言えない剣術の技量でも前衛として戦っていられる。

 本当にまさかだ。アレッシオに比べて十以上も年下の少年がどうしてこれ程の技術を持っているのか。もしかしたら、東方の噂でよく聞くニンジャなのかもしれない。彼らはその肉体一つで全てを行うという。むしろ、防具など邪魔だとさえ噂にはある。きっとあれだ。修貴はまだ若く未熟なため防具を付けているのだ。ニンジャの修行の真っ最中なのだ。将来の彼はきっと、裸で最強なのだ。何も装備しなくてもACが下がるのだ。まて、ACって何だ。

 アレッシオは一度、頭を左右に振る。だが、だからといって、負けてはいられない。裸で最強になるのは将来のこと、現在の修貴はどう見ても防具を付けた未熟者。そのような状態の相手に負けているわけにはいられないのだ。

 それにしても、ニンジャ恐るべしと、アレッシオは笑ったがすぐに顔を引き締める。

 アレッシオはスローイングダガーを腰から一本抜き出すと、いつでも投げられる体勢で待ちに入った。

 アルマはカリムが直進するのを注意深く観察しながら、精霊に話しかけ始めている。

 そして、カリムが近づいてきたの気づいたブリックワームが、煉瓦を食い破り猛然とカリムの足に元に飛び掛った。


「ノームよ、ワームの動きを止めて」


 ハーフエルフのアルマは土の精霊であるノームに話しかけた。エルフは総じて精霊との相性が良い。その形質はハーフエルフのアルマにも引き継がれている。そうして、アルマがノームに話しかけると、ワームが破壊した煉瓦が形を槍のように変え、ブリックワームを捉えてみせる。

 カリムはその隙を逃すことなく、二匹同時に一刀でもって断ち切って見せた。

 アレッシオは、飛び出してくるのを息を潜め待ち構えている修貴にあわせ、ダガーに加え更に火炎瓶を取り出していた。

 ブリックワームは修貴がすでにその存在を感知し、刀を振り下ろせる状況とは露知らず、煉瓦から飛び出した。飛び出した瞬間に振り下ろされる刀。その一刀はその首こそ切り落としはしなかったが、その胴体を半ばまで斬った。

 修貴は切り口から飛び散る体液から逃れるように、後ろに大きくステップを踏む。アレッシオはそれに合わせダガーを投げる。ダガーはワームの眼球に突き刺さり、その死角を奪った方向から、手にしていた火炎瓶で燃やし止めを刺した。

 燃えるワームの死骸を尻目に修貴は裾についた体液に顔をしかめる。何度も練成し強度を上げた制服の裾が溶けていた。毒ということだが、とんでもない毒らしい。肉体に染み込んで人体に影響を与えるのではなく直接に溶かすものを毒と呼んでいいのか迷うが、修貴はとりあえず体液がついた部分を短刀で切り落とすことにした。


「こんなもんかな?」


 アレッシオが周囲の音を確認しながら言った。


「こんなもんでしょ」


 アルマはノームに周囲の状況を尋ねながら言った。


「こんなもんだね」


 カリムは残心をしながらバスタードソードを鞘に収め言った。


「こんなもんか」


 修貴は切り落とした裾に触れないようにしながら、周囲の気配を探り言った。

 ブリックワーム四体が現れた場所は煉瓦が崩れている。その崩れた煉瓦を避けるようにワームの死骸を確認したカリムは小さく頷いた。即席四人組みパーティの第一戦目としてまずまずの戦果だった。




*   *




「あっさり辿り着いたわね」

「あっさり辿り着いたね、確かに」


 アルマとアレッシオは二人顔を見合わせ確認しあった。

 場所は地下二十階に続く階段だ。周囲を見合わせても先客もいないようであった。


「どうやら、アントンとデリックの二人はここまで辿り着いてないみたいね」

「まあ、そうでしょ。いくら慣れてるからってあの二人の実力じゃ無理だろうね」

「本当にそういう意味では、カリムちゃん愛してるありがとう、だわ」

「アルマ、君の軽口は本人の前で言うことなのか?」


 迷惑をかけているため強く出ることが出来ないアレッシオに比べ、アルマはここに来る道中も含め、初めこそ殊勝に振舞っていたが、すぐに軽口を叩くようになっていた。特に、カリムに絡むような軽口が多く目立った。

 アレッシオにも分からなくはない。これだけ実力を持ったシーカーとパーティを組むことなどまずはないのだ。出来る限り話をしたいというのは分かる。だが、アルマの会話の方向性はどうも違っている気がしてならなかった。どうにも、色恋沙汰の話がしたいらしい。

 その話が仮にカリムの逆鱗に触れたらどうするのかと、アレッシオは手綱を握るほうの気持ちも知ってほしいものだった。

 だが、アルマは笑って答えるのだ。大丈夫、大丈夫。

 その言葉には理由がある。アルマの見立てとしてカリムは修貴との仲をどうにか発展させたいはずだ。アレッシオと修貴の会話と、自らが話した感想としてはどうにも修貴という人間は色恋沙汰が苦手らしい。だからこそ、カリムは発展させたいはずだとアルマは予想しているのだ。


「若いっていいわ。本当に」

「はあ……。あのね、アルマ。あんまりかき回したら駄目だぞ」

「なーに、大丈夫よ。仲間を見る目はなかった私だけどね、色恋沙汰なら負けないわ」

「誰に言ってるんだ、誰に。ほら、あそこの二人はもうキャンプの準備を終えてるから、僕らもさっさとしよう?」

「ふふふ。寝る前にじっくりと根掘り葉掘り聞かなくちゃね。ああ、そうだ! 見張り番は私とカリムちゃん。アレッシオと修貴君でいいわね?」

「いや、君は何を言ってるんだ?」


 安全地帯とはいえ見張りは必要だ。他のパーティがいつやってくるかもわからない。そして、稀にだがぎりぎりまで寄ってくる魔物もいる。

 加えて、アルマが言った組み合わせは受け入れられるだろうとアレッシオはため息をつきたくなった。今の組み合わせなら、こちらが見張られるという意味合いでも問題はない。すでに問題を起こしているのだ。多少の監視を自分たちが受けなければならないことぐらいはアレッシオは理解していた。

 だが、それにしてもだ。


「ふふふ。あんなかわいくて、強いとか反則よね。プラスして、恋の真っ最中とかこいつはやばいわ。ああ、楽しい」


 駄目だこいつはやく何とかしないと。

 アレッシオは迷惑をかけた側として強くそう思った。そして、アルマ以上に仲間を見る目がないという事実にアレッシオは打ちのめされそうだった。







* * *

間が空いてしまいましたが更新です。
どうにも、主人公にスポットがあたらない。ふしぎ!
*****
修正 2009/04/23
修正 2009/06/21


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