失敗だったと、母親の形質をよく引き継いだハーフエルフであるアルマはため息を吐いた。この迷宮都市で初めて組むことなったパーティはどう考えても失敗だった。
一人目はよかった。自分と同じく迷宮都市で一旗上げるためにやって来たご同輩、アレッシオ。何でも屋の冒険者からシーカー専門に蔵変えをしたハーフホビットという変り種。同類であるということもあり、すぐに馴染んだ。お互いにそれなりの実力も持ち合わせていたためなんら不満はなかった。
だが、次が失敗だった。この街を根城にする人間の二人組み。迷宮都市でも中堅どころのシーカーであり、始めは何ら不満はなかった。
ある程度の期間を過ごしてきて見えた実態はどうだ。共にダンジョンに潜ってたら何のことはない。向上心もなく、戦闘の危険な部分を上手いこと誘導し自分たち二人に引き受けさせているのだ。しかも、すでにこのダンジョンのマップは地下四十二階まで埋まっていると言う。
戦闘はまだ良い。そうされてしまったのは自らの未熟を恥じるだけでいいのだ。しかし、しかしだ。この人間の二人組み、アントンとデリックはあろうことか、負傷したパーティを見つけると阿漕な商売をするではないか。
アルマは冒険者の中の部類でもシーカーという分野を少しではあるが神聖視していた。シーカーたちはダンジョン内において助け合うという鉄則があると、全てがそうでないにしろ守られているものだと思っていた。アイテムを渡すときに金を取るとしても、足元は見ない程度の良心があると信じていたのだ。
だがどうだ。現在パーティを組んでいるその二人は、追い込まれているパーティを見ると高く回復アイテムを売りつけ、場合によってはマップを売る。それだけならば、アルマは我慢が出来たかもしれない。冒険者として地上で依頼を探し、時にはシーカーに混ざることもあったが、そうやって生きてきたアルマは騙される方も、方だという認識は少なからず持っていた。
この二人は騙すのではない。マップを渡し、少しの正しい情報を教えるのだ。高く売りつけたサービスとして。そうだ、少しなのだ。勘違いを起こしてしまうような少しの情報を与えるのだ。それも、このダンジョンに初めて挑んでいるだろうシーカーにだ。
そして、誤解したシーカーが危機に陥ったところを救い、足元を見るのだ。生計を立てていく上で狡猾な人間だ。だが、より先へ進みたいという向上心を持つアルマにとってこの二人と組んだのは失敗以外の何物でもなかった。それは、アレッシオも同意することだった。
今のところアルマが確認した被害者は中堅パーティが二つに、学生パーティが三つ。どれもこれも、このダンジョンに初めて挑んだ者たちだった。
このダンジョンの情報を集めれば、二人がこのようなことを続けている理由は確かに見えた。
大迷宮"ヴァナヘイム"は難関ダンジョンと呼ばれているが、中堅でも初めの地下五十階までならば、慎重に慎重を重ねれば到達出来ないこともない。だが、それ以降はまさしく、化け物たちの巣窟だという。
アルマは、パーティを募集するときヴァナヘイムに挑んでいることを優先に探していた。見つけたこの二人は、他のダンジョンではなく、ヴァナヘイム上層をメインに生計を立てている阿漕なシーカーだったのだ。
まったく持って、失敗だ。
「アレッシオ、今回の探索が終わったらあの二人から離れない?」
「そうだねぇ。僕としても、やってられないよ。人のことをシーフとして扱ってるのに、いざとなったら前衛をやらされるなんてね」
軽い距離を先行し、周囲を窺っているアントンとデリック。その二人に聞こえぬよう、アルマとアレッシオはひそひそと、会話を続ける。
「馬鹿みたいよ、本当に。よりによって学生まで対象にしちゃってさ。シーカーとして誇りはないのかしらね?」
「シーカーというより、あの二人は阿漕な冒険者のお手本だよ。まったく、大人気ない。ま、止めない僕らも僕らだけどね」
「それは言わないで。嫌になるけど、高い授業料だと思ってもらいましょ。私たちも、反発してここに置いてかれたくないもの」
「そう、だね。ボーパルバニーにあった日には、死んじゃうからねぇ。まったく、嫌になる」
二人は、そうして話しているとアントンとデリックがまたカモを見つけたようであることにアレッシオが気がついた。
見えたのは少年と少女の二人組み。片方は学生服を着ていることから、戦闘者養成学園の生徒であることは間違いないだろう。それも、よりによって二人ときたものだ。いくら上層だからといって、学生二人組みにどうにかなる場所ではない。
ならば、パーティとはぐれたとでも考えるべきだろう。もしかたら、魔物に襲われ仲間を失ったのかもしれないが、二人の姿格好からそれはないな、とアレッシオは判断を下す。
「相変わらず目がいいわね」
「それが、僕の仕事だからね。トラップ解除にモンスターの気配察知。ああ、そうさ。これを本当ならやらないといけないのに、あの二人僕を矢面に立たさせてさぁ」
「はいはい。愚痴はいいから。あの哀れな子羊さんの被害が少しは和らぐようにしてあげましょ」
「そうだねぇ。ああ、あの女の子かわいいなぁ。アントンの奴、下手なことをしないといいけど」
アルマとアレッシオをデリックが呼んだ。二人はやれやれと肩を揺らし、アントンが嬉しそうに見ている少女と、彼にとってはおまけであろう少年の下に歩いていった。
それにしても、とアレッシオは思った。随分と物々しい少女だ。少年のほうはアレッシオでも肉眼で確認しないと居ないのではないかと錯覚しかねないほどに気配が薄い。
その姿からなんとなくだが想像したことを、アレッシオはアルマに伝えた。
今回は、あの二人の思い通りにいかないかも。
「だったら、おもしろいんだけどねぇ」
アルマの台詞にアレッシオも同意する。結果として片棒を担ぐことになってはいるが、やはりあの二人がやっていることは気持ちがいいことではないのだ。
アントンは全員が合流したことを確認すると、自信を持った声で少女、カリム・フリードに話しかけた。
場所は、ヴァナヘイム地下十九階。カリムと修貴がヴァナヘイムに挑み、五日目だった。
ダンジョン、探索しよう!
その6
「二人だなんてどうしたんだい?」
何だ、こいつらと修貴は視線を細め観察した。気配は事前に察知し、カリムには伝えてあったが、挨拶程度ならばあるかもしれないが、堂々と正面から話しかけてくるとは思いもよらなかった。止まっていることから休憩でもしているのかと思ったがそうではなった。
少なくと、今の台詞から読み取るに修貴が昔よく言われていたことだとは察することが出来た。一人で、学園のダンジョンに潜っていると仲間はやられたのかと、遭遇したパーティに聞かれることがあった。今でこそ、学園内ではあいつは一人で潜っている変わり者だということが定着し、何も言われることはなくなったが、二人でもどうした言われかねない人数なのは確かだった。
だが、心配によってかける言葉ではあるが、修貴にはどうにも、この目の前の男が胡散臭く感じた。
カリムと一度視線を合わせると、カリムも似たようなことを思っているのが読み取れた。
「仲間とはぐれたのかい? ああ、もしそうなら大変だ。なんなら、マップを売ってあげてもいい」
二人が返事をしないことをいいことに男が、言葉を続ける。
カリムは、その前に一度全身を舐め回すような視線に気がついていた。男の横に居る男の奥に二人居るのがわかるが、その二人の申し訳なさそうな視線からろくでもない手合いであることが予想がついた。
大方、修貴の制服姿と、カリムの容姿から年齢を推測しふっかけようとでもしているのだ。
「いらないよ、そんなもの。だいたい、僕たちは元々二人パーティだ。はぐれる仲間いない」
「二人組み? そいつは豪胆だな、お嬢ちゃん。そっちの坊主とだけじゃ、不安だろうに。それにだ、この先ボーパルバニーの巣穴があるんだ。二人だと危険だぞ」
男はどこか下種な笑いを浮かべた。
「なんだったら、俺たちが手伝ってやってもいい。ああ、何だったら二十一階のテレポーターまでご一緒しようか?」
修貴は男がそう言った瞬間、後ろのエルフ、いやハーフエルフの女性が露骨に嫌な表情を浮かべたのに気づいた。
そして、修貴は男に視線を運ぶと口を開く。
「あー。手伝いとかいらない。俺たちで、攻略してこそ価値がある」
「坊主。そうは言うがな。命あってのだろ?」
男が不機嫌そうに、声のトーンを落とし修貴に言った。
それに対し、カリムが修貴に喋るなと合図をする。
「いらないものはいらないんだ。ボーパルバニー? それがどうした。たかだか首狩り兎だ。確かにここらに生息するブラッドバニーは獰猛だが、あの毛並み。隠行は上手いが、姿が目立つ」
「そいつは、本の知識かい? 本物のあいつらは、そんことを言ってもなかなか見つからないものさ。何せ、うちのアレッシオでさえ、すぐには発見できない。あいつは、半分ホビットなんだぜ? それなのに、そうやすやす発見できないんだ。わかるだろう、お嬢ちゃん」
男の最後の言葉に、カリムは表情を消していく。
修貴はカリムがこういった弱みに付け込む相手が嫌いなのを知っていた。実家の影響もあるのだろうが、カリムは強者だ。命をかけた戦闘でもない限り、弱みに付け入るのを好む必要はないのだ。
修貴はこれは長くなるなと、ため息を見られないように吐き、一度周囲を索敵しようと思い立つ。この男が言うおり、確認したカリムのマップではボーパルバニーの巣穴はこのすぐ近くだ。こうして会話をしているうちに寄って来る可能性は低くはない。
自己の感覚を研ぎ澄まし、伸ばし、全てを探る。違和感はすぐに見つかった。もう、いるじゃないかと目の前の暢気なパーティに悪態をつきたくなる。
修貴はボーパルバニーが気づかれたことを察しないよう、一呼吸し即座にカリムに言葉を投げる。
「カリム! 居るぞ! そっちのハーフエルフの人! 気をつけて」
「修貴! 援護を」
修貴の言葉にバスタードソードを握り、迅速な対応を見せるカリム。そして、呆けたような反応のハーフエルフに対し、ハーフホビット、アレッシオは修貴の言葉にすぐに周囲の索敵を行いハーフエルフに飛び掛った。
「アルマ!」
叫びと共に、ハーフエルフ、アルマを押し倒すと、先ほどまでアルマの首があった部分を鋭利な触手が過ぎ去っていった。
「な、なんだ! ガキが!?」
修貴の唐突な叫びと、カリムの神速の行動に置いてかれた男が、修貴を止めようとして、もう一人の男に止められる。男の相方は少なくと、カリムに話しかけていたこの男よりは直ぐに現状を把握していた。
カリムが触手を振りぬいたブラッドバニーに対し、神速をもって間合いを埋め、バスタードソードで両断する。そのカリムを襲おうとする、さらに次のブラッドバニーの鋭利な歯を修貴が刀で弾く。
修貴とカリムが位置をスイッチすると、カリムは簡易呪文を詠唱する。
「風よ、切り裂け!」
中級疾風魔法を簡易呪文で発動させ、命からがらブラッドバニーの攻撃から逃れている修貴を守ってみせる。
ブラッドバニーは刻まれるが、それで簡易呪文に打ち倒されるほど弱くはない。風の刃から巧みに逃れ、修貴の首を今一度狙おうとしたブラッドバニーは、素早く間合いを詰めた修貴によって逆に首を刎ねられる。
そして、カリムはその剣技をもって更にもう一匹のブラッドバニーを倒して見せた。
そこで一旦、この場の間合いが仕切りなおされる。修貴は発見した瞬間に行動に移ったため、一体何対のブラッドバニーがいるかを確認する。残り、三匹。死体を含め、六匹のブラッドバニーに襲われたことになる。
おいおい。きついぞ、これ。
現状完全にお荷物を四人背負っている。いや、カリムの視点で見れば、五人ではないかと修貴は思い直す。せめて、負荷を掛けないよう戦わなければならない。
「修貴、一匹引き付けて。僕は残り二匹を狩る」
「わかった」
修貴は腹をくくる。柄に力強く握り過ぎないことを意識する。修貴の理想の戦い方は自然体だ。力んでしまってはいけない。
カリムが、神速の踏み込みでブラッドバニーに斬りかかる。修貴は合わせ、滑るように一匹に挑みかかった。
* *
おいおい。何だよ、これ。
アレッシオは思わず目を点にした。まさか、自分よりも速く、少年がボーパルバニーに気づいたことも驚きだったが、それ以上に少女の戦闘力は非現実的に見えた。正確には、少女の外見の年齢に対してはあまりに高い。実は見た目通りの歳ではないないのかもしれない。
これほどの剣術。速度。魔法の展開。それは全て超一流と呼んで差支えがない。このレベルの戦闘を見たのは、何年前になるのか。冒険者として、アキーム地方の暴虐神バルバロイの眷属である魔族との戦争に加わり、勇者アレクサンドルの戦闘を遠巻きに見たとき以来だろう。少女の実力は勇者アレクサンドルに及ばなくとも、アレッシオが関っていたような依頼には居ないレベルだった。
三匹を瞬く間に倒した二人の少年少女は、間合いを計り、残り三匹に対し即座に撃って出た。
少女の神速の踏み込みは、電光石火という言葉が嫌でも浮かぶ。本来、ボーパルバニー系統の魔物の攻撃はこちらが対応できない程速いと比喩されるが、これでは、対応できないのは、ブラッドバニーだ。
その巨大なバスタードソードを驚くほど巧みに操り、二匹のブラッドバニーを危なげなく倒すと、相方である少年に少女は加勢する。
アレッシオはとりあえず安心した。少年の索敵能力は尋常ではないようだが戦闘力は少女とは比べるまでもないらしい。この年代の少年少女があのような戦い方をされては立つ瀬がない。
少年と向き合っていたブラッドバニーが少女に気を取られると、少年はすかさず見事な隠行を行った。アレッシオも、初めから居ると認識していなければ騙されてしまうレベルのそれに、戦闘力が低いことを帳消しにする才能を見た気がした。
少年は、少女に気を取られたブラッドバニーに気取られることなく、ボーパルバニーの十八番である首刎ねをして見せた。
何これ。
アルマは上に覆いかぶさったアレッシオをどかそうと声を掛けようとしたが、少年少女の戦闘結果があまりにもあんまりだったため声が出なかった。そして、見た目に似合わぬ強暴さを持った少女に畏怖が生まれる前に、アルマは笑いがこみ上げてくることに気がついた。
アルマの肩が震える。
アレッシオは急に震えだしたアルマに何事かと視線を向けるが、自分が覆いかぶさったままだということに気づき飛び上がった。
「くく。くく。だ、駄目……。無理」
アルマは呆然と間抜け面を晒しているアントンとデリックを指差すと、大きな声で笑い出した。
「馬鹿みたい! く、くははは。あはは。ははははは!」
同時に、虫のいい自分を心の中で嘲るが、やはり、笑うことを優先させた。
アレッシオはアルマの馬鹿笑いにを見ているうちに、少年と少女の手際とアントンとデリックの間抜けっぷりに笑い出してしまった。
「ははは。あははは。アルマ! アントンとデリック、馬鹿みたいじゃないか! どっちが守ってやるんだ?」
「くふふふ。そりゃ、ねぇ、アレよ。ふふふ。二人に決まってるじゃない!」
戦闘を終えた少年と少女は顔を見合わせ、笑い出した二人においおいと肩を竦めたが、アレッシオとアルマの笑いは止まない。
そうしているうちに、アントンは顔を真っ赤にさせ吠える。
「て、てめらぁ! 何笑ってやがる!?」
「いやだって、無理。ふふ、無理。腹筋が捩れちゃう」
「ほんと、駄目だ。あはは。僕の腹筋が、駄目になるよ」
デリックも馬鹿にされていることに対し、怒りに身を任せ剣を抜いた。アントンもそれに倣い、剣を抜く。
それにを見た少年と少女の視線が細まる。
少女はバスタードソードを手に、少年は刀を手に笑いが収まらない二人の前に出るとアントンとデリックを威嚇した。
その行動にアントンとデリックは更に顔を紅潮させ、怒りのあまり歯軋りをする。
「クソ!」
「ちくしょう!」
この少年少女、とくにカリムと呼ばれていた少女の実力はどう見積もっても、彼ら二人が敵う領域に居なかった。
だからこそ、アントンとデリックの取れる行動は限られている。ここで、詰問され報復されるのは二人にとって好ましいはずがない。結果、二人は逃げ出した。
* *
修貴とカリムは、逃げ出した二人を追うことなく、やっと笑いが収まったアルマとアレッシオに視線を向けた。
「えー。その、なんだ?」
「修貴、僕に聞かない。まあ、とりあえず。この二人をとっちめてみようか」
え、とアルマとアレッシオは顔を見合わせ、待って待ってとカリムに懇願した。
「そう、あの二人を止められなかったことはごめんなさい。その、虫のいい話だってことはわかるけど」
「そう、だね。虫のいい話だ。君たちに実害がなかったとはいえ、同じパーティを組みながら僕らはあいつらを止めなかった」
謝られたカリムはやれやれと肩を揺らし、二人に続きを話すように促した。
「ま、一言で言ったら私たちが馬鹿を診たって言う話。見る目がなかったの。パーティを組む相手をしっかり吟味しなかったからこうして、あんな奴らの片棒を担いでた」
「ふーん。彼ら、僕たちにしようとしてたようなことをやっていた訳か」
「カリム、どうしようもないさ」
「わかってるよ、修貴。ああ、わかってるとも。でもね、嫌いなんだよ、ああいう類は」
カリムの不機嫌さを修貴は宥め、二人に更に続きを促す。
「ま、見ての通りだよ。その、なんていうか、ありがとう」
「本当に、虫がいい。自分たちで出来ないから誰かが止めてくれてありがとう? 何を言ってるんだ」
「カリム。誰もが強くないんだ」
修貴の一言にカリムはわかってるとも、と小さく呟いた。
アルマとアレッシオはその一言に下唇を強くかみ締める。そうだ、自分たちが弱いから片棒を担いでしまったのだ。だが、反抗する機会はあった。そう考えれば、二人は本当に虫が良かっただけだ。
諦めたようにアルマは小さく笑った。
「本当に、本当にね。ああ、もう最低ね。……一つ訊いていいかしら?」
「何を?」
「あなた達の名前。今回のことは私たちの意気地のなさが原因ね。だから、罪滅ぼしとは言わない。ただ、忘れないようにしたいの」
「被害を被ったのは僕たちじゃないけど?」
「そうね、でも」
「わかってるよ。けじめだ。僕の名はカリム・フリード」
え、とアルマの顔が驚きに染まる。フリード。フリードとなれば、アルマが知るフリード家は一つしかない。アルマの母国である帝国のフリード家だ。それと同時に、園と強さに納得をした。フリードの血筋なのだ。
アレッシオはアルマの驚きには何も言わなかった。
「俺は、藤堂修貴」
「私はアルマ・ブルーメ。ありがとう。カリムに、修貴」
「僕はアレッシオ・パリオーニだ。ありがとう」
どういたしましてとカリムが返答し、最後に言葉を付け足した。
「君たち二人で、二十一階まで行ける?」
「──お願いするわ」
アルマとアレッシオはカリムと修貴にこれで頭が上がらなくなった。
アルマとアレッシオ、二人がこの迷宮都市ヴォルヴァにやって来て一月を越えた。その月日は上手くは進んではいないため、盛大にため息を吐く。そして、これからも実に難儀な生活が待っている気がしてならなかった。
* * *
今週末更新できるかわからないので更新です。
相変わらずカリムが強すぎ。
*****
修正 2009/06/21