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No.4424の一覧
[0] ダンジョン、探索しよう![山川走流](2009/06/21 12:18)
[1] その2[山川走流](2009/02/08 06:52)
[2] その3[山川走流](2009/02/08 06:54)
[3] その4[山川走流](2009/02/08 06:55)
[4] その5[山川走流](2009/02/08 07:36)
[5] その6[山川走流](2009/06/21 11:42)
[6] その7[山川走流](2009/06/21 11:45)
[7] その8[山川走流](2009/06/21 11:50)
[8] その9[山川走流](2009/06/21 11:55)
[9] その10[山川走流](2009/06/21 12:19)
[10] その11[山川走流](2009/06/21 11:59)
[11] その12[山川走流](2009/06/21 12:03)
[12] その13[山川走流](2009/06/21 12:04)
[13] その14[山川走流](2009/06/21 12:20)
[14] その15[山川走流](2009/06/21 12:10)
[15] その16[山川走流](2009/06/21 12:12)
[16] その17[山川走流](2009/06/21 12:13)
[17] その18[山川走流](2009/06/21 12:14)
[18] その19[山川走流](2009/06/21 12:17)
[19] その20[山川走流](2009/08/24 00:13)
[20] その21[山川走流](2009/08/24 00:48)
[21] その22[山川走流](2009/12/06 21:53)
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[4424] その16
Name: 山川走流◆f1f61d82 ID:957db490 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/21 12:12
 オルト・シリウスは純粋に強い。生物として他を圧倒する。そして、それだけではない。戦いをこよなく愛する彼は、その強さに胡坐を掻くことを是としない。

 生まれながらに与えられたその力をより鍛え、天賦の才を見せた。彼の踏み込みには意味がある。その一歩で相手の間合いを牽制し、自らの射程とする。オルト・シリウスは全ての行動を布石とし、戦闘を駆け抜ける。

 その一足の挙動。その腕の動作。何をとっても無駄ではない。そのすべては勝利という酒を得るためのものだ。

 ここまでの手合わせで修貴は手加減を肌で感じていた。だが、それを忘れて尚、天狼族オルト・シリウスは強い。

 本来ならば修貴が握る刀など叩き折る事が出来るのだ。オルトはそれをしない。それでは藤堂修貴という少年の実力を知ることが出来はしない。戦技、戦術、戦法、その全てが戦いの是非を担う。武具の優劣も確かにある。魔法の効果もある。肉体の強さもある。

 しかし、そんなものを見るために戦うのではない。どれだけ戦う術を磨いたのかそれを何より知りたいのだ。

 オルトは笑った。獣人らしい獣の笑み。

 左半身を引き、右拳を前方に突き出し腰を落とす。両足を開き不動の構えとなる。

 どう攻めるのか。威圧するように突き出された右拳。間合いに踏み込んだものを突き破る引き絞られた左拳。そのどちらを掻い潜り藤堂修貴は攻めるのか。

 先ほどまでの体を慣らすための手加減さえない戦いではない。


「さあ、攻めて来い。俺様にその刃を届けて見せろ」


 修貴は喉を鳴らす。これが実力者。カリムの立つ領域だ。

 まずは気配を殺す。拳を突き出している右から攻めることを決める。背後を、死角を取ることは容易ではない。まだ、相手の呼吸を把握していない。そして呼吸を容易に掴ませてくれる相手ではない。いや、掴めるとさえ考えるのが間違っている。むしろ、先ほどまでの慣らしの攻防で修貴の呼吸が掴まれていてもおかしくはない。

 修貴は滑るように一歩を踏み出す。オルトは笑みを浮かべたまま動かない。なるほど、そういう腹積もりなのだ。

 速度を上げ、そのまま右側を通り過ぎるように動く。オルトは笑みを深めた。素晴らしい隠行だ。視覚から逃れられるとその存在を正確に把握することが出来ない。裏を取られたのか、それともそのまま斬りかかるのか。並みの相手ではわからないだろう。そのために修貴の動きに合わせ、対峙する向きを合わせようとすれば、斬りかかられるのだ。

 悪くない。自らが先に動くことで僅かだが隙を作る。仮にどっしりと構えを取られようと死角を取ることは出来る。相手の気配に対する聡さが問われる戦い方を強いているのだ。

 そう、良い戦い方だ。

 オルトは右拳を肩だけで動かすと、裏拳で刀を弾く。そのまま右足を軸に左のローキック。修貴の位置はわかっている。刀を弾いた方向で把握していた。

 修貴は刀を弾かれ、体勢を崩すと蹴りを避けるために後ろに跳んだ。崩れた状態では完全に避けることが敵わず左の足首に蹴りを貰う。痛烈な一撃だった。防具を付けていない足首は痛みを主張するが、手加減されていなかったならば、骨が砕けていただろう。

 オルトは修貴の位置を完全に把握していたわけではない。見事な隠行だ。ダンジョンなどの遮蔽物がある場所で行われれば気づけないだろう。だからこそ、どんな状況でも次に繋がる動きをとるのだ。

 今の動きで裏拳が当たることがなくとも、オルトはその勢いを利用して攻めるつもりだった。肩を動かした勢いを半身に流し、攻めに持ち込むつもりだった。また、刀が振るわれていても手の甲に刃が当たらぬように配慮もしていた。


「それじゃあ、俺様には届かない。どうする坊主? ここは模擬戦のための道場だ。隠行に頼っても仕方がないぜ?」


 強い。本当に強い。その技術が高いだけではない。その肉体が優れているだけではない。戦術だ。戦い方を何より知っているのだ。刀に対する拳の間合いの取り方を。死角に対する対処の方法を。力を見せたわけではなく、技を披露したわけでもない。

 オルトが本気になれば、今のような攻防は存在しないのだ。その力だけで、修貴の動きに対する対処法を幾つも持っている。だが、それさえなくとも己が実力を示していた。

 修貴は刀を構え直す。足首の痛みが和らぐのを待ちながら、間合いを計る。攻めてこないのはワザとなのだろう。今の修貴ならば畳み掛けるのが容易なはずだ。戦術の次はその技術を見せろとでも言っているのだ。

 刀で斬ると言っても千差万別だ。大きく振るう。小さく振るう。突く。薙ぐ。袈裟切り。

 構えも色々ある。刀身を隠すように構える脇構え。顔の横に刀を立てる八双の構え。鞘に刀を収めた居合いの構え。剣先を相手ののど元に突き付ける正眼。刀を跳ね上げさせる下段。相手を威圧する上段。状況に応じて使い分ける必要がある。

 修貴は刀を正眼、つまり中段に構えた。刀でも、剣でも最も一般的に使用される構えと言っていい。そこから変化をつける者は多いが修貴はただ中段に構え、オルトと対峙した。

 誘われているのだ。見せてみろと笑いかけられているのだ。戦士として、剣士として答えない道理はない。

 思い出すのは二日前の水龍の陣を使ったときだ。道具を使用するのと刀を振るでは些細ではない差はある。しかし、あれが刀を振るうという行為で再現できれば十全だ。その修練を積む時間はなかったが、今やらずにいつやるというのか。

 雲の上の存在が態々降りて、見せてみろと笑いかけてくるならば、やるしかない。

 オルトの虚を突くために修貴は体中に意識を張り巡らし前へ出た。










ダンジョン、探索しよう!
その16









 ほう、と感心したのはオルトだ。最適化された無駄の少ない動きは、歳を鑑みれば悪くない。だが、惜しむべきはその力みだ。それがなければ、刀を振るうという動作まで気取られる事なく辿り着けた筈だ。


「力んでいるぞ」


 そうオルトは声を掛け、刃を右拳で押し返すと引き付けるように体を修貴の正面に入れ込んだ。

 修貴にはその動きは刹那でしかない。満足とは言えなくとも現状で会心の出来だった一振りを流された修貴は、虚を突かれその間合いにオルトの進入を許してしまった。

 オルトは修貴の胸部を本人の主観で優しく押した。


「っがぁ!」


 息が詰まるが、オルトから視線を外さない。外せば終わる。そんな気がした。左手で握った刀を、小さく振るう。大振りではその力を利用されるのがおちだ。


「良い根性だ。人見知りが嘘みたいだぜ?」


 腰を落とし、刀を避けたオルトは修貴から間合いを取ると再度構えなおした。


「さあ、次はどうする? ああ、俺様から攻めてみようか?」


 刀を中段に構えなおした修貴は呼吸を落ち着けようと、大きく肩を震わした。

 オルトはその修貴の呼吸の虚を突き、一足で修貴の裏を取って見せると、気配を隠し踏み込んだ。

 そして、後に跳んでいた。

 修貴は虚を突かれ、裏を取られた。背に目はない。どの向きで攻撃をされるかわかったものではない。その通りだ。修貴はそれを利用し先に一度仕掛けたが、オルトの戦い方の前に打ち破られた。

 ならば修貴は、たとえ気配を隠されようと、磨き上げられたその感覚が正確に相手の位置を把握する。広い範囲の索敵だけではない。如何に不意を撃たれまいと鍛えられた気配に対する感覚は鋭敏なのだ。

 死角を奪われた程度で反応出来なくなるわけがない。


「おいおい。後にも目があるのか? ああ、これが坊主の気配察知ってやつか」


 ならばなるほど。わからない事はない。オルトも似たような事ができる。先ほどは如何様にも対応ができる動きをしたが、本来ならば気配に反応し迎撃しているところだ。特に敵ならば殺気というものがある。獣人ならばそれに敏感に反応する。

 だが、あの瞬間の動作は違う。意趣返しに気配を隠し裏から攻撃してみせた。そこに殺気などない。

 それに気づき反応した修貴はオルトと正面から対峙し、構えなおしている。

 オルトは笑った。ここまで気配そのものに敏感な人間を初めて見た。

 刀を振るう技術は荒削りなところが多いが、隠行と気配察知に関しては一流と言える。いや、気配察知だけならば達人だろう。これに純粋な剣術が加われば、死角を持たない剣士が出来上がる。悪くない。死角に対する対処法は様々だがここまで酷い対処法を実現した者はそういないはずだ。

 あとは、カリムについてどう思っているのかを引きずり出せば目的は果たせる。


「ところで坊主」

「……何ですか?」

「さっきも訊いたけどよぉ、カリムとはどこまでいって──ああ、いや。違うな。カリムのことどう思っているんだ?」

「どう、ですか?」

「おおう。言葉に出せないなら、刀で教えてくれても構わないぜ? ま、単純に好きか嫌いでもかまわないがな」


 がはは、とオルトは笑った。それでも隙は生まれない。

 オルトは修貴を観察する。何と答えたらよいのかと、口の中だけで言葉を転がしている。いざ、問われると煮え切らないタイプなのだろう。先ほど問いかけたときは人見知りの延長だと思ったが、それ以上にはっきりと言葉を出せる性格ではないのだ。

 ならば、とオルトは言葉を選ぶ。これで釣れるとは思わないが、一切反応がない事はないだろう。


「ああ、そうだな」


 オルトは思い出したように言った。本気か嘘かはわからない。


「お前さんが違うってなら、安心して出来るぜ。カリムが帰ってきたら、俺様の部屋に連れ込むか」

「連れ、込む?」

「ああ、まだちょっと若いが。もう頃合だろ。出会ってこれまでずっと待っていたんだからな。収穫時だと思うだろ? ありゃいい女だ。わかるだ──」


 ろ、と続く前に修貴は踏み込んでいた。

 先の先を綺麗に奪った修貴の刃は、見事にオルトの首に吸い込まれそうになるが、当たる直前オルトは拳で弾く。弾くときにワザと小さく弾き、二の太刀を誘い込む。

 早かった。予備動作が削り落とされたその一閃は、完全にオルトの虚を奪い、修貴の刃は首に向かって一直線に伸びていった。だが、修貴の技術はまだ、未熟。後一歩のタイミングとはいえ、オルトに防がれていた。

 修貴は防がれた刀を返し、誘われるままもう一閃。

 オルトは笑った。先ほどの一閃は力みがなかった。驚くほど気づくのが遅れた。もう一瞬でも反応が遅れれば首が飛んでいただろう。誘った一撃であるこの一閃も悪くない。


「若いぜ、坊主」


 オルトは振り切られた懐に潜り込み、修貴の手首を握ると、修貴を床に押し付ける。


「ま、他人の女寝取る趣味はないがな」

「あ……、いや、その、思わず……」

「カリムに相手がいないのなら本気なんだがな。いるなら別だがな」


 がはは、とオルトは笑う。余りにも行動的で笑えた。釣れるにしても、見え透いた安い挑発でこうまで釣れる相手を初めて見た。確かに相手がいないならば、喜んで言葉通りのことを実践するが、わかりきってしまうような相手がいるのだ。

 人見知りの挙句に、他人に思いを伝えるのが下手、いや、臆病なのだろう。戦っている限りでは、戦士としての自信がないわけではないようだった。だが、今までの反応を見る限り雄としての自信が足りてないのだ。

 そして、自信がなく臆病なために奪われるのを嫌がるのだ。


「やれやれ、反応を楽しむ分には面白いが、その辺り少し苛立つな。坊主、もうチョイ自覚持てよ。カリムはお前の女。それでいいだろう?」


 オルトは修貴を解放すると立ち上がった。

 修貴の顔を覗き込むと、口をパクパクと動かしていた。

 剣士として有望な男はもっと自分自身に自信を持たなくてはいけない。オルトはそう考えている。だからこそ、修貴の女に対して煮え切らない態度は苛立ちの対象だ。


「しょうがねぇ、坊主。俺様が色々教えてやる」

「…………あ、え?」

「返事は、はいだ。いいな?」

「……はい」


 オルトは満足そうに頷き、口を開いた。


「まずは、ヴァナヘイムでカリムと何があったかでも話してもらうか。それから、それに対して答えてやろう。どうせ、何かあったんだろ?」


 修貴は口ごもる。何かと言われればあった。だが、出会ってまだ時間が経っているわけでもない相手に話すには醜態が多い。これが、カリムの口から離されるならば問題はないだろう。カリムとオルトはパーティを組んでいる仲間なのだ。

 オルトも修貴の反応を見ると、ふむと呟く。


「カリムが帰ってきてから訊くのとどちらがいい?」

「…………」


 カリムの口から自らのへたれいた状況を話されるのは些か格好がつかない。そんなものは今更といえば今更ではあるが、わざわざ恥を上塗りする気にはなれない。


「場所を変えて話しましょう?」

「そうか、控え室にでも行くか。体を動かし喉も渇いたところだ」


 オルトは修貴の手を掴むと立たせる。着いて来いと示し、道場に備え付けられた控え室に向かった。

 控え室には丁度誰もいない。オルトは用意されている氷入りのポット手に取ると、紙コップに冷えた水を注ぐ。それを二人分用意すると、片方を修貴に渡した。

 オルトが一杯をぐっと飲み干すと、修貴は一口口に含み飲み込んだ。オルトはもう一杯紙コップに注ぐと、備え付けられた椅子に座り、修貴にも座るよう促す。修貴は促されるままに椅子に座るとオルトと対面した。


「さあ、話してくれ。まだ、カリムたちが帰ってくるまで時間があるだろう。仮にもう帰って来ているとしても、回収してきた物の手続きがあるはずだ。それが終われば誰かが呼びに来るだろうさ」

「……わかりました」


 修貴は十日間に会ったことを掻い摘んで話をする。出会った四人組みに、臨時パーティの二人。一番重要であろう、ランドグリーズとの戦闘。そして、そのときの自らの醜態。それに対するカリムの台詞を簡単に言ったときだった。

 オルトは修貴に奇妙な者に対する視線を投げかけていた。


「ちょ、おま。そりゃ、常識的に考えて──」

「常識的に考えて?」

「告白と何が違う」

「…………」


 沈黙が降りた。

 修貴はオルトを見たまま固まっている。オルトとしては、カリムの機嫌の良さを鑑みるに、関係が発展するような何か甘酸っぱい出来事でもあったのかと思っていたが、もっと直接的だった。

 どう考えても告白だ。のろけ、ありがとうございました、としか言いようがない。もう、とりあえず修貴を殴りたくなったが自重した。出会って初日だ。カリムとの会話で話題に上がっていたため、親しみは持ち合わせていたが、修貴は違うだろう。

 オルトの中での修貴の評価が決まった。戦士としては悪くないが、男としては失格だ。

 教えてやると言ってしまった以上、このまま放置する気にもならない。


「坊主、まずは──」


 あれこれとオルトは考え、修貴に話しかけようとしたとき、控え室のドアが開き、人が入ってきた。人が話そうとしているときに間が悪いと、相手を確認して苦笑した。

 空気を読んだような登場だった。


「修貴、来ていたのかい?」


 ブロンドの髪を揺らし嬉しそうにカリム・フリードが入ってきた。

 修貴はというと、先ほどのオルトの言葉を思い出したのかカリムを見て僅かに赤面していた。







* * *
なぜか、SO4を二十時間近くやってから、今、Rise of Nationsをぷれいしてます。核うめぇ。
あと、最近何でこんなタイトルをつけたのか悩んでいます。何も考えてないことが丸わかりなんだよなぁ。

*****
初投稿 2009/03/01
修正  2009/06/21


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