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No.4424の一覧
[0] ダンジョン、探索しよう![山川走流](2009/06/21 12:18)
[1] その2[山川走流](2009/02/08 06:52)
[2] その3[山川走流](2009/02/08 06:54)
[3] その4[山川走流](2009/02/08 06:55)
[4] その5[山川走流](2009/02/08 07:36)
[5] その6[山川走流](2009/06/21 11:42)
[6] その7[山川走流](2009/06/21 11:45)
[7] その8[山川走流](2009/06/21 11:50)
[8] その9[山川走流](2009/06/21 11:55)
[9] その10[山川走流](2009/06/21 12:19)
[10] その11[山川走流](2009/06/21 11:59)
[11] その12[山川走流](2009/06/21 12:03)
[12] その13[山川走流](2009/06/21 12:04)
[13] その14[山川走流](2009/06/21 12:20)
[14] その15[山川走流](2009/06/21 12:10)
[15] その16[山川走流](2009/06/21 12:12)
[16] その17[山川走流](2009/06/21 12:13)
[17] その18[山川走流](2009/06/21 12:14)
[18] その19[山川走流](2009/06/21 12:17)
[19] その20[山川走流](2009/08/24 00:13)
[20] その21[山川走流](2009/08/24 00:48)
[21] その22[山川走流](2009/12/06 21:53)
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[4424] その15
Name: 山川走流◆f1f61d82 ID:957db490 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/21 12:10
 迷宮調査学院アトラスは、迷宮都市に存在する三大研究機関の一つとして、魔道調査研究所ヘルメス、考古学調査機関クロノスと並び立ち、街と各国の支援によって成り立っている研究機関だ。研究機関の中で最もシーカーを確保し、ダンジョン攻略を最優先として行動しているアトラス院はシーカーたちの訓練所を多く有しているだけありその土地は広大だ。

 そのアトラス院の前で修貴はため息をこぼした。

 吃驚する程にこのアトラス院は広い。学園も大概広いと感じていた修貴にはそれ以上に巨大なこの場所に呆れるしかなかった。

 学園のように訓練用のダンジョンだけではなく、研究用のダンジョンも幾つか存在するこの場所は初見から非常に威圧的だ。二本の塔に、窓のない長方形の建物。外部者案内のためのエントランスホール。幾人の研究者が詰めているだろう、六階建ての白い研究所。外から見る限りではダンジョンだと予想が付くが、実際にはわからない円柱の建造物。もしかしたらモンスターの研究に使っている施設の可能性もあった。

 修貴は広い門の前で見える範囲のアトラス院を確認すると、外部受付と書かれた案内看板に沿って歩き出す。

 学生服を着た修貴を奇異の視線で見る者はいない。このアトラス院を含めた研究機関はこの街の七つのシーカー養成の為の学園と密接に繋がっている。アトラス院側から講師として学園に派遣される者や、生徒の中には直接この場所まで質問をするために来る者も多い。

 初めてアトラス院に足を踏み込んだ修貴はきょろきょろと周囲を確認しながら、エントランスホールにまで辿り着く。五つほどある受付には各々人がいた。修貴はそれに気が付くと、深呼吸を一度し、設置されたソファーに座る。

 丁度良かった。事務的な確認作業だが、初めて入る場所はやはり緊張する。その前に一度心を落ち着かせるのはいい機会だ。

 そんな座ったばかりの修貴に声がかかった。


「そこの坊主! 悪いな、ここの受け付け空いてるぜ! がはは、ちょいとフィリアちゃんと話し込んじまってな、悪かった」

「え? あ、はい」


 唐突に話しかけられた修貴は、言葉に詰まる。話しかけてきたのは銀の髪が特徴的な獣人の青年だった。修貴の友人であるヴィクトールと同じくこの青年も獣人らしい肉体を持っている。ヴィクトールに比べ、愛嬌がある笑みを浮かべたこの獣人の青年は修貴の近くまで歩いてくると、自身が先ほどまでいた受付を指差した。


「いやな、フィリアちゃんが可愛くてな。つい話し込んじまったのさ。悪かったな」

「あ、いや。その、べつにかまいません」


 修貴としてはむしろそのまま話していて欲しかったところだ。見知らぬ人との会話は精神力を使ってしまう。


「オルトさん、その子困っていますよ。もう、だいたい仕事中に口説きに来ないでください」

「いやな、フィリアちゃんみたいに可愛い子がいたら口説かなきゃ、失礼だろ? ま、それに俺様だってな、人が来れば止めるくらいの分別はあるさ」


 獣人の青年、オルトは唇の端を吊り上げ、ニヤリと笑う。


「はいはい。わかりましたから、どいてください。ごめんなさいね。そこの人、いつもそんな感じだから。さてと、その制服はアークアライン学園ね」

「あ、はい」

「それで、講師の人を探しに来たのかしら?」


 修貴は受付嬢の言葉にいえ、と否定の言葉を返すと用件を述べる。


「あの、カリム・フリードさんはいますか?」


 受付のフィリアがカリムの存在確認をしている最中、オルトが面白気な表情を浮かべ反応した。

 楽しむように修貴を見据えるオルト。

 確認作業を終えたフィリアが修貴の質問に答える。


「現在、カリム・フリードは留守にしています。急ぎのご用件でしょうか?」

「急ぎではないですけど、話しがしたかったので」


 フィリアが修貴に確かめるよう話しているとそこにオルトが割り込んだ。


「お前さん、名前は?」

「藤堂修貴です」


 修貴の名に対しオルトは、大きく頷いた。これは面白い。


「ああ、なるほど。わかったぜ。フィリアちゃん、この少年借りてくわ」

「え? 何をいきなり言ってるんですか。本人の意思も確認せずに」

「だがよ、カリムに用があるなら俺様と時間を潰してりゃそのうち帰ってくるぜ」


 オルトはにこやかな笑みを浮かべながら考える。退屈がてら、受付に遊びに来ていたが思わぬ収穫があった。これで、多少の退屈がつぶれる。

 受付嬢のフィリアは獲物を見つけたようなオルトを見ると、諦めたようにため息をつく。


「どうしますか? 変な事をされない保証はできませんが」

「おいおい、俺様に野郎趣味はないぜ。それとも嫉妬か?」

「違います。オルトさんの所に来ていた獣人の子がいたじゃないですか。あの子みたいにしないでくださいね」

「ありゃ違う。むこうから稽古を付けてくれっていってきたんだ。俺様は軽く撫でてやっただけだ。ま、というわけだ。坊主付いて来いよ。獲って食うわけじゃねぇしな」

「いや、え? その、え?」


 修貴は、この展開についていくことが出来ず、流されるままオルト・シリウスに連れられていく。それは、捕って食われそうな雰囲気だった。










ダンジョン、探索しよう!
その14









 カリム達はランドグリーズの回収を終え、そのままダンジョン探索に移行するわけでもなくヴァナヘイム地下三十一階のテレポーターにより地上に帰還した。ヴィクターとルナリアはあの部屋についてあれやこれやと会話を重ねていた。

 カリムとしては帰りの道中に付き合わされたヴィクターの説明癖から開放されただけで十分な気分だった。

 今代魔道王ルインが持つ神の目、魔眼について至極丁寧に説明されてしまった。魔法神ルインと同じ名を与えられた今代魔道王は生まれながらにかの魔法神が持っていたという魔法眼を持っていたという。その効用は全ての術式、魔力の流れを見るというものだという。

 神代ではその魔力を見る瞳によって魔法を創設したとされるルインの瞳を持つ魔道王ルインは神と同じ名を与えられ、それこそ現人神として育てられたらしい。

 カリムとしては育ちなど興味がないのだが、ヴィクターの説明はいつも脱線するのだった。

 魔道王の力は確かに興味深いものだった。魔法使いや、カリムのように魔法剣を扱うものならば、確かに致命的なまでに行動を読まれかねないだろう。だが、戦う機会などまずありはしない。帝国は魔道王国と友好関係を結んでいる。カリムが将来的に帝国に戻ったとしても戦争になるとは思えなかった。

 ヴァナヘイムからアトラス院の距離は遠くない。歩いても三十分の距離にある。


「ヴィクター、アトラス院に戻って依頼について詰めたいのだけど、何処か寄る場所とかあるかい?」

「いえ、とくに。直接戻ってしまいましょうねぇ。ああ、先に聞いときます。武具防具ということでしたが、武具は刀で?」

「そうだよ」

「刀、と。爪を削りだすか、牙を掘り出すか。ふぅむ、面白い。ああ、それとカリム。貴女のバスタードソード、寿命ですよね。ついでに作りませんか?」

「時間があるなら、頼むよ」

「くふふ。実は、皇国の商人からヒヒイロカネという金属を手に入れましてね。これで、剣や刀を打ってみたいと思っていたんですよ。小量なため中々、使えませんでしたけどエンシャントドラゴンと合わせて使うのは面白そうだ」


 ドワーフの血が半分流れているヴィクターは錬金術師であると同時に優秀な鍛冶師でもある。彼としては、ただマジックアイテムに使うのが惜しかったヒヒイロカネの使用機会に恵まれ、運が良かった。

 皇国以外では東方のオリハルコンとも呼ばれるヒヒイロカネはそう易々と手に入る金属ではない。名前だけは聞いたことがあったカリムとしては、その貴重な金属の使用となると値段が格段に上がる可能性があることが心配だった。カリム自身の心配ではない。修貴の財布の心配だ。防具はカリムがプレゼントするという形で落ち着いているが、武具に関して修貴は自ら支払うつもりだろう。

 仮にドラゴンの素材が余ったとして、それを売り払えば払える額ならば問題はない。だが、いくら古代種のドラゴンとはいえ、素材として優れた部位はほとんど使ってしまうのだ、残った部位が高額で引き取って貰えるとは限らない。

 ヒヒイロカネの相場を知らないカリムとしてはそれが気掛かりだった。修貴の性格では足りないからといって、カリムが払うと言っても聞かないだろう。まして、防具をプレゼントされている身だ。


「そのヒヒイロカネだけど高くはないのかい?」

「カリム。ヒヒイロカネはオリハルコンよりも入手困難度は高い。あれは、東方の魔人マサカドの領地においてのみ取れるものだ。かの魔人が許可を出さない限り、まず市場には流れてこない。相場はオリハルコンよりも上だ」


 カリムの疑問に対しルナリアがヒヒイロカネについて説明する。


「かなり高いな」

「ふふん。カリム、ぼかぁね。それについてはお金を取る気はありませんよ。いやぁね、やぁっといい機会に恵まれたんだ。ヒヒイロカネは刀と相性がいいとも聞きますし楽しみだなぁ」

「それは、借りを作ることになりそうだ」

「別に借りだと思わなくても問題ないんですけどねぇ。まあ、作れる借りは作っておきましょう」


 三人はヴァナヘイムからアトラス院まで歩きながら、刀やバスタードソードの構想を練っていた。

 ヴィクターは笑う。前回はエンシャントドラゴンを魔女ルナリアの要望によりマジックアイテムの製作に当ててしまった。錬金術師であるヴィクターとしてはけして、悪くはなかったが、鍛冶師ヴィクターが囁くのだ。あれで、剣を作りたかったと。

 ヒヒイロカネに関しては、量が多くないため、それこそ短剣でも作ってしまおうか悩んでいたところだ。そう考えれば、今回の依頼は渡り舟だった。

 待ち遠しいほどに楽しみだった。




*   *




「で、カリムとは何処まで行ったんだ?」


 オルトのその一言に、修貴は返す言葉を選ぶことも出来ず口をあんぐりと開け、固まってしまった。

 オルトはその逞しい腕を修貴の首に掛け、ニヤニヤと笑っている。彼がカリムと知り合いなのはわかる。だが、誰だ。オルトという名を修貴はカリムが言わなかったかを探す。聞いたことがある名だ。

 思い出そうと奮闘し、思い至った。オルトという名はカリムがアトラス院でパーティを組んでいる仲間として上げた名だ。天狼族のオルト。狼の獣人だ。天狼族と言えば、東方結界崩壊の前の神代の時代に名を轟かせた一族だ。

 その誇り高いであろう天狼族の青年の言葉に修貴は返す言葉がなかった。


「まあ、あと数年で良い女になると思っていたら、もう相手がいるって言うからな。どんなやつか見たかったんだわ。で、何処まで進んでんだ? 坊主奥手そうだからな。あまり期待はしてないぜ」

「…………」


 修貴は酸素を求める魚のように口を動かす。何をどう答えろというのか。それに相手がいるっていうのはカリムが言った台詞だろうか。

 ぐるりぐるりと頭の中で考えが廻る。


「え? まさか、何もないといわねぇよな?」

「え? ええ!? いや、その、まず、え!? その、何だろう。何も、ないですよ。うん、そうだ」

「落ち着け、坊主」


 オルトは修貴から離れ、ポリポリと頭を掻く。カリムに聞いたとおりの性格だが、これではカリムが報われない。鈍感、いや違う。これはどちらかというと気づかないふりをしているというのが近いだろうとオルトは感じていた。

 大方、釣り合わないとでも思っているのだ。オルトが口説いてきた中には本当に少数だが修貴と似た反応をした女もいた。その大半がオルトの強さと天狼族という名により目を輝かしていたというのに珍しい反応だったため記憶によく残っている。

 だからこそ、余計に追っかけてしまったがカリムもそういう手合いだったかと考えを巡らせる。違う。カリムという少女は選択をすれば、梃子でも動かないタイプだ。

 気づいたらオルトに連れて来られ、まったく想像にしなかった質問をされた修貴がやっと落ち着いてきたのをオルトは確認しながら頷いた。人見知りをするとカリムに聞かされていた通りの性格だったのには驚きはなかった。また、カリムが好いているのだ。こんな性格だが、見るべきところはあるのだろう。


「やれやれ、坊主。人見知りをするのは直した方がいいぜ」

「……すみません」


 修貴とて、いくら初めて会う相手とはいえ、こんな反応は普段しない。だが、いきなり連れて来られ、あのような話題をされれば狼狽する。ただ、狼狽しすぎなのも修貴自身気づいていた。人によっては不快に感じることもあるかもしれないと考えれば褒められたことではない。

 しかし、いきなりあの質問はないだろう。


「本当にどうなんだ? カリムがヴァナヘイムに行って帰ってきたらな、随分と嬉しそうだったからな。確か、坊主と行って来たんだろ? 今日なんてカリムの奴、ヴィクターを連れて早速もう一度ヴァナヘイムに向かったんだぜ?」


 カリムから聞いていた藤堂修貴という少年をオルトが実際に見た感想は何処か頼りなく感じるというものだ。人見知りをするような性格だ。初対面の相手に馴れ馴れしくされるのは苦手なのだろう。とはいえ、カリムから色々と話されていたオルトとしては初対面ながらに親しみを少なからず持っていた。また、馴れ馴れしいのは性分だ。まだ、評価は決まらない。

 いくら頼りなさそうに見えようとも、カリムと共にエンシャントドラゴンと戦ったという。カリムが嘘をつく必要などなく、事実その回収に出向いているのだ。そう考えれば、学生として実力は低くないはずだ。高いと言っていい。


「しょうがねぇな。坊主、ちょっと手合わせしないか?」


 このままカリムについて聞いたところで煮え切らないだけだろう。それなら、体で語るのもオルトとしてはありだった。


「手合わせですか?」

「おう、カリムの話を聞いている限り、面白い戦い方をするらしいじゃねぇか。隠行と索敵だろ? そりゃ、暗殺者だぜ?」

「まあ、そうなんですけど……」


 軽い挑発だったが、本人も自覚はあるらしい。特に怒った様子はない。戦い方を暗殺者だと言われれば怒る人間はいる。それもまた性格だろう。

 まあ、とオルトは笑った。戦ってみれば見えてくるものはある。


「安心しろ、手加減はしてやる。俺様に本気を出させるには、坊主じゃまだまだだ。それにカリムが帰ってくるまでの有効的な時間の使い方だろう?」

「……手合わせ、お願いします」


 修貴にとってもオルトとの手合わせは悪いものではない。カリムと同クラスの実力者と戦える機会など滅多にない。


「ま、楽しませてくれよ」


 天狼族のオルト・シリウス。彼が愛するものは女と酒と、何より戦いだ。







* * *
SO4をXboxと一緒に買いました。


*****
初投稿 2009/02/22
改稿・修正 2009/03/01
修正 2009/06/21


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