「‥‥‥おとうさん」
「ひいっ!! ひっっ!!!」
「‥‥‥どうしたの?」
「‥‥‥い、いや‥‥‥」
「‥‥‥?」
いつからから、俺はこの子に「お父さん」と呼ばれるようになった。
俺が彼女の父親というわけではなく、ただのあだ名である。
だが、彼女は背徳的な声質をしていた。
いつからか、俺はこの子に「お父さん」と呼ばれる事を心待ちにしていた。
「‥‥‥おとうさん」
「い゛ひ゛っっ!!」
「はぁ、なんでこんなに魅力的なんだろうか‥‥‥」
「古くから‥‥‥」
「‥‥‥誰だ、お前は!?」
「‥‥‥私は、「王の耳」と呼ばれる者だ」
「「王の耳」!?」
「そう、この世界の声フェチの覇者だ」
「ひえ、そんなのいるのか‥‥‥」
「うん、いるんだ」
「‥‥‥あのさ、王の耳」
「王くんでいい」
「王くん、どうして彼女の声が魅力的だか、わかるかい?」
「そりゃおめぇ、彼女に恋してるからだよ」
「‥‥‥え?」
「おめぇ、彼女にいかれちまってやがるぜ」
「‥‥‥いや、俺そんなにあの子のことまだ好きじゃない筈なんだが‥‥‥」
「いや、もうお前のうずまき管はあの子の色に染まっちまったんだ‥‥‥」
「そんな‥‥‥」
「もう告白するしかねぇな」
「‥‥‥」
「そんな深く考えることかね? この世は告白しなければ付き合えない、それだけだ。単純なことじゃねぇか」
「‥‥‥たしかに、彼女の事が好きかもしれない、しかし‥‥‥」
「あのな、お前のそれ、齢20でしていい思考じゃないんだわ‥‥‥」
王くんは、急にどこかを指を指した。
「‥‥‥えっ!?」
「‥‥‥ほら、連れてきてやったぜ」
「‥‥‥おとうさん」
「んじゃめなぁぁぁあああんあんあんあん」
「ほら、もっとしっかりしやがれ!!」
「‥‥‥ああ!!」
「‥‥‥」
「‥‥‥あかねちゃん、ぼくと‥‥‥」
「‥‥‥私、彼氏いるんですよ」
「嘘!?」
「‥‥‥」
「うっうう‥‥‥」
俺は泣いた。
「‥‥‥泣くなよ」
「だって、おれ、おれ、えっええええええ‥‥‥」
「‥‥‥どうされました?」
「‥‥‥!!!」
泣く俺に声をかけてきた彼女‥‥‥。
俺は、直感的にこの子の事を好きになる事がわかった!
「?‥‥‥どうされました?」
特筆すべきは、耳たぶ!!
なんてチャーミングな耳たぶなんだ!!
「あの‥‥‥」
「ああ、ぷにぷにしたい」
「はぁ、なんであんなに魅力的なんだろう‥‥‥」
「古くから‥‥‥」
「誰だ貴様は!!」
「俺か?? 俺は、「王の耳」と呼ばれる男!」
「「王の耳」!?」
「そう、俺はこの世の耳フェチの覇者だ」
「ひぇ、そんなのもいるのか」
「うん、いるんだ」
「あのさ、王の耳‥‥‥」
「王くんでいい」
「王くん、なぜあの子の耳たぶはあんなに白いんだろう‥‥‥」
「そりゃおまえ、あの子に惚れてるからだよ」
「‥‥‥えっ」
「あの子に耳掃除してもらいたいって、お前の中耳炎がうずいてるぜ!?」
「ほんとだ‥‥‥!! 汁が垂れてきている!!」
「さぁ、告白するんだ!!」
「で、でも‥‥‥」
「でもも耳クソもない!!」
「わ、わかったよ‥‥‥」
「‥‥‥なに、こんなとこに呼び出して‥‥‥」
「あ、あの、あかねちゃん、ぼくと‥‥‥」
「行け、告白するんだあああああああああああ!!!!!!!!!」
「顔がちょっと無理」
「え」
「‥‥‥」
俺は、もう何もする気も起きなかった。
ほっといたら、消えてしまいそうだった。
いっそ、消えたかった。
「ふんふふーん♪」
でも、この、香り‥‥‥。
この香りは何だ!!???
「どうしてあんなフローラルなんだろう‥‥‥」
「俺を呼んだか?」
「き、きみは‥‥‥?」
「俺は「王の鼻」さ」
「王の鼻!?」
「ああ、アケメネス四天王で一番強いとされる男よ」
「すげぇ、最強だ!! 俺と一緒に彼女と告白してくれませんか?」
「一人で行くがいい!!」
「あの‥‥‥」
「‥‥‥あ、あなたはさっきの‥‥‥!」
「‥‥‥あかねちゃん」
「‥‥‥なに」
「‥‥あかねちゃん‥‥‥僕と付き合って下さい!!」
「‥‥‥」
「‥‥‥駄目かな」
「いいえ!! あなたみたいな男を家で飼い殺しにするのがタイプなの!!」
「!!」
「結婚して!!!」
「はい!!!」
つづく