ダグネス・ザラが構えた二本の深紅に輝く刀身はレオを真っ正面に捉え、そのまま走り込んでくる。
「真っ正面からとはなんて親切な、いい的だぜお嬢さん......!!!」
レオは真っ正面に突っ込んでくるダグネスに向けて三発の弾を放物線上に放つ、その後の回避行動を予測、回避予測地点に照準を構える。
「そんなものじゃ私に届きませんよ」
初弾に放った三つの弾はダグネスの半径約1.5m以内に近づくと直ちに白煙を上げて消失した、これは当初の見立て通り彼女もまた絶対障壁とやらの能力を保有していることは明確だった。
「だろうな......!じゃあコイツならどうかな!」
レオは先ほどもう一人のレイシスを開幕一撃で戦闘不能にさせたものと同じ質量を込めた弾を発射する。
弾速は初弾よりも早く加速し、常人の反射神経ではまず回避不可能な速度でダグネスに向かって接近する。
「よくわからんが、このチャージタイプの一撃ならさっきのレイシスの壁は突破できた、あの嬢ちゃんも同じタイプなら通用するはずだとは思うが......」
直撃した弾は爆風を引き起こしレオをよろめかせた。
「はぁ、危ないですね」
その漏れた吐息が背後から聞こえると、レオは死を悟るような感覚に襲われるがそれを押し殺しすぐさま振り向き銃を向けた、しかし体はある違和感を覚える。そっと下に目を向けると自分の体が背後から深紅の剣で貫かれていた。それを認識した脳は徐々に痛みを増幅し、やがてレオは激痛に見舞われ声にならない叫び声が空間に鳴り響くと、レオは地面にひれ伏した。
「ぐうぅ......、確かに後ろから声が聞こえたはずだが......、幻聴でも聴かせられたのか......?」
「いいえ、そんな小細工した覚えはありませんね。私からしたらあなたが勝手に振り向いたのでその隙を突いたまで、それにあんな攻撃は一度目のでとっくに見切っています。確かにあなたのそれは絶対障壁とも呼ばれるディスパーダの防壁をいとも簡単に破壊できる代物なのでしょう、しかしあなたの放ったエネルギー体にはある脆弱性があった。まとまりのない力の奔流は側を不安定にさせてあげるだけでバラバラになる、どこかで見たようなソレイスに似てますがそれはまず置いときます」
ダグネスは引き抜いていた剣を莢に収め、そのまま話を続けた。
「お見受けしたところ、あなたはこちら側の戦いに慣れていない。というか何も知らないようですね、それか知らされていないのか?あなたのバックの組織が何者なのかは知りませんが、こんなところに忍びにくる以上は我々に関する知識はあったはずですが」
確かに少女の言う通りだ、アイザック達が彼女らの存在を知らなかったわけがない。ワザと俺をここに仕向けたのか?だとしたら目的はなんなんだ?クライネはこのことを知っていたのか......?
はぁ、分からないことだらけだ。俺の意思などまるで関係ない、介在する思惑だけが俺を突き動かしている。まさに傀儡人形か......、俺はただのそこそこ稼ぐはしくれ傭兵だったんだがなぁ......、ハードル上がりすぎぃ...。
レオは静かに目を閉じるとそのまま意識を失った。
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「レオ・フレイムス、レイシス一名を戦闘不能にさせるもレイロードとの戦闘に敗北。その後意識を消失、反応は見られず。どうしますかアイザック大佐」
「そうか、分かったよクライネちゃん。彼にはまだ早かったということだなぁ、待機ポイントから現場に急行する、レオを回収のち本部に帰投する」