突如クライネから告げられた二人のレイシスが近づいているという情報に、ただでさえ恐怖と不安を退けて出向いた場所にて積み重なった試練。レオにとってはたまったものではなかったが、あふれ出しそうになる不平不満を押し込めて冷静さを欠かさず行動を起こした。
「クライネさん......、あとどれくらいでこっちに来そうだ?というか何故バレてるんだ?そもそもバレてるのかこれー?」
レオはクライネに状況把握を急がせ、タブレット型の端末を胸に抱えて部屋内に身を隠せる場所を捜索した。
「レオさん......、モニターで観測する限りでは、2名のレイシスは武器を抜きながらもう扉の前まで来ています。レオさん......交戦、可能ですか?あの2人と......」
通信越しに震え声でクライネはそう伝えてきた。それを聞いたレオはどうにか身を隠してやり過ごせないかと室内を見渡すが、そんな場所はなく。一番隅の陳列されたデータサーバーに身を隠しても見つかるのは時間の問題であることは明白であった。
「ちっ......」
しばらく間を空けるが、交戦以外の手段を思いつくことはできなかった。
「レオさん......」
クライネが何かを言いかける前にレオは口を開いた。
「クライネさん、今から敵勢力と交戦する。仲間を呼べるならそうしてほしい、正直俺一人じゃ何分持つかどうか......」
「了解です、すぐに大佐に救援を要請します。ヘラクロリアムの加護があらんことを、通信アウト」
クライネさんとの通信は途切れ、ついに真の意味で敵陣の中に孤立した。頼れるのは自分とそこそこの投擲武器、後はアイザックから借りているこの銃型のソレイスとやらだ。
そもそも彼らは俺を守るためのメンツじゃなかったのかと不思議に思う、こんな状況に陥っている時点でアイザック達の目論見は叶わさそうだという私見はさておき、レイシスとの戦闘だが。
正直まったくの未知数である、レイシスとの戦闘経験がないわけではないがその経験はこの場では役に立たない。
知っていることといえば、大抵の通常武器では彼らには太刀打ちできないことと、能力に関して言えばそれに関する知識を持ち得ていない。現状では情報不足で戦略も練ることはできないが、やれることをやるしかない。
まずは奇襲することだ。効くかもわからないクラスター閃光弾で五感を奪い、二人同時に一気に仕留めてしまう、というのが理想だが。
奴らの能力の推測をする、恐らくは防御系......いわゆる絶対障壁は持っていると考えるべきだろう。これはレイシア少佐が保有していたものと同質であると考える、少佐の戦いぶりを見ればわかるがアノ能力は殆ど完全無欠の能力といっても差し支えないだろう。あれを打ち破れるのはこの手元にあるアイザックのソレイスくらいだろう、多分こいつなら障壁は破壊できるはず。まぁ障壁は仮になかったとしてもそれはそれで方を付けるだけだが。
2人分の足音が微かに聞こえ、そしてついに禁じられし書庫の扉は開かれる。黒いローブを羽織りフェイスマスクをつけ武装したレイシスと、それに比べ背の低い小柄な体系の髪が腰まで下ろされた金髪で豪華な金色の装飾が施された少女のようなレイシスが姿を現した。
その瞬間、極めて強力な閃光がいくつも宙を舞い、何度も光源を発光させ踏み入った2人のレイシスを取り囲むように閃光が襲った。
とっさのことに顔をローブで覆い隠す2人のレイシスだが、その瞬間をレオは見逃さなかった。
方角を確認したレオは、傍らのレイシスに向けて空間に衝撃を振動させるほどの一発の淡い銃撃を放った。
その銃弾を目撃した瞬間、レイシスの少女はマスクの下の儚げな表情を悲壮な形相へと変貌させた。
「ファルファー!下がってぇー!!!」
1人の少女の声が叫ばれるが、その声が隣のレイシスに届こうとする頃には既に鈍い落下音が室内を響き渡らせる。
やがて光で満ちていた空間が平静を取り戻すと、扉に踏み入れていた一人のレイシスが出口方向に吹き飛ばされるように上向きに倒れこんでいた。
「ファルファ!!私の声が聞こえる!?」
その傍らのレイシスより豪勢な装飾を施した一人の少女はファルファと呼ばれるそのレイシスにレオのことなど無視して駆け寄っていた。
「ザラ様......申し訳ありません、一生の不覚......」
倒れこんだその男は苦し紛れに差し出された少女の手を取る、血にまみれた五体満足の得体は銃撃をまともに喰らっていれば即死に近かったのであろう、その姿は明らかにたった一撃で戦闘不能状態に陥った事を物語っていた。ファルファと呼ばれいた男はレオの見立て通りの絶対障壁の持ち主であったようだが、それ以上にアイザックのソレイスは強力な破壊力を誇る代物であったようだ。
「まじ、かよ......。たった一撃であのレイシスを......」
頼りがいのなさそうな外見をしたこのソレイスに絶大な信頼を抱いた瞬間であった。
「ファルファ......ここでじっとしていて」
ファルファに駆け寄っていた少女は繋いでいたその手を放すと、視線をレオにゆっくりと向けた、敵意を丁寧に伝えるように。
「あなたが何者なのかは知りませんが、あなたは私の大切な人を傷つけた。あなたとここで戦う理由はこれで十分過ぎるものです。何か弁明はありますか?そこのお方」
レオに目の前に立ちはだかる少女はレオに問うた。
「弁明だって?ふざけたことをぬかしやがるお嬢ちゃんだ。俺はただ今を生きるために全力を尽くした、ただそれだけの事だ」
レオは少女の問いに答えると、銃口を少女に向ける。
「左様ですか」
少女はそう短く一言だけ答えると、帯刀していた如クライネから告げられた二人のレイシスが近づいているという情報に、ただでさえ恐怖と不安を退けて出向いた場所にて積み重なった試練。レオにとってはたまったものではなかったが、あふれ出しそうになる不平不満を押し込めて冷静さを欠かさず行動を起こした。
「クライネさん......、あとどれくらいでこっちに来そうだ?というか何故バレてるんだ?そもそもバレてるのかこれー?」
レオはクライネに状況把握を急がせ、タブレット型の端末を胸に抱えて部屋内に身を隠せる場所を捜索した。
「レオさん......、モニターで観測する限りでは、2名のレイシスは武器を抜きながらもう扉の前まで来ています。レオさん......交戦、可能ですか?あの2人と......」
通信越しに震え声でクライネはそう伝えてきた。それを聞いたレオはどうにか身を隠してやり過ごせないかと室内を見渡すが、そんな場所はなく。一番隅の陳列されたデータサーバーに身を隠しても見つかるのは時間の問題であることは明白であった。
「ちっ......」
しばらく間を空けるが、交戦以外の手段を思いつくことはできなかった。
「レオさん......」
クライネが何かを言いかける前にレオは口を開いた。
「クライネさん、今から敵勢力と交戦する。仲間を呼べるならそうしてほしい、正直俺一人じゃ何分持つかどうか......」
「了解です、すぐに大佐に救援を要請します。ヘラクロリアムの加護があらんことを、通信アウト」
クライネさんとの通信は途切れ、ついに真の意味で敵陣の中に孤立した。頼れるのは自分とそこそこの投擲武器、後はアイザックから借りているこの銃型のソレイスとやらだ。
そもそも彼らは俺を守るためのメンツじゃなかったのかと不思議に思う、こんな状況に陥っている時点でアイザック達の目論見は叶わさそうだという私見はさておき、レイシスとの戦闘だが。
正直まったくの未知数である、レイシスとの戦闘経験がないわけではないがその経験はこの場では役に立たない。
知っていることといえば、大抵の通常武器では彼らには太刀打ちできないことと、能力に関して言えばそれに関する知識を持ち得ていない。現状では情報不足で戦略も練ることはできないが、やれることをやるしかない。
まずは奇襲することだ。効くかもわからないクラスター閃光弾で五感を奪い、二人同時に一気に仕留めてしまう、というのが理想だが。
奴らの能力の推測をする、恐らくは防御系......いわゆる絶対障壁は持っていると考えるべきだろう。これはレイシア少佐が保有していたものと同質であると考える、少佐の戦いぶりを見ればわかるがアノ能力は殆ど完全無欠の能力といっても差し支えないだろう。あれを打ち破れるのはこの手元にあるアイザックのソレイスくらいだろう、多分こいつなら障壁は破壊できるはず。まぁ障壁は仮になかったとしてもそれはそれで方を付けるだけだが。
2人分の足音が微かに聞こえ、そしてついに禁じられし書庫の扉は開かれる。黒いローブを羽織りフェイスマスクをつけ武装したレイシスと、それに比べ背の低い小柄な体系の髪が腰まで下ろされた金髪で豪華な金色の装飾が施された少女のようなレイシスが姿を現した。
その瞬間、極めて強力な閃光がいくつも宙を舞い、何度も光源を発光させ踏み入った2人のレイシスを取り囲むように閃光が襲った。
とっさのことに顔をローブで覆い隠す2人のレイシスだが、その瞬間をレオは見逃さなかった。
方角を確認したレオは、傍らのレイシスに向けて空間に衝撃を振動させるほどの一発の淡い銃撃を放った。
その銃弾を目撃した瞬間、レイシスの少女はマスクの下の儚げな表情を悲壮な形相へと変貌させた。
「ファルファー!下がってぇー!!!」
1人の少女の声が叫ばれるが、その声が隣のレイシスに届こうとする頃には既に鈍い落下音が室内を響き渡らせる。
やがて光で満ちていた空間が平静を取り戻すと、扉に踏み入れていた一人のレイシスが出口方向に吹き飛ばされるように上向きに倒れこんでいた。
「ファルファ!!私の声が聞こえる!?」
その傍らのレイシスより豪勢な装飾を施した一人の少女はファルファと呼ばれるそのレイシスにレオのことなど無視して駆け寄っていた。
「ザラ様......申し訳ありません、一生の不覚......」
倒れこんだその男は苦し紛れに差し出された少女の手を取る、血にまみれた五体満足の得体は銃撃をまともに喰らっていれば即死に近かったのであろう、その姿は明らかにたった一撃で戦闘不能状態に陥った事を物語っていた。ファルファと呼ばれいた男はレオの見立て通りの絶対障壁の持ち主であったようだが、それ以上にアイザックのソレイスは強力な破壊力を誇る代物であったようだ。
「まじ、かよ......。たった一撃であのレイシスを......」
頼りがいのなさそうな外見をしたこのソレイスに絶大な信頼を抱いた瞬間であった。
「ファルファ......ここでじっとしていて」
ファルファに駆け寄っていた少女は繋いでいたその手を放すと、視線をレオにゆっくりと向けた、敵意を丁寧に伝えるように。
「あなたが何者なのかは知りませんが、あなたは私の大切な人を傷つけた。あなたとここで戦う理由はこれで十分過ぎるものです。何か弁明はありますか?そこのお方」
レオに目の前に立ちはだかる少女はレオに問うた。
「弁明だって?ふざけたことをぬかしやがるお嬢ちゃんだ。俺はただ今を生きるために全力を尽くした、ただそれだけの事だ」
レオは少女の問いに答えると、銃口を少女に向ける。
「左様ですか、別に私はあなたの行動を否定しませんよ。今を生きるこの時代ではそれが正しき行いなのかもしれませんし、ただ......」
少女はそう答えると、携帯していた二本の莢から剣型の武器を両手で交差しながら抜き出した。
「人の恨みだけは買わない事ですね。レイロード、ダグネス・ザラ。推して参る」