和泉が各店を堪能し終わると、ラスターとキリアがギルドに少し用があると言ってギルドに向かうことになった。 受付で話をして丁度終わった頃。 雑談スペースで、ある男がこんなことを言っていた。 「俺の手に掛かれば黒竜なんて取るに足らないよ」 彼の発言に周囲にいる十数名から歓声が上がる。 「ギルドの依頼だったら良かったんだけど、偶然出会っただけだからランクは上がらなかったんだよ。それが本当に残念でね」 気障に言い回す男を見て、優斗達は近くの男性を捕まえて事情を訊いてみる。 「ミエスタのギルドにおいて若手のホープだ。ギルドでも最大の派閥を作っていて、さっき届いた黒竜の翼もあいつが倒したからこそミエスタに届いたらしい」 凄いよな、と関心している男性に優斗は頭を下げる。 「ありがとうございます」 男性は軽く手を振って優斗達から去る。 和泉は呆れたように、 「やはり、どこにでもこういう人間はいるのだろう」 「虚栄心は大事だと思うよ」 「簡単にバレるようなことを虚栄心とは言わないような気もするが」 仮にもSランクの魔物を一人で倒せるほどの強者なら、Bランクに止まっているわけもない。 と、話しているところにラスター達が戻ってきた。 「どうしたんだ?」 尋ねられて、優斗達は説明する。 するとラスターはレイナに顔を寄せた。 「何で嘘って分かるんですか?」 「黒竜を倒したのは私たちだ。当事者だからこそ、あいつの言っていることが嘘だと分かる」 「……また、とんでもないことやってますね」 「成り行きだ」 本当にそうなのだから笑えるというもの。 「文句言わなくていいんですか?」 「余計な手間だし、どうでもいい」 「普通なら一生の誉れになりません?」 Sランクの魔物を倒す機会などそうそうない。 つまりは彼らにとっての誉れとなるはずなのだが、ずいぶんとあっさりした反応だ。 「私一人だったら誉れなんだが、倒したメンバーがユウトと同等の実力を持った奴と私、それに和泉にユウトだ。特にユウトともう一人がいてしまったら、魔王と勇者の目の前にノコノコとやって来た哀れな魔物にしか思えない」 「Sランクなのに残念な扱いですか」 「当然だ。闘技大会でユウトがギガンテスを一発で倒しただろう? それ以上の光景があったと考えてくれていい」 「……うわぁ」 ラスターが素直に引く。 酷いにも程があった。 「…………ん?」 すると男の視線が優斗達を捉えた。 中でもレイナの容姿を見て声を掛けることを決めたようだ。 「そこの君達も俺が黒竜を倒した話を聞くかい?」 「結構だ」 レイナが拒否する。 「いいの? Sランクの魔物を倒した話なんてそうそう聞けないよ?」 「結構だと言っている」 そのまま皆を引き連れてレイナはギルドを出ようとした。 けれど、男はレイナ達の前に立ちふさがる。 「この国のギルドでやっていこうと思ったら、俺の機嫌を損ねるのよ良くないね」 「悪いがリライトから護衛の依頼で来ただけだからな」 「ふ~ん」 睨め付けるようにレイナを見る男。 と、彼女の剣に目を付けた。 「君、なかなか良い剣を持ってるね」 手を伸ばして剣に触れようとする男。 レイナは男の手を弾く。 「これは私の魂だ。気安く触らないでもらおうか」 見ず知らずの他人が手にとっていいようなものでもない。 しかし、レイナの態度に男の雰囲気が険呑になった。 「ミエスタのギルドの者ではないといっても、上下関係ぐらいは分かったほうがいいんじゃないかい?」 「年齢での上下か?」 「実力での上下だよ」 「ならば私が下手に出る必要はない」 不用意に剣に触ろうとした輩だからか、レイナが言い返す。 そうなるともう、売り言葉に買い言葉。 男も言い放つ。 「君は少し、痛い目を見たほうがいいようだ」 ◇ ◇ ギルドの裏にある広場に優斗達は連れられていく。 「……お前らはどうして売られた喧嘩を意気揚々と買う」 和泉が盛大にため息をついた。 「私はイズミの剣を他人に触れられたくないだけだ」 「今の話、僕も入ってる?」 「違うとでも思ってるのか?」 毎度毎度、キッチリ喧嘩を買ってる癖に何を言う。 男は取り巻き十数名を引き連れて、優斗達と向き合う。 そして傲岸不遜に、 「君達は知らないだろうから教えてあげるよ。最近、大魔法士が現れたという話があってね。それは俺のことを言ってるんじゃないかという噂もあるんだ。そんな俺に対して、君はやってはいけないことをした。だから君が大切にしている剣を見せしめに折らせてもらうよ」 男の宣戦布告にレイナの視線が鋭くなった。 どうやら彼女の逆鱗は“これ”らしい。 優斗はとりあえず、 「一応訊いておくけど手伝いはいる?」 「……いらない」 「了解」 あっさりと頷いた。 キリアは信じられないような顔をして、ラスターはレイナの実力を信じて少しだけ抜いていた剣を収める。 「悪いが私は気が立っている」 レイナは剣を抜き放ち、 「一撃で終わらせてもらうぞ」 右手だけで持った。 「君達は手を出さないでいいよ。彼女に対して実力差を分かって貰わないといけないからね」 男が剣を抜いた。 余裕を持っているのか、レイナの出方を窺っている。 だからレイナは紡いだ。 闘技大会を経たことで、新しく備わった剣の能力を。 ◇ ◇ 優斗が「了解」と頷いたすぐ後、広場に駆けつける兵隊の姿があった。 「何の騒ぎだ!?」 後ろからやって来た兵隊は、すぐ近くにいる人間に事情を聞こうとする。 優斗が兵隊の声に振り向く。 するとそこにいたのは、 「……貴方は先ほどの兵士の方ですね」 優斗を王城へ登城を願った兵士だった。 兵士は優斗の姿を認めると、右手を胸元へと持ってきた。 「我が国の者が何か不手際を?」 「いえ、どっちもどっちですね。けれど出来れば止めないでいただけると助かります」 「しかし……」 もし優斗達のほうが悪くても、彼らに手を出した人物を見過ごすわけないはいかない。 だから優斗は兵士に申し訳なく思いながらも、こう言った。 「僕の『名』において、大事にはしないと誓います。すぐに終わりますから、あと数十秒の間は見過ごしてくれませんか?」 ◇ ◇ レイナは紡ぐ。 「求めるは爆炎、至高なる破」 刀身から炎が吹き出し、 「願うるは超魔、壊する灼豪」 さらには紅を帯びた空気がレイナの周りをゆらりと轟く。 レイナは右手を持ち上げ、剣先は右肩の後ろに回る。 刹那、 「――ッ!」 飛び込み、一気に剣を振り抜いた。 男の剣を粉微塵に砕き、自らの纏う炎圧で男を吹き飛ばした。 後方にいる取り巻きたちの下へと飛び込んでいき、数人を巻き込んで男は気絶した。 レイナは剣を収める。 優斗は決着を見届けてから、兵士へと向き直る。 「我が侭を聞き入れていただき、ありがとうございました」 「い、いえ」 すっと優斗が頭を下げた。 「これ以上のことはしません。今回のことはギルドパーティ同士のいざこざ、ということで収めていただくことは出来ませんか? 事実、パーティ同士のちょっとしたケンカですから」 「ミヤガワ様の仰ることであれば」 「助かります」 再度、優斗が頭を下げる。 兵士は慌てて優斗の頭を上げさせながら、先ほどの勝負を思い返す。 「しかしミヤガワ様のお仲間が使ったのは魔法……でしょうか?」 「いえ、おそらくは魔法科学の一種だと思います」 「私は存じない技術ですが……」 ひょんなところから否定が来た。 ミエスタの兵士も知らない技術ということなのだろうか。 「和泉、さっきのは?」 「マイティーのハゲたちが使っていた魔法を参考にさせてもらった。あいつらは聖魔法を使って防御魔法を身体に貼り付けていた。ならばあいつらが使った魔法の上に炎を纏わせることが出来れば、突進するだけで威力のある“武器”になる」 そして和泉は小さく笑った。 「俺とて闘技大会を見て、インスピレーションを得られなかったわけではない」 ◇ ◇ 「レイナ先輩……さらに凄くなったな」 闘技大会の時より強くなっている。 本気を出したレイナの姿を一見しただけで分かった。 キリアとて彼女の圧倒的な強さに驚きはしたのだが、関心は別の所にあった。 「……ねえ、ラスター君」 「なんだ?」 「正直に答えてほしいんだけど」 キリアはちらりと少し離れた場所にいる優斗を見る。 「あの人が『大魔法士』と呼ばれていたことって、どこまでが本当?」 「な、なんだいきなり!?」 いきなり核心を突いた言い草に、ラスターが心底焦る。 「さっきの女王陛下のことと今の兵士の態度。他国の貴族相手とはいえ不自然だわ」 「オ、オレはその……」 どうにか知らないアピールをしようとするラスター。 けれどキリアの追求は止まらない。 「それにラスター君、意味分かってたでしょ」 「な、何がだ!?」 「わたし一人だけキョロキョロ見回してたけど、ラスター君は最初の方に女王陛下が言ったことに対しては驚いてなかったもの。後半は意味分からなくて驚いてたみたいだけど」 なぜ自分だけ最初から戸惑っていたのだろうか。 和泉とレイナは彼と長い付き合いなのだろうから何か知っているのかもしれない。 しかしラスターは違う。 彼は最初、『大魔法士』という単語が使われたことには驚いていない。 けれど後半のやり取りには心底焦っていた。 ということは、ラスターは『大魔法士』という言葉について何かしら知っているということ。 「あの人は何者?」 「えっ、あ、いや、そ、それは……」 「ちなみにラスター君の嘘は通用しないわよ。長い付き合いだしラスター君は嘘付くの、もの凄く下手だからすぐに分かるわ」 にっこりとした笑みを浮かべながら、キリアが問い詰める。 ラスターはどうにか言い逃れをしようとして……出来なかった。 そしてある程度のことを話すことになる。 冗談みたいな話なのだが、ラスターが真剣に言っているということは嘘じゃないと分かる。 ということはつまり、紛うこと無く彼は『大魔法士』と呼ばれている存在であるということ。 だからこそミエスタ女王が会いに来て、兵士たちも彼に従っている。 「二人とも、何をこそこそと話してるの?」 と、そこへ優斗がやって来た。 「――ッ!?」 「――っ!?」 ラスターとキリア、二人して飛び跳ねる。 「どうしたの?」 首を捻る優斗。 キリアは普通に言葉を返そうとして、けれど彼の立場を知ってしまってからこそ、 「えっと、その……ミヤガワ……様」 思わず『ミヤガワ様』と言ってしまった。 「……ラスター?」 優斗が問いかける。 ラスターは項垂れながら答えた。 「オレじゃキリアの追求を回避することは不可能だった……」 嘘を上手く言えるわけもない。 「……まあ、仕方ないか」 それは長い付き合いでもない優斗でも分かる。 だからどうにか嘘をつけ、とも言えない。 「キリアさん」 「はい」 従順に返事をするキリアに優斗は一言。 「キャラに合ってない。正直、気持ち悪い」 「な、なんですって!?」 思わず反論するキリア。 優斗は笑った。 「そうそう。それが一番」 生意気に構えているくらいがちょうどいい。 「どうかしたのか?」 レイナと和泉が優斗達と合流する。 「ラスターが僕のこと、キリアさんにバラした」 さらっと暴露する優斗。 レイナはボルテージが下がったのか、いつも通りの態度で心底ラスターに呆れる。 「お前……。だから始業式の日に釘を刺しておいたというのに」 「し、仕方ないじゃないですか! オレはこいつほど口が上手くないんですよ!」 ビシっと優斗を指差すラスター。 妙にレイナと和泉が納得した。 「それもそうか」 「優斗は息をするように嘘をつけるからな」 「……みんなして詐欺師みたいに言うのやめてくれない?」 ◇ ◇ その後は場を収めた兵士と共に王城を訪れることにした。 夕食前にやって来たということで、優斗達は謁見の間に通されることもなく、食事をする広間へと通された。 リライトの王城ですら入ったことのないラスターとキリアは心底緊張する。 「二人とも大丈夫?」 「そ、粗相をしてしまったらどうすればいい?」 「大抵はどうにかしてあげる」 「わ、わたし、こんな服装でいいのかしら?」 「みんな制服だから問題ないよ」 心配ごとは尽きないのか、あれこれと優斗に質問する二人。 けれど全ての質問を問いかける前に、女王と娘が現れる。 五人は女王の前へと整列し、優斗は兵士がしていたように右手を胸元へと持って行く。 「この度は会食する機会を与えていただき、真にありがとうございます。私を始め、王族を前にする場など慣れている者は少なく、不手際もあるかとは思いますがご容赦のほどをよろしくお願いいたします」 丁寧な態度に女王が目をぱちくりさせる。 「ユウト君、私と娘以外は誰も来ないわよ」 「少なくとも最初に礼儀は必要かと」 いくらぶっ飛んだ女王とはいえ、やらないと不味い。 「仕方ないわね」 女王が不承不承、頷いた。 「私の連れをご紹介をさせていただきます」 一番左にいる優斗は、一番右にいる順に紹介をしていく。 「学院の先輩であり良き友であるレイナ=ヴァイ=アクライト」 レイナは一歩前にでて頭を下げる。 そして頭を上げると、元の場所へと一歩下がる。 「私と同郷であり、魔法技師を目指しているイズミ=リガル=トヨダ」 和泉もレイナと同様に動いた。 「学院の後輩で将来を有望視されるラスター・オルグランスとキリア・フィオーレ」 二人は優斗に紹介されると、同時に前に出ようとして……失敗する。 バラバラに一歩を踏み出すことになった。 さらにギクシャクとした動きで頭を下げて、上げて、元の場所へ戻ることを忘れる。 優斗がキリアの服を、和泉がラスターの服を引っ張った。 女王が苦笑したのを見てキリアとラスターの頭がさらに真っ白になる。 「そして私――ユウト=フィーア=ミヤガワを含めまして以上五名、本日は女王陛下のご厚意を承ることができ、光栄であります」 最後に優斗が前述の四人と同様に動いた。 元の場所に戻ると、女王が口を開く。 「本日は招待に応じて戴き、真にありがとうございますわ。先ほどもお会いしましたけれど、わたくしがミエスタの女王――シャルと申します」 続いて六歳くらいの少女がドレスを左右に軽く摘みながら挨拶する。 「むすめのカイナです」 「こちらとしても皆様とはご歓談をさせていただければ、と思っておりますので固くなる必要はありませんのよ」 上品に笑みを零しながら女王は全員を席へと促す。 優斗達が着席すると、女王はいきなり口調を変えた。 「今からはどんな口調でも可よ」 言葉の端々から窮屈なのは嫌い、という真意がにじみ出ていた。 「では、早速ですけど女王陛下」 「ユウト君、何かしら?」 「貴女が発端でバレたんですけど、どうしてくれるんです?」 いきなりの発言に、ワインに口をつけようとしていた女王の手が止まる。 キリアとラスターもなぜか緊張が走る。 「バレちゃったの?」 「ええ」 頷く優斗。 女王は少し逡巡するが、すぐに笑顔で、 「ドンマイ」 「……いや、ドンマイって。貴女という人は、まったく……」 軽いにも程があるだろう。 「女王が僕のことを一般人にバラすとか前代未聞ですよ。他国にだって箝口令出てるんですからね」 「だって彼女以外はユウト君と一緒に闘技大会に向かったメンバーでしょ。四人中三人がユウト君のことを『契約者』だと知ってたら、彼女だって知ってると思わない?」 「そういう場合もあるんですから、気を遣ってください」 「次からは気をつけるわよ」 「“次”があったらいいですね」 意味深に言う優斗。 「……怒ってる?」 「呆れてるんです」 わざとらしく大きな息を吐く優斗。 しかし女王は堪えない。 「じゃあ、次は歓待するからよろしくね」 「リライト王に仰って下さい」 「ケチね」 「無茶を言わないでください。リライト王は僕をできる限り学生でいさせようとしてくれているんですから」 そう言われると女王としても引き下がらざるを得ない。 優斗は横を向いて笑みを浮かべ、 「だからラスターもキリアさんも無駄に罪悪感を感じる必要はないよ」 緊張している二人と身体がビクリと震えた。 「そうそう。私が失敗したのが原因だしね」 女王も笑って二人の緊張を解そうとする。 「わ、わたしは、め、めそ、滅相もございません」 「お、俺は……い、え、えっと……自分も滅相もございません」 女王に話しかけられて心底焦るキリアとラスター。 「キリアさんはともかく、ラスターは王族に怒鳴ったこともあるのにどうして緊張してるの?」 「あ、あんなのと比べるな! ライカールの王女は心底むかつく奴だったが、この御方は違うだろう」 風格が違うし、何よりも初対面の印象が違いすぎる。 女王はラスターの発言に嬉しそうに頷くと、 「貴方も闘技大会で優勝したメンバーなのよね」 「は、はい!」 「決勝の出来事って驚いた?」 「自分は心底驚きました」 「それはそうよね」 女王がラスターとキリア、さらには和泉とレイナを巻き込んで話す。 すると女王の隣に座っているカイナが優斗に声を掛けた。 「おひさしぶりです、ゆうとさま」 「お久しぶりですね、カイナ様」 優斗が子供を相手にするような笑みを浮かべる。 「ゆうとさまの妻となれなかったのはざんねんですけど、またお会いできてうれしいです」 カイナの発言に女王達の会話が止まる。 ラスター、キリア、レイナがどん引きしていた。 「……貴様、フィオナ先輩がいるというのに」 「……貴方、王女様とはいえ幼女を……」 「……ユウト。お前もラグと同じなのか?」 蔑むような視線を向ける三人。 慌てて優斗が否定する。 「ちょ、ちょっと待った! 違うから! とりあえず違うから!」 ◇ ◇ どうにか釈明を終える優斗。 ついでに食事も終え、ゆったりと飲み物を飲んでいると、女王が思い出したかのようにレイナに訊いた。 「兵士に聞いたんだけど、レイナちゃんの使ってる剣ってどこで造ってる剣なの?」 離れた場所に置いてあるレイナの剣を女王が指差す。 「私のはイズミ――彼の手によって造られた剣です」 レイナが和泉を示す。 「イズミ君が?」 女王の問いかけに和泉は頷く。 「へぇ、凄いわね」 学生だというのに大したものだ。 「聞いただけでも珍しい技術を使っていることは知れたわ」 そして和泉は優斗と“同郷”と聞いた。 「イズミ君。貴方の技術はもしかして……」 「ベースの知識は故郷のものだ。技術としては俺が知っている故郷の技術を少しと、こちらの技術を基本として使っている。そちらの想像以上の技術は使っていないはずだ」 「ということは、着眼点が違うってことかしら」 「そういうことだろう」 和泉の説明に女王は感心深そうに大きく頷いた。 そして、 「イズミ君、ミエスタに留学する気はない?」 直球で尋ねた。 和泉は質問に対し、素直に肯定の意を示す。 「興味はある」 「だったら、あとで王城にいる技士とも話をしてみるといいわ」 「いいのか?」 好奇心で和泉の瞳が輝いた。 「お互い、刺激になると思うしね」 「ありがたい」 感謝する和泉。 けれど、彼が「興味ある」と言ったことが成立してしまったら……リライトからいなくなる、ということと同意だ。 「……っ!」 それに気付いた彼女は。 ……呆然と彼の姿を見ていた。