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No.4090の一覧
[0] Struggle for Supremacy 【MMORPG系、デスゲーム】【更新予定についてのみ】[Dice Dragon](2009/02/01 05:22)
[1] Prologue of First Stage[Dice Dragon](2008/11/01 22:13)
[2] Mission 001 ― The ranch is built ―[Dice Dragon](2008/11/01 22:17)
[3]  Intermission ― Uneasiness ―[Dice Dragon](2008/11/01 22:18)
[4] Mission 002 ― Ranch defense ―[Dice Dragon](2008/11/01 22:19)
[5]  Intermission ― Interrogation ―[Dice Dragon](2008/11/01 22:20)
[6] Mission 003 ― Searches for whereabouts I ―[Dice Dragon](2008/11/01 22:20)
[7] Mission 004 ― Searches for whereabouts II ―[Dice Dragon](2008/11/01 22:21)
[8] Epilouge of First Stage[Dice Dragon](2008/11/01 22:22)
[9] Prologue of Second Stage[Dice Dragon](2008/12/04 01:43)
[10] Mission 001 ― It is me that revenge ―[Dice Dragon](2008/12/24 21:40)
[11]  Intermission ― Mine exploration ―[Dice Dragon](2008/12/24 21:41)
[12] Mission 002 ― VS Gate Guardian : Protection Bull ―[Dice Dragon](2009/01/09 05:27)
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[4090] Mission 002 ― VS Gate Guardian : Protection Bull ―
Name: Dice Dragon◆122ca858 ID:a7467134 前を表示する
Date: 2009/01/09 05:27



「やれやれ、何回眺めても、単純に階段があるだけの造りじゃないな」
「そうだな。戦闘用に用意されたとしか思えない広間の壁が、これみよがしに色を変えられてるんだ。おまけに、入口は狭い上に見つけ辛いように造りこまれてる。
 ここが最下層で、フィールドボスを相手にした最終ラウンドだって言われても納得できるだろうな」

 皆が固唾を飲んで周囲とは明らかに違う色の壁を見守る中、茂之と充の緊張に満ちた会話が寒々とした響きで反響を繰り返す。
 ディガーズクラブでも最高の探掘能力を持つ東尋坊尚吾(とうじんぼうしょうご)によって見つけ出された地下四階への階段が隠されているであろうと目される壁は、人一人が潜り抜けるのもやっとという狭い穴を三十メートルも這いずって進み、漸くにして辿り着いたある程度の広さを持つ部屋の北側に位置していた。

「ああ、俺にもそう思えてくる。
 それでも、態々こうやって壁を壊す必要があるんだ。
 あくまでも次のステージに進む道を守ってるガーディアンか、障害代わりの小ボスって処に懸けたい気分だな」
「確かにな。まあ、どっちにしろ、戦闘は避けられない感じなんだ。
 依頼分の働きをして見せるだけさ、俺はな」
「頼りにしてるぜ?」
「ああ、期待してくれ」

 不吉なものを感じていた充と茂之には、他のギルドとの共同調査を推すという考えもあった。しかし、彼らには――いや、茂之には、それを躊躇する理由もまた存在していた。
 それは過去、沈黙のカタコンベと呼ばれるアンデッドの巣窟で、他のギルドのプレイヤー達が遭遇したフィールドボス――ヴァンパイアとの対決において、棺の安置されている地下室への出入りが制限され、わずか六人による死闘が発生したことに端を発している。
 無論、この強制戦闘が発生した際、彼らの仲間は、指を咥えて眺めているだけではなかった。
 戦闘力に若干の不安がある者は、近場で活動している他のギルドへと救援の依頼に走り、また残存するプレイヤー達の中からパーティーを再編して増援投入を試みている。
 しかし、まさに結界とでもいうべき光の壁によって仕切られ場に空隙(くうげき)を穿つことは最後まで叶わず、突如として強制された戦闘は誰にも邪魔されることなく継続することに相成ったのである。
 不幸中の幸いだったのは、ヴァンパイアと対峙したプレイヤー達が、ドロップアイテムなどから精製した銀の武器に身を固めた生粋の戦闘者ばかりだったことだろう。そう、沈黙のカタコンベと冠するダンジョンが示す通りに、出現するモンスターがアンデッド系に偏っていたために、攻略のために相応の武器を用意していたことが幸いしたのだ。
 相手に反撃の隙を与えることなく続けられた間断ない連続攻撃によって、結果としてヴァンパイアは危なげなく倒されたのである。
 とはいえ、それはあくまでも幸運が重なったために勝ち取ることのできた薄氷上の勝利に過ぎない。
 もし、相手の弱点に合わせた武器を装備していなければどうなったか。もし、連携に慣れていない急造のパーティーで挑むことになっていればどうなったか。もし、回復と防御を専門とするプレイヤー重視で構成されたパーティーであったならばどうなったか。
 所詮は、数え上げれば切りがないほどに幸運が重なったが故の僥倖に過ぎない。勝利することそのものが、完勝を示していたとさえ、言い換えられるほどに。
 だからこそ、その後に準備を整え、ヴァンパイアを対象として幾度かの試行戦闘の末に、一パーティのみがボス戦に参加でき、それ以上の人数が光の壁の外へと弾き出されるのだと判明して以来、今後も人数制限を強制される可能性の高いフィールドボスとの遭遇戦は、どのギルドにとっても頭を悩ませる事項となっていたのである。
 だが、ギルドの運営面から見た場合、到底無視し得ないほどに大きな利益的問題が、ボス戦には存在してもいる。
 これもまたヴァンパイアとの戦闘で判明した事実であるのだが、最初にヴァンパイアを倒したプレイヤー達に、ダンジョン内におけるステータス上昇の恩恵があるらしいことが分かったのである。
 それは、アイテムのドロップ数増加であり、相手に与えるダメージの明らかな上昇などから検証され、積み上げられた推論だ。そして、鉱山という場所に、その推論を当てはめれば、鉱物アイテムの採掘に適用される可能性が非常に高くなると予想できる。
 元来、採掘という作業を主目的に行うディガーズクラブにとってみれば、その恩恵は計り知れず、他のギルドとの連携によって失われる恩恵はあまりに大きいと云うしかない。
 実際、対フィールドボスを相手に得られる思惑を期待しながら、次の階層への階段を探しているギルドは他にもある。
 つまり茂之は、ギルドマスターとして、他のギルドや探掘を行っているプレイヤーに出し抜かれないように、現状の戦力で迅速にフィールドボス相当の相手が予想される戦闘に挑むしかなかった。喩え、単なるガーディアンを相手にするかもしれないという可能性を分かってはいても、もしボス戦となった場合に得られる恩恵を見逃すわけにはいかなかったのだ。
 そして結果的に、盾装備の壁役二名と充を含めた攻撃役三名、壁を崩した後に遠距離攻撃と回復役を努める尚吾の六人で挑むことになったのである。
 当然、そのような思考経緯から導かれた帰結からすれば、ギルドメンバーではない充を参加させることに逡巡がなかったわけがない。
 ただ、根拠地を固めて安全を確保する点に表れているように、ディガーズクラブに所属するプレイヤー達は、防御に比重を傾ける傾向があり、直接的な攻撃力にやや欠けるきらいがある。そのため、充の参加は許容範囲内の必要経費であると、納得するしかなかったのだった。
 そこには、これまでの充の行動――傭兵として築いてきた信頼が作用したと云えるだろう。
 また、恩恵を享受したことによって、充から何らかの便宜を図ってもらえるかもしれないという打算も、僅かながらに存在していた。
 何れにせよ、茂之の内心の葛藤と思惑が何であろうと、傭兵として充の存在はここにある。
 そんな充に戦闘巧者としての意見を求めるため、茂之は質問を投げ掛けた。

「さて、鬼が出るか蛇が出るかってシチュエーションだが、小杉、お前はどういう相手が出てくると思う?」
「そうだな……カタコンベじゃ、山盛りのアンデッドとウェアウルフの後に、ヴァンパイアって流れだったんだ。
 今まで出てきたのが、ジャイアントバットばっかりだったことを考えれば、ギガントバットってのがありえるんじゃないか?
 ビッグモスも居ることだし、あの位の大きさなら、ここでも飛び回れるだろうからな。
 ただ、そうなった場合は、鱗粉攻撃みたいな無差別広範囲攻撃が怖い。
 まあ、コウモリ系なら超音波攻撃の方がありえるかもしれんがな。その場合は、拡散していく類の見えない直線攻撃になるが、避けるのはそれほど難しくはないだろう。
 昔、小説で読んだことがあるんだが、霧をつかって音波攻撃を見切るってのが対応策にできるはずだ。ちょうど、ホワイトフォッグなんて呪文があるんだから、お誂え向きだ」
「なるほどな」

 充の言葉に大きく頷きながら、茂之もまた意見を述べる。

「ただな、確かにホワイトフォッグの自動追尾性を考えれば、相手の攻撃のタイミングを見失うことはないだろうが、ジャイアントバットと同じように急襲をメインに切り替えられると、逆に攻撃のタイミングが掴めなくなる。
 あとは、下手に避けて天井や壁が崩落しないかどうかって疑問も残るな」
「ああ、それもありうるだろうな。
 だが、もし超音波攻撃があるとするなら、距離を取って遠距離で仕留める方が無難だとも思う。それなら急襲にだって対応する余裕はできるだろう。
 とりあえずは様子を見て、本当に超音波を使った時の参考程度に聞いていてもらえると助かる。まだ本当にコウモリを相手にすると決まったわけじゃないんだからな。
 案外、坑道を掘るって辺りで関連付けられてジャイアントワームの更にでかい奴とか、ダンジョンでお馴染みのミノタウロスって可能性もあるだろ?
 可能性を論じることの重要性を否定するつもりなんてないが、下手な考え休むに似たりとも言うんだ。結局は、出てきてから対応を決めるしかないと思うぜ?」
「確かにな」

 あれこれと悩んでしまいかねない雰囲気に陥ってた場の空気を払うようにして充はニヤリとした笑みを浮かべた。
 その笑みに応えて、茂之もまたニヤリと顔を歪める。

「皆、聞いてたな?
 小杉の言うような攻撃の可能性があることを頭に入れつつ、臨機応変な対処が求められるぞ。
 指示には、冷静に従ってくれよ。いいな?
 あと、東尋坊は壁を崩した後は直ぐに後ろに回ってくれ。回復と援護は任せるぞ?」
「はい、分かってます。
 それじゃあ、いきますよ。皆さん!」
『おう!』

 尚吾の言葉に、全員が声を揃えて頷いた。
 緊張で喉を鳴らしつつ構えた鶴嘴を、尚吾が一気に振り下ろすと、これまで探索を続けてきた労力は何だったのかと思えるほど呆気なく壁が崩れ去る。
 瞬間、充達が懸念していた通りに、この部屋へと通じていた背後の穴は光の壁で塞がれていた。
 その様子を横目で見ていた充は、乾いていた唇を舌で湿らせると、好戦的な笑みを浮かべて口を開く。

「ここまでお膳立てされてると、この手の予感は外れる方がやっぱり珍しいらしいな。
 気を付けろよ。予想通りに何かが出て来るぞ」
「ああ、分かってるさ」

 沈黙のカタコンベでは、安置された棺からヴァンパイアが現れる。対して、この場には、そのような分かり易い指標はない。だが、退路を断たれている以上、何も現れないはずがない。
 皆の視線は、尚吾の崩した壁の奥へと集まっていた。
 交錯する視線の中、上がった土煙が徐々に小さくなり、のっぺりとした暗闇だけが姿を見せる。五秒、十秒と短くも永い刻が重ねられ、誰かの喉が渇きを癒そうと少ない唾を嚥下した。
 その小さくも大きく響いたゴクリという音が契機となったのだろうか。
 虚ろな闇に、赤い光点が二つ浮かび上がる。赤い光は仄かに残照を残しながら線を描き、広間へと踏み入ってくる。

「でけぇ……」

 呆然とした盾役の古村光一(こむら こういち)の呟きは、全員の心を代弁していたに違いない。
 何一つ畏れる者などいない王者のように悠然と歩み寄ってくるのは、ひたすらに巨大な蒼い牛だった。
 かなりの高さを持つはずの天井にまで届きそうな体高を持ち、ブレードウルフのものと同系統であろう鉱物製の皮膚で絶対の防御を固めているであろうソレの名は、ガーディアン/プロテクションブルと表示されている。
 そして、最も戦闘経験を積んでいる充ですらもが威風堂々とした体躯に魅入られ、まるで彫像の如く動かぬ中、プロテクションブルはその歩みを止めた。
 心臓の音すら聞こえてくるような痛いほどの静寂は、嵐の前の静けさそのものか。
 充達をじっと一呼吸だけ見つめたプロテクションブルは、特に硬度が高いであろう紺碧色の角を揺らしながら右の前足で地面を削り、怖気を感じるほどに闘志に満ちた息を吐き出していく。
 ヴァンパイアの支配する沈黙のカタコンベにおいて、アンデッドの弱点は銀製の武器であった。同時に、フィールドボスであるヴァンパイアが蘇る舞台装置は、地下室に安置された棺であった。
 そう、分かり易いほどに分かる演出が為されていたのである。
 ならば今、目の前でプロテクションブルの示す行動が何を意味しているかなど、深く考える必要はない。奇しくも、ストライクボアの行動にも類似したものであるのだから。
 光一ら盾役の後ろで朱雀矛を地面に突き刺し、ショートスピアの投擲を準備していた充の意識を引き裂くような勢いで、数秒後に訪れるかもしれない不吉な光景が過ぎる。

「散開しろ! 突っ込んでくるぞ!!」

 咄嗟に朱雀矛を引き抜きながら、右手へと跳んだ充に遅れて、茂之達が動き出す。
 だが、すでに青い巨体は流星と化し、盾の重さで動きの遅れた光一達の目前へと迫っていた。





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