展望デッキから足元を見下ろせば、広がるのは一面の白い雲海。 周囲の同僚やら、関連企業の方々も、飛行船から見下ろす雲海という物珍しい光景に興味津々のご様子で、大半の人間が展望デッキに集まっている。 地球におけるディケライア本社である大型ハイブリッド飛行船【蒼天】は羽田を出航後、三浦半島上空を通過し相模湾を抜け、伊豆半島上空を現在順調に飛行中。 目的位置である駿河湾沖までは、あと10分ほどだと、仮想ウィンドウに表示した航路図が告げる。そろそろ宇宙側の記憶封鎖を解除する頃合いだろうか。 急遽執り行うことにした地球側と宇宙側の合同会議場所は、陸地から遠く離れた駿河湾沖となっている。 会議といっても大きな行動指針の変更は予定しておらず、全体の流れを共有し、調整できる部分があるかを、あぶり出すのが主目的ってのが大きい。 俺達としちゃ、ちょっとした報告会って感じなんだが、世間一般、特に詳しい事情を知らず、かつ地球内で力を持った勢力のお歴々は、こちらの動きがかなり気になっているご様子。 リアルでの盗聴、尾行、さらにはネットワーク側からもクラッキングやらと、情報戦が水面下では進行中。 地球側の技術力に、リルさんが出し抜かれる恐れは無いと思いたいが、それでも油断は禁物。 事が事だ。下手に現状がばれたときには、手がつけられない混乱状態になるのは目に見えてる。 今の地球は、巨大太陽風サンクエイクの影響により、衛星網はずたぼろに引き裂かれ、今も大気圏上層部には、時折強力な磁気嵐が発生し、機器類が誤作動を起こすので民間航空網は壊滅状態。 核戦争下を想定した一部特殊機が、何とか飛行可能という航空産業冬の時代……という設定。 こいつもかなり無茶な設定だと思うが、これがリアルよりなんぼかマシってのが目も当てられない。 チートな銀河文明の科学力を持ってしても、さすがに宇宙に上がられて直接情報を得られたらごまかしは出来無い、ばれる度に地球人類全ての記憶を書き換えとなると、何よりも惜しい時間と経費の浪費が半端ない。 てな訳で親愛なる同胞の地球人の皆様方、しばしの間まだ騙されていてくださいってな意味も込めて、偽りの太陽に向かって祈っとく。 「りゃ。三崎君また悪いこと考えてるでしょ」 人聞きの悪い台詞が響きそちらに顔を向ければ、紙コップ片手の大磯さんがいつの間にやら隣にいた。 柄にも無く神妙な面持ちで祈っていたのだが、大磯さんは、そんな俺を見て悪巧み中と捉えたようだ。失敬な。「地球の安全と平和を祈ってるだけですって」「無い無い。三崎君が平和とかますます胡散臭いから。三崎君はポジション的には、地球侵略しに来た宇宙人の組織に口先だけで入り込んで、そのまま乗っ取るタイプのボスキャラでしょ」 俺の半分本音の巫山戯た台詞に冗談めかして返してきた大磯さんだが、今現在彼女の宇宙側の記憶は封鎖中。全く裏事情は思い出せないはずなのに、この人なんで言い当てられんだか。 情報収集と分析に関しちゃ大磯さんのハイスペックは相変わらずで頼もしい事この上ないんだが……何時ものあれが無ければだが。 大磯さんの手の中の紙コップに、俺はどうしても注意が向く。 並々と注がれているアイスコーヒーと大磯さん。そして記憶解放直前。次の展開が目に浮かぶ。 記憶を思い出した拍子にびっくりして思わず投げ捨てて、ご本人か俺が、頭上から冷たいコーヒーを被るならまだ愛嬌。 その奇跡的な間の悪いどじっ子ぶりに宇宙側でもファンがいる大磯さんだから……最悪でも最新型飛行船が制御不能までは無いと思うが、警戒して損は無しか。 ちなみに大磯さんの場合は、どんな寒い冬でも飲み物はアイス。ホットで誰かが火傷する危険性を考えたら、冷たい方で我慢するし、何か起きてもまだ被害が少ないとの事。 悪気はないし、本人も気をつけているんだが、何というかそれでも防げないのが、この人の業の深さだ。 とりあえず乱気流が近づいているだ云々といって、飲み干してもらうのがベストな回避手段だと思うが、タイムリミットが問題。 『リルさん。記憶開放まであとどのくらいです?』 『船内や搭乗者の皆様の持ち込み物にいくつかの盗聴器や、発信器を発見いたしましたが全て処理済みです。情報漏洩の恐れはありません。情報解禁許可がおりましたので、10秒後に移行いたします』 うむアウトだ。この時間で飲み干せなんて無理をいったら、大磯さんの事だ氷を喉に詰まらせかねない。 しゃーない。強攻策と行くか。「ちょっと失礼します」 時間も無いので断りを軽く入れて近づいて、紙コップを持つ大磯さんの右手を左手で押さえつつ、右腕を肩を抱くように回す。「えっ……ち、ちょっ、っちょ、三、三崎君!?」 いきなりのセクハラ行為に大磯さんが顔を赤く染めてあわあわしているが、非常事態って事でお許し願おう。 周囲の目線も普通なら痛いだろうが、ある程度、大磯さんを知っている人間ならば俺の突飛な行動の意味も察してもらえるのが、唯一の救いか。 大磯さんをホールドするとほぼ同時に、展望台から見えていた青空と雲海に、稲光のような光が走り、外を注視していた人達がざわめきを上げるが、次の瞬間には一瞬で艦外風景がまっ暗に染まっていた。 これは雷雲の中に突っ込んだとかでは無く、蒼天周囲の空間に特殊フィールドが張られた影響だ。『蒼天周囲へのアンチ遅延フィールド展開完了。銀河標準時と艦内時間流の同期をいたします。星系連合未開惑星接触法の特例条項に基づき現地協力員への、一時的な情報提供及び記憶解禁』 リルさんの音声案内が艦内に響き、宇宙側の記憶を取り戻した関係者一同のざわめきが、一気に静まる。 衛星軌道上に展開し、隠蔽工作やら時間流遅延をやっているナノセル製の密閉型惑星統合管理システムは、いろいろとやれるのでこの上なく便利だが、その分、エネルギーやら消耗資材の消費が半端ない。 時計の針を合わせるために、地球全体の遅延フィールドを停止させて、終了後また発動ってのが、時計合わせには一番楽な手段といえば楽な手段だが、これはちょっとばかり金がかかる。 一般庶民感覚で分かり易くたとえるなら、エアコンを寒くなったからと一々止め、暑くなってきたら再度つけるのを繰り返す行為。 つけっぱなしでいた方が結果的に安くすむとのこと。 それと同じなら一部空間を限定して解除する方法の方が、かなり安上がりですむ。 会議のためにわざわざ蒼天を使い海上まで出たのは、その限定された解除空間を得るため。 経費削減で飛行船を飛ばすってのが感覚的に違和感がすごいが、相手側が我が母なる星地球となればこれも仕方なし。 太陽作成が完了し、惑星間の重力影響調整が終われば、時間流を解除しても諸々の経費は現状の二割程度まで押さえられるというのが、サラスさん率いる経理部の概算。 現状でもギリギリまで経費を削り、予算スレスレで何とか維持できているが、この状況は裏を返せば余裕がなさ過ぎて、何かで大きく1歩躓けばリカバリー不能な即倒産モードに移行の可能性も無きにしも非ずって所が切実だ。 しかしだ。惑星持ちの貧乏企業って。 「み、三崎君、そろそろ放してくれない? さすがに落ち着いたから……あと拭く物を貸して欲しい」 寂しい懐事情やら自虐的な事を考えていると、大磯さんの申し訳なさそうな声が腕の中から響いてくる。 目を向けてみれば、記憶開放時の驚きの所為か紙コップを思いっきり握りつぶして中身を溢れさせてしまっていた大磯さんの姿。 潰してしまった時にとっさに自分の方に向けたのか、俺の方には一切飛んできていないが、大磯さん胸の辺りにはビッショリとコーヒーが掛かり染みができていた。 「蒼天内にランドリールームあるんでそちらに出しておいてください。ゲストルームのシャワーとダイブシステムが使えるように手配しておきます。会議が終わるまでには綺麗にしておきます」 うむ。この上ないほどにミッション失敗……この人のドジを防ぐ正解ルートってあるんだろうか?「現在地球を初めとした旧太陽系4惑星は、銀河中心を起点とした場合、ほぼ銀河の反対側に当たるペルセウス腕辺境域に位置しています。現在位置から太陽系へと戻るためには、通常手段では地球時間でおおよそ3000年の移設期間と、莫大な移設費用がかかってしまいます」 目の前に広がるのは、俺らが住まう銀河を俯瞰図化した壮大な星の地図。 VR空間に展開した無重力球状大会議場に集まる地球と宇宙の関係者による合同会議は、まずはディケライアの金庫番サラスさんによる、宇宙側の現状説明から始まっていた。 銀河中心のバルジから伸びた、スパイラルアームと呼ばれる無数の恒星によってできた四本の光の帯。その中で小さめなオリオン腕に青い光点が光る。そこが本来の地球がいる位置であるはずの太陽系。 それとは別に、銀河の中心を挟んで反対側。長大なペルセウス腕で光る赤い光点が、現在の地球及び水、金、火の4惑星の所在位置。 こうやって銀河図で見て改めて、遠すぎるってのを実感できる。 中心からみて赤い光点の現在位置の方が、元位置よりも倍くらい離れているド辺境なので直線距離でみて約八万光年もありやがる。 さらに実際に移動させるとなれば、中心部に鎮座する巨大ブラックホールやら、その周囲に無数に存在する古い恒星群等の難所を避けた大回りルートとなるので、ペルセウス腕沿いのメイン交易路帯を進むことになる。 だけど居住者ありの有人惑星の移送となると、安全面での法律関係や、跳躍時の空間安定度から取れるルートも限られているので、さらにコースは限定される。 しかも行きで使ったようなアリスナビゲートの超特大ジャンプは、火事場のくそ力というか、奇跡の産物と云おうか、かなりの低確率の末の産物。 今のアリスのナビゲート能力ならば再現できる可能性もあるそうだが、あくまでも可能性。リスクと確率が見合ってないにもほどがある数字だ。 となれば地道に移動となるがそっちはそっちで問題大有り。 距離が長くなれば長くなるほど、時間がかかればかかるほど、条件が狭まれば狭まるほど、経費が上がるってのは、地球も宇宙も変わらず経済の常。 惑星移設経費や、ルート使用料、さらに安全対策のための諸経費諸々を含めた概算が、サラスさんの説明に合わせてスクロールされていく。 数字を見るまでも無く、結論からいえば、そんな金も時間は無いで終わる話。 ここにいる誰もが大まかとはいえ既に知っている事なんだが、こうやって改めて詳細な数字にしたのは、現状認識のためだ。 「続きまして恒星製作の概要に入らせていただきます。こちらの計画は元来の星系開発プランと並行しておこなう予定となるために、人材及び機材の確保が……」 太陽が無くて困っている。なら元の位置に戻れば、今も恒星が燦々と輝く太陽系に戻ればいいや、いっそ太陽を持ってくるという選択肢もどうしても考えてしまうだろうが、時間にしろ金にしろ無い袖は振れないって話だ。 完膚無きまでにそんな希望を叩きつぶしたサラスさんは、ついで本命の計画である恒星作成計画の説明へと移行する。 こっちは元々のディケライアが請け負っていた暗黒星雲縦断ルート開発計画の変更プラン。 機材やら人員が揃っているとはいえ、地球を元の位置に戻すよりも、恒星を一から作った方が早いし安いってのは、さすがに巫山戯た話だと思わなくも無いが、それがリアル。 太陽の代替えとなる恒星を作る手段は、単純にいえば元となる星に次々に物質を放り込んで、自己重力による核融合反応を起こさせればいい。 アリス曰くフォアグラ式。要はどんどん放り込んで肥らせろとのこと。浪漫の欠片もない身も蓋もない説明だが、分かり易いのが憎たらしい。 まずは元となる暗黒星雲内からその一部が収縮しでできた原始星を発見して確保。その原始星を重力遮断フィールドで囲み、今の宙域まで移送。 予定位置に設置後に人工的に重力圧縮を掛けつつ、燃料となる小惑星やらガス物質を投入して規定値まで質量を増加。 その後は超重力、超高熱下でも長期間稼働可能な無人特殊艦である恒星潜行艦を恒星中心部に配置して、着火して自家核融合を開始。 外部から潜行艦を管理して、適切な熱量やら重力を確保という流れになる。 恒星を作るだけでではなく、管理可能ってのが重要。今回製作する恒星は本来の太陽の質量から比べて1/100以下。 質量不足で恒星化するほどの重力を得られず、本来なら褐色矮星となるクラスの物を人工ブーストさせて、無理矢理に恒星化させる計画だ。 短期でしかも必要物資が少なくてすむので安く作れるが、後々の管理経費も割高でかかるってのが少しネックだが、諸々のバランスを見たときに、これが攻略としての最適解だと思いたい。 何せ地球の問題と、宇宙の問題を一挙に解決できる唯一無二の案だからだ。「シンタ。ちょっといい?」 サラスさんの報告に耳を傾けていると、我が相棒にしてディケライアの社長兼嫁であるアリスが器用に無重力の中を泳いで俺の横に並んできた。 説明対象が銀河だったり、惑星全域だったりと規模が大きすぎるので、立体的に把握しやすいように、自由に移動可能な球状無重力空間でおこなっている。 だから会議といっても決められた席が有るわけでも無く、それぞれが思い思いの場所に散らばっていて、説明する社員だけが今のサラスさんのように中央に地形図やグラフを表示して報告する仕様。 だから説明途中で移動するのも、自分の部署にあまり関係ない話で判らないからと途中で誰かに聞きに行くのもかまわないっちゃ構わないが、俺とアリスの場合はさすがにそういうわけにはいかない。「んだよ。ちゃんと聞いてないとサラスさんに叱られるぞ」 正直、何度も見て聞かされた説明で空で言えるほどには暗記してもいるのだが、俺ら夫婦の場合は計画の中心にして、元凶。全部知っておけ理解しろって厳命が降されている。 聞いていませんでしたとか、上の空でしたなんでなったら、後でサラスさんからどんな追加課題を出されるやら。「そのサラスおばさんからシンタに。旧太陽系の方の航路開発許可が一応だけど星連からついさっき降りたって。ただ今日の会議で報告できるほどには固まってないから、後日に追加報告するって。だからそれまでにプラン作成も含めて動くようにって」 アリスがもたらしたのは朗報といえば朗報。でも時間を食いすぎだ。それにまた仕事が増えやがった。 恒星さえも作成、管理する銀河文明にとって、安定した恒星の主系列星はこの広大な宇宙において、絶好の灯台にして中継ポイント。 太陽系が存在する宙域は、銀河全体から見れば星の数がまばらな辺境領域。 星=恒星が少ないってのは、重力変化がすくなく跳躍のしやすい空間であると同時に、補給や整備をするのに適した恒星が少ないって、メリットとデメリットを生み出す。 建物が少なく道が真っ直ぐで走りやすいが、GSやらコンビニも少ない田舎街道って所か? だから太陽みたいな安定した恒星がある星系は、長距離跳躍が不可能な一般的な船が主な銀河文明にとっては稀少で絶妙な中継ポイントの1つになる。 ただ問題は、太陽系には原生生物である俺ら地球人がいたために、星連自体が定めた未開惑星関連の法律に引っかかって、開拓も中継ポイント化もできずに、太陽系周辺では航路をいくつかねじ曲げていた。 しかし現在その太陽系は地球が転移して、いわゆる空き家状態。 太陽系の所有権を持つのは無論ディケライア。しかし今のディケライアには銀河の反対側に離れた2つの宙域を同時に開発するほどの力は無い。 となると、太陽系所有権を、星連やらその麾下の星間国家、または企業やらの、新しい居住可能恒星系を求める連中に売るか、貸し出すってのがベストの選択。「了解。しかし売りじゃ無くて、権利貸しのほうがすんなり決まるって話はどこ行ったよ。おかげで予算かつかつになったんだが」 一度にドカッと金が入る売買では無く、細々と続く賃貸を選択したのは、先々のことも考えてってのもあるが、それ以上に当座の資金やら協力が喉から手が出るほど欲しかったってのが強い。 足元を見られやすい売買では無く、諸手続の早い賃貸ってことで方針はすでに決まっていたのだが、本決まりになるまで俺らはもっと早い時期を想定していたのが、なんやかんやと調査が続きズレにズレて、後発の第二太陽系構築計画よりも、遅れたのはちっとばかり計算外だった。「しょうが無いでしょ。謂れが謂れなんだから。星連の合同調査隊が異常無しって判断するまで時間がかかったみたい」 「どうせ他に銀河帝国時代の遺構が無いかって幾度も調べ直したのが原因だろ。諦め悪すぎだろ列強の連中は。とっとと道でも引いた方が儲かるってのに」「シンタその台詞止めて……あのぼったくり羊っぽいから」「いやぽいも何も、俺の銀河流通業界の知識はレンフィアさんレクチャーだろうが」「そうだけどさぁ、あの血も涙も無い地獄羊の真似だけはしないでよ」 俺が思わず吐いた台詞に、アリスが実に嫌そうな表情を浮かべる。 アリスの脳裏に浮かぶのは、同じく銀河帝国皇家の末裔のディメジョンベルクラドにして、銀河最大規模の運送会社バルジエクスプレスを率いるレンフィアさん。 羊の角がトレードマークの何時も眠そうな目をしていた年上のお姉さんという感じのおっとりした外見と言動だが、騙される事なかれ。 サラスさん相手に1歩も引かない商談をしてのけられる豪商で、実にビジネスライクな判断力の高いお人だ。 ディケライアが危機に陥ったときも、アリスと残された社員のみではリカバーは不可能と判断。 それまで友好的な関係を築いていたの一転、料金の値上げやら保証金倍額にしたり等、積極的にディケライアを窮地に追い込む方針に転換し、最終的には吸収合併を仕掛けようとしてきた事もあるそうだ。「そんな嫌ってやるなって。吸収合併を狙ったのも教え子だったアリスを自分の部下にするためだって云ってたぞ。優秀なディメジョンベルクラドはいくらでも欲しいそうだ」 「嫌、それだけは絶対嫌……うぅシンタは本当の本性を知らないから暢気にいえるんだよ」 レンフィアさんはアリスにとって跳躍ナビゲートの師匠役の一人で、昔は相当スパルタにやられたらしく、恨み辛み以前に元々苦手意識が強いというのがリルさん情報。 その時のトラウマからか、アリスは事ある毎に理由をつけて直接対面を避けているほどだ。 もっとも向こうは一切そんな事を気にしちゃおらず、こっちの計画に勝算ありとみるや、協力を打診してくれた。 最大手の1つのバルジエクスプレスが動いたおかげで、他の企業も強い興味を示してくれたので、ディケライアにとっては紛れも無い恩人、恩企業。 しかしサラスさんもいっていたが、順調にいっているときはこの上ないほどに頼もしい味方だが、1歩踏み間違えればアリスが恐れる鬼になるとのこと。 となりゃ、まずは空いてる太陽で道をつくってご機嫌伺いといくしかなるまい。 サラスさんの報告を聞きつつも、ぶるぶるとウサミミを揺らし恐怖する相棒のためにも、太陽系航路を新設するための新しいプランを俺は練り始めた。