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No.3174の一覧
[0] かみなりパンチ[白色粉末](2011/02/28 05:58)
[1] かみなりパンチ2 番の凶鳥[白色粉末](2008/06/05 01:40)
[2] かみなりパンチ3 赤い瞳のダージリン[白色粉末](2011/02/28 06:12)
[3] かみなりパンチ3.5 スーパー・バーニング・ファルコン[白色粉末](2011/02/28 06:26)
[4] かみなりパンチ4 前篇 カザン、愛の逃避行[白色粉末](2008/06/18 11:41)
[5] かみなりパンチ5 中篇 カザン、愛の逃避行[白色粉末](2011/02/28 06:19)
[6] かみなりパンチ6 後編 カザン、愛の逃避行[白色粉末](2011/02/28 06:20)
[7] かみなりパンチ7 完結編 カザン、逃避行[白色粉末](2011/02/28 06:25)
[8] かみなりパンチ8 紅い瞳と雷男[白色粉末](2011/02/28 06:31)
[9] かみなりパンチ8.5 数日後、なんとそこには元気に走り回るルークの姿が!!![白色粉末](2008/09/27 08:18)
[10] かみなりパンチ9 アナリア英雄伝説その一[白色粉末](2011/02/28 06:31)
[11] かみなりパンチ10 アナリア英雄伝説その二[白色粉末](2008/12/13 09:23)
[12] かみなりパンチ11 アナリア英雄伝説その三[白色粉末](2011/02/28 06:32)
[13] かみなりパンチ12 アナリア英雄伝説その四[白色粉末](2009/01/26 11:46)
[14] かみなりパンチ13 アナリア英雄伝説最終章[白色粉末](2011/02/28 06:35)
[15] かみなりパンチ13.5 クール[白色粉末](2011/02/28 06:37)
[16] かみなりパンチ14 霧中にて斬る[白色粉末](2011/02/28 06:38)
[17] かみなりパンチ15 剛剣アシラッド1[白色粉末](2011/02/28 06:42)
[18] かみなりパンチ16 剛剣アシラッド2[白色粉末](2011/02/28 06:42)
[19] かみさまのパンツ17 剛剣アシラッド3[白色粉末](2009/07/18 04:13)
[20] かみなりパンチ18 剛剣アシラッド4[白色粉末](2011/02/28 06:47)
[22] かみなりパンチ18.5 情熱のマクシミリアン・ダイナマイト・エスケープ・ショウ[白色粉末](2009/11/04 18:32)
[23] かみなりパンチ19 ミランダの白い花[白色粉末](2009/11/24 18:58)
[24] かみなりパンチ20 ミランダの白い花2[白色粉末](2012/03/08 06:05)
[25] かみなりパンチ21 炎の子[白色粉末](2011/02/28 06:50)
[26] かみなりパンチ22 炎の子2[白色粉末](2011/02/28 06:52)
[27] かみなりパンチ23 炎の子3 +ゴッチのクラスチェンジ[白色粉末](2010/02/26 17:28)
[28] かみなりパンチ24 ミスター・ピクシーアメーバ・コンテスト[白色粉末](2011/02/28 06:52)
[29] かみなりパンチ25 炎の子4[白色粉末](2011/02/28 06:53)
[30] かみなりパンチ25.5 鋼の蛇の時間外労働[白色粉末](2011/02/28 06:55)
[31] かみなりパンチ25.5-2 鋼の蛇の時間外労働その二[白色粉末](2011/02/28 06:58)
[32] かみなりパンチ25.5-3 鋼の蛇の時間外労働その三[白色粉末](2011/02/28 06:58)
[33] かみなりパンチ25.5-4 鋼の蛇の時間外労働ファイナル[白色粉末](2011/02/28 06:59)
[34] かみなりパンチ26 男二人[白色粉末](2011/02/28 07:00)
[35] かみなりパンチ27 男二人 2[白色粉末](2011/02/28 07:03)
[36] かみなりパンチ28 男二人 3[白色粉末](2011/03/14 22:08)
[37] かみなりパンチ29 男二人 4[白色粉末](2012/03/08 06:07)
[38] かみなりパンチ30 男二人 5[白色粉末](2011/05/28 10:10)
[39] かみなりパンチ31 男二人 6[白色粉末](2011/07/16 14:12)
[40] かみなりパンチ32 男二人 7[白色粉末](2011/09/28 13:36)
[41] かみなりパンチ33 男二人 8[白色粉末](2011/12/02 22:49)
[42] かみなりパンチ33.5 男二人始末記 無くてもよい回[白色粉末](2012/03/08 06:05)
[43] かみなりパンチ34 酔いどれ三人組と東の名酒[白色粉末](2012/03/08 06:14)
[44] かみなりパンチ35 レッドの心霊怪奇ファイル1[白色粉末](2012/05/14 09:53)
[45] かみなりパンチ36 レッドの心霊怪奇ファイル2[白色粉末](2012/05/15 13:22)
[46] かみなりパンチ37 レッドの心霊怪奇ファイル3[白色粉末](2012/06/20 11:14)
[47] かみなりパンチ38 レッドの心霊怪奇ファイル4[白色粉末](2012/06/28 23:27)
[48] かみなりパンチ39 レッドの心霊怪奇ファイル5[白色粉末](2012/07/10 14:09)
[49] かみなりパンチ40 レッドの心霊怪奇ファイルラスト[白色粉末](2012/08/03 08:27)
[50] かみなりパンチ41 「強ぇんだぜ」1[白色粉末](2013/02/20 01:17)
[51] かみなりパンチ42 「強ぇんだぜ」2[白色粉末](2013/03/06 05:10)
[52] かみなりパンチ43 「強ぇんだぜ」3[白色粉末](2013/03/31 06:00)
[53] かみなりパンチ44 「強ぇんだぜ」4[白色粉末](2013/08/15 14:23)
[54] かみなりパンチ45 「強ぇんだぜ」5[白色粉末](2013/10/14 13:28)
[55] かみなりパンチ46 「強ぇんだぜ」6[白色粉末](2014/03/23 18:55)
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[3174] かみなりパンチ26 男二人
Name: 白色粉末◆95fd51d0 ID:757fb662 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/28 07:00
 スーパー・バーニング・ファルコンとは!
 隼団の首領とは!
 ロベルトマリンの暗黒街の誰もが一目置くタフな男とは!
 如何な治安維持組織も与し難しと判断するアウトローとは!

 どう言う物か! どう言う物なのか!

 ――それは、異世界においては誰も知らない。当然の事である

 しかし、これ程偉大な男の存在を、知らしめずにおいて良い訳が無い、そう本気で感じている者が居た


 ゴッチであった


 ゴッチは極めて自尊心の高い男だ。ロベルトマリンのダニ上等、しかし、自分を舐めたり、嵌めたり、乗せたり、侮った奴に対して報復を行わずには居られない、そういう男だ

 当然、自分を安く見ていない。ファミリー内でビジネスの成果を競うなら他の団員達に譲る所も多々あるが、ソルジャーとして、事、戦闘能力においてはファルコンすら上回るという自負がある

 容易に人の下にはつかない。自分を従えられる者などそうは居ない
 では何故隼団の一人なのか。何故頂点に居ないのか。或いは孤高で居ないのか

 スーパー・バーニング・ファルコンが強い男だからだ。誇らしい男だからだ

 ゴッチの胸中にあった単純なその思いは、ここ最近急速に大きくなっていた。正確に言えば、カポに任命されたその時から

 隼団ソルジャー、ゴッチ・バベルとは、言ってしまえば敵を這い蹲らせる為の握り拳だ
 では隼団カポレジーム、ゴッチ・バベルとは、何か?

 ファルコンが、直々に、仕事を任せる存在だ。ファルコンがその実力と忠誠を認めて用いる存在なのだ
 もしゴッチに実力が無ければ、それは即ち首領の無能を示す。実力の無い者が粛清もされず重役を任されるような組織、終わっている。その終わっている組織の首領、当然、終わっている

 隼団カポレジーム、ゴッチ・バベルとは、ファルコンの乗り移った男でなければいけないのだ。ゴッチを見ればファルコンの力が解る、そんな存在でなければいけないのだ

 この年若い、新米カポは、そう解釈した。俺はファルコンの子なのだと胸を張らなければいけなかった
 何せ、ゴッチは目立ちたがりであったし


 テツコとファルコンが所用でサポートに回れない期間を、ゴッチは一瞬たりとも無駄に過ごしたりはしなかった

 ジルダウの街、そこに現れた隼団カポ。ターゲットであるロージン、仕事は決まっている
 隼団として活動したゴッチ。手伝うラーラ。制止するレッド。ゼドガンは、面白そうに笑っていた

 そして、あっという間の一週間。ゴッチは実力でロージンを配下に組み込み、暴力を中心に置いた極めて強引かつ後先考えないやり口で、商人の街ジルダウの暗部の頂点に立っていた


――


 「うーん、いや、まだ違うな。もうちょっと……嘴が、こう、ほら、こうだ。分厚くて、だが鋭いんだ」
 「は、はぁ……」
 「気合入れて筆動かせ。ビシッとやれよビシッと」
 「は、はい!」

 ジルダウは湖に面している。交通の要所で、人が必要とする資源が豊富に存在し、街として好条件の土地だった
 当然規模は大きくなる。商人達の手練手管で、アナリア王国もエルンスト軍団も明確にここを支配しているとは言えない微妙なバランスを保っていた

 それをゴッチは突き崩した。今、ジルダウの豪商から奪った巨大な屋敷の中で、葉巻を咥えながら尊大に人を操る男の仕業で、ジルダウの街は一気にエルンスト側へと傾いたのである

 先程強引かつ後先考えないやり口と述べたが、ゴッチ・バベルを受け入れさせるのは、ロージンの存在もあって実は然程難しくなかった。何せ、商人を脅しつけたり、或いは守ってやったりなんてのは、本職と言ってもよかった

 「そうそう……、おい、なんだこの可愛いおめめは? ガキ用の案内看板でも描いてる心算じゃねーだろうな?」
 「い、いえ、そんなつもりは!」

 そのゴッチが今何をしているかと言えば
 目の粗い、しかしそれでも貴重な紙に向かって必死に書き込みをする絵師に向かって、あれこれ注文を飛ばしていた

 「よし良いぞ、この立ち姿、最高だな。この背中だよ背中。ビッと決まってやがる。これが隼団のドンの貫録だ」
 「よ、宜しいでしょうか、ゴッチ様ァ?!」
 「何だ? 言ってみろ」

 絵師は頭に巻いていた布をぐしゃぐしゃと丸めて、半泣きになりながら訴える

 「わ、私はァ、貴方の養父殿の肖像画を描かせていただく為に参ったのではァ?!」
 「その通りだが、なんか問題あるか?」
 「こ、こ、これはどう見ても、鳥……、鳥が服を着て、その、兎に角鳥なのではァ?!」
 「あぁぁぁ?」

 絵師は書き込みを行っていた紙を頭上に掲げる
 下書きの段階であったが、そこに描かれていたのは間違いなくファルコン
 スーツを着込み、落ち着いた様子で翼をたたみ、首だけで振り向いて背中を見せているファルコンの立ち姿だった

 「だからこれが俺のオヤジだっつってんだろうが!」
 「は、はぃぃぃ?!」
 「タフで、冷徹で、残忍。俺に無い礼儀と教養を備えたナイスガイ。スーパー・バーニング・ファルコンだ。鳥なんて軽々しく口走ってんじゃねぇぞ!」
 「もう何が何だか!」

 蹴り転がされた絵師は、それでも紙を損傷させないように懐に庇いながら埃塗れになった

 からからと笑うゴッチ。葉巻から上る紫煙を目で追い、顔を上に向ける

 品の良い設えの椅子にどっしりと腰かけ、立ち振る舞いは尊大である物の、決して下品ではない
 カポの出で立ちとうはこう言う物だ。肘掛に頬杖をつき、足を組んだゴッチは満足げに笑った

 ふう、と吐き出した煙に、絵師は軽く咳き込んだ。苦手であるらしかった


――


 軍師オーフェス・サデンの使いは、表情険しくゴッチを睨みつけていた
 それも真正面から。そういう態度を取られて、受け流す理由は今のゴッチには無い

 腕組みしながらゴッチの傍らに侍るラーラが、愚かな奴、と小さく呟く。オーフェスの使いには届かない大きさの声だ

 「オーフェスの婆様はな、殺しても良いって言ったのさ。殺さなきゃいけねぇとは言ってねぇ」
 「しかしこちらの調べでは、ロージンは未だ首都の方面と商いをしているではありませんか。これはどう言う事です?」

 オーフェスの使いは、オーフェスの依頼の顛末について聞きに来たのだった

 ロージンとの交渉、或いは排除。ゴッチはこれを、ロージンを配下にする事で成し遂げた。ロージンは現在エルンスト軍団への全面的支援を誓っており、アナリア王国との取引は最小限にしている

 「おいおいおいおい、婆様がそれを聞いてこいって言ったのか? そんな訳ねぇ。解らねぇ筈がねぇからな。最低限の取引までなくなっちまったら、情報まで止まっちまうだろ。そんな事になったら婆様顔真っ赤にして怒るぜ。まさか、本気でその程度の事も解らなかったって事は無いだろう?」

 オーフェスの使いは沈黙した。僅かに頬が紅潮している
 当然といえば、当然である。面と向かって、「無知な奴め」と言われたような物だ

 「詳細はラーラに送らせたってぇのに、態々お前みたいなのを送ってくるんだから、婆様も心配性だな」
 「…………」

 お前など信用できない、と、そう言いたげな表情であった。国仕えは大変だねぇ、とゴッチは笑う

 「兎に角、ロージンに関してはここまでだ。オーフェスの婆様の望みは叶えた。ロージン自身にも、エルンスト軍団と敵対する意思はない。なんつったって野郎は商人だからな。喧嘩したって金にならんのだから」
 「それで納得しろと? 取り敢えず、本人をここへ。直接聞くこともあります故」
 「納得しねぇのか……? 納得しねぇってんなら、仕方ねぇな……。おいラぁーラ、その間抜け面をやっちまえ」

 突然のゴッチの言葉に、オーフェスの使いは飛び上がった。今この男何と言った?
 やっちまえ? この自分を、軍師オーフェス・サデンの使いを? やっちまえと?

 「了解」

 壁に寄りかかっていたラーラが平然と応える。真紅の瞳がギラリと光った

 「どう言う事か?!」
 「解んねーのか、マジで? これ以上俺の部下に文句があるってんなら……俺と喧嘩だっつってんだこの間抜け野郎!!」

 怒声、それと共に、立ち上がりざま蹴り一発

 ゴッチの眼前にあった、ゴッチの質量の三倍はあろうかと言う重厚な黒塗りの机が、真っ二つに破壊される
 砕け散った破片を浴びて、オーフェスの使いは後退った。必死に釈明なのか威圧なのか解らない事を述べる

 「お、お待ちを! こちらに敵対の意志は御座いません! 貴殿はエルンスト軍団と事を構えると仰るのか!」
 「あぁ、あぁー、オーフェス・サデンが、エルンスト・オセが、そんなに話の解らん連中だってんなら、やるしかねぇよなぁ。この隼団ゴッチ・バベルを前に、よくもまぁ阿呆面引っさげて適当な事抜かしやがってこの馬鹿が。俺は手前みてぇな馬鹿が、身の程を勘違いして偉そうにしてるのが大嫌いなんだよ!」

 オーフェスの使いは息を止めた。この瞬間自分が何をしなければいけないのか、正確に把握した

 この魔術師が、ここまで強引で後先考えない男だとは思わなかった。ここで主であるオーフェスとこの魔術師との関係を悪化させる訳には行かない。それ以上に、決して有利な戦況ではない今、いや、例え戦況有利であったとしても、魔術師とエルンスト軍団を敵対させる訳には、絶対にいかない

 オーフェスの使いは跪いた

 「謝罪致します! 私は礼を失しておりました、ロージンの件に関しても、我が主オーフェス・サデンに判断を仰ぎます。ここはお怒りをお鎮め下さい。私の首なら差し上げる。しかしこの件は、オーフェス・サデンの意志でも、エルンスト軍団の総意でも御座いません。隔意をお持ち下さるな」

 ふむ、と鼻から息を大きく吐き出し、ゴッチは満足げに笑う

 「だってよ、ラーラ。今回はお前に任せるとするか。俺の事は気にすんな。気に入らなけりゃ、殺しちまえ」

 きょとん、とラーラはゴッチを見る。むぅ、と唸って、白銀の髪をくるくる弄った
 詰まらなそうに息を吐くと、ラーラは跪いたオーフェスの使いの首根っこを摑まえて、部屋の外まで引き摺り出した

 「ボスは筋を通すお方だ。契約は達成されている。これ以上言いたい事があるのなら、オーフェス殿自身で来られるが良かろう。では、行かれよ」

 オーフェスの使いは、数回瞬きすると、立ち上がって一礼した。早口で謝辞を述べると、踵を返して大慌てで去っていく

 白い首筋を撫でながら、ラーラは苦笑した。ボスが蹴り砕いた机も、決して安い代物ではないのだがな

 「これで宜しいか?」
 「……まぁ、大丈夫だろ。婆様だったら納得するさ。もし駄目だってんなら、今度こそ喧嘩だぁな」

 楽しそうにゴッチは言う。本当にそうなれば良い、と思っている時の笑みだ。ラーラはそう判断した

 「ロージンも喜ぶでしょう」
 「馬鹿言うな、奴を喜ばせる為にこんな真似するかっつーの」
 「は、そうでしたな、確かに」

 ノックの音が聞こえた
 ゴッチが誰何の声を掛けると、ロージンです、と感情を押し殺した声が聞こえた。入室を許可する。ドアが開かれると、其処には旅装の上に青い直垂を羽織った男と、年幼い幼女が立っていた

 ロージンと、その愛娘ジナイである

 「どうした。何か報告でもあるのか?」

 ゴッチが声を掛けた途端、ロージンは床に這い蹲った。額をべったりと床に着け、はらはらと涙を流した

 すかさずラーラがジナイの手を取り、部屋の外に連れ出す。おいおい、と頭を掻きながら、ゴッチは迷惑そうに溜息を吐いた

 「ありがとう……御座います……! ゴッチ様……!」
 「止めろ邪魔臭ぇ。お前の仕事は、無駄に広い額を使って俺の部屋の床を磨くことじゃねーぞ」
 「……は、承知しています……! 私の仕事は、成し遂げます。一命に変えましても!」
 「あーあー……面倒な奴だな。解った、お前の気持ちは解ったから、とっとと立て。遣り辛ぇんだよ」


――


 元々ロージンは商人の子だったらしい。父から受け継いだ元々大きい地盤を堅実に固め、ジルダウの中でも比肩する者の無い豪商になった

 しかしその豪商は、頻繁にアナリア王国の徴発の対象になった。他の商人達の策謀と言うならまだ別の話であったのだが、ロージンの調べではそういった形跡は無く、純粋に……

 純粋に、アナリア王国を形成する人間たちの、私欲の為に、ロージンは被害を被っていた。ロージンがアナリア王国に反感を持ち、エルンスト軍団を支援しても仕方のない事である。ロージンの心とその取引は、急速にアナリア王国から離れていった

 そうしてどうなったかと言えば、ロージンの娘ジナイだ。ロージンの、目に入れても痛くない、亡き妻の忘れ形見が、人質として攫われたのである


 そして、ロージンをどうにかしようと画策したのがオーフェスで、それによってジルダウに送り込まれたのがゴッチだった。ゴッチ達は下調べの段階で、ロージンの内情を正確に把握した

 ここで猛然とジナイの身柄奪取を主張したのが、レッドと、ラーラだった。ゼドガンも奪取に非常に乗り気だった
 ゴッチとしては、ロージンを脅して自分の命と娘の命を天秤に掛けさせるのが楽で良かったのだが、手間を抜きにして考えるなら、確かに“貸し借り”と言うのはゴッチ達の世界でも十分に通用する通貨だ

 あーあーはいはい、と投げ遣りながらも、結局ゴッチはジナイを奪取したのだった
 それからロージンは、ゴッチの忠実な部下だ。エルンスト軍団から派遣されてきた。本来ならば自分は殺されていた。と言うのが、このロージンと言う男には非常によく効いたのである


――


 極めて、平和であった

 常人から見れば、ジルダウのヤクザ者達を締め上げ、その上に踏ん反り返るゴッチの状況を平和とは表現できないだろうが、ロベルトマリンのアウトローからしてみれば、本当に平和だった

 それに加え、アナリア王国軍とエルンスト軍は共に長期戦の準備に入っており、小競り合い以上の戦闘は起きていない

 エルンストの計画していた築城は形となり、これから先の戦いは長引くだろう

 そう、あらゆる意味で平和だった。エルンスト・オセが、悪戯小僧のような笑みを浮かべて、お祭り騒ぎを計画する程度には

 エルンスト軍団の士気と戦力の充実のアピール、加え、アナリア王国軍への挑発、加え、将兵達の息抜き、加え、エルンスト・オセの趣味の為に

 御前試合が計画されていた。しかも、ジルダウの街で


 「会場の建設は、予定よりも早く進行しています。模範演武に参加する軍団の方々や、御前試合に出場なさる名だたる戦士の方々の宿泊施設の方が問題です」
 「天幕でも宛がって、それで終いで良いと思うがね」
 「名声ある方々に、粗略な事は出来ますまい。例として挙げるなら、カロンハザン将軍なども出場なさいますので」
 「大丈夫だ。……今は戦争中なんだぜ。こんな阿呆な事始めやがった誰かさんにその自覚があるかは疑問だが。ぐだぐだ抜かす奴が居たら、表を作ってエルンストに送りつけてやれ」
 「は、ハハハ、それはまぁ、そうですな。……取り敢えず、ジルダウの中で見栄えの良い家屋を見繕ってみます。天幕の使用とも合わせて詰める事にしますよ」
 「頼むぜ、ロージン」

 それに関してのお鉢が回ってきたのが、ゴッチだった

 ジルダウの街を制圧(実情は掛け離れているが)したゴッチを蔑ろにして、準備を進める訳にはいかないと言うのがエルンスト軍団の言い口である
 実の所は、苛烈な気性と横暴が過ぎるゴッチへの多少の反撃だ。ゴッチにこういった事を取り仕切る能力が無く、またそのゴッチを客分として扱うマグダラ家も、武辺者集団であり当てには出来まいという判断だった。それでゴッチが会場設営の為に泣きついて来れば、多少溜飲も下がると言う物

 しかし、それを万事まるっと解決したのがロージンだった。ゴッチの大まかな判断を現実的に形作っていくのが、ロージンの仕事であった。現に、ジルダウの街をゴッチが締め上げてからも、主にそれらを取り纏めているのはロージンだ。余所者のゴッチが幾ら強く、魔術師として恐れられており、ロベルトマリンで培った手管があろうと、一週間そこらで地盤を創れる訳がない。例え歯向かう者を四十二人も殺していようとだ


 兎にも角にも、エルンスト軍団の目論見も外れて、会場設営は順調に進みつつある

 昨日も、エルンストその人が直々に視察に来た。ゴッチに対しても気さくに接するエルンストに上手い事乗せられて、何時の間にかゴッチはエルンストの寝床に引っ張り込まれて酒を酌み交わしていた
 会場設営が順調そうであると判断したエルンストは上機嫌で、御前試合の時を酷く楽しみにしていた。全く子供のようだと苦笑しながら、しかし自分が悪い気分で居ない事に気付いたゴッチは、慌ててその場を辞した

 反社会的存在の代表格である職に就いたものが、権勢を極める立場の物に絆されそうになるなど、バカバカしい


 商人、工人、冒険者、兵士、ジルダウの街には、様々な者達が集まりつつある。治安を維持するために警備兵を増員するだけでは足りず、結局マグダラの私兵が駆り出されてくる程だ

 ゴッチは、偶にはお祭り騒ぎも悪くないと思った。主に取り仕切っているのはロージンだが、自分の初めてのビッグビジネスだと言う事も、その浮かれ気分を後押ししていた


――


 騎士カロンハザン。誰もがその名を知っている
 心技体を兼ね備えた、随一の者。高潔な騎士で、彼の下で戦う者は皆勇者になると言われた

 言い方は悪いが、エルンスト・オセの一番のお気に入りである。エルンストはカザンの事を、千年先まで名が残る男と称賛した。歴史に刻まれる伝説を目の当たりにしているのだ、と、そこまで言ったのだ

 この男が御前試合に参加するのは、最早当然だった。そして、良い意味でも、悪い意味でも、この男の名に惹かれてジルダウに集う者達は、数えきれなかった

 そのカザンは今従者も伴わず、ジルダウに居を構える一人の鍛冶師の工房に居た

 「……」

 湖畔に立つ家屋で、随分と真新しい。内部に水を引く為に、湖に半ば突き出るような成りをしている
 早朝の草原が放つ青い香りと、湖の清涼な香りが合わさって、不思議な香りだった

 湖面に反射する陽光がカザンの目を細めさせる。良い環境だ

 カザンはゆっくりとした動作で、工房の戸を叩いた

 「はい、どちら様?」

 ぱっと一人の女が飛び出してくる。髪を大雑把に纏めた煤だらけの女で、手には炭を握り締めていた

 女はカザンの顔を見ると、息を呑み込んで口を引き結ぶ。カザンは苦笑して、なるべく軽快な口調で語りかける

 「久し振りだな、ヨルデ。ヨルドは居るか?」

 ヨルデが口を開く前に、奥から男が飛び出してくる

 ぼさぼさ髪の、無精髭を伸ばし放題で、こちらも煤だらけの男
 ヨルドは目を輝かせながら、カザンに駆け寄って手を取った

 「カザン! お前カザンか! この野郎、暫く便りも寄越さないで! お前の話はよく聞いたが、元気そうだなおい!」
 「ヨルド! ははは、済まんな! お前の方はどうだ? 少し痩せたか。ん?」
 「鉄を打ってるとな、飯食うの忘れちまうんだ! 俺もヨルデも!」
 「相変わらずだな」

 ヨルデが呆れたように笑う

 「ちょっとちょっと、……朝っぱらから男二人で暑苦しいわね。取り敢えず中に入りましょうよ」
 「おぉー、よし、そうだな。時間はあるんだろう? カザン」
 「あぁ、暫くは大丈夫だ」
 「じゃぁ良いな! 秘蔵の酒を出してやる!」
 「兄貴、朝っぱらから呑む気?!」

 ヨルドがカザンの背中をバシバシ叩きながら中へと誘う。カザンは喜んで招待を受けた
 朝から喧しい二人の様子に、ヨルデは溜息を吐いていた


――


 「お前がアーリアからジルダウに移っていたとは知らなかった」
 「あぁー、まぁな。ハハハ、確かに向こうで得た評判を捨てる事にはなったが、俺の腕なら何処でだって食っていけるぜ。こっちの方でも最近な、上客が付き始めたんだよ。聞いて驚けよ、これがエルンスト軍団に参加してる侯爵様でな」
 「ふふふ、そんな事を言ったら、俺はエルンスト第一軍団の将軍だぞ」
 「そういやそうだった!」

 杯を一度空けただけで真っ赤になったヨルドは、豪快に笑いながら空の杯を振り翳す
 カザンがそれに合わせて杯を持ち上げた。木製の杯が、カツンと音を立てる

 体を清めてきたヨルデが、厭味ったらしく言う

 「この馬鹿兄貴頑固だから、お客が着くまで大変だったのよ? 気に入らない兵士とか、金槌振り上げて追い返したりして」
 「ケ、振るい型もしらねぇガキに剣を打って何になるよ。あんぐらいの年の奴ぁな、故郷に帰って親孝行でもすりゃいいのさ!」
 「実の父を殴り合いの末に失神させて家を飛び出した男が言うか?」
 「そういやそうだった!」
 「この駄目兄貴……」

 ヨルドはカザンの杯に酒を注ぎ、胡坐を組み直して眼を鋭くする

 「で、この時期に来たって事は……剣だな?」

 カザンは背筋を伸ばしたまま返盃した。堂々と頷く

 「そうだ。だが、剣だけではない。鎧もだ」
 「態々俺を探してまで? 御前試合に出るんだろう? もっと有名どころを探すことも、出来たんじゃないか?」
 「お前に凄いのを打ってもらいたいんだ。アズライの代わりになるようなのを、な。当然革鞘を張り付けて使う事になるが、たとえそれでも剣は良い物を使いたい」

 そういって腰元の、布ですっかり包まれた剣を示す
 炎の剣アズライ。カノート神殿の秘宝である。炎の剣とは名だけではない。この剣は、斬った物を本当に燃やし尽くす

 ヨルドは感激した。興奮して一息に杯を空ける

 「畜生、お前はなんて奴なんだ! 俺が打つ、お前が振る! そうだったな、昔から!」
 「あぁ。まさか、断らんだろう?」
 「当然だってんだこの野郎! 任せとけ! 『お前に剣を!』」

 カザンも杯を干して、ヨルドのそれに再び打ち付ける

 ヨルデが肩を竦めながらそれを見ていた。舌打ちでもしたそうな苦り顔だった

 「あー、暑苦しいんだから全く」

 御前試合、近付く


――

 後書

 自由になる時間があったので自分にブースト掛けてみた。意外とするする筆が進むことおほほ。ブースト度合の為誤字がパネェかも。


 何がやりたいかと言うと
 「来いよベネット! 銃なんか捨てて掛かって来い!」

 でもメタルマックス3の方も書きたいんだぜ……。


 ゴッチ充電中。


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