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No.3174の一覧
[0] かみなりパンチ[白色粉末](2011/02/28 05:58)
[1] かみなりパンチ2 番の凶鳥[白色粉末](2008/06/05 01:40)
[2] かみなりパンチ3 赤い瞳のダージリン[白色粉末](2011/02/28 06:12)
[3] かみなりパンチ3.5 スーパー・バーニング・ファルコン[白色粉末](2011/02/28 06:26)
[4] かみなりパンチ4 前篇 カザン、愛の逃避行[白色粉末](2008/06/18 11:41)
[5] かみなりパンチ5 中篇 カザン、愛の逃避行[白色粉末](2011/02/28 06:19)
[6] かみなりパンチ6 後編 カザン、愛の逃避行[白色粉末](2011/02/28 06:20)
[7] かみなりパンチ7 完結編 カザン、逃避行[白色粉末](2011/02/28 06:25)
[8] かみなりパンチ8 紅い瞳と雷男[白色粉末](2011/02/28 06:31)
[9] かみなりパンチ8.5 数日後、なんとそこには元気に走り回るルークの姿が!!![白色粉末](2008/09/27 08:18)
[10] かみなりパンチ9 アナリア英雄伝説その一[白色粉末](2011/02/28 06:31)
[11] かみなりパンチ10 アナリア英雄伝説その二[白色粉末](2008/12/13 09:23)
[12] かみなりパンチ11 アナリア英雄伝説その三[白色粉末](2011/02/28 06:32)
[13] かみなりパンチ12 アナリア英雄伝説その四[白色粉末](2009/01/26 11:46)
[14] かみなりパンチ13 アナリア英雄伝説最終章[白色粉末](2011/02/28 06:35)
[15] かみなりパンチ13.5 クール[白色粉末](2011/02/28 06:37)
[16] かみなりパンチ14 霧中にて斬る[白色粉末](2011/02/28 06:38)
[17] かみなりパンチ15 剛剣アシラッド1[白色粉末](2011/02/28 06:42)
[18] かみなりパンチ16 剛剣アシラッド2[白色粉末](2011/02/28 06:42)
[19] かみさまのパンツ17 剛剣アシラッド3[白色粉末](2009/07/18 04:13)
[20] かみなりパンチ18 剛剣アシラッド4[白色粉末](2011/02/28 06:47)
[22] かみなりパンチ18.5 情熱のマクシミリアン・ダイナマイト・エスケープ・ショウ[白色粉末](2009/11/04 18:32)
[23] かみなりパンチ19 ミランダの白い花[白色粉末](2009/11/24 18:58)
[24] かみなりパンチ20 ミランダの白い花2[白色粉末](2012/03/08 06:05)
[25] かみなりパンチ21 炎の子[白色粉末](2011/02/28 06:50)
[26] かみなりパンチ22 炎の子2[白色粉末](2011/02/28 06:52)
[27] かみなりパンチ23 炎の子3 +ゴッチのクラスチェンジ[白色粉末](2010/02/26 17:28)
[28] かみなりパンチ24 ミスター・ピクシーアメーバ・コンテスト[白色粉末](2011/02/28 06:52)
[29] かみなりパンチ25 炎の子4[白色粉末](2011/02/28 06:53)
[30] かみなりパンチ25.5 鋼の蛇の時間外労働[白色粉末](2011/02/28 06:55)
[31] かみなりパンチ25.5-2 鋼の蛇の時間外労働その二[白色粉末](2011/02/28 06:58)
[32] かみなりパンチ25.5-3 鋼の蛇の時間外労働その三[白色粉末](2011/02/28 06:58)
[33] かみなりパンチ25.5-4 鋼の蛇の時間外労働ファイナル[白色粉末](2011/02/28 06:59)
[34] かみなりパンチ26 男二人[白色粉末](2011/02/28 07:00)
[35] かみなりパンチ27 男二人 2[白色粉末](2011/02/28 07:03)
[36] かみなりパンチ28 男二人 3[白色粉末](2011/03/14 22:08)
[37] かみなりパンチ29 男二人 4[白色粉末](2012/03/08 06:07)
[38] かみなりパンチ30 男二人 5[白色粉末](2011/05/28 10:10)
[39] かみなりパンチ31 男二人 6[白色粉末](2011/07/16 14:12)
[40] かみなりパンチ32 男二人 7[白色粉末](2011/09/28 13:36)
[41] かみなりパンチ33 男二人 8[白色粉末](2011/12/02 22:49)
[42] かみなりパンチ33.5 男二人始末記 無くてもよい回[白色粉末](2012/03/08 06:05)
[43] かみなりパンチ34 酔いどれ三人組と東の名酒[白色粉末](2012/03/08 06:14)
[44] かみなりパンチ35 レッドの心霊怪奇ファイル1[白色粉末](2012/05/14 09:53)
[45] かみなりパンチ36 レッドの心霊怪奇ファイル2[白色粉末](2012/05/15 13:22)
[46] かみなりパンチ37 レッドの心霊怪奇ファイル3[白色粉末](2012/06/20 11:14)
[47] かみなりパンチ38 レッドの心霊怪奇ファイル4[白色粉末](2012/06/28 23:27)
[48] かみなりパンチ39 レッドの心霊怪奇ファイル5[白色粉末](2012/07/10 14:09)
[49] かみなりパンチ40 レッドの心霊怪奇ファイルラスト[白色粉末](2012/08/03 08:27)
[50] かみなりパンチ41 「強ぇんだぜ」1[白色粉末](2013/02/20 01:17)
[51] かみなりパンチ42 「強ぇんだぜ」2[白色粉末](2013/03/06 05:10)
[52] かみなりパンチ43 「強ぇんだぜ」3[白色粉末](2013/03/31 06:00)
[53] かみなりパンチ44 「強ぇんだぜ」4[白色粉末](2013/08/15 14:23)
[54] かみなりパンチ45 「強ぇんだぜ」5[白色粉末](2013/10/14 13:28)
[55] かみなりパンチ46 「強ぇんだぜ」6[白色粉末](2014/03/23 18:55)
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[3174] かみなりパンチ23 炎の子3 +ゴッチのクラスチェンジ
Name: 白色粉末◆f2c1f8ca ID:67fcfa04 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/26 17:28
 「嫌な予感がする」
 「そりゃ、この状況で何とも思わなきゃ、ソイツは大間抜けだ」

 激しい戦闘の痕跡があった。数え切れない程の死体が折り重なり、血河を生んでいる
 死体は、皆アナリア国軍の兵士達だった。視界に入るだけでもざっと五十以上は死んでいるのに、それと戦ったであろう者達の屍は無い。アナリア国軍兵士の死体しか無いのだ

 異様ですらあった。何と戦ったのか? 軍隊が戦う相手とは、軍隊ではないのか? この屍達は、何と戦って死んだのか

 「凄い切り口。…………おぶぇー」
 「うわ、ティト、待つだぜ、待つだぜ、そこで吐いちゃダメー!」
 「レッド様……、大丈夫です……。はぁー……、やだなぁ、すごい沢山居る……」

 ギャアギャア騒ぐレッドとティトとは対照的に、ゼドガンは馬車の御者台の上から、興味深そうに死体の一つ一つを眺めている

 「荒々しいな。……傷痕はどれも違う。相手側の死体が無いのが不自然だが、軍と軍の戦いだろう。だが、何だこの荒々しさは。彼らを殺した兵士達の全てが、激しい怒りを抱きながら武器を振るったかのように感じられる」
 「…………違いが解らん。が、まぁ、ゼドガンが言うなら、きっと只事じゃねぇんだろう。……オイ、ラーラ、死体だらけだぜ! 何か感じたりしねぇのか、命の火って奴をよぉ?!」

 ラーラは呆然と、遠くを見つめている

 「感じています。激しく燃える炎の塊。それぞれは一個の獣であるのに、寄り集まり、まるで一匹の巨獣のようにすら感じられる」
 「……死体は無いが、折れた旗があるぞ。俺は余り詳しく無いのだが、この旗は見た事がある」

 ゼドガンは荷馬車を止めて、下に降りる。右腕の無い死体の脇腹を足で持ち上げ、そのまま蹴り転がすと、その下にあった半ばから折れた旗を手にとった

 盾のような形をした枠内に、風に髪を靡かせる女が描かれている。続いたゼドガンの言葉に、ゴッチは顔を歪めた

 「カロンハザン将旗。成程、カロンハザン、彼の怒りが、彼の麾下の将兵達を呑んでいるんだな。信じがたい統率振りだ」

 奴か

 ぐは、とゴッチは笑う


――


 「炎の巨獣から別れた、小さな火が」


 接触は直ぐだった。当然、ペデンスに近づく以上、戦闘に巻き込まれる覚悟はしていた。何時、どこで、どれほど戦場が拡大しようとも、驚きはしないつもりであった
 ゴッチは、そういう物なんだろうと納得していた。だから、目の前に騎馬のみの一団が現れた時も、大きな欠伸をしただけだった

 「何者か! 戦場に、そのような荷馬車で、何者か、何者か?!」

 誰何の声が掛かる。こういう時はティトの出番である

 「ロベリンド護国衆が長、ティト・ロイド・ロベリンドと申します! 急ぎの要事に、我らが根拠を目指しております! 怪しい者ではございませぬ!」
 「身の証となる物は?!」

 大声で言い合う間に、騎馬隊は荷馬車をぐるりと取り囲んだ。フードをしっかりと被ったレッドが、肩を竦めている

 ゼドガンが威勢良く立ち上がり、威圧的に周囲を睥睨した。気が立っている兵士と言うのは、思った以上に抑えの効かない物だ。抑止力となる物が無ければいけない

 「お疑いなさりまするな」

 ティトが槍に巻いた青い布を取り払い、次いで懐から何かの紋章が描かれた銀の円盤を取り出した
 騎馬隊の中から一騎、先程誰何の声を掛けてきた物が進み出てくる。褐色の肌の女だ。指揮官のようであった

 「残念ながら、私はその槍も紋章も知らぬ! が、確かに名物ではあるようだ! ロベリンドに向かうとして、何故戦場を避けぬ!」
 「急ぎの要事と申しました! 事の重さを思えば、戦場を抜けるのも致し方なきことですゆえ!」
 「どのような事か!」
 「ロベリンドの秘奥に御座います! ご容赦願う!」
 「疑わしい!」

 警戒している。戦場であるからして、その度合はこれまでと比べようも無い

 顎に手を当てて黙考し始めた指揮官に、ティトは怒鳴りつけた

 「それを言う貴方はどのようなお方か!」
 「私は、エルンスト第一軍団、カロンハザン麾下、ニルノアである!」

 ゼドガンの目が細くなった

 「聞いた事があるな。冒険者出身の騎士だ」
 「ふん、カロンハザン麾下だってよぉ。確かに、奴みてぇな不貞不貞しい面をしていやがるぜ」

 ゴッチがフードを被ったまま、ゼドガンと肩を並べる。同じように周囲を睨みつける

 ニルノアの頑なな態度は、崩れなかった

 「その槍と紋章、供回りの持つ武器もだ。それらを我々に預け、同行されよ!」
 「そうして、何処に連れて行かれるのか! 本陣ですか?!」
 「君等が草の者の類である可能性を思えば、本陣には連れて行かぬ! 君等の事は、我らが将カロンハザン様に見極めて頂く!」

 ゴッチが後ろを振り向く。ティトと視線が合う
 ティトは、険しい表情だったが、小さく頷いた

 「穏便に事を済ますなら、従った方が良いかな。そんなに的はずれなこと言ってる訳じゃないよ、あの人」

 眉間に皺が寄る。鼻がひくひくする。ゴッチは、怒りの表情だ。何故、従わなければならない
 元より、こういう事があって、どうしようもなければ、強行突破のつもりだった。少なくともゴッチは
 しかし、ゴッチが怒るよりも先に、沈黙を守っていたラーラが撃発した。レッドが待ったを掛ける暇も無かった

 「付け上がるな!」
 「何?!」
 「お、ちょ、ら、ラーラ!」

 ラーラが立ち上がり、フードを脱ぐ。黒い布の中から現れた純白のラーラを見て、騎馬隊は何故か動揺した。ニルノアも、顔には出ないが、雰囲気が揺れた

 「その驕った物言いは何か! ニルノアが何処の何者かなど知らぬ! が、ニルノアなる蛮人が極めて歪んだ者であると言うのは解るぞ!」
 「…………君等が真にロベリンド護国衆の長とその供回りだと解ったときは、然るべき礼を払ってやろう! 今、君如きがそれを言える立場ではない!」
 「“払ってやろう”と言うそのひねくれた言葉こそ、ニルノアなる蛮人の歪んだ性根と、私達を取り囲むこの状況が重なりあった事の証だ!」

 ラーラの剣幕は、レッドやティトには止められない。そしてゴッチやゼドガンには止めるつもりがない
 ゴッチは言うまでもなく、ゼドガンも荒事を歓迎する性質だ

 「相手によって態度を異にし、相手が弱者であったり、状況が許せば、言い様も無く横暴で、ぞんざいで、好き勝手をする! ニルノアなる蛮人のような愚物がこの大陸に溢れかえったが為に、争いが起こった! 世を正すと嘯くエルンスト軍団も、ニルノアなる蛮人のような輩を使っているのでは、まるで期待出来ないな! 当然、ニルノアなる蛮人の将、カロンハザンもだ!」

 そこまでではない。皆がそう思った。こうまで言うほど、このニルノアと言う女を知っている訳ではない筈だ。誰もがだ
 ラーラが胸の内に孕む兵士への憎悪が、こうまで言わせる。清々しいほどの八つ当たりなのだとゴッチには解った

 ニルノアが声を低くした。完全に怒っている

 「我々の行いは、戦場の習いと軍法に従う物である。戦場を知らぬ、ただの小娘が、何処で習ったか知らないが、小賢しい小知恵で、数え切れぬ程の死から培われた習いと軍法を罵倒し、挙句エルンスト様と、何にも代え難い我らが将、カロンハザン様を侮辱した。許せん」
 「ニルノアなる蛮人は、蛮人であるが、一応悪口は通じるようだ! ついでに教えよう! 私は今、お前達の行いを侮辱したわけではなく、ニルノアなる蛮人の歪んだ性根を侮辱したのだが、敢えて! 敢えて言うならば! 私達に取り、お前達の習いや軍法も、ニルノアなる蛮人の性根同様、至極下らない物だ!」
 「まだ言うかッ!!」

 ニルノアが、槍を手にとる。それに従って、周囲の騎兵達も槍を持った。怒り心頭の様子なのは、言うまでもない

 「口で敗れたならば、口でやり返そうとは思わないのか?」

 ラーラは微塵も怯えず、顎を突き出し、見下しながら言った
 凄まじい形相で、ニルノアは言い返す

 「悪口で勝ったつもりになれるさもしい心が哀れだな! 口だけが威勢良く動き回るのでは、戦士ではない。言うだけならば、誰にでも出来るからだ。それこそ、小賢しい小娘でも」
 「ニルノアなる蛮人の軍法には、『気に入らない奴は殺しても良い』とあるようだ! 恐れ入る!」
 「そうである! こうまで侮辱されて黙って居れば、寧ろ私が軍法により刃を呑まねばならない!」

 ニルノアは槍を掲げる。ティトは蒼褪め、今にも悲鳴を上げて倒れそうだった

 ここでもし荒事になれば、ロベリンド御国衆とエルンスト軍団の関係は激しく悪化する。というか、もう既に悪化している。ロベリンド護国衆は、中立であらねばならない。それが、何という様か
 仮にも長たる者が、ロベリンドの英霊達、戦士達の、魂と誇り全てを預かる者が
 私のせいで、私が、私としたことが、ぶつぶつ呟きながら、ティトの顔色はどんどん悪くなっていく

 遠くから大声が掛かった。なだらかな丘の上から、騎馬が一騎駆けてくる

 「何をしているのか!」

 薄い胸板を逸らしながら堂々と駆け下ってくるのは、ベルカであった。鋼鉄の胸板は健在だ

 ゴッチはベルカの名前を覚えていなかったが、顔は何となく覚えていた。ベルカが現れて、嬉しいような、悲しいような、複雑な気分である

 何故か。ベルカが来たならば、面倒事は減るだろう。だが同時に、ニルノアとか言う奴をボコボコにする機会も減るだろう。悩ましかった

 ゴッチは、フードを脱いだ。レッドも安堵の息を漏らしながら、ゴッチに習った

 「な、な、何ぃ?! 貴方はーッ!」
 「ベルカか! 今回ばかりは、邪魔してくれるなよ!」
 「止めろォォー! ニルノア、命を捨てるなぁぁぁーッ!」
 「腰抜け騎士め! 口ばかり回ると言うのは、自分の事か?! 殺すと決めたら何故直ぐ殺さない!」
 「ぬおー?! ラーラったらもうお茶目な言動はそれくらいにしといて欲しいんだぜぇぇぇー?!」

 ティトが発狂して、神槍ロベリンドでラーラを殴り倒す

 「あああああ、貴様ら、やっかましいってのォォーーッッ!!!」


――


 「ふん、あの蛮人が、もっと殊勝な態度で同行を願えばよかったのだ。まるで己こそが地上の正義とでも言うような態度に、何故私が従わねばならない。きっとボスも同じことを言う」
 「ううぅ、何とか言ってくれだぜ、兄弟」
 「あぁ? ……良いじゃねぇか、別に、やっちまっても」
 「ボス、矢張り、ボス。そうでなくては」

 ゴッチ一行の前を進む二ルノアが、ベルカに羽交い絞めにされながらもがいていた。ベルカが手を離せば、一直線にラーラに襲いかかるだろう

 ティトは、我を忘れて怪我のことも気にせず槍を振り回したため、激しい痛みに呻きながら寝転がっている。レッドのお手軽便利魔術で回復力を増進しているらしいが、あれやこれやでまだ収まっていない

 胸元がチクリとした。テツコにどう説明しようかと考えながら、ゴッチは荷台の縁に両脇を掛ける

 「(テツコか、どうした?)」
 『ゴッチ』
 「(ファルコン? 丁度声が聞きたいと思ってたぜ!)」
 『ゴッチ、リラックスできん。解るな?』
 「(……OK。ボス、何のようだ?)」

 急に塞ぎこむように身を伏せたゴッチに、ラーラが声を掛けたが、ゴッチは掌を突き出してそれを拒絶した

 「……ボス?」
 「邪魔すんな。大人しくしてろ」

 ファルコンの低い声が響き始める

 『状況は?』
 「(エルンスト軍団ってのに絡まれちまった。今交番にしょっ引かれてる途中だ)」
 『……穏便に行けそうか?』
 「(……恐らくは。カザンとか言う奴と少し話をすりゃ、直ぐにラグランへ向けて再出発できると思うが。……何、ボス、心配は要らねぇ。ゴネるようなら、纏めてひねり潰す。これ以上仕事を遅らせたりはしねぇさ)」
 『……なんだって?』

 ファルコンの雰囲気が変わった。オイ、と威圧的な声が掛けられ、ゴッチはひゅ、と息を飲み込む
 怒りだ。ファルコンから唐突に放たれた激しい感情に、ゴッチは戦く
 ゴッチは、ファルコンから最も賞賛され、同時に最も叱咤されるソルジャーだ。ファルコンの放つ怒りの気配には敏感である

 何故怒るのか? ゴッチらしく無く、動揺してしまった。ゴッチの動揺はファルコンにも伝わっているのに、ファルコンはそんな事、意にも介さない

 『纏めて捻り潰す? ゴッチお前、調子にのるんじゃねぇぞ』
 「(ボス、待ってくれよ)」
 『お前一人が、どんだけ強いんだ? たった一人が? あぁ? 一切合切纏めて捻り潰せるくらい強いのか?』
 「(勘弁してくれ、マジの話だ。こっちの奴らじゃ、千人居たって俺を殺れやしねぇ)」
 『だったら力尽くってか? 馬鹿野郎。行き当たりばったりじゃねぇか、頭使え。自分が万能だなんて、勘違いしてんじゃねぇだろうな』
 「(……そこまで言うかよ)」

 ファルコンでなければ
 ファルコンでなければ、こうまで言わせない。絶対にだ

 しかし、ファルコンは間違わない。少なくとも、ゴッチの知る限り、重要な判断を誤ったことはない

 ファルコンなら間違えない。ファルコンが言うのであれば、間違っているのはゴッチなのだ。服従の掟以前の問題だ

 『お前、この期に及んでまだ俺が手綱取らなきゃいけねぇのか? お前は一体何なのか、言ってみろ!』
 「(……ソルジャーだ。……隼団の)」
 『死ぬまでソルジャーのつもりか? チンピラのまま死ぬなら俺だってこんな事言うか! お前は、俺の息子だろうが! 俺は教えたはずだ、どんな態度で居ようと、腹の中では油断なく身構えていろと!』
 「(あぁ、覚えてる。忘れちゃいねぇ)」
 『黙れ。俺が返事しろと言った時以外は口を閉じてろ』
 「(YES、ボス)」

 一つ、ファルコンが大きく息を吸う

 『テツコを軽んじているようだな』
 「(……)」
 『どうだ?』
 「(いや、……そんなつもりはない)」
 『会話のログは俺も把握してる。テツコを、軽んじて、いるな?』
 「(……)」
 『テツコはファミリーじゃねぇ。が、ビジネスパートナーとして敬意を払え。良いか、敬意だ。隼団に対してそれを失った馬鹿どもを、俺は何人も始末してきた。解ってるな』
 「(YES、ボス)」
 『そして、侮るな。全ての物をだ。調子付いた馬鹿に、隼団のバッジは相応しくない』
 「(YES、ボス)」
 『部下を持て。人を使うことを覚えろ。お前はお前が思う以上に何も出来ないガキだ。良いな、たった今からお前はカポだ』

 ゴッチはびくりと身を震わせた
 ソルジャーを従える、幹部職だ。思いもしない言葉である

 レッドが、探るように、しかし興味ない風を装って、ゴッチを見ている

 「(YES、ボス。だが、聞いても良いか)」
 『良いぞ』
 「(俺は今ラグランに向かっているし、ルークとやらの方もメイア3の有力な情報を掴んでるんだろう? もう、こっちでの仕事は終わり間近だ。そんな中で連れて帰れるわけでもない部下を作って、何になる?)」
 『……難しく考えるな。有能な使い走りに、ソルジャーの職を与えて、給料を出して、面倒見てやるだけだ。ただし、厳選しろ』
 「(教育ってのが行き届いてない世界だぜ。掟は別として、使い物になるのがそもそもどれぐらい居るか)」
 『オイ、ゴッチ、お前の愚痴に付き合うのは、俺の仕事か? 俺は今、機嫌がよくないんだぜ』
 「(……すまねぇ、ボス)」

 ふ、とまた、ファルコンの気配が変わる。押し潰すような威圧感が、ゆっくりと消えていった

 『ゴッチ、俺の言いたい事は、全部伝わったな? 俺はお前の能力と、俺への尊敬、隼団への忠誠を信じて良い。そうだな?』
 「(あ……あぁ、全力でやる。ボスの言ったことは心得ておく。絶対だ)」
 『……それでいい。俺も、テツコも、外せない用事でここを空ける。が、忘れるなよゴッチ、隼団のカポとして、尊敬を集める名誉ある悪党になれ。……ふ、お前は、俺の宝だ。スーツは気に入らなかったか?』

 ファルコンのその言葉を最後に、コガラシは消費低減モードへと移行する。コガラシの僅かな駆動熱すら失われ、存在感が消えていく
 通信接続が解かれても、暫くゴッチは緊張していた
 大きく息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出す。周囲が訝しげな表情をする中で、レッドが悠々問い掛けた

 「兄弟、なんだって?」
 「…………あぁ」
 「誰からだぜ? てっこちゃん?」
 「違う。……ファルコンだ」

 レッドはうへ、と嫌そうな顔になる

 「…………カポになった。俺が、カポに……」

 一拍おいて、レッドがおめでとう、と言った。他になんと言ったらいいのか解らないようであった


――


 ファルコンは、葉巻をガッチリと銜えながら言う

 「最近弛んでたからな。引き締めておかんと」



――


 「ラーラ、やっぱりスーツ着る」
 「……? 突然どうしたのですか」
 「うるせぇ、とっとと、…………いや。そのスーツは俺の養父からの贈り物だ。一流の仕立てだ。養父の面を立てるのも、俺の格ってもんだろう」

 ラーラは、眉を寄せる。不機嫌のような、ご機嫌のような、ゴッチの雰囲気は、極めて複雑だ

 だが、ゴッチの面持ちが大きく変わろうとしているのが、ラーラには解った。ゴッチとは頑固な男で、一念発起して一朝一夕に変わるような人物ではない

 その男が、ハッキリと解る変化を示そうとしている。ラーラの多くも無い筈の好奇心が、疼いた

 「……何があったのですか? 先程の沈黙の間に」
 「俺の、あー、使い魔には、一瞬にして離れた奴と連絡を取る能力がある。俺は、俺の養父と話していた。ファルコンという名だ」

 ゴッチは、ほぼ機能を停止しているコガラシをラーラに放り投げる

 ほう、これが、とつぶやきつつ、ラーラはコガラシを突っつきまわした

 ゴッチは鼻を鳴らしながら着ていたダークスーツを脱ぎ去った。シャツも、スラックスも、当然下着も、躊躇すること無く脱いで行く

 ギョッとしたのは周囲の者達だ。ティトなんかは、ぎゃあぎゃあ言いながら薄目を開けて、ゴッチの裸身を凝視している。何時も涼しい顔のゼドガンすら、苦笑していた

 平然としていたのが、ラーラだ

 「便利な能力ですな。して、それが?」
 「……それだけだ。一々話して聞かせなきゃならねぇか?」
 「いえ……」
 「兄弟は、新たな地位を与えられたのさ」
 「オイ、レッド」
 「うひょお! ……アレ、怒んないんだぜ?」

 ワインレッドのドレスシャツ、シックに決まるスラックス
 身につけて威儀を整えてゆく度、少しずつファルコンの言葉が、ゴッチの中の何かに馴染んで行く

 「チ、一々締め上げても仕方ねぇしな」
 「へぇ……ふぅん? ほぉぉー……」

 レッドが楽しげに、しきりに頷きながら、ニヤニヤ笑う

 今までならば襲いかかったであろうゴッチが、レッドのからかいを含んだ笑みを、許していた

 「新たな地位? 成程、おめでとう御座います。ですが、無礼を承知で申し上げるのであれば、ボスは突如変貌する性質の人物では無いでしょう。そう気取らずとも、良いのでは?」
 「……」

 殴り倒される事すら覚悟した上での、試すような一言だった。ゴッチに殴られたら、それだけで只事ではない。恐れ知らずのラーラである

 果たしてゴッチは、ラーラを一瞥しただけであった

 「何時までも遊んでんじゃねぇ、って、そう言われたのさ」

 黒い生地に、白糸でThunder bolt pixyの刺繍が施されたワイドタイ。首に結ぶと、まるでずっと以前からそこにあったかのように自然に調和する

 「兄弟、ベストもあるだぜ」
 「マジかよ」

 最初、箱を開けたときには気付かなかった。木箱の底に張り付くように、ブラックベストが畳まれて入っていた

 「良い趣味してるぜ」

 黒いボタンが、艶やかに輝いている。袖を通してみれば、ドレスシャツぺたりと張り付くようで、しかも妙に温かい。ゴッチの電気を生み出す細胞に何らかの作用があるようだった
 ピクシーアメーバだ。肉体の事は大体把握出来る

 残るは、隼の刺繍が施されたスーツだけであった。両手で持って、視線を落とす

 人を使うには、人を見ろと、昔、ファルコンは言っていた。だが、あの良い様は、人だけを見ろと言うのではあるまい

 数多を見なければならない。今までの、己に頼んだ解釈の仕方、答えの出し方、それらから脱却して、ゴッチの持っていない何かを手に入れなければならないのだ

 「(だがなぁ……ラーラの言う通りだぜ。やれと言われりゃやるさ。だが、出来るかどうかはまた別だ)」

 じっと、黄金に煌めく隼を見つめる

 「なぁ、レッド。カザンの野郎はよ、こいつらに囲まれて、こいつらを引っ張ってよ、どんな面してんだろうな」

 レッドが、周囲の騎兵達を見回して、首をかしげた

 「顔色見たって仕方ねぇだぜ。でも、カザンは、凄い奴なんだぜ。……最近は、めっきり変わっちまったって話だけどさぁ。やっぱり、きついんだぜ、ファティメアの事が」
 「……あぁ、あぁ~、よう、奴が、こいつらに囲まれて、お山の大将気取りで居るのによう、俺だけ餓鬼丸出しだと、やっぱり恥ずかしいわな」

 ゴッチは、全て知っているとでも言いたげな、カザンの涼しい顔を思い出した
 少し前、酒場で激しく、みっともなく殴り合いした相手が、ベルカとやらと、ニルノアとやらに連れて行かれる先に、将軍様としてふんぞり返っている

 ゴッチは大きく息を吸い込んだ

 「ケ、丸ごと従ってやろうじゃねぇか、ファルコン。そうすりゃ見えてくんだろう」

 バサ、と大きく風に翻らせながら、ゴッチはスーツを羽織った。黄金の隼がゴッチの背で輝く
 スーツ一式、総重量はかなりの物だ。一体どんな仕掛けがあるのやら、今からテツコの説明を受けるのが楽しみであった

 「…………え、え? 結局何なの」

 まるっと置き去りにされたティトとゼドガンが、顔を見合わせる


――

 後書

 書かなければ話は完成しないと言う事実に気づいてしまった。

 素敵な妖精さんが現れて、俺が寝てる間に俺の脳味噌の中を文章に起してくれれば良いのに……。


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