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No.27922の一覧
[0] フェリアの大冒険(現実→異世界TS物)[貧乏狸](2012/01/12 01:21)
[1] 1話 幼女は迷子[貧乏狸](2011/05/22 04:49)
[2] 2話 幼女の旅立ち[貧乏狸](2011/05/24 05:38)
[3] 2.5話 モガ君の独白[貧乏狸](2011/05/24 05:30)
[4] 3話 幼女と神話[貧乏狸](2011/06/04 11:03)
[5] 4話 幼女とトリップ[貧乏狸](2011/06/21 20:53)
[6] 5話 幼女と平行世界[貧乏狸](2011/07/21 21:51)
[7] 6話 幼女とDQNトラック[貧乏狸](2011/08/18 21:42)
[8] 7話 幼女とサファリパーク[貧乏狸](2012/01/12 01:24)
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[27922] 3話 幼女と神話
Name: 貧乏狸◆b6468db1 ID:b558551f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/04 11:03

[戦乙女怒りしとき、悪しきものは朽ち果て母なる大地に屍を晒す。また、行い正しきものには永劫の安寧をもたらすだろう。(童話 戦乙女ロリフェリア)]

エタロリ大陸において数多くの宗教が存在するが、その中でも信者の数がもっとも多いと云われているペドゥ教。
神より遣わされたとされる小さな小さな女の子が信仰の対象となっており、大陸に住まうものならばその名を知らぬ者はいない。

神話や童話、各国の宝物庫から発見された古文書などにも登場する戦乙女ロリフェリア。
彼女の登場する物語全てに共通するものは、人類が誕生したばかりの創世の時代。

生命の母、``世界樹``が多種多様な生命体を次々と生み出し、草木が一本も生えていなかった大陸を命で満たしていった。
大陸には生命が溢れ、手狭になった大地を離れて海や川や空といった新天地を求めて進化する生物も出始めた頃にある生物が誕生する。

地上のパワーバランスを完全に崩してしまう生物。
魔物である。
圧倒的な繁殖力と食欲により、爆発的に増えた魔物は他の生物を捕らえては食し、また犯していった。
それによって生まれた人間と魔物のハーフ、亜人と呼ばれる獣人やエルフといった生命体もいるが今は置いておこう。

増え続ける魔物に減り続ける他の生物。
大陸中を魔物が闊歩しており、他の生命体が次々と絶滅していく中で人類もまた絶滅の危機に瀕していた。

そんな折にどこからともなくフラリと現れた一人の幼女。
単身で万を越える魔物を屠り、種付け製造機として捕まっていた人間や獣を次々と解放していき、味方を増やしていった。

そして10年の激戦の末、ついに魔物VSその他の戦いは終焉を迎えることになる。
魔物の総大将にして魔物の王のそのまた王、大魔王を幼女が打ち滅ぼしたのだ。

大魔王を倒した幼女が反魔物連合に帰ると、彼女を待っていたのは歓喜の声を上げる人間や獣たち。
戦いの最中にいつの間にかできていた「国家」に迎えられ、幼女は初代王として君臨し、姿を消すまで老いることはなく執政をとり続けた。

国家が誕生して200年、彼女は王の座を優秀な者に託し、親しき者たちに己の出生を明かしその姿を消した。
彼女が姿を消してから3000年。
彼女が何を語ったのか、古文書を解読している御用学者たちの間では興味の尽きないものではあるが、ペドゥ教誕生のきっかけになったのは間違いないと見ている。

[これってエロゲの中だし] [気がついたらでっかい木の下にいた] [俺元男なんだけど・・・] [原作のかなり前とか無いわ]

解読された一部の文章の中には、まったく意味不明な彼女の「言葉」が残されているものの、彼女は神(世界樹)がこの世に送り出した使いであるということは間違いないというのが学者たち共通の見解である。
なぜなら、見つかった他の古文書からは「我々は世界樹から生み出されたということはわかっているが、それは感覚的なもので、この目で世界樹を見たと言うものはロリフェリア様を除いてただの一人もいない」と記されていたからである。

学者たちは今日も彼女の残した``エロゲ``、``原作``という言葉に重点を置いて研究を続けるのであった。



- - - -



上級の魔物、白黒の悪魔グリズベアの襲撃にあったニコテ村。
本来ならば人口200人にも満たない辺鄙な村に、上級の魔物が襲い掛かったとなれば全滅は必至。

なんたって木でできた鍬や混ざり物の多い金属のフォークを装備した農民が、王都に住んでいる騎士や魔法使いでさえ倒せない上級の魔物に歯が立つ訳がないのだから。
しかし村は今も尚、滅びることなく健在している。

一体どんな奇跡が降って湧いたのか・・・。
その奇跡を運んできたのは、三ヶ月前に川から流れてきた黒目黒髪の小さな女の子。

戦乙女ロリフェリアと同じものを持つ不思議な少女。
それゆえに村長が村で保護をすることを決め、少女の面倒を比較的裕福なロボスに預け育てるつもりだった。

田舎町で人一人養っていくのは並大抵のことではない。
皆が皆、日々の暮らしで精一杯なのだ。

「育ち盛りの子供など・・・」と始めは預かるのを渋っていたロボスだったが、傭兵業という堅気とは程遠い職業についている自分に、花が咲いたような笑顔で外のことを聞かせてとせがむ少女に絆され、いつの間にかこんな生活も悪くないと思うようになっていた。
特に国や魔物といった常識的なこともわからずに、かわいい眉をへの字に曲げてウンウン唸っている姿は、ロボスの琴線に触れるものがあったとかなかったとか。

髪の色と瞳の色以外、どこにでも居そうな平凡な少女。
そんな少女がグリズベアを倒したと誰が信じようか。

それをグリズベアの足止めをしていた青年たちから聞いた村長が、後ろの穴が緩んで少し漏らしてしまったのは仕方がない事といえよう。
青年たち曰く、「彼女はグリズベアが少女の肉を好むことを知っていて、グリズベアの注意を俺たちから逸らすために大声を張り上げて広場に出てきた」や「彼女がグリズベアを屠った後、相手が魔物であるにも関わらず慈愛の涙を流していた」との事。

誠に信じがたい事ではあるが、真剣に語る青年たちが嘘を言っているとは思えなかった。

・・・

・・・・・

・・・・・・・

魔物の毛皮。

槍や剣を通さず、火や水を弾くその毛皮は魔物を倒さなければ手に入らない高級品。
希少価値が高く、王都の大富豪や貴族、王族などといった特権階級が己の力を誇示するために買いあさるので、商人からすれば喉から手が出るほど欲しい一品である。

それもグリズベアという上級の魔物の物であれば尚のこと。
グリズベアが幼女に倒されてから三日がたち、上級の魔物が倒されたという噂は、日用品の買出しに出かけた村人からアッという間に広がり今では王都に届くほど。

それを聞いた商人が黄金の匂いを嗅ぎつけ、ニコテ村に蜜に吸い寄せられる蟻の如く群がってくるのも当然といえる。
そんなこんなでテキパキと解体されていくグリズベア、南無である。




- - -



部屋に引きこもって三日がたった。
相棒で親友のモガ君を殺してしまった俺は、食事もロクに取らずにベットに突っ伏して延々と懺悔と自責の涙を流す他なかった。

ロボスのおっさんが、モガ君に村人が殺されたと聞いたときは耳を疑った。
あんなに優しいモガ君が人を殺すはずが無いと。
寂しがりやで甘えん坊なモガ君、夜に眠れなかったのか俺に抱きついてきたモガ君。
そんなモガ君がまさか・・・。

しかし、そんな彼も武器を向けられたらと思いなおす。
自分を守るために抵抗した結果、人を殺めてしまったのではないか・・・。

それもこれも全部が全部俺のせい。

俺を探しにモガ君がニコテ村に入り込んだせいで、村人が30人も死ぬという二次被害も生み出して・・・。
モガ君、名も知らない村人の皆・・・本当にごめんなさい。
こんな俺が生きててごめんなさい・・・。

昨日の昼辺りからだろうか。
なぜか村人たちが俺の部屋の前に来て、感謝の言葉を俺に述べて去っていくの繰り返し。
いつの間にか俺は``フェリア様``と呼ばれるようになっていて、村人たちから畏怖と敬意の篭った感謝の言葉を耳にするようになっていた。
ますます広がる罪悪感。

村人とモガ君、双方の行き違い。
モガ君は俺を探しに、村人は突然現れた大きなパンダを警戒して。

もっと早くに俺が出て行って仲裁していれば・・・。
また一人、俺の下に村人が来て感謝の言葉を告げてくる。

もうよしてくれ・・・。

ロボスのおっさんも部屋に篭る俺を心配してか、柄にもなく花を摘んできて部屋に飾り俺のことを気遣ってくれている。
ただでさえ村人たちに迷惑をかけ、憎まれても仕方がない俺にここまで優しくしてくれるのだ。

いい加減立ち直らなければ。
そう、思い立ったが吉日。

早速俺は村人やロボスのおっさんに「ありがとう」と「ごめんなさい」を伝えるために俺は部屋から飛び出し、広場へと急ぐのだった。




- - -



「では最後に、ここにサインをしていただければ200ルドをきっかりお支払いします」


にこやかな笑みを浮かべて村長と談笑する商人たち。
田舎者の村長はグリズベアの毛皮の価値がまったくわかっておらず、相場なら5000ルド(小さいお城が建てられる)はするものなのだが200ルドで売り払ってしまったのだ。
平民の平均年収が10ルド700シータということを鑑みれば、200ルドは確かに大金だろう。

しかし、それは相場からかけ離れたふざけた金額でしかない。
現代日本で例えるなら、相場が3000万の新築の家を10万円で買い叩かれるのと同じくらいといえばわかりやすいだろうか。
もちろんそれを買った者は、転売するだけでウマウマ。
残念なことに村長はそんなことをこれっぽっちもわかってないのだけれど。
商人がニヤけてしまうのも仕方が無い。

村長はその大金に小躍りしながら商人に売り渡すのを承諾し、これで村の復興とグリズベアとの戦いで散っていった若者たちの遺族に見舞金が出せると鼻息を荒くしており、ついに金の受け渡しというときにそれは起きた。
ドンという爆音の後に遅れてやってくる大きな震動。

グラグラと揺れて傾く家財に、商人たちの甲高い悲鳴。
揺れはすぐに収まったものの、その後に大気を揺るがす咆哮が村中を貫いた。

「誰だあぁぁぁぁぁぁぁ、モガ君を辱めた者は!!!」

慌てて外に飛び出す村長と商人たち。
先ほどの揺れと大音量の咆哮に家から外に出てきた村人たちもチラホラと。

音の発生源と思わしき村の広場には大きな穴が開いており、そこには黒目黒髪の少女が髪を逆立たせて幽鬼のように立っていた。
胸には解体されたグリズベアのものと思われる丸い尻尾を抱きながら。

そのフルフルと震える体は、「私怒っています!!!」とアピールしており今にも爆発寸前なのが見て取れる。

「誰だ・・・誰だと聞いているんだ。これを行った者は・・・」

胸に抱いていたグリズベアの尻尾を高々と掲げ、周囲の者たちに視線を飛ばす。
立ち上る怒気と明確な殺意。

恐怖のあまり漏らしてしまった者がいるのだろうか。
辺りにきついアンモニアの匂いが漂い始める。

「もう一度聞く、これを行った者は誰だ?」

静まりかえった広場に響く凛とした声。
恐怖に駆られた村人が先ほどから商人に視線をやっているのに幼女は気がついた。

「そうか・・・お前らか」

「------ッ!」

ユラリユラリと一歩、また一歩と商人たち歩み寄っていく幼女の姿は商人たちにどのように移ったのだろうか。
腰が抜けて動けなくなってしまった者や、目を瞑り神に祈りを捧げる者。

逃げること適わず。

幼女は腰が抜けてへたり込んでいる商人たちの前で立ち止まり、それぞれの肥え太った丸い顔を一瞥し「何故このようなことを行った?」と静かに問いかけた。

「そ、それは我々が買い上げたからだ!その魔物を」

パンッ!
勇気ある一人の商人が幼女に申し開きをしている時に、乾いた音と共に彼の体が真っ赤な血と肉を撒き散らし弾け飛んだ。

『ひ、ひぃぃぃぃぃ』

咲いた咲いた曼珠沙華。
辺鄙な村のニコテ村。

毛皮求めてやってきた、商人が咲かせた一輪の花。







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