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No.26132の一覧
[0] ナナシの話(仮)[てんむす](2011/03/06 00:14)
[1] その1プロローグ[てんむす](2011/03/06 00:13)
[2] その2[てんむす](2011/02/23 15:23)
[3] その3[てんむす](2011/03/06 00:07)
[4] その4[てんむす](2011/03/18 13:45)
[5] その5[てんむす](2011/04/01 21:00)
[6] その6[てんむす](2011/04/16 01:46)
[7] その7[てんむす](2011/06/01 20:38)
[8] その8[てんむす](2011/06/06 21:27)
[9] 雑記[てんむす](2011/06/27 23:31)
[10] その9[てんむす](2011/06/27 23:32)
[11] その10[てんむす](2011/07/11 22:06)
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[26132] その4
Name: てんむす◆74b7f784 ID:ed33d90d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/18 13:45


 それはある朝の話でした。

「ねぇ閂、これは何?」

 HR前の程よい喧騒の中、ボクは目の前に堂々と広げられたモノについて目の前のでニヤニヤと笑うセーラー服を着た小柄な女生徒、閂一にそうたずねました。

「いやぁ、通学途中、朝からそんなお宝見つけちゃってさ、そのままにしとくのもなんだから、アンタのために拾ってきてあげたのよ」

 それは、一冊の雑誌、付け加えるのなら、やたらと肌色の多い扇情的なお姉さんが、あられもないポーズで表紙を飾っている雑誌、そんな男性向けの大人の本でした。

「アンタってそんな格好じゃエロ本ひとつ買うのも苦労するでしょ、閂さんの気遣いに感謝しなさい」

 たしかに……言われてみて想像してみると、女学生の羞恥プレイにつき合わされている様な店員さんとの気まずさと、周りから微妙な目で見られる自分の姿が目に浮かびました、どうしてもと言うのなら男物の服をその為に購入するという手もあるのでしょうが、それはそれで億劫な話です。
 ……しかし。

「だからって、朝っぱらからボクの机にこんな雑誌を堂々と広げるのはやめてくんないかな」

 ぶっちゃけセクハラである。
 なにせ、(へぇ、アイツでもああいうもの読むのか)とか、(見た目はあんな風なのにやっぱり男の子なんだ)とか、(何、あの娘そんな趣味があるの)とか、周りの好奇の視線と好き勝手な囁きがハンパじゃないのです。

「はぁ?何遠慮してんのよ、折角近所のゴミ捨て場から厳選して持ってきたんだからちゃんと読みなさいよね、ほらほら」
「いやいやいや、ちょっと待って落ち着いて、そんなこと言われても困るってば」
 
 そういってボクの頭を掴み、広げた雑誌を無理やり見せつける閂、冷静に考えるとこれは虐めではないのでしょうか。
 ちなみに、そんな光景にクラスメイトたちは見て見ぬ振りをしていました。

「ふむ……君の言いたいことは分かるよ、私も聞いたことがある、エロ本は使うものだと、なるほど、それならば読めと言われても困るだろうね」

 そんな、誰もが係わり合いになりたくないと思えるような状況、何の抵抗もなくボク等に向かって声をかける人物がいました。
 相変わらずのジャージ姿、適当に編んだ三つ編みがトレードマークのクラスメイト、仄村灯その人です。

「おはよう仄村、相変わらず全然分かってないね、というか、何時の間にそこにいたのさ」
「無論最初からさ、もっと早く声をかけようと思ってたんだけどね、朝からエロ本を突きつけられて、気まずそうにしている君を眺めてムラムラしていたらタイミングを逃してしまったんだよ」

 朝からなにをしているんでしょうね、この人……

「まぁ、読むとか使うとかよく解んないけどさ、興味ない訳じゃないんでしょ、ほら、コレとかおっぱいおっきいわよ」
「ちょ、やめ、やめて、やめてってば」

 本が傷むのも気にせずに、本のページを豪快に左右に開いてかざしてくる閂、……いや、興味がないわけではないのですよ。

「むー、何でそんなに嫌がるのよ……っは、まさかアンタ」
「ふむ、イヤよイヤよも好きのうち、と言うわけでもなさそうだし、ひょっとして女体に興味がない、とか?」
「そして、実は男体に興味があるっていうの……?」
「ねーよっ!」

 と、思わず言葉が荒くなってしまいました。
 えぇ、こんなナリですがもちろんそっちの趣味はありませんとも。

「いやさ……単純にクラスメイトの女子に無理やり見せられる物じゃないでしょ……」

 なんというか、こうやって説明するのもなんだか嫌なのですけど。

「ふぅん、そういうものなのかい?」
「そういうものなの!」

 そう言うと、首をかしげながらも、どうやら納得してくれた仄村。
 変わってはいますが話せば分かる、根は意外と素直なようです。 

「もう!じゃあ、この私の善意はどうなるのよ」

 そしてこっちは話しても分からない人、閂一さんでした。

「アンタが喜ぶと思って拾ってきてあげたのに、このやりきれない感じ、いったいどうしてくれるわけ?」

 苛立った様子で本を置き、両手でギリギリと締め上げるようにボクの胸倉を掴みながら凄む閂、言いたいことは分からないでもないですが、この行動は理不尽かと思います。

「ぐぇ、そ、そんなこといわれても」
「良い!?アンタには閂さんの労力の分だけ喜んで、感謝して、閂さんと仲良くなる義務があるの!!」
「それが友達ってものでしょ?」

 えぇと、何でしょうコレ、ツンデレってやつでしょうか?  
 ともあれ、閂のボルテージは最高潮、このままでは間違いなく血を見る羽目になるでしょう、ボクの。
 ……ならば。 
 
「それは違うよ、閂」
「はぁ?」

 ……うぁ、超怖いです顔。
 ではなく、ボクは気を取り直して言葉を続けます。

「ボクの一番の友達である閂からのプレゼント、それが嬉しくないわけないじゃない」
「えっ、一番の友達?」

 さっきまで、体を浮かさんばかりに込められていた両手の力が弱まったのを感じました。

「勿論、ボクはそう思ってるよ、私生活の事にまで気を使ってエロ本を拾ってきてくれた事に、あんまり嬉しすぎてさ、ちょっと照れてたんだ」
「照れて……そ、そうなんだ?」
「うん、ほら、ボクって女の子にエロ本なんか貰った事なかったからさ、どう反応していいのか分からなくて」

 まぁ、ある人のほうが少ない気もしますが。
 
「そ、そうよね、確かにちょっと珍しいかもしれない、閂さんその辺りの事を考えてなかったわ」
「いや、いいんだよ、ボクと閂の仲じゃないか、むしろ、ボクがもう少し素直になってさえいれば、閂をそんなに怒らせることもなかったのに」
「い、いや、実は閂さんそんなに怒ってないから、うん、全然怒ってない」

 この時点で、すでに両手から開放されています、生命の危機は去ったといっていいでしょう。
 ……では、もう一押し。

「そっか、良かった、ボク、閂とは喧嘩したくないから、安心し……っ痛ぁぁっ!!」

 と、そこまで口にしたところで、不意にお尻に激痛が走りました。

「えぇっ!なに、いきなりどうしたのよ」
「な、何でもない、何でもないから」

 いきなりの奇声にビックリして、心配そうにそう言う閂に返事をしながら、さりげなく後ろを確認しますと。

「……っひぁ!!」 
「………………」

 虚ろな目をした仄村が、ボクのスカートの上から、無言で力いっぱいお尻を抓っている姿が視界に写りました。
 
「ホ、ホノムラ……」

 一時限目の授業の予鈴を聞きながら、仄村を中心に空気が冷えていくのを感じ、ボクは動くこともまともに喋る事もできません。

「ふぅん、まぁアンタが喜んでるならいいわ、その本、ちゃんと読み……使いなさいよね」 

 一方、さっきのやり取りで満足し機嫌が直った閂の方は、予鈴を聞くとそんな空気に気づきもせず、ビシッと、人差し指を突きつけながらそう言って、軽やかに自分の席のほうへ立ち去っていくのでした。
 残されたのはボクと仄村、どれほどの時間そうしていたのでしょう、数分もたっていない筈なのに随分と長い時間そうしていたように感じます。
 彼女はしばらくの沈黙の後、ハッとなった顔で、少し離れた自分の席へ戻っていくのでした。

「……ッキ」

 その時の去り際に口にした言葉は小さく、ボクには聞き取れませんでした。
 ……ちなみに。
 翌日、様子が気になり、それとなく話しかけて見たボクは、昨日の事がうその様に普段通り変わらない様子の仄村に、首を傾げさせられることになります。
 そしてもうひとつ、その日以降、何故かボクの机の中には毎日一冊づつ、エロ本が投入される様になったのでした。


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