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No.26132の一覧
[0] ナナシの話(仮)[てんむす](2011/03/06 00:14)
[1] その1プロローグ[てんむす](2011/03/06 00:13)
[2] その2[てんむす](2011/02/23 15:23)
[3] その3[てんむす](2011/03/06 00:07)
[4] その4[てんむす](2011/03/18 13:45)
[5] その5[てんむす](2011/04/01 21:00)
[6] その6[てんむす](2011/04/16 01:46)
[7] その7[てんむす](2011/06/01 20:38)
[8] その8[てんむす](2011/06/06 21:27)
[9] 雑記[てんむす](2011/06/27 23:31)
[10] その9[てんむす](2011/06/27 23:32)
[11] その10[てんむす](2011/07/11 22:06)
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[26132] その2
Name: てんむす◆74b7f784 ID:f578f3a8 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/23 15:23

 ボクについて話をしましょう。
 今年で16歳になるボクは、現在とある学校の男子高校生をやっております、A県の端の方にある過疎化しかけた高等学校、おそらく後十数年もたてば、教育機関としての機能は残ってはいないんじゃないか、そう感じる事のできる程度の小さな学び舎でした。
 各学年クラスは1から2つ、人数は20に届かない程度の人数しかおらず、全校生徒合わせて100と少し、そのあり方は学園長の道楽といっても過言ではないでしょう。 
 けれど都会の喧騒から隔離された、よく言えば大らか、悪く言えば大雑把なここは、ボクのような人間にとっては大変有難い場所だといえるのです。

「いやぁ、別に変態野郎の女装趣味が容認されているわけではないと思うよ?」

 学校に到着し、所属する教室にたどり着いて数時間後、ようやく授業もひと段落し、お昼の時間、食事をしながらのんびりとそんなことを考えておりましたところ、一番の友達なはずの仄村から、きつい一言を頂きました……

「変態で女装とか、片方だけでもどうかと思うのに、組み合わせるとか世界に対して挑戦的過ぎるよね」
「そこまで言われるんだボク……てかさ、仄村、考え事にツッコミとか、超能力でもあるの君」
「いやいや、そんなわけないだろう、実は君って考えてることが顔に出るタイプなんだよ」

 それって、何の脈絡もない考え事にそんな正確なツッコミが入れれるくらい顔にでてるって事……?あり得なくない?

「それになんだ、表情一つ見て100を理解するくらいできなくてはね、何せほら、私たちは一番の真実の友達、つまり真友だしね、そのくらいの事できなければその友情は嘘というものだ」
「ごめん、心の友を超えてそうな君の自作友達ランクに、ボクを入れてくれてるのは嬉しくて涙が出そうだけど、ボクにはそこまでできないよ」

 友情が重すぎる……

「なに、自分の愚鈍さを恥じなくてもいい、君にはそんなこと気にならないくらいの長所が備わっているじゃないか」
 
 愚鈍とか……それって人に向けて使っていい言葉なのでしょうか、悪魔召還ゲームくらいでしか聞いたことないのだけど、まぁそれはとりあえず置いといて。

「ボクにそんなすべてを許せるみたいな長所が?」
「ああ、その長所があるだけで、私は君と知り合えてよかったと思ってるくらいだ」

 長所、そう言われても自分では気がつきませんが、親しい友達からそんな風はっきり言われるのは照れくさい気もするけれど純粋に嬉しく思えました。

「うーん、なんだか少し照れるなぁ、あ、ちなみにさ、ボクの長所ってどんな所なの?」
「あぁ、その愛らしい顔だ」

 無駄に誇らしげに仄村はそう言って、ヒュンと、風を切る音が出るほどにすばやく人差し指をボクのほうに指すのでした。
 んんっ?、なぜでしょう、せっかく褒められているのになんだか微妙な気分でした、会話の流れを考えると、まるでお前には中身がないと、遠まわしにそう言われているような気がしてなりません。

「そうだな、もし仮にその容姿でなければ、君のような趣味と性癖を持った矮小な人間に、私は声をかける事はなかっただろう」

 胸の前で両手を組み、しみじみとそう呟く仄村。
 ……長所の話をしていたはずなのに、気がつけば罵倒されていました、何を言っているのかわからないと思いますが、ありのまま起こった事を話すとこうなります。

「いやいやいや、ぶっちゃけてしまうとだね、誤解をしないで聞いてほしいんだが、私は今まで生きてきて君ほどそそられる娘にあった事はないぞ、人形のように愛らしい容姿といい、儚げで適度に自信がなさそうな雰囲気といい、もし友達でなく環境と機会があったのなら、攫って縛って監禁して、色々仕込んだ挙句ペットとして飼ってやりたいなと、今でも常に思っているほどだ」
「……まぁ確かに、今の話に誤解を招くところはないよね、とりあえずボクの趣味なんて可愛いもんだと思ったよ」 

 ドン引きさせられました、冷たい汗が背中を流れるほどに……使いどころがおかしい気もしますが、今、この時ほど彼女と友達で良かったと思えたことはありません、友情万歳。

「うん?いや、だから可愛いってば」
「そういう意味じゃないわっ!」
「ふふふっ、と言うのはまぁ軽い冗談さ、心配することはない、なにせ友情を深めるのに冗談というスパイスは欠かせないからね」

 今の冗談で深まる友情は御免こうむりたいものですが、その言葉を聞いてとりあえず一安心。

「考え事が顔に出るといってもね、さすがにそんなに細かいことまで分かるはずないだろう」
「えっ、そっちなの!何というかもはやそっちはどうでもいいよ、いくつ前の話だよそれ」
「実は君ってば、考え事をしてると声に出しちゃう癖があるんだよ、不気味だよね、気がついていたかな?」

 ……気がついてませんでした、昼休みに一人で自分語りをする女装した男子高校生、客観的に見れば不気味とかそういうレベルを超えてます、その様は正に完全にいっちゃってる人。

「ボクならできるだけ関わりたくないなぁ、そんな人」

 関わるも何も自分なのだけど……

「そう考えると仄村ってよくボクに話しかけてこれるよね」
「勿論、なにせ神友だからな、その程度の事くらい私は気にしないさ」

 なんだかレベルアップしてますし、神>真>心>親という感じなのでしょう。

「んっ?でもさ」

 そういえばこんな風に仄村と仲良くなったのはいつからだったろう、いまさらながらふとそんなことを疑問に思い、素直に口にしてみる事にしました。

「そういえば、ボクたちっていつの間にこんなに仲がよくなってたんだっけ?」

 何となく馬が合うし、話しやすいので何となく長い付き合いな気がしましたが、思い返してみればボクは仄村の事をあんまり知らないし、特に何かをした記憶もない事に気がつきました。
 はて……この自称神友とはいったいいつの間に友情を築いたのでしょう。

「おや、つれないな、でもまぁ仕方ないか、私のほうは少し前から君のことを知っていたので旧知だと思い込んでいたが、考えてみれば、しっかりと話すようになったのは最近の事だ」
「そうだったんだ、実はボクも仄村とはずいぶん前からの友人だと勘違いしていたんだよ」
「それはきっと、相性がいいんだろうさ嬉しいことにね、それで、なんだっけ、私と君がいつの間に仲良くなったか?と聞いたかな」
「そうそう、君には悪いんだけどちょっと思い出せなくてさ、昨日の会話くらいならなんとか思い出せるんだけれど、我ながらまだそんな歳でもないのに、ボケてきちゃったのかと不安になるよ」

 確かに普段からボーっとしているボクですが、そんな事も記憶にないなんてどうかしていると思います。

「昨日の事を覚えていてくれるなら、私としてはそれで十分、何、友達なんて気がついたらなっているものさ」
「ふぅん、そういうものなのかな」
「まぁ、なにより私達が話したのは昨日が初めてだしね、別に君が覚えてないわけでも忘れてるわけでもない」

 ……えっ、何それ?

「前々から十二分に観察して君が好む会話傾向、話題等は把握していたからね、友好度を稼ぐのは難しくないさ」

 ……えっ、何それ?怖い。
 
「いやぁ、先も行った通りほら君って可愛いじゃん、前々から気になっていてね、これ以上我慢してたら(君が)大変なことになると思って勇気を振り絞って直接声をかける事にしたのさ」

 ……そうなんダァ……それよりも大変なことってなんでしょうね。

「こうして君と友情が芽生えたからいいようなものの、まったく、もしうまくいかなかったかと思うと今考えてもゾッとする」

 ……ボクは今現在ゾッとしてますけどね。

「ふふ、今となってはどうでもいい話だが、君と友達になる前にこんな事を考えていたなんて我ながら初々しいな、少し照れてしまう」

 遠い目をし、まるでずっと昔のことを話しているかのような仄村、できれば僕としても何年も前の話であってほしいのですけれど。
 それって昨日の話じゃあ……とは当然口にできるはずもなく、ボクはその告白に引きつったように愛想笑いを浮かべることしかできませんでした。

「そう言うわけで、今後とも私と仲良くしてやってくれると嬉しい、なぁに私たちの相性は最高だ、心配なんてするまでもないと思うのだけど、形式的に改めてよろしくと言っておこうかな」

 人懐っこい笑顔でそう言って、右手を差し出してくる仄村、それに対しボクはといえば、笑う膝を押さえ、できる限り表情を殺し、乾ききった喉で声がかすれないように最大限気を使い、きわめて自然な感じを装った後。

「……こちらこそ」

 とそう口にするのが精一杯でした。
 NOと言えない典型的な日本人、それがボクという人間なのです。


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