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No.24734の一覧
[0] 【正式採用決定】(末期戦モノ)幼女戦記Tuez-les tous, Dieu reconnaitra les siens[カルロ・ゼン](2013/08/04 06:42)
[1] プロローグ・ベータ版[カルロ・ゼン](2012/03/30 23:57)
[2] 第一話 学校生活[カルロ・ゼン](2012/04/22 18:35)
[3] 第二話 良い一日。[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:29)
[4] 第三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:30)
[5] 第四話[カルロ・ゼン](2012/05/31 00:08)
[6] 第五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:33)
[7] 第六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:35)
[8] 第七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:36)
[9] 第八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:38)
[10] 第九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:40)
[11] 第十話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:42)
[12] 第十一話[カルロ・ゼン](2012/04/22 18:36)
[13] 第一二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:55)
[14] 第一三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:56)
[15] 第一四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:59)
[16] 第一五話[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:26)
[17] 第一六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:17)
[18] 第一七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:18)
[19] 第一八話[カルロ・ゼン](2012/04/22 18:37)
[20] 第一九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:21)
[21] 第二〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:23)
[22] 第二一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:24)
[23] 第二二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:27)
[24] 第二三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:30)
[25] 第二四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:33)
[26] 第二五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:48)
[27] 第二六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:50)
[28] 第二七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:52)
[29] 第二八話(外伝①)[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:54)
[30] 第二九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:56)
[31] 第三〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:58)
[32] 第三十一話(外伝②)[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:15)
[33] 第三十二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:17)
[34] 第三十三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:18)
[35] 第三十四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:20)
[36] 第三十五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:20)
[37] 第三十六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:12)
[38] 第三十七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:12)
[39] 第三十八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:11)
[40] 第三十九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:09)
[41] 第四〇話(外伝追加)[カルロ・ゼン](2011/11/13 23:03)
[42] 第四一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:07)
[43] 第四二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:06)
[44] 第四三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:06)
[45] 第四四話[カルロ・ゼン](2012/03/08 22:55)
[46] 第四五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:06)
[47] 第四六話(外伝3)[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:05)
[48] 第四七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:04)
[49] 第四八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:04)
[50] 第四九話[カルロ・ゼン](2011/11/25 02:02)
[51] 第五〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:03)
[52] 第五一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:01)
[53] 第五二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:00)
[54] 第五三話(時系列的には第五二話前の外伝)[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:46)
[55] 第五四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:44)
[56] 第五五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:43)
[57] 第五六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:42)
[58] 第五七話(外伝追加)[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:41)
[59] 第五八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:41)
[60] 第五九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:39)
[61] 第六〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:38)
[62] 第六一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:37)
[63] 第六二話[カルロ・ゼン](2012/01/15 05:00)
[64] 第六三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:35)
[65] 第六四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:34)
[66] 第六五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:13)
[67] 第六六話[カルロ・ゼン](2012/03/17 23:56)
[68] 第六七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:12)
[69] 第六八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:12)
[70] 第六九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:11)
[71] 第七〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:10)
[72] 第七一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:10)
[73] 第七二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:09)
[74] 第七三話[カルロ・ゼン](2012/03/16 22:14)
[75] 第七四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:09)
[76] 第七五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:08)
[77] 第七六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:07)
[78] 第七七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:07)
[79] 第七八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:06)
[80] 第七九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:05)
[81] 第八〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:04)
[82] 第八一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:03)
[83] 第八二話[カルロ・ゼン](2012/04/18 01:19)
[84] 第八三話[カルロ・ゼン](2012/04/18 01:20)
[85] 第八四話[カルロ・ゼン](2012/04/22 20:41)
[86] 第八五話[カルロ・ゼン](2012/05/11 02:16)
[87] 第八六話[カルロ・ゼン](2012/05/13 18:13)
[88] 第八七話[カルロ・ゼン](2012/05/18 00:55)
[89] 第八八話[カルロ・ゼン](2012/05/31 00:33)
[90] 第八九話[カルロ・ゼン](2012/05/31 00:03)
[91] 第九〇話[カルロ・ゼン](2012/07/02 04:25)
[92] 第九一話[カルロ・ゼン](2013/06/06 20:38)
[93] 第九二話[カルロ・ゼン](2013/06/06 20:32)
[94] 第九三話[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:29)
[95] 第九四話[カルロ・ゼン](2013/06/06 20:36)
[96] 第九五話[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:28)
[97] 第九六話[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:27)
[98] 第九七話[カルロ・ゼン](2012/09/02 12:59)
[99] 第九八話[カルロ・ゼン](2012/09/02 16:01)
[100] 第九九話[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:26)
[101] 第一〇〇話[カルロ・ゼン](2012/09/22 01:53)
[102] 番外編的な何か。 という名の、泣き言的な何か。[カルロ・ゼン](2012/09/23 20:17)
[103] 番外編1 『ライヒの守護者』[カルロ・ゼン](2012/09/28 05:02)
[104] 番外編2 『ラインの食卓』[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:25)
[105] 番外編3 『203は何処にありや?』[カルロ・ゼン](2012/10/25 22:20)
[106] 番外編4 『ルナティック・ルナリアン』[カルロ・ゼン](2012/11/07 09:34)
[107] 番外編5 『毒麦のたとえ』[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:24)
[108] あとがき(+ちょっとした戯言)[カルロ・ゼン](2012/12/17 01:20)
[109] The Day Before Great War 1:ノルデン北方哨戒任務[カルロ・ゼン](2012/12/24 11:11)
[110] The Day Before Great War 2:ノルデン北方哨戒任務[カルロ・ゼン](2012/12/24 11:11)
[111] The Day Before Great War 3:ノルデン北方哨戒任務[カルロ・ゼン](2013/01/29 01:14)
[112] The Day Before Great War 4:ノルデン北方哨戒任務[カルロ・ゼン](2013/01/28 22:00)
[113] The Day Before Great War 5:ノルデン北方哨戒任務[カルロ・ゼン](2013/08/04 08:53)
[114] The Day Before Great War 6: 秋津島戦役[カルロ・ゼン](2013/06/06 20:30)
[115] The Day Before Great War 7: 秋津島戦役[カルロ・ゼン](2013/06/06 21:33)
[116] The Day Before Great War 8: 秋津島戦役[カルロ・ゼン](2013/08/04 06:45)
[117] 『おしらせ』[カルロ・ゼン](2013/01/28 22:19)
[118] 番外編6 『とある戦場伝説』[カルロ・ゼン](2013/09/25 01:57)
[119] 番外編7 『ラインの…オムツ』[カルロ・ゼン](2013/09/25 02:13)
[120] 番外編8 『喰らうた肉』[カルロ・ゼン](2013/09/25 01:55)
[121] 番外編9 『総力戦問題1』:農務省、人手を求める[カルロ・ゼン](2014/03/10 21:47)
[122] The Day Before Great War 9: 秋津島戦役[カルロ・ゼン](2013/10/07 16:12)
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[24734] 第六話
Name: カルロ・ゼン◆ae1c9415 ID:ed47b356 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/12 00:35
『銀翼突撃章』

それは、数ある勲章の中でも最も価値のある勲章の一つである。
そもそも、帝国軍の勲章は実力を賞賛する類のものが多い。
(この点が質実剛健かつ実利的な帝国らしい所以とされるが、ナショナリズムの範疇かもしれない。)
昔は、各個々人が月桂樹の冠で個々人の勇気を賞賛していた。
だが、軍の近代化に合わせて、これらが現在一般に採用されている勲章に変更されたという。
その中で、敵に対して勇猛果敢に戦った兵士に対して授与されるのが突撃章である。
大抵は、大規模攻勢の先鋒を務めた部隊に一般の突撃章が授与され、その中でも確固たる功績を上げたものが柏葉付突撃章を授与される。
しかし、それらでさえ比較できない程の名誉が銀翼突撃章には込められている。

なんとなれば、それは、危機に陥った味方を救いあげた大天使のごとき救い手のみに許される名誉なのだ。
これらの推薦資格からして、通常の突撃章と異なり、この銀翼突撃章は上官の推薦によるものではない。
戦友に対する溢れんばかりの敬意をもって、救われた部隊の指揮官が一般には推薦する。
(たいていの場合は、救われた部隊の最先任が、ということになるが。)
だが、それらにもましてなによりこの銀翼突撃章の最大の特徴は受賞者の大半は故人ということにある。

危機的状況にあって、個人が部隊を救いうるものだろうか?
其の手段はいかほどもあろうか?
尋常な手段で持って、其れを為し得ようか?

答えは、語らずとも、白銀突撃章授与者の記念撮影でとられた写真を見れば一発だ。
大半は受賞者のライフルに乗せられた帽子に勲章が付けられている。
公式規定として、ライフルと帽子が代理として授与されうることが認められる。
その、規定が熾烈なまでの過酷さを物語っていると言っても過言ではない。

故に、この銀翼突撃章は受賞者の階級に関係なく、将兵らから敬意を払われるにふさわしい。
それほどまでに、誉れの高い勲章なのだ。

私が意識不明で昏倒しているにもかかわらず、叙勲があっさりと決まったことにもこの背景があるらしい。
なにしろ、生きているうちに叙勲される例は少ないのだ。
上が、容態が判明する前も勲章を放り投げるようにしてくれたのにも過去の経験があればこそである。
そして、運よく生き延びた私は、久方ぶりに生きて銀翼突撃章を授与された軍人となる。

其の御利益のほどは、確実極まりないというほかにない。
なにしろ、本来であれば、魔導士官任官後、一定期間を経なければ許されない二つ名があっさり決まったのだ。
それも、北方総監部から直々の賜り物としてだ。おかげで、拒否できなかった。
その名も“白銀”。
つまり、公式文章に魔導師としてサインする時は“白銀のターニャ”という泣きたくなる名前でサインせねばならない。
随分と、皮肉なことだが、私の外見は所謂ロシア系の美少女。
不本意極まりないが、確かに私の外見は白い。
そして、初陣で銀翼突撃章。
だから、白銀。なんと、安直極まりない帰結。

馬鹿じゃないのかと思った私は、しかし、現実はもっと馬鹿げていることを忘却していた。
随分と美しい響きであるものの、中身は自由主義経済市場で競争万歳のリバタリアン。
無論、心にもないことを言ってのける程度はやれないものではないし、仕事なら努力もする。
しかし、戦意高揚のためと、正統性のプロパガンダ用に、式典に出ろと言われるのは苦痛極まりない。
わざわざ、精鋭のエース級にしか許されていない個人記章までお上が用意してくれた式典用礼装をまとってだ。
ご丁寧に、北欧神話のヴァルキリーを白銀の刺繍であつらえた目立つことこの上ない個人記章。
わざわざ一種礼装には、白銀の参謀モールまで付いてきた。
個人に異常とも言えるほどの特権授与。
これが意味するところは元より、魔導師の重要度もさることながら、明らかに戦意高揚のプロパガンダだ。
エースが戦場に存在すれば、安心感がある。
それが、友軍を救うという実績を過去に持っていれば、ことさらだ。
少なくとも、兵士の感覚としては、友軍もろと敵と心中するよりは、自分を救ってくれる士官についていきたいだろう。

というか、私のように士官の大半も同じような見解に違いない。
ただ、ちょっとばかり、私自身が救う側におかれてしまい、これでもかと言わんばかりに目印が付けられているのだが。
これで、戦場だろうと、後方だろうと常に目立つことを避けられないというわけだ。
まあ、もとより子供は目立つということもあるが、しかし、これではっきりと個人が特定できてしまう。
つまり、今後も、そのように危機的状況にある部隊を救出することを義務付けられる死刑執行猶予書のようなものだ。
敵からすれば、怨敵。
味方からすれば、最低でも助けに来てほしい存在。
その願望をはっきりと裏切っていることがばれた時に来る反動は考えたくもない。
つまりは、以後もしっかりと敢闘精神を発露するか、後方に上手い事引っ込まなくてはますます拙いということだ。

しかも、しかも、しかもだ。
これから、国外のメディアに露出させられるのだ。
その際、口調と服装を其れ相応にせよとの厳命。
・・・さすがに、こればかりはと、泣きつき、辛うじてメディアの前ではということに落ち着いたが。
しかし、化粧までどこからともなく現れたご婦人に施される始末。
うっとうしいことこの上ない。
メディアに露出する前の研修などはっきり言って苦痛以外の何物でもなかった。

傷が治りかけであまり動くなと軍医殿からありがたくて泣きそうになる御忠告故に逃げ出すことすら叶わず。
ただ、ひたすら女言葉と、表情の作り方を叩きこまれる経験なぞ、生涯に一度すれば十分すぎる。
できれば、次の世界があるかどうかは不明だが、二度とごめんこうむる。
どうもつい先ほどから、存在Xの悪意の波動が感じられてやまないのだ。
私は第六感なるものをさほど信用しないが、こちらの困惑を見て歓喜しているまさに悪魔の意志が感じられて仕方がない。

魔法があるのだ。
いつの日か、この存在Xに人誅を降してやりたいところだ。
神殺しか、悪魔殺しかは不明だが、むしろこの方が世のため人のためである。
そう、人間は自らの運命を自らで定められるということだ。
人は、考える葦である。故に、神は不要なのだ。悪魔の誘惑にも屈しない。

・・・現実逃避はこのくらいでやめておくことにしよう。
うん、いたしかたないし、不本意極まるが、ここまでだ。
無駄な抵抗は断念し、次回の反攻に全力を温存できるようにしなくては。
恥の心があるということが、これほどまでに実存に悪影響を及ぼす。


おお、友よ。慈悲の心あらば、眼を閉じ、耳をふさぎ、口をつぐんでほしい。
また、明日会おうではないか。








































友よ。裏切ったな?
君を友と呼び、信じた我が心を裏切ったな?
もはや、Vangeanceあるのみか。
本当に、本当に残念だ。












































さようなら、良き友よ。
始めまして、我が怨敵。






「始めまして。今日はよろしくお願いします。」

相手の顔を視界にとらえたら、如何にも好意的に受け取られるように微笑む。
“お会いできてとても嬉しいと、相手にメッセージを出すのです。”
派遣されてきた指導員の言葉通りに相手がこちらの微笑みに気がついたところで、さりげなく握手。
力を込めずに、そっと、おずおずとしない程度に気品良く手を差し出す。

何度も練習させられた成果として、実に絵になるのは事実だ。
反復動作でこれを、ひたすら練習したのだ。
心の精神衛生を除けば、問題は確かに無い。
見ている側には楽しいのだろう。
正直なところ、外面だけ見れば、確かに私の行為は尤も自然だ。
しかし、私には女装癖があるわけでも、被虐趣味があるわけでもない。

です、ます、といった丁寧語で誤魔化してはいるものの、女言葉を積極的に使え?
この命令を思いついた、広報官がいるとすれば、そいつは間違いなく悪魔の手先であるか、悪魔そのものに違いない。
軍装に至っては、本来は任意選択可能なパンツが排除されて如何にも少女趣味なスカートがいつの間にか届いている始末。

そして、忌々しいことながら、実に似合っているのだ。
おかげで、自分に合わないからといって謝絶することすら叶わない。
軍人としての本分は質実剛健であり、小官の心情と合わないといっても、軍令であると押し通される始末。

今にして思うのだが。
私は、以前はアイドルや芸能人といった連中にほとんど無関心であった。
それは、正直に言って興味がなかったのだが・・・。
これほどまでに過酷な職業だと知っていれば、今少しばかり、相応の敬意を払っていた。

まあ、ジョークではあるが、『我々男性が知っている女性のもつ10の秘密』は










10

だけだというから、私以外の本物の女性群はこういった演技をなんなくできるという可能性を排除するものでは無いが。
とはいえ、さすがに、自分がやっていることの気持ち悪さ。
精神が、拒絶してやまない。全くもって忌々しい限りだ。
無遠慮にじろじろと眺められるだけでも耐えがたいというのに、それを誇って撮影され、挙句インタビュー?
それだけ、過酷な仕事なのだ。
ハリウッドや芸能界で薬物が蔓延るのももはや、構造上の欠陥ではないだろうか?

「こちらこそ、よろしくお願いします。ターニャ・デグレチャフ少尉です。ターニャと呼んでください。」

自分の名前を、相手に親しみを持って呼んでもらえるようにすること。
これで、相手の印象はこっちにかなり近づいてくる。
同時に、名前を交換する際に相手も自分の愛称を述べてくる可能性が高められるので、効果は大きい。
どこにでも、いるではないか。
誰とでもすぐ仲良くなれるタイプの人間が。
彼らは、実にフレンドリーに話しかけてくる。
それをだ。幼く、愛しげな子供がやるのだ。
子供の暗殺者までも真剣に警戒するスターリンでもない限り、誰だって心の障壁をゆるくしてしまう。

「ああ、これはどうもご丁寧に。」

「私達は、こっちが、マーロリー。私は、リリーよ。よろしくね。」

実際、男性の方は、笑顔を浮かべて自然に握手をかえしてくれている。
見た限り、明らかに仕事では有能そうなタイプだが。
案外、こういったタイプは子煩悩なのかもしれない。
子供も存分に甘えているのだろう。甘えなくてはならないこの身としては、気持ち悪いだけだが。

「ミスター・マーロリー。ミス・リリーですね。」

しっかりと、礼儀正しくも相手の眼を見て微笑むこと。
しつけのなっていない子でもないし、大人びようと努力している微笑ましさも持ち合わせられますよ?
そこまで、考えて微笑んでいるとすれば、女性とは本当に魔性の生き物だ。

「しかし、驚いた。帝国軍の方から、確かに伺ってはいましたが・・・。」

「こんなに、小さいおこちゃまだとは、思っていなかったと?」

我知らず不快の念故に少々言葉をオブラートには包んでも反論したくなる。
何故かは知らないが、この体。
微妙に成長が遅い。
本来は、女性の方が、やや男性よりも一定期間先行して成長するはずなのだが。
おかげで、見下される機会が多くて実に不愉快な思いをする。

「ああ、いや、これは失礼。」

「ごめんなさいね?マーロリーは、レディに対する礼儀を知らないの。」

しかし、先方はこちらの言葉を、別のニュアンスで受け止めている。
それは、なんかな?子供扱いされた子供が、憤っていると?

・・・今日は気分が悪いから帰っていいだろうか?
こんな気分になるのは、体調が悪く試験が終わり次第速攻でベッドに飛び込んだ時以来だ。

「大丈夫。気にしてませんよ。」

まあ、その悲痛な思いも叶うわけがなく。
私の外面は、コロコロと笑いながら、謝罪を受け入れて機嫌を直しているかに見せている。
ここまで、表情を自由に動かせるようになったことは、素直に驚いているが、嬉しくないのは何故だ?

「でも、本当に驚いたのは事実だよ?」

「まあ、そうね。」

「そうですか?」

首をかしげて、子供らしいしぐさを交えつつ、口元に指を伸ばして、考える素振り。
はきそうだ。
演算宝珠で、鎮痛術式と、安静術式を即時形成。
まさか、これほどまでに、精神に打撃を与えうるとは。

「ええ、まるでお人形さんみたいに可愛いもの。こんな可愛い子が、と言われてもちょっと想像できないのよ。」

褒められたら、素直に喜ぶ事。
素直に、喜ぶ・・・こと?
喜べと?
これも、仕事のうちか?
仕事なのか?

「本当ですかー?」「本当よ。」・・・・・・・

気がつけば、微笑みを浮かべながら、目の前の女性記者と談話している。
だが、どうにも、記憶があいまいだ。
いくつかやりとりをした、記憶はあるのだが、内容を思い出せない。
思い出したくもない。

「ええ、もちろんよ。」

「うん、それでは早速本題に入って良いかな?」

「ハイ。大丈夫です。」

気がつけば、このインタビューのために北方方面軍司令部がわざわざ用意した紅茶が届けられる。
ここら辺は、まあ理解できないものでもない。
前線において、物資が欠乏していないどころか、外国からの来客に応じて、それぞれの好むところを用意できることを示す。
まあ、一種のプロパガンダであり、見栄でもある。
とはいえ、実際のところ、これは司令官から、参謀連の私物をひっくりかえして何とか、取り揃えたらしいのだが。
なんとも、ご苦労な事だが、できれば、それほど難しいなら、無理をしないでいいのだが。

「それでは、さっそく聞かせてほしい。ああ、もちろん、しゃべれないことは、無理に話さなくても大丈夫だからね?」

「はい、わかりました。」

男性が質問役。連れの女性は、記録兼フォローといったところか。
まあ、基本的な形式ではあるものの、しかし、実にいやらしい配慮だ。
しゃべれないことを無理に話すなということは、逆に言えば軍機以外は話せということだ。
子供相手にやることではない。
うっかりと、口を滑らせることを期待しているのであれば、その手には乗らぬ。

「じゃあ、初めに。どうして、君は軍に入ったのかな?」

「ええと、軍隊に入った理由ですか?」

入りたくて、入ったとでも思われているのだろうか?
それとも、無理やり入れられたということを引きだしたくての質問だろうか?
前者の解答は、これ以上戦意旺盛であるということを物語ってはまずい。
激戦区送りの確定が決定になってしまう。
かといって、後者はもっとまずい。
軍全体を敵に回す碌でもない答えだ。
つまり、自分の意志で入隊。理由は、好戦的でないもの。

「正直に言えば、それが一番良いと思ったからです。」

「うーん、どうしてかな?」

理由?
士官学校は、軍隊のエリート?
翻って私は孤児の出身。ただし、父は軍人。
ふむ、そこからのストーリーは一応作ってはある。

「実は、私は孤児なんです。」

「それは・・・その、すまないね。」

「マーロリーったら。ごめんなさいね。本当に、気の利かない人で。」

やや、上目に相手を見やる。
うん、効果があるのは、認めよう。
だから、指導要員が嘘をついていないのは、事実だと認めるにやぶさかではない。
同情を引くことが、これほど、これほど効果的とは。
相手の精神をこちらに引け目を感じさせつつ、自分の精神をこれほど蝕めるとは!

「あ、そういう事じゃないんです。」

別段、経済的に苦しくて軍に行くしかなかったというマイナスの要素を出すわけにはいかない。
これからの出世や、保身を考えれば、美談が望ましいのだ。
なにしろ、プロパガンダである。マイナス要素を自国のプロパガンダにいれるなど、減点要素でしかない。
誉れ高き皇軍の実態が、貧しい学生の数少ない選択肢だと、認めることは旧軍ですら憚られた。

まあ、日常的に貧しい生活出身の兵卒と接している小隊長クラスの連中は、実態を知悉していたようだが。
おかげで、民衆レベルの感情と、軍組織との整合に悩んだ挙句、暴発した事例はまあ、ままある話だ。
とはいえ、それは下の常識。
上にとっては許容できない異端思想。
異端思想は、隠し持つことはまあ、見逃されうるが、公表したらただでは済まない。

「私の父は、軍人としてこの国を守っていました。」

だから、遺伝上の死人を活用しよう。
ちっとも良心は痛まない。
ついでに、世間的な評価も高まる。
普段ならば、まあそれほど悪いやり口でもないだろう。
しかし、この私自身でやっていて気持ちの悪いしゃべり方はどうにもならないのか。

思考が危険域に突入。
再度、演算宝珠の干渉で、辛うじて、精神を維持。
人間の精神は、辱めの方向次第では容易に崩れるということを実体験として今学ぶ羽目になっているとは。

「母が、病気で亡くなるまで、私がいつか字を読めるようになったら、と書き残してくれていました。」

公式には、私の母は病死した人間のそれを孤児院の先生が手配してくれている。
お優しいことだと思いたいが、まあ、これは世の中のシステムだ。
そして、公式には私は軍人の遺族年金受給資格を持つことになり、士官学校合格時に、まとめて手渡された。
そう、軍にはいらねばもらえないシステムだった。
死んでしまえと叫びたい。

「私は、この国が好きなんです。そして、父と同じように、守りたい。そう考えて、入りました。」

そこで、けなげな子供らしからぬ一面を見せつつ、あとは、誤魔化す。
取りあえず、面会前に軍から広報用に言わんとするところをまとめられた資料では以下の事を伝えよと指示された。

『平和と自由は、一度それが確保されたからといって、永遠に続くものではない。
我が国家は、何ら拡張主義的な野心を持たず、領土の征服などを夢見るものでもない。
しかし我が国は、その領土を維持し、自ら作った制度を守り続けることを望む。

そのために力を尽くすことが、我が国当局と国民自身の義務である。
軍事的防衛の準備には、絶えざる努力を要するが、精神的防衛にも、これに劣らぬ力を注ぐ必要がある。
国民各自が、戦争のショックを蒙る覚悟をしておかねばならない。
その心の用意なくして不意討ちを受けると、悲劇的な破局を迎えることになってしまう。
「我が国では決して戦争はない」
と断言するのは軽率であり、結果的には大変な災難をもたらしかねないことになってしまう。

だから、不断の覚悟で持って有事の備え、結果、このような事態にも対処できたのだ』

要するに、公式の防衛見解と同様のことを、子供らしくたどたどしく説明しろという辱めだ。

領土拡張意欲は、ロシア並みの本能があるし、新興の強国である我らが帝国はバリバリの軍国主義だ。
だけれども、世の中には、建前なるものが存在し、それに制約されている。
他国の介入を阻害したいし、おまけで自国国内の団結も望んでしまう。
だから、こうしたむちゃくちゃなプロパガンダを、外見だけとはいえ、子供にまで話させるのだ。

記者がどう思ったかは、まあ言わずもがなだろう。
子供個人に対する好意的な雰囲気とは裏腹に、こちらの説明を聞いている姿勢は、甚だアレだった。
北の某国が垂れ流す電波を耳にしている常識人のような対応だ。
こんな良い子に、こんなことを言わせるなんて。
そういう呟きすら聞こえてきそうなインタビューはまさに茶番。

そもそも、少年兵を誇らしげに広報するということに、帝国の国際政治における感覚の甘さというか素人さがみられる。

うん、もともと軍事力で統一を成し遂げた軍事国家だ。
外交なんて、不出来なのは分かっている。
だけど、その犠牲なる身としてはやはり、不条理なものを感じざるを得ない。

まるで、悪魔の意図にからめ捕られたか弱い純朴な人間の気分だ。
悪魔は狡猾であるというキリスト教の教訓はまさに読んで字のごとし。
神の存在を賛美し、悪魔を罵るという点から、ゴッドの存在を肯定し、そちら側よりの見解なのだろう。
だが、少なくとも存在Xが悪魔であることは、私の中では、自明故に、悪魔に関する資料だけ読めばいいのだ。
各宗教の伝承から、悪魔の資料を抜粋すれば、十分対策は取れるはずだ。

今日のこの屈辱。
願わくば、やつの屍で晴らしてみせん。

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急にようじょ分が不足しているとのご指摘があったので。

予定では、勲章⇒前線フラグだけでしたが、急遽追加で。


うん、要するに、ルーデルみたいな人間だと勘違いされた平和愛好家な立場を御連想ください。
生き残りたければ、難易度EXで大戦果を上げねばなりません。
で、そしたら、ルーデル率が上昇してさらに、死亡フラグが!

ちなみに、現状:これから、パリぼっこぼっこにしてやんよ!
ZAPしました。
ZAP


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