デグレチャフです。今、帝都にいるとです。デグレチャフです。今、部隊の緊急招集をしとるとです。デグレチャフです。今晩は、皆さまもご機嫌麗しく存じます。御挨拶申し上げる小官は、ターニャ・デグレチャフ帝国軍魔導少佐です。帝国軍参謀本部付きに移動となった第203航空魔導大隊にて大隊長を拝命しております。正直なところを、言葉を飾らずに率直に申しましょう。南方大陸戦線で、時代遅れの植民地軍と遊んでいたかったと思います。いうなれば、蘭領植民地防衛軍を零戦で圧倒していたかった気分です。気が付いたら、本国からきな臭くなったから帰って来いと言われる始末。ようやく、ようやく仲良くなれそうだったロメール将軍とはお別れでした。『ド・ルーゴの奴め、貴官がいなくなればきっと枕を高くして寝るだろうよ。』『ああ、では閣下が親愛なるMr.ド・ルーゴ氏の枕を蹴り飛ばす知らせを待つことにいたします。』離任の報告に行った時も、お互いの状況から軽口が叩けるほど理想的な上司を持ちえたと思うのですが。それにしても参謀本部の連中、よっぽど状況打開策探しが煮詰まっているようです。取りあえず、戦果が上がっているという理由で我々の交代に二個軍団を南方大陸に送るとか。大盤振る舞いこれいかに。だから、枕を蹴っ飛ばすことも期待できると私が比喩表現で無責任な応援もできるのですが。いや、本当に残念でした。ようやく、ようやく楽になる戦線から引き抜かれた挙句に酷使されるというのは本当に残念極まりません。難しい交渉をやってのけて、依頼通り有能な人材を獲得してきた矢先に功績をかすめ取られるようなもの。これが社会とは言え正直泣きたくもなります。少なくとも、インセンティブが低下する事は明白でしょう。まあ、だからというわけかは知りませんが上は勲章を二、三個くれました。とはいえ型落ちの演算宝珠を主力として使用している共和国軍植民地警備軍相手なので慰め程度ですが。曰く、『南方大陸での献身を賞す』とか。要するに僻地勤務で特別手当を付けられるようなものでしょう。誰だって大気汚染や渋滞や住環境が良くない都市へ赴任させられるなら相応の手当をもらいますからね。砂塵まみれになる砂漠から帰還する時にまとめて上が払う気になってくれたのでしょう。そんなこんなで、私は実に疲れ果てて本国に帰還する運びとなりました。まあ、親しい友人達がいる本国に帰るのだと思えば多少気分も良くなるいという物。当分はお互いにらみ合って動かない連合王国とのファニーウォーでもエンジョイしようかと考えていました。ええ、考えていました。軍人というのは、実に自由が乏しく義務が多いのです。ええ、労働力を自由に市場に供給できるのならばさっさと転職したいほどに。民間軍事会社とかあれば、本気で検討したいところ。いや、いっそ自分で起業するべきかも。とはいえ、今は現状の命令に対応する必要があるのです。例えば機動演習に参加しろと言われたら、唯々諾々と参謀本部の命令に従って行動しなければなりません。ついでにいえば、夜中に電話一本で叩き起こされて通達されたとしてもです。おまけで、輸送部隊が何故か夜間低空侵入用の特殊輸送機で編成されていたとしても。ええ、何も言わずに夜中に叩き起こした部下らを情け容赦なく“輸送機”とやらに詰め込みます。エアボーン用の特殊戦機体?演習は機動演習だからに違いないでしょう。上もたまには、演習内容にひねりを加えるという創造性を生み出したに違いありません。それと『参謀本部作戦局戦略偵察部』から、何故か連絡将校が来ていて出発前に“個人的な用事”で大隊の中隊指揮官らと話がしたいそうです。ええ、本当に個人的な用事なのかと叫びたかったです。おかげで、機上にて任務内容の変更を通達する羽目になりました。「御苦労、楽にしろ。良い知らせと悪い知らせがある。ヴァイス中尉。」低空侵入用の特殊機材を山ほど積みこんだ輸送機内部。軍用の輸送機だ。当然、旅客機のような快適性など微塵も考慮されていない機内には兵隊が山ほど積み込める。そして幸か不幸か、4発の輸送機内部にはぎりぎり増強大隊が積み込めてしまう。それだけに、機内で当然のように何かあるという事を察してそわそわしている連中の視線を受ける羽目になってしまう。うちの部下は、戦闘狂である。そんな連中を後方送りにして放置していたのだ。きっと、きっとうずうずしていることだろう。あまり注目を受けたくもないので、事情を知っている部下に解説を丸投げ。アウトソーシングによる効率化はグローバル化への第一歩。外注して何が悪い。効率のためならば、軍隊においてもいろいろやってみるべきだろう。さあ、ヴァイス中尉!貴官が、優秀な外注先であることは確信済みである。後はその有用性を遺憾なく発揮してくれたまえ。ターニャは期待を込めてヴァイスに視線を向けて促す。やってくれるに違いないという信頼感。彼ならば、なんら問題ないだろうという安定感を評価してのものだ。「はっ、では状況を説明させていただきます。」そして、その期待にヴァイス中尉は良く応じてくれる。狭い機内で、其れなりに体格の良い中尉は不便そうにしながらもブリーフィングを開始。「本日未明、帝国軍参謀本部は東部方面軍第437戦術特殊偵察小隊より緊急報告を受信。」状況は単純だ。東部の対連邦警戒要員からのアラート。それ以外に、戦術特殊偵察小隊(ようするに、不法越境して浸透偵察を行うイリーガルの連中。)が鳴くことはない。わざわざ、シビリアンや外交官を偽装して侵入する極めて秘匿性の高い部隊。『参謀本部作戦局戦略偵察部』が管轄しているという事以外に一切知らされていない。そんな連中がだ。寄こす緊急報告なぞ、鳴って危機の勃発を伝えるくらいしかないだろう。「対連邦第一警戒線即応待機中の同部隊は規模不明の連邦軍部隊の活性化を報告。」わざわざ、第一警戒線即応待機中ということはだ。何かあるに違いないという徴候があればこそ。・・・南方大陸から呼び戻されたのはひょっとしてこのためか?万が一の際の尖兵として投入しようとか?いや、それは出撃前に考えても仕方がないと放棄したこと。今更どうこう考えたところでどうしようもない。ならば、少しでも与えられた任務の達成ないし生還の方策を考える方が有益だ。「なお、同部隊は報告後通信途絶。」状況を整理しよう。何か連邦のアカどもに動きがあった。こちらの監視要員が鳴いて音信不通になっている。今から、確認へ赴く。一応、中立国へ領空侵犯して。・・・いろいろと覚悟するべきかもしれない。具体的には、捕まらないように全力で逃げ回るとか。これが、ステイツなみに人権とかに配慮する国家ならば投降もオプション足りえる。ところが、相手はアカ。投降したところで碌でもない未来が待っているという事は、大戦末期のドイツ軍捕虜の運命が良く証明済み。つまり、生きて帰るためにはアカと戦わなければ。「これを受け、機動演習のために集結を完了していた我が大隊に対し、参謀本部より即時偵察命令が発令されました。」上が最初から偵察を求めていたとしても、機密保持のためにここまで徹底しているとは。なんとなしに聞き流す風を装いながらも、ターニャは心底参謀本部の機密保持意識の高さに感動していた。素晴らしい情報管理体制だと言わざるを得ないだろう。相手は、何処にでもシンパを獲得してくる浸透力にかけては定評のある連中だ。よもや、よもや我が大隊にアカなどいようはずもないが。逆に言えば大隊以外は信頼できないのだ。つまり、大隊の運用スケジュールを見ることができる連中にアカがいない保証は皆無。「以上であります。」口頭で状況の説明を終えたヴァイス中尉がこちらに向かって終了報告を寄こしたのを拾って続けることにする。ターニャはゆっくりと、しかしきっぱりとした意思を込めて部下らを見渡すと口を開く。「機密保持が最優先となる。アカども相手だ。警戒しすぎてし過ぎという事はない。」そして、機長から渡された航路図を部下らに回覧させながら作戦行動の説明を開始。「さて、我が大隊が搭乗した第22輸送飛行隊は現在全力で作戦地域へ飛行中。魔導師の温存が優先される。」名目では、演習参加中の機体が航法機材のトラブルで誤って連邦領空を侵犯。演習空域と誤認して、部隊を投下してしまうということになっている。当然ながら、カバーストーリーだ。同時に、魔導師の運用を感知されないための魔導師温存でもある。「到着は、本日深夜から未明の予定となっている。」視認性を極限まで低減するための夜間迷彩仕様機。そして、低空侵入用の特殊機材を搭載した特殊作戦機の行動には夜の帳が一番。一方で降下部隊の集結には相応の練度が求められる。だが、目印一つない砂漠で推測航法を経験した我が大隊は大丈夫だろう。能力主義で選抜された部隊というものは素晴らしい。グランツ少尉らの様な補充要員の質もすでに正規要員並みに引き上げられている。大隊の戦力はほぼ完ぺきな定数を充足済み。なにより、参謀本部直轄という事で充実した予算で訓練ができたのは大きい。結局、教育というものは実践させるのが一番効率の良いものである。人的資本投資とは、ようするにそういうものだ。もちろん、大学における理論の教育も有意義ではあるが。・・・今回には関係のないことであるが、人間いつもの思考というやつが精神の安定には重要なのだろう。自由、公正、市場を信じるのだ。人間とは、本質的に政治的動物。で、あるならば。政治的に振舞い、市場において公正な競争を自由に行うべきなのだ。「なお、本作戦は連邦主権領域下での活動だ。作戦地域到着後、何かあったとしても我々の軍籍は存在しなかったこととなる。」逆に言えば、市場のない環境下においてこちらが公正である必要性は皆無。むしろ、政治的に正しい行いこそ推奨される。相手が自由を侵害するのであるならば、我々は自由の戦士、フリーダムファイターとして戦わねばなるまい。憲法の規定にもあることだ。自由とは、不断の戦いによって獲得するものだと。「毎度のことだが、任務への是非は問うな。」ターニャは重々しく部下らに告げる。なにしろ、不正規任務だ。会社のために泥をかぶれと言われて喜ぶ労働者はいないだろう。リターンが相応でなければ、誰だってインサイダー取引や厄介な献金に関わりたいとは思わない。だから、企業には法務部というコンプライアンス遵守という名目のもとで抜け穴を模索する部署があるのだ。・・・いえ、もちろん、我が社の法務部は順法精神に満ち溢れ社会的な役割を果たすことに極めて熱心でありますが。ええ、一般論として申し上げただけであり、我が社や軍は法の精神を体現していると申し上げてもよいでしょう。「もし、437が正しければ祖国は一刻を争う事態に陥る。」国家の利益は、全てに優先するという大陸的な国家理性主義。まあ、御隣に戦争狂じみた国家やアカがうようよしていればおフランスならずとも同じような発想になると思います。ついでにいえば、国家のためにといえば大抵の悪事は国家が責任を取らされるのも事実。例えば、葉巻の有名な共産主義勢力の島の件。介入が大失敗?軍産複合体の責任?そんなの、認可した大統領の責任でしょう的な。それでダラスでassassinateされた大統領がごめんちゃいさせられたような。「以上が悪い知らせだ。良い知らせは、この任務により、我々は東部軍との合同演習に参加できなくなったということだ。」その知らせを聞いた瞬間、一斉に口笛を吹いて部下らが歓迎の意図を示してくれた。誰もが、顔にやってやるぞという笑みを浮かべて陽気である。まあ出撃前の虚勢だとしても虚勢を張れるだけ余裕があるというのは喜ばしい。同時に、部下らが私の前で不平不満を漏らさない程度に信頼してくれているのもだ。部下から信頼されない上司など、マネジメント能力欠如で更迭されても不思議ではないのだからこれは大切だろう。うむ、満足である。「437担当地域は、事前情報では連邦軍集積拠点と推測されています。これまでのところ情報部では、集結を確認しておりません。」そこへ水を差さないように注意しつつヴァイス中尉がタイミングをとらえて口を開いた。盛り上がっているところに、それとなく補足する形で興奮をなだめこむのは見事な手腕だろう。戦闘意欲は保持しつつも統制を保つことができるのは、ひとえに彼らの様な有能な士官らがいればこそ。やはり、武田信玄は正しい。ヒトは石垣である。・・・ある意味で、むかつくことにスターリンも字句通りこれを実践していた。まあ、資本主義の石垣は比喩であり共産主義の石垣は文字通りという事だろう。資本主義の椅子と共産主義の椅子の違いの様なものだ。せいぜい、木製の椅子と電気椅子ぐらいの違いということになる。「ですが、437担当地域が活発化していれば、連邦軍の行動が意図するところは明らかです。」もちろん、私は座るならば普通の椅子がベストだと考える。近代以降において、自由が存在しないという事は許されざる不正だ。あっては良いことではない。「いうまでもないが。・・・コミュニスト相手だ。遠慮はいらん。」そう。民主集中制度とやらによって、人々を苦しめるコミーが相手だ。ZAPZAPZAPしてやらねばならないだろう。「機長の御好意により、第22輸送飛行隊が領空侵犯によって我々のデコイを引き受けてくださる。」まったく申し訳ないことに、この“輸送機”は領空侵犯を継続する予定だ。我々を落した後も、降下地点を悟られないように高度と針路を保ってくれるという。「仮に連邦軍の迎撃があれば、当機の安全は全く保証されていない。」戦闘機なり魔導師なり迎撃部隊に襲われればどうなることか。まあ、赤の広場を国際空港とする連中だから案外見落としてくれるかもしれないが。しかし、発見されれば民間機すら撃墜するコミーだ。民主主義と自由が頭から抜け落ちたような官僚主義的な対応になるだろう。無事を期待したいが、そもそも道理が通じるかどうか。「御好意を忘れるな。戦列に並ぶ人々に敬意を。」私は、戦争なんて大嫌いだ。人間同士の殺し合いなんて、人類史上最悪の営みだとすら思う。合理的に考えて、それは許されざる資源と人的資本の浪費に他ならない。それでも、私はこの戦いに関してならばいいたい。フリーダムファイターに栄光あれと!「いつもの如くやれ。そして、いつもの如く戦果を示せ。祖国と皇帝陛下に尽くせ。帝国に栄光を!」「帝国に栄光を!」素人目には無謀な作戦だろう。魔導師が、わざわざ歩兵の真似ごとだ。潜入は空挺降下。進軍と敵兵排除は原則非魔導依存で特定を避けろとの命令。侵入以降は、437担当地域を偵察。偵察後、事態が事実であれば手段を問わず越境帰還し、報告。誤報であれば、機密保持措置を採用せよとの命令だ。当然、無謀な任務だ。だが、相手がアカなのだ。油断していては殺されるというのであれば、先制はむしろ防衛行動に過ぎないだろう。つまり、アイアムジャスティス。「少佐殿、作戦地点です。」機長が目的地への到着を告げてくる。これから、彼らはエスコートなしで連邦空域を侵犯ということをやってくれるのだ。彼らの献身に応えなければ、フリーダムファイターとして面目ない。自由を。しからずんば、死を。自由を獲得し、自由を擁護し、自由を守るための聖戦だ。クルセイドとでも、ジハードとでも正義の戦いとでも呼んでくれて構わない。「大隊長より、大隊各位へ達する。これより作戦行動を開始する。大隊各位、行動開始。繰り返す、行動開始!」降下用の扉が解き放たれ、一気に闇夜が視界の大半を占め始める。降下作戦用のパラシュートを背負って、機外へ飛び出すことを躊躇するのは我が大隊には不在。降下中が一番危険と承知しているために、真っ先に私が保身のために先陣を切ったのはまあ役得だ。スカイダイビングならば、スポーツ感覚で楽しめるのだが。いかんせん降下任務だ。風を楽しむ暇もなく、素早く降下を完了させるとパラシュートを回収し隠蔽を手配。同時に、各自最寄りの連中と合流する。各級将校の手際がよいのだろう。手早く、夜間にもかかわらずほとんど混乱も出さずに集結に成功する。「大隊諸君、お仕事の時間だ。静かに、手際良く行うことにしよう。」即座に、斥候が進出。状況の把握に努めようとするものの、ほとんど労力を割くまでもなく事態は明らかだった。「状況伝達、437は正しかった。そして、我々はどうやら遅すぎたらしい。」集結直後に、無数の兵営が夜間にもかかわらず慌ただしく活動しているのが遠距離からでも遠望できた。本来は、条約によってこの地域に配置されていないはずの戦車師団が複数集結済み。おまけとばかりに、列車砲が前進配置されている。射程から考えるまでもなく、この地域に列車砲とはほとんど宣戦布告に等しい暴挙。いや、良く見れば夜間にもかかわらず砲口がゆっくりと調整されている。列車砲の角度調整に時間を要する事を勘案すれば、あれはもう攻勢の用意だろう。寿命が短い列車砲の砲身を、あのように酷使する理由はほとんど他に見当たらない。よしんば実弾演習だとしても、どこで演習する気かと聞きたいものだ。「少佐殿、あれを!」そして、スコープ越しに見てみれば大量の燃料と砲弾が積み上げられている。見ればバラックから出てきた歩兵らが、士官らに指示されたのか多数のトラックに搭乗し始めてもいた。これがブラフだとすれば、連邦はほとんど信じられない綱渡りをやってのけているに違いない。「・・・無線封鎖を解除。状況を即時報告せよ。」「了解いたしました。ただちに。」長距離暗号通信機を担いだ通信要員が即座に無線機へ取りつく。出すのは、一度きりの使い捨て符牒だ。傍受されても解読され得ない上に、こちらの位置露呈の可能性もやや低い。これで、わずかなりとも偵察義務は完遂できた。問題は、これからどう行動するべきかだろう。まだ、まだ開戦したとの報告は入っていない。・・・時間の問題だろうが。しかし、先に撃つわけにはいかない。自由を守るためには先制するのも権利だろうが、如何せん政治的に正しい行いが国家には求められてしまう。国家の手先である身分としては、如何せん組織に従わねばならないのだ。たとえ、山積みにされた砲弾と燃料を吹き飛ばせばコミーを大量にやっつけられるとしてもだ。ここは我慢せねばならないところだろう。「各中隊長に通達。こちらからの戦端を開くことなかれ。」断腸の思いであるが、物資集積場を吹っ飛ばすのはしばし後のお楽しみにせざるを得ない。同時に、時間を浪費すれば敵の動きに対応できなくなることも意味する。・・・どうしようか。そう考え始めた時だった。ゆっくりと微調整を繰り返していた列車砲の砲身が一斉に動きを止める。同時に、連邦の陣地が不意に静まり返った。「・・・少佐殿!宣戦布告です。たった今、帝国に対して連邦が宣戦を布告しました!!」「状況を戦時即応プランへと移行!」通信兵が、血相を変えて叫ぶような声で寄こした報告は耳から飛び込んできた。一方で、眼前では敵列車砲がゆっくりと初弾を装填し始めているのが良く見える。そして装填されたその砲弾は、轟音と同時に帝国へ向かって放たれた。アカとの戦争。アカとの戦争。アカとの戦争だ。「総員、襲撃戦用意!!」ほとんど、自然な流れで部隊を動かす。何をすべきかは、嫌というほど理解できる。「国境線では、既に東部軍が交戦中と思われる。我々は、当初計画を放棄!」帰りたいが、帰るためにはまず敵を混乱させて我々の退路を確保しなければならないだろう。なにしろ、我々は任務のために敵地に奥深く入り込んでしまっている。撤退するという事は帝国に侵攻するアカ多数と嫌でも戦わざるを得ないという事。「敵後続部隊への遊撃に入る。まずは、物資集積場を吹き飛ばすぞ。突撃隊列形成!!」其れを回避するためには、単に撤退するのではなくある程度掻き乱す必要があるのだ。まあ、コミーを吹き飛ばす機会を御預けされていたことがやや私を好戦的にしたのは否定できないが。・・・いや、もちろん私は平和主義者である。単にコミーと共に天を仰げないだけなのだ。ただ一度も工場という生産現場に入ったことがない奴があれこれと経済を論じるのには耐えがたい。ああ、陶器工場に遊んだことがあるとは聞いたことがあるが。まあ、工場視察団の報告書すら読めないコミーの理論家などそんなものだろう。そんな連中相手だ。資本主義の信徒にして、愛すべき自由を愛する健全な市民として。銃を取るのは、全米ライフル協会だけではないのだ。「「「はっ!」」」「各中隊長は、それぞれの進撃路を掌握せよ。各位、襲撃後は各中隊長指揮下での遊撃戦を展開。」さしあたり、作戦は浸透襲撃。ライン戦線で散々大隊が使い古した手段である。中隊指揮官らもこれらに熟達済み。張りぼてに決まっているれっどあーみーを粉砕してやろう。「一つ良い知らせがある。現時点で、連邦軍魔導師の反応はない。」ついでというべきだろうか。連邦軍の魔導師反応がこれほどの大規模攻勢の徴候にも関わらず感知されていない。連邦の魔導師運用ドクトリンに何か特異なことでもない限り、それは不在を意味するものと考えられるだろう。「だが、油断するな。常に敵増援の可能性へ留意せよ。」もちろん、畑で兵士が取れる国家だ。どこからわいてくるかしれたものではないのだが。まったく、自国国民をあれほど酷使するコミー共の感情が理解できない。理解したくもないが。「よろしい、大隊総員傾注!」さて、ここは誠心からアンチコミーのフリーダムファイターらに語りかける。「祖国は危機にあり!祖国は諸君の献身を欲す!」帝国は相対的には自由だ。コミーよりは。それだけで、戦うには十分すぎる理由になる。「否、我らが祖国のみならず世界の存亡がこの一戦に掛っている!」いや、コミーの跳躍跋扈を許した第二次世界大戦の結果を知っている身としては。抑制の必要性はこの世界の誰よりも知悉しているつもりである。我々がやらねば、人類は世紀の人体実験に付き合わされてしまう。「奮起せよ、総員、奮起せよ!」自由主義世界の未来がかかっているのだ。「銃を取れ!宝珠を握りしめろ!」銃は人を撃たない。人が銃を撃つ。人が、銃でコミーを撃つ。「行動開始!」自由を守るのだ!あとがきコミーはZAPZAPZAP筆者は・゚・(ノД`)虫歯の様です。歯医者曰く、金曜日にドリルとか。・・・ドリルにロマンなんてないと思いました。sas様、MoMa様、今後ご愛顧のほどをよろしくお願いします。>十里菅利様X=完璧な管理者=神です。ご安心ください。コミーへの憎悪=コンピューター様とかけあわせ。それにしても、あの幸福なゲームを御存じな方ばかりとは。いやはや。それでは、皆さんごきげんよう。追伸本作品は、フィクションです。作中にでてくるもので、なにか類似したものがあってもフィクションです。作者は、基本的に中道です。ネタですので、御海容いただければと思う次第です。※誤字修正ご指摘のあった『に遊んだ』は~に遊ぶ的なノリで書いたので特に修正しておりません。でも、誤字が別にあったので修正しました。ZAP