レオさんが僕と会話している間に、城門のほうからわらわらと集まってくる見なれた格好の近衛兵さん達。 彼らは無言で僕とこの城の兵士達の間に割り込んできて、僕らを円形に取り囲んでしまう。 その物々しさ、ぴりぴりした空気にとてもどうしたの?と軽口を叩ける雰囲気じゃない。 レオさんも柔らかい表情をしているんだけど、何かしら緊張している感じがするしどうしたもんだろう。 そんなことを考えてたら、お城のほうからフェイ兄とあのロリコン侯爵が談笑しながらこちらへ歩いてくるのが見えた。「なんかあまり良い予感がしないんですけど……」「ですね。今からでも逃げた方が良くないですか?」 そう言って身構えるべくボーマンが身体を起こそうとすると、側にいたレオさんが持っていた剣の鞘で機先を制した。 むっとした表情で睨み返すボーマンだが、レオさんは動揺することなく静かに宣言する。「申し訳ないですが、不穏な行動は慎んでもらいますよ」「レオ様! まさか姫様を侯爵に売られるつもりですか?」 さっきの僕とレオの内緒話を聞いてなかったミーシャが、色をなして抗議しようと立ち上がる。 慌ててセンドリックさんと若い近衛兵が二人がかりで、ミーシャの肩を押さえつけようとするけど、そんなの物ともせずに突っかかっていく。 僕は慌ててミーシャの腕を掴んで、これ以上の面倒ごとを避ける為に引き止めた。 「レオ、何かあったのか?」「いえ、殿下。大したことはありません」「そうか」 トスカーナ侯爵と並んで僕達の前に立つフェイ兄が、冷めた声でレオさんに向かって問いかける。 短い受け答えの間、フェイ兄は僕達三人を冷ややかな視線で見下ろしてくる。 こんな冷たい表情のフェイ兄は久しぶりだ。 出会った最初の頃、笑顔の合間に見せていたあの汚いモノを見るような顔だ。「フェイ兄様・・・あのね、これには色々事情があって――」「あぁ、勿論把握しているよ、スワジク」 貼り付けたような嘘くさい笑顔で、フェイ兄は僕に笑いかけてくる。 その笑顔が僕の事を拒絶しているんだと理解したとき、なんか体中の活力が抜けていくような気がした。「だが、それよりまず私の事はこれからは殿下と呼ぶように。君は仮の処置だか、廃姫扱いになっている。今は王族でもなければ、私の義妹でもない」「……あ、う、うん……」「この野郎っ!」 半ば想像できたフェイ兄の態度に、僕はその内容も意味も理解しないままに首肯する。 そんな僕達のやり取りを見て、ボーマンが顔を真っ赤にして飛び上がった。 突きつけられた剣を払いのけ、目の前に立つフェイ兄の胸倉に掴みかかったのだ。 ボーマンの行動にいち早く反応したのは、フェイ兄の後ろに控えていたコワルスキーさんだった。 フェイ兄の胸倉を掴んだかどうかといった瞬間には、ボーマンの腕を掴み、捻り、そして地面に叩きつける。「ぐはっ!!」「ボーマン!?」「相変わらずの単細胞だな、貴様は」「くそっ、げほっ。は、離せ、このクソオヤジ!」 僕は押し潰されているボーマンを見て慌てて駆け寄ろうとするが、後ろからミーシャに腕を捕まれて引き留められる。「ミーシャ! なんで!?」「姫様は動かないでください。何が起こるかわかりません……」 そう言って周りを警戒するミーシャ。 ちなみに未だにセンドリックさんともう一人がミーシャの肩に手をかけている状態。 あんまり抑え切れてないようで、ちょっとだけ二人に同情してしまう。 でも周りに視線を移すと、鋭い視線と共に自分達に向かって槍や剣を向けている近衛兵の姿が目に入る。 同情してる場合じゃないよね……と反省。 そこへゆっくりとフェイ兄が近づいて来て、止めの一言を僕に告げた。「スワジク。君を国家反逆罪の容疑で拘束する」 最初フェイ兄が何を言ってるのかすぐに理解出来なかった。 フェイ兄の眼を見ようと視線を上げると、まるで逃げるようにくるりと踵を返してしまう。 そんなフェイ兄の態度に切れたのか、ミーシャが僕を後ろに追いやってからフェイ兄に追いすがる。 もちろん押さえている筈の二人を引きずって。 だけど、レオさんが二人の間に入って抜き身の剣をミーシャの眼前に突きつけてきた。「迂闊な行動は慎んで下さい。我々にはあなた方を切り捨ててもよいという権限まで与えられているのですから」「反逆罪などと! 正気なのですか、殿下! 姫様は誰よりも貴方に協力的だったじゃないですか! 私達は姫様がそんな事をするはず無いことを熟知しているじゃないですかっ!!」 なおも追い縋り声を張り上げて非難するミーシャ。 レオさんが苦虫を噛み潰したような顔をしてミーシャに対し、剣を振り上げようとする。 それを見た瞬間硬直が解け、自分でも驚くくらいの身のこなしでレオとミーシャの間に割り込む。 と同時にレオさんが握った剣の柄を押さえつけ、かたやミーシャの口を手で塞いだ。「そういうのは無しにしてよ、レオさん。それからミーシャもボーマンも落ち着こうか」「姫様……」「もとより手荒な真似は好みません。コワルスキーさん、ボーマンを離してやって下さい」 レオさんの指示に無言でボーマンの拘束を解くコワルスキーさん。 それを見届けてから、僕はフェイ兄の背中に向かって叫んだ。「国家反逆罪って何さ! あとそれはボクだけにかかっている容疑で良いんだよね!?」「あぁ、君が首謀者だと我々は認識している。あと君は数日前、ラムザス出身の老夫婦の家にいたね?」 その問い掛けに思い当たるのは、侯爵に捕まったあの郊外の屋敷。 あの屋敷の住人なんて見かけなかったし、ラムザス出身かどうかなんてことも知るわけが無い。 でもフェイ兄の言っているのはその家のことなんだろうと理解する。 けど、その家に居たというそれだけで反逆罪などと言い出すものだろうか?「まだ納得出来ないかい? まぁ、しらを切るのもいいが目撃者もいるんだ。そうそうに諦めた方が温情を受けやすいよ?」「目撃者? 何を目撃したの?」「君が彼らを口封じしたことだ。ちなみに君を見たという人は、君も何度か会った事のある人だよ。だから見間違いということはない」 と言われてもそんな事をいいだす人など知り合いには居ないと思う。 実際口封じって、あの場で襲われていたのはこっちのほうだし。 むしろ謝罪と賠償を求めたいくらいだ。 でもそんな僕の想いなどお構い無しに、フェイ兄は言葉を続けた。「じきに全てが明らかになるんだ。ゆっくりと牢獄の中で己の非道を反省するがいいさ、センドリック! 連れていけ」「はっ!」 荒々しく腕を掴まれ連行される僕を、悔しそうに目に涙を浮かべて見送るミーシャとボーマン。 僕はそのまま城門の外に停められていた真っ黒な檻付の馬車に放り込まれた。 その際、視界の端でフェイ兄から袋につまったお金を受け取っている北町の会長さんの姿が見えた。「・・・・・・違う。会長さんはそんな嘘をつく人じゃない」 熱くなりそうな目頭を必死に押さえながら、僕は一人檻の中で唇を噛み締めた。 馬車は程なくして王都に向けて出発する。 僕は格子窓から小さくなっていくトスカーナ領の街を眺め、一人ぼんやりと馬車に揺られてミーシャ達のことを思う。 二人はどうなるんだろうとか、アニスは大丈夫なんだろうか、とか。「あ、でもボクがもう王族じゃないってんなら、不敬罪も無効なんじゃないの? ってことはアニスは大丈夫の可能性が……。いや、脱獄した時兵士達を殺した犯人が捕まらないとアニスもやばいかも……」 僕は御者台に向かって話を聞いてくれるよう声を掛けてみた。 でも馬車の音とかが邪魔で聞えないのか、誰も何も返事をしてくれない。 並走してる騎馬の人に向かって格子越しに手を振ったり、声を掛けてもチラリとも視線を向けない。 んー、なんかむかついてきた。 僕は馬車の中を見回して、なにかいいものはないかと見回してみる。 だけれども囚人護送車ってこともあるのか、道具になりそうなものは何も無い。 あるといったら内壁の上の方に取り付けられている拘束用の鎖くらいか。 なんであれで僕を拘束しないのかな? まぁ、拘束してもされなくても、今の僕じゃ抵抗らしい抵抗なんて出来ないけどね。 そう思いながら鎖をじっと眺める。 短いし固定されてるから武器にも道具にも使えないなぁ。 せいぜい首を括るくらいの長さしかない。 ま、本来なら手首に繋がってる筈のものだから、通常は首を括ることすら出来ないようだけど。 「あ……良い事思いついたかも? 相手してくれないなら、相手してくれるように仕向ければいいんだよ!」 ということで、僕は壁に括りつけられている鎖を手に取るとニンマリと嗤った。 脇の下に鎖を通して手を離してもぶら下がれるようにしてみる。 一本はなるべく端を余るようにして、その余った鎖を首に巻く。 上手く出来たかな? と思って徐々に膝の力を抜いて鎖に体重を預けてみる。 うん、首に巻いた鎖には変化無く、脇の下に通した鎖で体重を支えきれている様子。「うん、これなら必殺死んだフリ作戦も出来そうだよね。ふふふ、僕を無視した報いを受けるが良い! くふふふ」 と、突然馬車がガクンと激しく立て揺れを起こす。 狭い馬車の中で無防備に立っていたこともあって、僕は足を滑らせて鎖に全体重をかけてしまった。 その衝撃が強かったせいか、微妙に鎖がずれて首に巻いた鎖がきゅっと変な音を立てて締まってしまう。「ふがっ! ぐぅぅぇ!?」 とても皆様にお聞かせ出来ないような悲鳴をあげてしまう僕。 いきなり変な風に体重を掛けてしまったから、鎖が滑ってあった筈の緩みがなくなってしまったのだ。 死んだフリ作戦が本気で首吊りになってしまって目を白黒させる。 幸いなことに、完全に気道を塞ぐほどにはなってなくて、キュフー、キュフーと変な呼吸音をさせながらもなんとか息は出来ていた。 でも苦しいことに変わりは無く、目じりから止め処なく涙が溢れ出る。「おい、馬車の中が騒がしいぞ?」「まったくもうちょっとお淑やかに出来んのか、この姫は」 御者台の方からそんな会話が聞えたかと思うと、直ぐに馬車が止まってこちらに誰かが向かってくる様子。 声は出せないけど、早く助けて! と心の中で絶叫する。 苦しみながらも覗き窓をなんとか凝視していると、あの脳筋馬鹿のクラウと目が合った。「おい、静かにってうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 僕の状況を覗き窓から確認したクラウが、絶叫と共に馬車の扉を蹴破って入ってきた。 あぁ、これで助かると思ったら気が緩んだのか、すっと目の前が真っ暗になってしまう。 気持ち良いなぁ、とこれが僕が気を失う瞬間に感じたことだった。「あれ? どうしたの「「@ちゃん。涙なんか流して」「う、煩いよ。泣いてなんかいないよ」 真っ暗闇に木霊する懐かしい誰かの声。 それが誰だったのか、何故か僕は思い出せない。 でも慣れ親しんだ空気に、とっても気持ちが安らぐ。「そぉ? それならいいんだけど。で、何してんの?」「何をしてんのって。そりゃお前を迎えに来たんじゃないか!」「あははは、へんな「「@ちゃん。逆だよ、逆」「逆?」「「「@ちゃんが死に掛けてるから、びっくりしてこっちまで来ちゃったんじゃない。皆も何事かって心配してたよ?」「死に掛けてるって縁起でもない……て、あぁそっか首しまっちゃったんだ」 ぷっと相手が吹き出して笑い出しながら、転げまわっている様子。 うん、真っ暗で分からないんだけど、なんかそうしているんだろうなって思う。 「相変わらず「「@ちゃんは間抜けだねぇ。ホント高校に上がったのにそれは無いわー」「うるさいよ、お前! ちゃんと締まらないように計算して括ったつもりだったんだよ!」「でも結果こうなってるんでしょ? ここ三途の川だよ?」「……へ?」「だから、さ・ん・ず・の・か・わ! 「「@ちゃんは早く回れ右して来た道を帰るんだよ?」 くすくすと笑いを引きずったまま、その子は僕の肩を掴んで身体をくるりと反転させて背中を強く押した。 僕は慌ててその子の手を掴んだけど、まるですり抜けるように僕の手から逃げてゆく。「駄目駄目。もう私はそっちにはいけないんだよ。あと、振り返ったら駄目だよ?」「でも僕はお前を迎えにっ!?」「うん、大丈夫。もう大丈夫だよ? だから安心して生きてね、「「@ちゃん。折角神様がお願い聞いてくれたんだから」「ちょ、待てって! どういうことだってばよ!?」 突然僕の身体が強い紐で絡み取られ、勢い良く上へと引っ張り上げられる。 振り返りたい衝動もあったけど、振り返ってしまったらきっとあの子は悲しむんだろうと何故か思ってしまう。 あぁ、なんで僕はこんなに泣いてるんだろう。 悲しいけど何か暖かい、そんな温もりと安らぎを僕は感じて光の海へと飛び出した。 「おい、起きろ! 生きてるんだろ? 起きてくれ、頼むよ」 人が気持ちよく眠っていたら、誰かが頬をパンパンと乱暴に叩いてくる。 本当ならその時点で飛び起きて相手に逆襲するところだけど、どうにも身体が重くて仕方がない。 それに叩かれてるといっても、なんかむず痒い程度なので気にしなければどうということはない。「くそっ! なんでこんな事にっ! ちくしょうっ!」「お、落ち着いてください、団長!」「これが落ち着いていられるかってんだ! こいつを死なせたら俺はあいつになんて言って詫びればいいんだよ!!」 うるさいなぁ。喧嘩なら他所でやってよと思って覆いかぶさってきていた人の胸板を力の入らない腕で押し返す。 冷たい金属の手触りだ。「お? 目、目が覚めたか!?」「うぅん……、うるさいよぉ」「あ? 第一声が文句かよ……。はぁぁぁぁ」 思いっきり肺にある空気を吐き出しながら、クラウは僕の傍に座り込む。 目が覚めた僕はといえば、ぼーっとして周りを見回してどうして自分がここに居るのかを把握しようとしていた。 そしてばらばらになっていたピースが一つになって、ようやく自分が陥っていた状況を思い出した。「ふぁっ!! い、い、生きてる!? ボク、生きてる??」 飛び上がって、自分の身体をパンパンと叩いて確かめる。 ちょっと首と肩とか脇が痛いけれど、それ以外は大丈夫のようだ。 僕の横で胡坐をかいてへたり込んでいたクラウは、そんな僕を見てよかった、よかったを連発してた。「あ、あの、助けてくれたんだよね? その……ありがとうございます」「いや、かまわねぇ……いやいやいや、構うぞ! なんで死のうとしたんだ!!」 お礼を言ったら激しく肩を揺すられて責められました。 自業自得な気もするけど、ちょっと今は気持ちが悪いので優しくして欲しい。「あのっ! は、吐きそうになるんで揺するの止めて貰えます?」「うぉ? す、すまん。だ、だがなんで死のうなんてしたんだ? お前はもっとふてぶてしい奴だって思ってたんだが」「何か微妙に失礼なこと言われている気がしますけど、別に死ぬ気があったわけじゃなかったんです」「?」「いや、声掛けても誰も反応してくれなかったから、意趣返しに死んだフリをしてみようかなって思ったら……」「間違えて本当に死に掛けてたってことか?」「見たいです?」 あははと後頭部を掻きながら、照れ笑いをして誤魔化そうとする僕。 周囲にいた屈強そうな兵隊さん達も心底呆れ顔である。 もちろん、目の前のクラウも同様に呆れていた。「せめて護送されている時くらいじっと出来ねぇのか、お前は」「わけも分からずこんな状況に置かれて、じっとしているほどボクはお淑やかじゃありませんので」「はぁー、ほんと知れば知るほど変な奴だな、お前は……」「会っていきなり床に女の子を叩き付ける人ほどじゃあないと思います!」 過去の恨みを蒸し返してちくりと刺してやる。 うん、これくらいは許されるよね、あの時は痛い思いしたんだし。 案の定、クラウは凄い渋い顔を作ると、すまねぇと一言だけ吐き出すと頭を下げた。「あん時は、あんたが本物じゃないって知らなかったんだ。だからちょっと頭にきて乱暴にしちまったんだ」「どういう形であれ、女の子に暴力を振るうのはよくないと思うんですけどね」「馬鹿言え。言って分からない女は殴るしかないだろう?」「うわー。絶対嫌われるよ。今女性ファンから凄い勢いでマイナスポイント入れられてるよ」「何訳の分からないこと言ってるんだ?」「い、いえ、こちらのことです」 ま、兎に角、ようやくまともに会話できる機会が訪れたんだ。 ちゃんと情報収集はしないといけない。「で、聞きたいんだけど、なんでフェイ兄は僕を犯罪者に仕立て上げようとしてるの?」「それは……」「レオさんは信じろって言ってたし、フェイ兄のあからさまな態度もなんか腑に落ちないし。ちゃんと教えてくれないと、次は本当に人生に絶望して首をくくるよ?」「いや、それは待ってくれ! でもな、レオの野郎に口止めされてるし、感単に言う訳にも……」 苦りきった表情で言い訳をするクラウ。 うん、それだけで十二分にフェイ兄が何かしようとしているのは分かった。 多分それは僕や皆を助けることに繋がるんだろう。 あの場に居ればトスカーナ侯爵や敵が居るから、あえてああいう手段をとったって事なんだろう。 でも……「なんとなく状況が見えてきた気がするけど、でもボクこのまま王都に戻ったらどうなるの?」「ん。一応北の塔に監禁して、今までの罪状についての裁判が行われる。元のスワジク姫の起こしたいろんな罪が問われると思う」「うわぁ。総決算されるのか……」「総決算という意味は分からんが、まぁそういうことだ。多分お前に恨みを持つ貴族やら豪商たちがこぞって罪を問うてくるだろうな。その結果しだいでは、死罪もありえると思うんだが」 なんか冤罪押し付けられて殺される予感がヒシヒシと感じられる。 どこぞのマリーアントワネットみたいにギロチンに掛けられるんだろうか? あの人の名言「パンがなければ~」も、実は本人が言ったことじゃないらしいし。 僕もそんな感じで貴族やら商人たちの憂さ晴らしへの生贄にされるんだろうか……。「いや、それはない。きっとない。フェイ兄はそんな事を望んでいるわけないよ」「お前を溺愛しているみたいだしな」「妹としてだろうけどね?」「血は繋がってないんだ。問題ないだろうさ」「まぁ、そうなんだろうけど、そういう問題じゃない気もする」 まぁ、兎に角フェイ兄のあれがフェイクだって分かっただけでも一安心だ。 レオさんの言うとおり、フェイ兄を信じて大人しくしようと決心した。 それが結果的に皆を守ることに繋がるんだろうと信じて。