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No.22222の一覧
[0] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】[delphinus](2011/01/14 23:39)
[1] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】1話[delphinus](2010/10/17 20:20)
[2] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】2話[delphinus](2010/10/17 20:20)
[3] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】3話[delphinus](2010/10/17 20:21)
[4] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】4話[delphinus](2010/10/17 20:21)
[5] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】5話[delphinus](2010/10/17 20:21)
[6] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】6話[delphinus](2010/10/17 20:21)
[7] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】7話[delphinus](2010/10/17 20:22)
[8] 青汁闘魂〜新米生徒会長大奮闘記〜 【青春・学園・ちょっと恋愛】8話[delphinus](2010/10/26 18:13)
[9] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】9話[delphinus](2010/10/17 22:44)
[10] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】10話[delphinus](2010/10/21 10:00)
[11] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】11話[delphinus](2010/10/26 17:06)
[12] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】12話[delphinus](2010/10/31 21:15)
[13] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】13話[delphinus](2010/11/01 22:53)
[14] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】14話[delphinus](2010/11/05 14:28)
[15] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】15話[delphinus](2010/11/06 23:57)
[16] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】16話[delphinus](2010/11/09 21:59)
[17] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】17話[delphinus](2010/11/16 19:59)
[18] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】18話[delphinus](2010/11/24 22:16)
[19] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】19話[delphinus](2010/11/27 22:33)
[20] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】20話[delphinus](2010/12/02 21:15)
[21] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】21話[delphinus](2010/12/07 22:10)
[22] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】22話[delphinus](2010/12/12 22:51)
[23] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】23話[delphinus](2010/12/19 23:36)
[24] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~【青春・学園・ちょっと恋愛】24話[delphinus](2010/12/23 22:55)
[25] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】25話[delphinus](2010/12/31 21:30)
[26] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】26話[delphinus](2011/01/07 20:24)
[29] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】27話[delphinus](2011/01/14 23:38)
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[22222] 青汁闘魂~新米生徒会長大奮闘記~ 【青春・学園・ちょっと恋愛】22話
Name: delphinus◆70288916 ID:571e1bf1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/12 22:51

『生徒の呼び出しを行います。生徒会長の藤野クン、藤野クン。体育科代表委員の前田サン、前田サン。職員室まで』

 放送が流れたのは、夢見心地な下校から一夜明けた翌日、昼休憩が始まってすぐだった。
 え。昼飯まだなんですけど。
 不満を隠しへだてなく表に出しつつ、藤野は席を立った。呼び出された以上は仕方がない。生徒会長としての面目もある。とはいえ、呼び出されるとは何事だろうか。ここ最近を振り返ってみても、素行の悪い事はしていない。

「あ、フジチョー」

 職員室を目の前にして声をかけてきたのは柚だった。

「柚、呼び出し食らったけど、何か覚えある?」
「いや、何にもないよ。窓ガラス割ってないし、ホウキも折ってないし。誰かを絞め落としたってのもないわね。ってか、全般的に破壊活動は自粛してるから」

 いや、そのセリフ、女の子が吐くものじゃないんですけど。
 ツッコミは内心で叫んで解消させ、とりあえず職員室へ向かった。二回ノックして扉を開ける。すると待っていたかのように、指導教諭が仁王立ちしていた。小早川といつも敵対している、通称アンドリューである。
 おお。指導のボスが何でこんな威圧感全開なんだ。

「ほほう。仲良く出頭とは余程仲がよろしく見えるな、お前ら」

 は?
 訳が分からず怪訝に眉を潜めると、アンドリューは別の意味で捉えたらしく、やっぱりなぁ。と青みが強い顎をさする。

「生徒指導室にこい」

 表情を厳しくさせたまま言い放つと、そのまま生徒指導室まで先導する。どうやら何かやらかしたのは事実らしいが、二人にはまったく見当がつかない。非常に厄介である。どこをどう突いてこられるのかが分からないのだから。
 警戒心を最大にしつつ生徒指導室に二人並んで入る。扉は柚が閉めた。
 藤野は初めて入るのだが、随分と閉塞感の強い部屋である。無機質な折り畳みイスと長机があるのみで、蛍光灯の数も少ない。

「さて、藤野、前田。これを見てもらおうか」

 イスはあれど座る事はすすめられない。どうやら飾りらしい。などと思いつつも机の上に置かれたのは、一枚の写真だった。
 ん? これって……
 全体的に暗い写真なので夜に撮影されたものだ。写真中央には自転車を引いている生徒、藤野と、その隣、トレーニングウェアの柚が立っていた。忘れるはずがない。昨日の光景だ。

「昨日の、だよね、これ」
「うん」

 一応の確認の意味合いで聞いてくる柚に、藤野は頷いた。まだ分からない。何があるのだ、いったい。

「余裕だな、貴様ら。ではこれでどうだ」

 机の上を滑ってきた写真を柚が止める。同時に柚が硬直した。覗き込むようにして藤野も写真を見て、やはり同じく硬直した。
 な、ななななななっ!?!?!?
 何ですか。何なんですか。いったいどういう事ですかこの羨ましい限りこの上なしな写真、いやいやいや! 不届き極まりないのは!
 後から襲ってきた動揺は大津波級だった。容赦なく飲み込まれ、溺れる。

「不純異性交遊、というモノだな。先生は悲しいぞ」

 とってつけた何ものでもないセリフは二人の耳には入らない。ただひたすらに写真に食い入るのみだ。
 思い出せ。よーく思い出せ。
 藤野は脂汗を覚えながら記憶を掘り起こす。写真は恐るべきことに、なんと校門前近くで柚と手をつないでいるのだ。もしあまりにも夢見心地だったせいで忘れているのであれば、意地でも思いださねばならない。

「ってこんなのウソですっ! あたし、フジチョーと手なんてつないでませんっ!」

 深く深く沈んでいく藤野と対照的に、柚は思いっきり、それこそ清々しいまでに否定した。

「だがここにあるぞ、写真が」
「それがウソなんですって! 確かに一緒に下校したけど、校門ちょっと過ぎるまでだし、単純にダベってただけだし!」
「カップルはそういうウソをつくもんだ」
「か、かかかかカップル――――――――っ!?」

 思わず耳を塞ぐほどの大音量が指導室内に轟き響いた。赤面しまくりの柚は口をパクパクさせている。
 カワイイけど、何か刺さるなぁ、コレ。
 何かを抉り取られる感覚に襲われつつも藤野は悪意を察した。アンドリューからではない。写真からだ。

「なんだ、違うと言うのか」
「違うに決まってんでしょ! 何言ってんのよアンタはっ! あたしとフジチョーは単なる友達だって!」

 あ、痛恨のボディブロー。
 内側まで突き刺さった一撃に、藤野は肩を落とした。当然と言えば当然だ。恋愛感情は藤野から柚への一方的であり、実質的な関係は友人関係のなにものでもない。
 柚は敬語を使うのも忘れてアンドリューに食ってかかるが、相手は一切をウソと端から挑んでいる。馬の耳に念仏でしかない。

「ちょっと、フジチョーも何とか言いなさいよ! あたし、あんたとなんか付き合ってないわよね!?」

 あ、それ、俺の口から言わせるの。
 確かにこの状況下、藤野も必死に否定しなければならない。だが、一度否定してしまえば、何かが壊れるような気がした。
 壊れるのが怖い。だから口に出せない。
 アンドリューの視線が藤野に向けられた。ああ。言わなきゃならないのか。ここで俺が黙ってたら、付き合ってるんだって思われる。誤解されて、処分されて、柚に嫌われる。でも、でも。

「どうなんだ」

 声までかけられて、藤野は決断を迫られた。
 くそ。むかつく。誰だ、誰だよ、こんなの。写真、明らかにマガイモノだろ。俺も覚えないし、柚だって違うって言ってるし。

「この写真」

 藤野は羨ましくも憎々しい写真を手に取る。

「偽物だと証明出来ればいいんですよね」

 付き合ってなんかいない。ホントに単なるトモダチだ。そう口にしたくないから、藤野は矛先を向けた。出来るだけ口にしないようにするために。そして、柚を傷つけないために。

「偽物もなにも、その写真を撮られているのは事実だろう。否定するのは見苦しいぞ、生徒会長」
「だから」

 静かに藤野は言う。故にこそか、アンドリューも聞く姿勢を取った。

「証明できればいいんですよね」

 繰り返した発言は有無を言わせないつもりだ。するとアンドリューは腕組をして、

「できるものなら、してみればいい」
「分かりました。じゃあ、瀬川を呼んで下さい。彼なら、偽物だと証明できます」
「良いだろう」

 アンドリューは余裕の鼻笑いなどかましつつ、指導室の奥にある放送機器のスイッチをオンにして全校放送を行った。ものの数分で瀬川は指導室にやってきて、アンドリューから説明を受けた。最初は柚がしようとしたのだが、あまりの動揺ぶりに話がうまく伝わらなかったためである。
 ほとんど表情を見せないまま問題の写真を手にとって、約一分。瀬川は小さく溜息をついた。

「加工だな」

 と、端的に言ってのけた。ほう、と藤野と柚から安堵が洩れた。偽物なのは当然なのだが、それを第三者が認めてくれる事はやはり大きいものだ。

「なんだ、加工ってのは」

 一人分からないアンドリューが突っ込んでくる。瀬川は専門用語を口に出しかけて、一度飲み込んだ。アンドリューは見た目からして体育会系であり、機械系に疎いはずだ。

「コンピュータによる画像の加工です。そういうソフトがあります」

 出来るだけ選んだはずの言葉は、しかしアンドリューには通用しなかった。ただ怪訝に眉を潜めて首をかしげるだけだ。

「この写真を預からせてください。放課後には加工された写真だと証明できるはずだ」
「良いだろう。じゃあ今は解散にしよう。前田も藤野も出て良いぞ」

 偉そうな態度を崩さずアンドリューは言い放ち、三人はさっさと指導室を後にした。

「っだぁ――――っ! 何よあのアンドリューのヤツ! ムカつくわぁ!」

 そう柚が叫んだのは指導室から遠く離れた広場である。進学科、体育科、一般科の三つの校舎に囲まれる形にある広場は、全天候型と銘打たれて一面ガラス張りである。椅子やテーブルも用意されてあり、また、ガラス部分が各校舎と繋がっているため濡れる事もなく、直結通路もあるので移動も便利だ。工学科を除いて、利用する生徒は結構多い。
 広場の一角にあるテーブルに陣取って、柚と藤野は昼食を開始した。瀬川は既に食べ終わっていたので、代わりにノートパソコンをテーブルに広げていた。

「っていうか、ホントに証明できんの、瀬川」

 柚は未だ怒り収まらぬ様子で瀬川を向いた。今にも噛みつきそうな雰囲気だが、瀬川は全く気にせず言う。

「当然だ」

 既に写真を手持ちのノートパソコンに取り込んだ瀬川は早速作業を始めていた。藤野からは伺えないが、耳に入ってくカチャカチャという音の猛然さから、目にも止まらないスピードでキーボードを叩いているのだろう。

「加工された写真には必ずキズが残る」
「キズ?」

 パンを齧りながら聞く柚に、瀬川は画面へ目線を向けながら説明を始めた。

「写真に残る不自然な部分の事だ。写真の加工なら誰にでも出来るが、加工の際に出来る不自然さをなくす事は誰にでも出来るものではない。そのレベルの高さで、加工した人間の技術力が分かる。今回のこの写真は、ざっと見ただけでは不整合は見当たらない程度の完成度合いではある」

 辛うじて相手を褒めていなくもない発言だ。瀬川からすれば最大級に近い賛辞かもしれないが。

「言いかえれば。素人離れしてはいるが、本職には敵わない、その程度の出来だ」
「アンタにはそのキズってのが見えてんの」
「当たり前だ。私からすれば、何故見えないのかが不思議なくらいだな」
「言うわね、アンタ」
「落ちついて、柚。写真が偽物だって証明してくれてんだから、臨戦態勢とらない」

 声に気合いがこもった柚を、藤野はすかさず嗜めた。今、ここで喧嘩などされたらシャレにならない。

「出来たぞ」

 瀬川はノートパソコンを180度回転させて画面を二人に見せた。
 画面には二つの写真が表示されている。一枚が加工された写真、もう一枚はその写真の加工された部分を塗りつぶしたものだった。

「両腕を器用に加工して手をつないでいるように見えなくもない画像にされているな。元々あった腕は背景の暗闇部分でペーストされて隠されている。そこで生まれる不整合だけを隠そうとするから、他のつじつまが合わなくなる。見ろ、肩の関節部分も、微かではあるがおかしいだろう」

 言って指を差したのは柚の方の肩だ。確かに、本当に本当によく見ると、違和感を覚える。

「アンタ、凄いわね。こんなの見破るなんて」
「加工に本格的に携わっていれば見破るなど容易い程度だぞ、これは」
「つまり素人目には分からないって事か」

 藤野の言いかえには閃きが潜んでいた。頷いた瀬川に、さらに追撃の質問がくる。

「これぐらいの加工って、誰にでも出来るレベルじゃないでしょ。少なくとも素人レベルじゃない」
「そうだな。少なくとも加工ソフトを自在に操れなければならないから、パソコンに相当慣れている人物である必要がある。それに一夜でここまで加工したとなれば、尚更だろうな」

 待っていた言葉に、藤野は即ち、と一言付けて人差し指を立てた。

「こんな画像加工できる人物ってかなり限られてくるんだよね。学校内においてだと、特に」
「ちょっと待ってよ、何で学校内の人物って断定できてるのよ」
「だってこの写真、学校の内側から撮られてるんだよ。それに、学校の生徒か教師じゃない人が、こんなの撮って何のメリットになるのさ」

 至極当然な理論に、柚は深い感銘を受けて頷いた。うん、そういうとこも好きなんだけどね。
 ふと瀬川が考え込む素振りを見せた。二言、三言と聞き取れない程度の呟きが洩れ、やがて「そうか」と納得した顔を見せる。

「その人物なら特定できるかもしれん」
「マジ!?」

 身を乗り出したのは柚だった。藤野も半身乗り出している。
 何故ならば、今回の事件で偽物だと証明できても、その偽物の写真を誰がアンドリューに渡したか教えてもらえないからだ。ほぼ確実に匿名を使っているはずだろうし、こちら側からの復讐をアンドリューが恐れて教えない公算が高いのだ。
 最も、藤野はこんな偽物の写真を使ってまで嫌がらせを仕掛けてくる人物など見当がついている。

「瀬川、それって工学科二類と関係あり?」
「ああ。関係ありどころか、工学科二類の生徒だ。今、特定しようとしている人物は」

 うわ。ビンゴじゃん、それ。

「じゃあその辺りもお願いしていい? もちろん、協力できるトコはするし」
「分かった。それと藤野、前の会議で上がっていた資料だが、情報を集めるだけ集めたから、生徒会室の方にメールで入れておいたぞ」
「マジ? 助かった。ありがと。よく読んで次の会議を持つよ」

 藤野が言い終わったタイミングで、チャイムが鳴った。時間切れだ。

「じゃあまた放課後に」
「分かった」
「おっけー」

 さっさと弁当を片付け、藤野たちは駆け足気味に教室へ戻った。後は放課後を待つばかりで、昼休みの間に偽物だと証明されたお陰で気も幾分か楽だった。
 午後からの授業は割と藤野が好きな授業だったため、時間が過ぎるのも苦ではなく、あっさりと放課後を迎えた。
 SHR後にアンドリューから呼び出しがかかり、今度は瀬川を含めた三人で指導室に赴き、瀬川が偽物の証明を説明してのけた。

「むう」

 一切の淀みない説明に、アンドリューは唸るだけだった。証明された写真を睨み、やがて大きく頭を下げる。

「済まなかった。俺の勘違いも大きく含まれていた。お前たちは無実だ。済まなかった」

 潔く謝れるこの教師は良くも悪くも体育会系だ。ここまで清々しく謝罪されたら、藤野と柚も受け入れるしかない。二人は一度顔を見合わせてから、「分かってくれたなら、それでいいです」と許した。
 アンドリューは頭を挙げると、眉を顰めながら写真について語りだした。伝えなければならない義務感に狩られたらしい。

「この写真は、匿名で置かれていたものだったんだ。手紙と共にな」

 アンドリューが出した手紙を受け取り、瀬川も含めて三人で読む。四つ折りにされたコピー用紙にはしっかりした文章の文字が印字されているだけで、どんな人物かは特定できないようになっている。結びの文も「善良なる一生徒」としか書かれていない。
 やり方が上手いって言うか、狡いなぁ。
 単なる写真を送り付けられただけなら、真剣に取り合われない可能性がある。だからこそ、しっかりした内容の文章を添えている。だが、文章は無機質で、個人を特定できないように配慮されている。ここからも悪意が見えた。
 ってかこの狡いやり方、ますます新宮にそっくりなんだけど。

「こんな悪質なイタズラ、処分の対象になるはずだが、これでは誰がやらかしたか特定できん」

 一人疑惑から確信へと強める藤野に向けて、アンドリューは困った様子で説明した。

「たぶん、そこも考えてこんなイタズラをやらかしているのであろう」

 瀬川の一言に、アンドリューは唸った。正義感からか、怒りすら見えた。
 ホント、単純なんだよね、この先生。
 失礼な感想は心の扉にしまいこみ、藤野は話題を畳みかけた。調査して犯人を突き止められるだけの力がアンドリューにはないと分かり切っている。さっさと終わらせてしまった方が良い。

「とりあえず、僕らの無実は証明された訳ですし、これで失礼しても良いですか?」
「ああ、構わん。済まなかったな」
「いえいえ。じゃあ、失礼しますね」

 さっと頭を下げて、藤野は瀬川と柚を連れて指導室を後にした。しばらく廊下を歩いた所で、瀬川が前に立った。

「さて、これから犯人の所へ向かおうと思うんだが、どうする」

 どうやら放課後までに犯人まで特定したらしい。藤野と柚はお互い何も口にすることなく頷いた。

「わかった。では案内しよう」

 瀬川は淡々と言った。



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