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No.21417の一覧
[0] せめて勇者として召喚してほしかった[古時計](2011/08/29 01:34)
[1] せめて勇者として召喚してほしかった2[古時計](2011/08/24 23:20)
[2] せめて勇者として召喚してほしかった3[古時計](2011/08/24 23:20)
[3] せめて勇者として召喚してほしかった4[古時計](2010/11/02 02:01)
[4] せめて勇者として召喚してほしかった5[古時計](2011/08/30 22:48)
[5] せめて勇者として召喚してほしかった6[古時計](2010/11/02 01:59)
[6] せめて勇者として召喚してほしかった7[古時計](2010/10/30 17:26)
[7] せめて勇者として召喚してほしかった8[古時計](2011/08/30 22:47)
[8] せめて勇者として召喚してほしかった9[古時計](2011/02/18 23:23)
[9] せめて勇者として召喚してほしかった10[古時計](2011/02/21 12:42)
[10] せめて勇者として召喚してほしかった11[古時計](2011/03/04 00:55)
[11] せめて勇者として召喚してほしかった12《前編》[古時計](2011/03/10 01:30)
[12] せめて勇者として召喚してほしかった12《後編》[古時計](2011/03/21 16:10)
[13] せめて勇者として召喚してほしかった13[古時計](2011/07/18 21:24)
[14] せめて勇者として召喚してほしかった14[古時計](2011/07/24 19:01)
[15] せめて勇者として召喚してほしかった番外1[古時計](2011/08/16 00:23)
[16] せめて勇者として召喚してほしかった15[古時計](2011/07/31 17:27)
[17] せめて勇者として召喚してほしかった16[古時計](2011/08/16 00:24)
[18] せめて勇者として召喚してほしかった17[古時計](2011/08/21 20:00)
[19] せめて勇者として召喚してほしかった18[古時計](2011/08/31 01:14)
[20] せめて勇者として召喚してほしかった番外2[古時計](2012/01/05 00:43)
[21] せめて勇者として召喚してほしかった19[古時計](2012/08/17 02:02)
[22] せめて勇者として召喚してほしかった20[古時計](2012/09/17 22:26)
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[21417] せめて勇者として召喚してほしかった番外2
Name: 古時計◆c134cf19 ID:86ac8b53 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/01/05 00:43
※本編とは全く一切関係を持ちません。ifの世界です。




とある世界のとある時代、とある街での話。

季節は冬。にぎわう街には雪が降り夜にも関わらず白い光で覆われていた。

寒空の中でわざわざ外にいたいと思うほどの物好きは雪で遊ぶ子供くらいで既に仕事を終えた大人達は急ぎ足で温かい我が家へと向かっていた。

そんな雑踏の中、道行く人々に何度も話しかける少女たちがいた。




せめて勇者として召喚してほしかった番外


『マッチ売りの少女たち』




1人はふんわりとした栗色の髪に鳶色の目をした明るそうな笑顔の少女。

「ん!」(歩いていた婦人の服を引っ張り止める)

「え? 何?」

「ん! ん!」(笑顔で手をぱたぱたと振りながら何かを伝えようとする)

「……ええっとどうしたの? 迷子?」

「んーん! ん! んん!」(首を横に振った後さっきと同じ動作)

「……ごめんねお嬢ちゃん。私ちょっと急いでるの。また今度お話聞いてあげるね」

「…んん」

元気いっぱいなのだが言葉が通じずさっきから一度も会話が成立していない少女。











1人は金髪をツインテールにし紅い瞳を輝かせて自信にあふれた話し方をする少女。

「ちょっと! そこのあなた!」

「へ? 俺っすか?」

「そうあなた! 寒いでしょ? マッチ買わない? マッチ売れないとあたし達食べるものなくて死んじゃうんだから!」

「(…何でこの子は自虐ネタをこんな自信満々に言ってるんスか?)まあいいっすよ。じゃあ一ついくらっすか?」

「やった! ええっとあんまり売れてないから、五千万ネル(五億円)!」

「高えっす! どんな高級消耗品すか!」

「え、じゃ、じゃあ一千万ネル(一億円)!」

「まず桁を変えろっす! 話はそれからっす!」

「ええ!? じゃ、えっと、十万ネル(百万円)?」

「話にならないっす。じゃあっす」

「ま、まって! 一万、いや千、百、、…1ネル(十円)でいいから!」

「買うっす」

「わ! やった。ありがと!」

えへへ、と手もとの1ネルを見てしばらくしてアレ? と首を傾げる少女。







1人は緑色の髪を隠すように帽子を目深にかぶり、とがった耳を赤くしながらビクビクと話しかける少女。

「え、えっと、マッチ、い、いらない?」

「お? おお丁度いい。さっき切らしてしまったところなんだ。一つくれないか?」

「やああああ! 人間怖いいい!!」

「え―ー!?」

自分から話しかけておきながらせっかく買おうとしてくれた客から逃げる少女。





三者三様、マッチはちっとも売れず売れたとしても端した金だった





「おかしいわね? こうしてマッチを売ればお金になるってきいたんだけど」

夜も更けてきて人通りもなくなったころ、三人のマッチ売りの少女達は一旦集まり成果を話し合う事になった。

おかしいのは自分達の売り方だとまるで気付かず首を傾げるツインテールの少女の意見に残りの二人も頷いて同意する。

「えっと、スーちゃんもロミちゃんもどのくらい売れた? わたしは…ゴメン、一個も売れなかった…」

「ん…」(右に同じ)

「んもうっ! リカもスーも情けないわよ! アタシは頑張ったわよ! なんせ20個も売れたもの!」

「え!? ホント!? うわぁロミちゃんすご―い!」

「ん! ん!」(手をパチパチ)

「ふふん、まあアタシが一番おねえさんなんだからこのくらい当然よ!」

どうだ! と言わんばかりに胸を張るツインテールの少女、ロミに臆病な様子を見せたリカや言葉を話さないスーは喜色を浮かべ声を上げる。

ソレを見てますます得意げになったロミだが【いくらになったの?】というスーの期待に満ちた目線に押し黙り、しばらくしてぼそぼそと口を開いた。

「……20ネル」

「ん!!??」

「…1個1ネルで売ったの?」

「し、しょうがないじゃない! ちょっと高く売ろうと思って値段を上げたら誰も買ってくれなかったんだもの! 仕方なく値下げしたらこうなっちゃったのよ!」

「それは1個目で気付こうよロミちゃん…」

「ん~~~」

喜びから一転、残念そうに見る二人の視線に耐えきれなかったのかウガ―と立ち上がり次いでにツインテールもピンと立たせる。

「元はと言えばマッチをなかなか買ってくれないこの街の人達が悪いのよ! もう、みんなケチなんだから!」

繰り返すが悪いのは彼女たちの売り方である。





いくら騒いでもお金が増えるはずもなくその熱も冷めると一層自分達の境遇が身にしみてくる。

「寒いわね」

「ん…」

「どうするロミちゃん、スーちゃん? 諦めてあのうちに戻ってみる?」

「本気で言ってるのリカ? あの人飼いの家からやっと逃げてきたのよ!」

吹き抜ける風は気力も体力も奪っていったが弱気になったリカの発言にすぐさま拒否をしめした。

スーに至っては寒さとは違う理由で身体を震わせている。

「アイツらはあたし達の事なんか少しも考えちゃいないわ。考えてるのはお金の事だけ。売られた先がまともな可能性なんか無いに等しい。だからあたし達三人は大人に頼らずに生きていこうって逃げ出したんじゃない。

もし今戻ったら何されるか分かったもんじゃないわよ」

「…そうだよね。もしひどい事されなかったとしても絶対わたし達三人とも別々に売られちゃうよね。それは…やだな」

「ん! ん!」

二人の意見に同意するようにリカとロミの手をぎゅっと握り絶対に離れたくないという意志を示す。

手を握られた二人は一瞬きょとんとするがすぐに笑いあってお互いに抱きしめ合う。

「大丈夫よスー、あたし達三人はいつも一緒よ」

「うん、ごめんねスーちゃん、やな事言っちゃったね」

「ん……」

ぐしぐしと袖で眼をこするスーを見ているとこれではだめだ、と一応この中で一番年上なロミが空気を変えようと手を叩く。

「そうだ! 寒いから不安になるのよ! せっかくマッチいっぱい有るんだしこれを使って暖をとりましょ!」

そう言っていそいそと売り物のマッチを手下げ籠から取り出す。

【売り物なのに使っていいの?】というスーの目線も「どうせ売れないんだから構いはしないわよ」と強気なロミの発言で収まる。

取りだしたマッチ棒を箱の側面と強くこすり合わせる。

摩擦によりヒュボッと音を鳴らしたマッチはぼんやりとした小さな火をともした。

それは暖炉や焚火には比べようもないほど弱く小さな火では有ったが寒空の下に長くいた三人にはこれ以上ないほど温かな火だった。

しばらくは手を伸ばしかじかんだ手をこするようにして温めていたが、ふとリカが思い出したように声を上げる

「そういえばお母さんに昔聞いた事があるんだけど」

「「?」」

「えっと、確かマッチの火をつけた時その人が思い描いた物が見える事があるんだって」

無論、おとぎ話や迷信のようなものだと言外に含まれるリカの話だったが今こんな状況ではそんな一笑にふされるような

物でも娯楽じみた愉快さを含んでいた。

そのためソレを聞いたスーもロミもその話に乗っかる事にした。

「ん!」

「いいわねソレ 早速やってみましょ!」

丁度マッチが燃え尽きそうになっていたのですぐさま次のマッチを取り出す。

むむむ、と唸りながら必死に何かを考えたロミはふん!と小さな掛け声と共にマッチを擦った。

先ほどまでと同じぼんやりとした明かりが灯る。

固めた雪を蜀台がわりに突き刺してしばらく。

三人の眼に火とは違う何か別の物が見えてきた。

え? と疑問符を上げているうちにもその影は形をはっきりとさせていく。

思わず目を擦る三人だが幾らこすっても目の前の何かは消える事は無い。

信じられない面持ちで現れた影をしっかり見つめてみると。

二本足で立ち、橙の羽毛で覆われ赤い嘴にキョロキョロとした綺麗な眼をしたソレはリカとスーには見覚えは無く小首を傾げたが、残る一人の反応は違った。

「コショウ!!」

クエ―、と鳴くその物体、子供ほどの大きさの鳥の首にひしっとロミは抱きついた。

何の事か分からない二人にはごめんごめんと謝りながらも説明をする。

「この子は昔あたしが小さい頃一緒に遊んだ友達なの! ある時どうしても一緒にいられない事になっちゃってそれ以来会ってなかったけどまさかまた会えるなんて!」

そう言って再びぎゅううう、と力いっぱい抱きつくロミに対しコショウと呼ばれた鳥は何を考えてるのか分からずただクエ―と鳴いている。

「ん~~~~…………ん!」

ボフッ

その様子が温かさそうだったからかうずうずとしていたスーも我慢出来ずに飛び付く。

「あ、ずるいスーちゃん、わたしも! うわぁホントにふわふわ~」

「ん~~♪」

「幸せ~」

100%羽毛に埋まりゆるゆるになった三人に対し抱きつかれたコショウは流石に苦しいのかグエエー、と少しばかりくぐもった鳴き声を上げていた。









マッチの火のついている時間などたかが知れている。

「あ」

温かな幻想もやがてはゆっくりと消えていった。

姿が薄れていくコショウを見た時僅かに目元が潤んだロミだったが消える瞬間、先ほどまで抱きしめられるままで何もしなかったコショウが「泣くんじゃねえ」とばかりに甘噛みをしたことでぐっと耐えた。

友との別れは泣き顔でするべきではないのだ。

「ロミちゃん、大丈夫?」

「う、うるさいわね、泣いてなんかいないわよ! とにかく、リカのいった通りホントに思い描いた物が出てきたわね。せっかくだからどんどんいきましょ!

次は誰がやる?」

「ん! ん!」

ぴょんぴょん、と跳ねるように挙手したスーに反対する理由もなくマッチを渡せば実に嬉しそうにマッチに火をともす。

そして再び見えてくる幻想。

外にあるはずのない机の上にはお皿に盛られたお菓子の山。

クッキーやケーキ。キャンディにパイ。目移りしそうな宝物。

眼を輝かせる三人のうち一番最初に手を伸ばしたのは火を点けたスーだった。

近くにあるクッキーをほおばり実においしそうにもぐもぐと食べている。

ソレを見た二人もそれぞれ近くにあったお菓子を口にほおりこむ。

口に入れた瞬間に広がるのはじくじくと舌を刺激する独特の感覚。それが喉を通りむせかえるような痛みを引き起こすその味はえもしれぬほどにこの身をウチ滅ぼさんと言っていやコレ絶対食べちゃ駄目だろと本能が告げるもそれが脳より伝わるよりも早くそのナトリウムイオンによる刺激は痛点を攻撃しておりって

「「しょっぱ!!」」

べえー、と今しがた口に含んだお菓子を吐きだすロミとリカ。マッチによる幻想ゆえ味がしないのならばまだともかくこの舌に残る違和感は何なのか。見た目がどう考えても甘いお菓子なためなおのこと塩辛かった。

「ちょ、ちょっとスー! あんた何でこんなおかしを……」

「うええ、まだ舌いたいー…? ロミちゃん、どうしたの?」

急に黙りこくったロミは問いかけに答えずただ指を伸ばした。

指さす方向にリカが視線を向ければ

「ん♪ ん♪」

もぐもぐとリスのように口いっぱいにお菓子をほおばるスーがいた。

声が出せない代わりに感情表現のはっきりしているスーの表情は至福の二文字をはっきりと示している。

スー・アチェート。

好みは塩味。

それも異様なほどのレベルの味覚の持ち主だった。


「~♪」

幻想が消えた後も大好きなお菓子(塩味)を食べご満悦なスーと違い見た目だけは良いお菓子を目の前にしながら一口も食べられなかった二人はすこぶる不機嫌だ。

たかが幻想と言うなかれ。自分達だけ食べれないのはどうしても悔しい。

「スーのは全然楽しめなかったじゃない! 次はちゃんと甘い砂糖菓子にするわよ!」

「ロミちゃんさっきやった! 次わたし!」

「いいじゃない! まだマッチなんていっぱいあるんだから!」

「じゃあロミちゃんも後でいいじゃない!」

「ん」

「何さりげなく勝手に火をつけようとしてんのよスー! ってああ! つけちゃった! 

…んもう、しょうがないわねー次は何を…って」

「また食べ物ー!?」

「ん♪」

「え、何? 【さっきのはお菓子だったから今度はお肉とかお魚が食べたかった】? それはいいけどせめてあたし達も食べられるのにしなさいよー!」

「うわ! やっぱりしょっぱい!?」

そんなやりとりがあったもののその表情は先ほどまでの寒さや不安からくる暗さはなりを潜めていた。

マッチの幻想のおかげか元気のでた三人はそれからたくさんの欲しい物を浮かび上がらせた。

いくつもいくつも。

だがマッチは無限ではない。ほとんど売れなかったマッチも少女たちの願いをかなえるうちにあっという間に数を減らした。

火が消えた燃えカスが小さな山となった時、あ、とロミが声を上げるので二人もその手元を確認してみるともうマッチの数は一目で分かるほどになっていた。

その数三本。丁度1人1つ分。ならば同時に点けてみよう、と誰ともなく決まった提案通りにマッチを擦った。

三本のマッチを乗せるために少し大きく作った雪の蜀台はまるで白いショートケーキのようだった。

そして、三人が最後に思い描いたのは全く同じであり、全く別の者だった。

「お父様…」

「ママ…」

「ん…」

幻想が浮かび上がらせたのはもう二度と会えないと思っていた人達。

マントを羽織り貴族然とした服装の若い男性

若草のような緑の長髪の横から長い耳が伸びているこの世の物とは思えないほど綺麗な女性

筋骨たくましく荒々しさを見せながらも人好きのしそうな顔をした中年の男性とそれに寄り添う笑みを絶やさない女性

涙を流さない訳が無い。

嬉しくないはずが無い。

感情の赴くままに少女たちは最も大切だった人達の元へと飛びつこうとする。


だが、神は何処までも残酷だった。


彼女たちの手が届く瞬間、その日一番強い風が吹いた。

簡単には消えないように、と雪で覆っていた蜀台の中にもその突風は入り込み、皮肉にもケーキの火を吹き消すように火は潰えた。

あ、と喉から息が漏れた時にはもう、その幻想は幻想らしく何処を探しても見つからなかった。

幻想だと分かっていた。

出したところで消えるのは分かっていた。

消えれば昔味わったあの感覚を再び感じるだろうということも分かっていた。

だからこそ三人ともそれまでのマッチでは願わなかったのだ。

だからこそ最後のマッチで、一度だけでも、と思い願い火を灯したのだ。

だが、余りにも残酷なその結末についに限界の糸は切れてしまった。

「…う、うわ、マ、ママ…! ママーー!」

「ん………」

「ちょ、ちょっと…だめ、よ、二人とも、ないちゃ、だ、め…なん、だから…」

雪が深々と降り積もるなか辺りの家からは楽しげな声が聞こえてくる。

彼女たちが夢見て、でも手に入らない物。

それが嫌が応にも今の自分達の境遇を知らしめる。

三人の涙は辺りの雪にしみこみ誰にも気付かれはしなかった。






一体どのくらい泣いたのか、いつの間にか道にも雪が積もり歩くのも困難になっている。

三人とも泣きやみはしたものの一度切れた糸はそう簡単には戻らず、言わないようにしていた不満も口から洩れる。

「寒いよ~」

身体を抱き締めるように震えるリカ。

「お腹、減ったわね」

きゅるる、と可愛らしく音を鳴らすお腹を抑えて我慢の表情を浮かべるロミ。

「……ん……」

眠くなってきたのか下り始めたまぶたをこするスー。

もう暖をとれるものは何もない。

彼女たちに出来るせめてもの抵抗は風の当たらない壁際により三人で身体をくっつけあって温め合うことくらいだった。

互いにくっつきあったおかげか先ほどまで心にわいた不安や恐怖が少しばかりやわらぐ。

「……スー、リカ」

「…ん?」

「…なに、ロミちゃん?」

「あたし達はずっと三人一緒なんだから、さびしくなんかならないんだから…」

「……そうだね…」

「………ん…」

そのままゆっくり、ゆっくりと三人の声が小さくなりまぶたが落ちていく。

悲劇のごとく、このまま何の救いのないまま永遠の眠りにつくのかと思われたその時












































「寒さで震える幼女と聞いて!」

「お腹をすかせた幼女と聞いて!」

「おねむの時間な幼女と聞いて!」





突如降ってわいたように現れた謎の集団に何もかもが吹き飛ばされた。

ある者は空から着地した瞬間下半身を地面にめり込ませて現れ

ある者は地面からボコリ、と雪と泥だらけな姿のまま音を立てて現れ

またある者はレンガで出来た壁をけ破って現れ(向こう側に呆然とした髭のおじさんが見える)

とにかくワラワラと現れた。




「「「は?(え?)(ん?)」」」



「ここはやっぱり俺の幼女への熱いハートで温めてあげるのが得策だと思うんだ」

「それよりもお菓子をあげようぜ! 当然手に粉付くタイプ」

「おねむな少女は儂が添い寝して上げねば!」

「黙れ同士諸君!! 初対面の場合はYESロリータNOタッチという言葉を忘れたのか! 諸君は安易な欲望に身を堕としロリコンという神より承った真理を捨て犬畜生にも劣るペドフィリアに身を窶す気か! ここはそんな自身の欲望を抑えられぬ同士達に代わりまずはこの私、セウユ・キッコーマが一流のロリコンのお手本を見せてやろう! 具体的には飴ちゃんを上げてそれをほおばる幼女達のその天使のごとき愛らしい姿を眺め眼福しついでに風避けの意味も込めてハグもして神父として父性あふれるこのオーラで包み込んであげるというそれはそれは素晴らしい方法を」

「「「いやあなたが一番だめです」」」

少女そっちのけで騒ぎまくるお馬鹿な集団を見て眼を丸くする少女たち。

寒さも飢えも眠気も何処かへ跳んでいったがそんななか近づいてくる人物がいる。

黒い髪に黒い眼のどこか疲れたような顔をした男性だった。

「ったく、セウユの奴いきなり走り出すから何事かと思ったぞ。しかもなんか増えてるし……まあ今回はそれが正解だったと言えるのかもしれないか」

「サトーさん、何があったんですか? …おや、その子達は?」

黒髪の男性の後ろにいつの間にか現れた赤いポニーテールにスラリとした体型の物凄い美人さんが少女たちに気がついたようで疑問符を浮かべる。

「おおミリン。シオはどうした?」

「シオ様なら走っている最中に疲れたので先に行くように言われました。本当は残ろうか迷いましたが緊急事態かもしれませんでしたのでやむを得ず先に参りました」

「……相変わらず体力ねえなアイツ。まあそのうち追いつくだろ。

で、嬢ちゃん達はこんな遅い時間に、しかもこんな寒いなか何やってんだ?」

サトーと呼ばれた男性はしゃがみこんで三人の少女達と同じ目線になりどうした?と問いかけてくる。

大人であるにも関わらず不思議と警戒心も沸かず、三人はどうしてここにいるかをぽつぽつと話しだす。

「マッチが全部燃えちゃって」

「リカが火をつける時思い浮かべた物が出るって言ってたのよ」

「ん」

「あ、この子はスーって言って声が出せないんだから」

「売れたマッチはロミちゃんが一ネルで売ったの」

「ん」

「この街の大人皆ケチなんだものしょうがないじゃない!」

「それで寒かったの」

「ん」


「ごめんちょっとタイム。ミリン、分かった?」

「取りあえずこの子たちの名前がスーさん、ロミさん、リカさんだという事は何とか」

あまり要領を得ない説明にサトーもミリンも首を傾げていたがそこにさらに新たな人影が近づいてくる。

ぜーはーぜーはー、と前かがみになりながら荒い呼吸を整えようとしているローブを着た青年にサトーが声をかける。

「おせえぞシオ。だからもっと体力つけろっていつも言ってんだろ」

「ぜー、うるさいよ、はー、サトー、ぜー、そう言うのは、はー、君に任せるって言ってるでしょ」

「シオ様! その手の事ならぜひ私もお手伝いしますが!?」

「ああうんありがとうミリン。気持ちだけ受け取っておくよ」

疲れとは別の理由で汗を流す青年が顔を上げた瞬間三人の少女は顔を赤らめた。

銀色の髪に華奢な身体だが顔つきは綺麗に整っており先に来たミリンと並べばそこだけ絵画のような美しさを秘めている。

特に顔を上げた際に眼があったスーは恥ずかしいようにもじもじとロミの背中側に隠れた。

「……会って数秒でオトせるその顔を物理的整形手術(デンプシーロール)するのは後にしてシオ、この子たちなんだが」

「うん? 恐らく家族が亡くなり人飼いに売られさらにそこから別の所に売り払われそうになったため逃げ出して三人で生きていくにはどうすればいいか考えた結果マッチを売って生活費を稼ごうとしたはいいけど思うように売れずかと言って帰る家もなく仕方なく売れ残ったマッチを燃やして暖をとっていたけれどそのマッチすら無くなり寒さと空腹と眠気に襲われながら震えていたであろうその子達がどうかしたのかいサトー?」

「すげーなお前」

「このくらいは最近の時勢とその子達の足元のマッチとかを観察すれば直ぐに分かるよ。で、どうするの?」

「決まってんだろ。まさか反対しないよな」

洞察力が高すぎるシオの発言は主語が抜けていたが問われたサトーには何の事か分かっていたようでそれに対する切り返しにシオの方も頷いた。

ちらりと横目で慈愛に満ちた顔で同様に頷くミリンを確認したサトーは再び少女達に問いかける。

「あー、どうかな嬢ちゃん達、行くところが無いんなら俺達と一緒に来るか?」

問われた内容を脳が上手く処理してくれないのか少女達はピタ、と固まる。

ソレを見ていやあサトー、君それもう誘拐犯と同じだよね?とにやにやしながら話しかけたシオに一撃を見舞ったサトーはもう一度問い返す。

「あー怪しいのは100も承知だけど別に俺達は嬢ちゃん達を取って食おうなんて思っちゃいないぞ。ただ助けたいだけだ。つーか見捨てるとか大人のすることじゃないしな。あ、因みに俺らはギルドって言う商業組合に入っているメンバーだから人飼いとかじゃないぞ。だからえーっと「…どうして?」あん?」

頭を掻きながらどうにか分かってもらえるように言葉を選んでいたサトーの話を中断したのは一歩前に出たロミだった。

「どうしてあたし達にそんな事言ってくるの? あたし達なんかマッチも碌に売れないのに、役に立たないから人飼いに売られちゃうしかないのに、何で助けるなんて言えるの!?」

真剣な顔でキッと眼を合わせてくるロミにサトーもしっかりと目を合わせ返す。

「それは俺達が「幼女はこの世の至宝である!」と思ってるからだな。だから嬢ちゃん達を見つけた時「はああ!カワイイカワイイあの幼女達マジカワイイ!もうお持ち帰りしたいですオリシュ様!」って思ったんだ。と言うわけで「幼女よ! 特にその真ん中のツインテールの幼女よ! 私の事をお兄ちゃんと呼ぶ気はないか!」?

……シオ、ミリン、悪いけど交代。ちょっとアイツら黙らせてくる」

せっかくの見せ場なのに君は本当にカッコつかないねえ、と呆れているシオとミリンにバトンタッチしたサトーは全力ダッシュから登場からずっと騒ぎまくっていた集団の中の神父服の男に向かってドロップキックをかましに行った。

やれやれと苦笑するシオとミリンはさっきまでサトーがそうしていたように少女たちと同じ目線になるように屈みこむ。

「サトーの代わりに言うけれど僕達は皆色々と事情を抱えててね。君たちのように小さい頃一人っきりになったりした人もいる。サトーなんかは髪と眼の所為で虐められたりもしたみたいだしね。だから僕たちは同じような人を見つけたらこういうふうにいつも声をかけるんだ。僕達と家族にならないか? ってね」

「大丈夫ですよロミさん、スーさん、リカさん。皆さんとてもいい人達ですから」

三人の少女は二人の顔を見つめ、次に騒がしい集団を見る。

「お前らが変なタイミングで変な事言うから変態な説得文句になっちまっただろうが!」「何だと!? 幼女を前にしながら冷静に説得が出来るとは流石同志サトー!」

「もうサトーさん会長に就任しちゃってもいいんじゃない?」「そうそう子供にも幼女にもすぐ懐かれるし」「何で文句言いにきてんのにそんな尊敬の視線を注いでんだよド阿呆ども!」

もう一度ミリンに視線を戻す。

「大丈夫ですよ。皆さん変わってますがとてもイイ人達ですから」

若干修飾されたがそこには信頼の念がうかがえる。

実際この二人にもさっきまでいたサトーにも自分達を買った人飼いのような嫌な気配を感じる事も嫌悪感を抱く事もなかった。

「今日だって皆でこれからパーティーをしようって話だったんだ。この日は毎年全員で祝おうって決めててね。きっとそんな日に僕達と君達が会ったのは偶然なんかじゃないと思うな」

では改めて、と前置きしたシオとミリンは最後にもう一度問いかけた。

「僕(私)達と一緒に来ませんか?」







次の日大通りにはマッチ売りの姿はなく買い物に出かける、見た目は全く似ていなくともまるで家族のような集団がいたそうだ。

そしてその中には花のように笑う三人の女の子たちもいたという。





















あとがき


二つほど謝らなければいけません。

一つ、更新こんなに遅れてすいませんでした!

二つ、幼女はしばらく書かないって言っておきながらまた幼女、しかも三人も書いてすいませんでした!!

いや、幼女を書かないようにしていたからこんなに空いたのかそれともしばらく空いたからまた幼女を書いてしまったのかは分かりませんが

しばらく書かなかったおかげでネタも増えたのでまたしばらくは書いていきたいと思います。

あと次こそはロリじゃない作品を!

ではまた次回に

2011/12/31 投稿

2012/01/05 修正






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