※番外です。本編とはそこまで関係ありません
※TS要素を含みます。それでもよろしかったらどうぞ。
「同志サトー。何も言わずにこれを飲んでくれ」
はい
→いいえ
「同志サトー。何も言わずにこれを飲んでくれ」
はい
→いいえ
「同志サトー。何も言わずにこれを飲んでくれ」
はい
→いいえ
「同志サトー。何も言わずにこれを飲んでくれ」
はい
→いいえ
「同志サトー。何も言わずにこれを飲んでくれ」
「……………」
→はい
いいえ
「おお! 飲んでくれるか! いや強制したようで済まないな」
……無限ループって怖いね
せめて勇者として召喚してほしかった番外1
「で、コレはなんだ?」
「同志サトー。何も言わずにこれを飲んでくれ」
「説明する気はないのな……あと同志言うな」
大通りで出会った瞬間に差し出された小壜をあらためて見る。
薄い黄色の、一見すれば何の変哲もないレモンジュースのようだが、かつてこれほど怪しいと感じたレモンジュースがあっただろうか。
ともかくこれを飲まない限り俺はセウユという無限ループからは逃れられそうにない。
一瞬投げ捨てようかと思ったが多分この変態は小壜が地面に届くより先にキャッチするだろう。
ええい! ままよ!
蓋を開け一気に飲み干す。
瞬間。
「ぐ、おおおおおおお!」
あ、熱い。
骨が! 溶けてるみたいだ!
身体を抱き締めるようにしてうずくまり必死で痛みに耐える。
何分たっただろうか。痛みが引き意識がはっきりしてきた。
気だるさがあるものの取りあえず身動きに支障はないようなので原因たるセウユに文句の一つでも言ってやろうと顔を上げると
「あれ?」
さっきまでよりセウユの顔の位置が高い。しかも心なしか声の調子がおかしい。頭も重いし身体のところどころに違和感がある。
セウユの方も何か驚いた顔をして俺の方を見ている。
「どういう事だ。本来なら7~8歳ほどの幼女になるはずだったのにこれでは少女、いやもう大人に足がかっているではないか」
待って、物凄く待って。嫌な予感しかしないけど色々待って。
とにかく確認。
頭、妙に重いと思ったら髪が伸びてる。
身長、セウユの胸辺りまで下がってる。
肩、なで肩になってる。
袖、手首あたりまでの長さだったのが指先まで届いている。
胸、何か二つの山がある。
裾、明らかに地面についてる。
股、大切な愚息がいない!
鏡! 鏡はどこだ!
とにかく辺りを見回して鏡を探す。
丁度昨日降った雨による水たまりがあったので確認すると
「誰だ!?」
明らかに見覚えのない顔がこっちを見て驚いていた。
「おい! どういうことだコレは!?」
「む、ああ済まない。どうやら開発班が薬の調整に失敗したようで本来よりも若がえる年齢が少なかったようでな。不本意な結果になってしまって申し訳ない」
「違う! なった姿が幼女だろうが少女だろうがどうでもいいんだよ! なんでこんなことになってんのかって訊いてんだよ!」
「本当に分からないのか?」
「そうだよね! お前ら(ロリコン)だもんね!」
何を望んでたのかなんか直ぐに分かっちゃうのが悔しい。
チクショウ、だから関わりたくなかったのに。異世界来訪の上についに性転換まで経験してしまうとは。主人公要素は欲しいけどコレはいらんわ。
「うう~」
「済まない、泣くほど悔しいのは分かる。だが安心するがいい。失敗しない者などいない。私達ならきっと本物の幼女になれる薬を作る事がで出来るはずだ」
「要らんわんなもん! それより速く元に戻る薬かなんかをくれ」
「は? なぜそんな薬を作らねばならんのだ?」
「そこは疑問に思うことじゃないだろう! どうしてそうなる!?」
「本当に分からないのか」
「そうだよね!! お前ら(ロリコン)だもんね!!」
だから関わりたくなかったんだよ
取りあえずセウユに何が何でも元に戻る薬を作らせるように頼んだはいいがこの後どうしよう。
折角の休日だったのにあのアホのせいで一気にテンションが下がってしまった。
仕方なくギルドに寄って事情を説明して明日からの仕事に関してバルサさん達と相談でもしようと一歩踏み出す。
裾を踏む。
つんのめる。
ぼてっとこけた。
「あ、歩きづらい」
裾や袖だけじゃなく服全体がだぼだぼであるため動きづらいったらありゃしない。
唯一きついのが胸だというのだから余計に悲しくなる。
自分が巨乳になってもなんも嬉しくないわ!
ちょっと触ってみたけど何にも嬉しくないわ!
むしろむなしいわ!
転ばないように裾をまくってさらにゆっくり歩く。
バランスも狂ってるようでただ歩くだけで一苦労だ。
歩幅もちっちゃくなっているようでこれではギルドにつくのにかなり時間がかかってしまいそうだ。
と、その時
「あ、黒髪! 兄ちゃんだ!」
「サト兄ぃだ! てりゃー!」
「うりゃー!」
「とりゃー!」
後ろからちびっこ共の声と共に蹴りを喰らった。
普段なら避けるか受け止めてそのままぽーんと投げたりするのだが今は残念、少女の身体。
あえなく二度目の転倒となった。
「あれ? この人兄ちゃんじゃない?」
「ホント―だ―。黒髪だけど女の人だー?」
「いいからどけちびっこ共」
背中に乗ってからようやく気付いた子供達を下ろして起き上がる。その間にも子供達は俺が誰なのか話しあっていた。
「誰だろ? 黒髪なんてサトー兄ちゃんしかいないはずだよな?」
「兄ちゃんの姉妹かな?」
「サトー、一人っ子、て、言ってた」
「じゃあ彼女とか」
「ねーよ」
「ないよ」
「ないない」
「シオお兄ちゃんならともかくサトーお兄ちゃんはないよ」
「え? サト兄ぃって男の人が好きなんじゃなかったの?」
どうしよう、マジで泣きそうだ。あとジャン、お前それ誰から聞いたか知らないけどデマだから信じないように。
思わず顔を覆いたい状況になってると、とことこ、と近づいてくる子がいる。
「あん?」
「ん?」
スーちゃんだった。友達と一緒に遊んでいたらしい。
何か首を傾げてじっと俺の顔を見ている。
「ん~、ん! ん!」
何か思いついたのかぴょんぴょんと手をのばして飛び跳ねている。
この仕草はしゃがんでという意志表示だったので大人しくしゃがむと今度はぺたぺたと顔を触られた。
「ん~? ん~~」
………何これ? めっちゃ可愛い。 【なんか知ってるような】みたいな顔してるスーちゃんが至近距離にあるんですけど。
……セウユグッジョブ!
「んー、ん? ん! ん、ん、ん!」
あん? 何か反応が変わった。
「どうしたのスー?」
「ん! ん!」
「え? この人はサトー兄ちゃん? どういう事?」
ス、スーちゃん!
この姿で気付いてもらえたという事実に我ながら信じられないほどテンションが上がっているのが分かる。
今日はさんざんな目に会ったと思えば中々いい日じゃないか! まさかスーちゃんが何も言わずに俺が誰か分かってくれるとは!
「えーっとお姉ちゃんはお兄ちゃんなの?」
「その質問は色々と嫌な質問だが残念ながらイエスだ」
ええー! と驚きの声を上げる子供たちだったがすぐさま
「まあ兄ちゃんだしな」
「お兄ちゃんだもんね」
「サトー、なら、しかたない」
「お前ら前から言いたかったけど俺の事なんだと思ってるんだ?」
あまりの俺に対する事態の受け入れのよさにこの街の俺の立ち位置が本気で不安になってきた。
因みに俺がどうしてサトーだと分かったか訊いてみたところ【なんか不幸そうなかんじがしたから】だそうだ。
一気に落ち込んだのは言うまでもない。
「って事でセウユが薬作ってくるまでこの姿でいなきゃいけないんだよ」
「あはは、それは、災難でしたね」
「大体なんで俺に薬を渡したんだよ? 自分らで試せよ」
「…………」
(恐らく魔法や魔法薬の抵抗力が一切ないからこそ選ばれたんでしょうね)
何か言いたそうな顔してるミリンに愚痴を言いながらカウンターに座りこむ。
スーちゃん達と別れ何とかギルドにたどり着いた俺は直ぐにバルサさん達に報告した。
最初は驚いたバルサさん達だったが「まあサトーだしな」の一言で終わってしまったのは納得がいかない。
ミコさんに至っては何処から持ってきたのかウエイトレスの服を持ってきて着させようとするし。
着ませんよ。…そんな悲しそうな顔しても絶対に着ませんよ。……いや、嬉しそうな顔しても着ませんから。表情の問題じゃないですって。
「うう~、流石にコレはちょっと落ちつかない、って言うか本来あるはずの物がなくて他のがあるっていうのがこんなに違和感感じるとは思わなかった」
ギルドであらためて鏡をみたところ大体15、6歳くらいだろう少女がそこにはいた。
烏の濡れ羽色と言っていい光沢のある黒髪が肩のあたりまであり、顔つきも全く別人のようで悔しい事に可愛らしい顔になっていた。
胸も巨乳と言っていい大きさではっきり言って下心ある男なら放っておかないような身体をしている。
…ああそうだよ! ここに来る途中何人かにナンパされたよ! 男の時には道で女性に声をかけられるなんざ道を聞くお婆さんくらいだったのに何だこの差は!
おばあさんから「あんたいい男になるよ」って言われた事なら何度もあるのに一度もそんな浮いた話は無かったわ!
「うう~」
なんか涙出てきそうだ。
余る袖を握りながらカウンターを叩く。特に意味はないけど八つ当たりでもしてないと涙が止まらなそうだ。
(なんだろう。このサトーさんかわいい)
「うう~、ミリン~、もし俺が元に戻んなかったらお嫁にもらってくれるか?」
「え? ええ……って、いえいえいえ! 何言ってるんですかサトーさん!」
「ああごめん。何かマジでコレどうしよって思っちゃって」
「…大丈夫ですよ。セウユさんが薬を作ってくれるまでの我慢ですって」
「…そうだよな。あの変態は方向性こそ大いに間違ってるけど腕は確かだもんな。それまでならなんとかなるかな」
「ええ、心配ないですよ」
「そっか~」
「そうですよ」
なんかほんわかした空気になってきたおかげか少し気も楽になってきた。
ああ、この調子ならなんとかなりそうな気がしてきた。
ミリンとお互い笑いあってると
「サトーが女になったって本当かい!?」
扉を強く開けたシオが開口一番そんな事を訊いてきた。
あ、ストレスゲージが一気に限界点まで到達しそう。
きょろきょろしたシオが俺の姿を確認するとずんずんとこっちに歩いてきた。
なんだ?
「サトー、なんだよね?」
「ああ、不本意ながら今は女になっちゃってるけどな」
俺の答えの何処に喜ぶ要素があったのか分からないがとてつもなく嬉しそうな顔をしたあと俺と向かい合うと真剣な顔になってこう言った。
「やっぱり失敗なんかしていなかったんだ。やっと出会えた僕の勇者様!」
「……………………あん?」
「分からないのかい。君は僕が召喚した。そして勇者は必ず女だ。ならば君は勇者に決まっているだろう」
「いやおかしいだろ。確かに俺はお前に召喚されてるし勇者は女なんだろうけどそれで俺=勇者にはならんだろ。ていうか召喚したことそんなはっきり言うな!」
ほら! ミリンが吃驚している!
「何を言っているんだ? この僕が召喚した人が女性ならそれは勇者に決まってるじゃないか?」
「決まってないだろ!? だったら俺が男の時でも同じ反応しろよ」
「?」
「言っている意味が分からないって顔すんな。いいだろう、万が一俺がTSした事で勇者の条件を満たしたとしよう。だけど肝心の属性はどうした?
黒髪黒目は無属性のはずだろ?」
「そんな細かい事はどうでもいいんだよ! 君が女だってのが重要なんだ!」
……どうしよう、シオが壊れた。
「大体君だって勇者に憧れてたんじゃないのかい?」
「いや憧れてたけどそれとこれとは…」
「なら問題ないね! さあ行こう僕達の冒険の日々へ。大丈夫、僕がしっかりサポートするから何の心配もいらないよ」
「話は最後まで聞け! あ、こら引っ張んな! 力落ちてるから抵抗出来ねえんだよ!」
「うん? 駄目だよ、女の子がそんな口をきいちゃ。僕は優しい言葉づかいの女性の方が好きだよ?」
「そんなとびきりの笑顔と共に言われようが口調は変えねえよ! 後ちょっとドキッとなんかしてねえからな!」
ていうかミリン? ミリンはどうした? こういう場合必ずミリンが介入して来るはずだろ!?
――ってミリ―ン!? 魂抜けてる!? 別に俺口説かれた訳じゃないから戻ってこーい!
「さあ行こう! 僕達の冒険はこれからだ!」
「いやちょっと、ま、やホント待って、マジで、ねえちょっとー!」
せめて勇者として召喚してほしかった 完
「という夢を見たんだ」
「夢オチは二度目だね」
まあ実際にこのシオがそんな行動をとるとは思えなかったから途中で気付いたのだけど。
「でもあのロリコン共なら本当にそういう薬を作っちゃいそうで困るわ」
「………」
「どうしたシオ?」
「…流石に若がえりはないけど性別を変える薬ならあるよ」
「あんの!?」
「もっとも、君がみた夢のように永続的な物じゃなくて効果は一時的な物だけどね。年齢に関しては操作は不可能だよ。それが出来たら人間は不老になっちゃうしね」
「は~、相変わらず俺の世界の常識が通じない世界だな」
「因みにもしその薬が手に入ったらどうする? 自分で使う?」
「使わねえよ」
「まさか僕に使わせるんじゃ!?」
「使わねえよ! あーもし有ったらか、そうだなー………ミリンに飲ませて名実ともに完璧な理想の女性にでもなってもらうとか」
「…………」
「なーんて冗談だけ…ど、おい、なんだ『その発想はなかった』みたいな顔は。なぜ無言で立ち上がる? 何処へ行くつもりだ?」
すたすたと玄関へ向かったシオの腕を掴んで止める。
「サトー、世界の真実が全て正しいものだとは限らないよね」
「そうだな、こっちを向け」
「きっとあるべき形に直すのも人に与えられた試練だよね」
「かもな、こっちを向け」
「…………」
「…………」
「フン!」←裏拳
「なめんな!」←受け止めて手首を取る。
「なんで邪魔するんだい?」←あいた顔面に掌底。
「するわ! 何をするつもりだお前は!?」←手を離して一歩後退
「クエストに行くにきまってるじゃないか」←両手を握りしめてファイティングポーズ
「そのクエストの内容によっては俺は何が何でもお前をここで止めなきゃいけない」←天地○闘の構え
結局一日中喧嘩をしていたせいでお互いどうでもよくなってしまった一件だった。
おまけ
後日、つい口が滑ってこの夢の内容をセウユに漏らしたところ
「フッまだまだ甘いな同志サトー」
鼻で笑われた。イラッとするよりも意外性の方が大きかったので理由を訊いてみる。
「確かに私達はロリコンだ。それは否定せんしむしろ誇りに思っている。この世は光と闇で出来ている。すなわち物事には全て始まりと終わり、過去と未来がある。
ゆえに未来に希望を抱きそのささやかな胸を膨らませる穢れを知らない少女達はあれほどまでに可愛らしい。正にこの世の至宝。神が与えし美しさと愛らしさを兼ね備えた究極の存在。
しかしだからといって他の年代の女性をないがしろにするなどとは二流のやること。幼女少女を超えた妙齢の女性熟女老婆が駄目だと思うのはその部分しか見ていないからにほかならん。
考えても見るがいい? その者達にも過去はあろう。残された未来は少なくともそのぶん完結された幼女時代や少女時代がそこには存在している。
故に想像せよ。その者達の幼き頃の姿を。クールにふるまう女性は実はドジっ娘だったと、ツンデレな娘は『大きくなったらお兄ちゃんと結婚する』と可愛らしく宣言する子であったと。
もちろん真実は違うかもしれん。そのままの状態で育ってきたかもしれん。だが私はそれでも一向に構わん。
なぜなら! 一流のロリコンは現ロリ元ロリはもちろんの事。男ですらも脳内補完により性転換させロリの幻想へ導くことが出来るのだから! 見よ! この世はロリで溢れている!」
「…………………」
真のロリコンは格が違った!
「なお、この実際にそうだったかどうかなど確認しない限り全てのものにロリの可能性とそうでない可能性がある理論のことを『シュレーディンガーのロリ』と言うそうだ。これも初代であるオリシュ様からのありがたいお言葉である」
またオリシュか! どんだけ無駄なカリスマ発揮したんだよ来訪者の先輩。
回りの客、特に女性がもの凄い白い目で見ているのに気付いているのかいないのか知らんが「もちろん、最高なのは永遠のロリ! 吸血鬼の美幼女よ!! 私は必ず貴女のもとへと参ろうぞ!!」と一人で結論づけてぐびぐびと残った酒をあおっている。
これ以上傍にいると俺も仲間に思われそうだから早々にこの場を離れることにした。
因みに先ほどの視線の中にセウユを何処か尊敬のまなざしで見ている奴がいたような気がしたが気の所為だろう。
後ろで「弟子にしてください!」とか聞こえるけど気の所為だ!
「ほう、中々見上げた精神だな。良かろう! 君も晴れて同志の仲間入りだ!」とかも聞こえるけど気の所為だ!!
あとがき
砂糖「なんで番外?」
塩「夢オチは本編で何度も使うもんじゃないからさ」
えー、おそらく皆さんの感想を代弁しましょう
お前がTSするんかい!Σ\( ̄ロ ̄)バシッ
今回のネタは感想欄でのオロン様の意見から思いついたネタです。
事後承諾ながら使わせていただきました。どうもありがとうございます。
恐らく望んだネタとは違っているとは思いますが…
ではなるべくモチベーションがあがっているうちにまた更新したいとおもいます。
2011/8/16 修正