スキル集めを誓ったはいいが現在地はどこだろう。
ジェシーの声を頼りに歩いたから一体ここが何処なのやら。
とりあえず一旦神殿に戻るか。
神殿の天辺がうっすら見える方向へと歩いていく。
そういえばアイテムボックスを確認してなかったな。
こういうゲームは初期に何らかのアイテムが入ってたりしないかな。
練習をかねて思考操作を行ってみる。
むむむむ。
うーむ、難しいな。
何かコツというかうまいやり方があるのかな。
ジェシーは簡単そうに行っていたし。
思考操作って言うくらいなんだからその行為を強く考えたらうまくいきそうなんだが。
路地を歩きながら一心不乱にアイテムボックスを開こうとする。
集中力が足りないのだろうか。
集中力といえば図書室で見たあの本は集中力の本だったな。
よし、藁にでも縋る気持ちでやってみるか。
『諦めんなよ!諦めんなよ、お前!どうしてそこでやめるんだ、そこで!!もう少し頑張ってみろよ!もっと熱くなれよ…!!熱い血を燃やしていけよ…!!人間熱くなった時がホントの自分に出会えるんだ!言い訳してるんじゃないですか?できないこと、無理だって、諦めてるんじゃないですか?駄目だ駄目だ!諦めちゃダメだ!できる!できる!絶対にできるんだから!』
「ぬぉぉぉぉおおおおああああああああああ!!!!!」
懇親の力を込めてアイテムウィンドウを開くことのみを考えた。
するとついに目の前にウィンドウが!
ピコーン
「やった!!ついにできゲフゥ」
あまりにも集中しすぎた結果T字路の壁に激突した。
「あいたたたた」
なんとかアイテムボックスは開いたがこのやり方は何か違う気がする。
全力で集中してようやく出来るんじゃ使い道はないしなぁ。
今度ジェシーにコツを聞いてみるとしよう。
そういえば何かスキルが上がる音が聞こえたな。
「オープンログウィンドウ」
全く苦労せずに開くログウィンドウをみて若干苦笑する俺。
ログウィンドウを見る。
集中力スキルが0.3上昇した。
おお、集中力が上がったか。
さすが読むだけでぐんぐん集中力が増す本なだけある。
書いてあることを実践しただけで効果があるとは。
これで集中力は3.3だな。
そういえば苦労して開いたアイテムボックスをまだ確認していなかったな。
何が入っているのかな。
ウィンドウを確認するとHPポーションと何かナイフのようなものが入っている。
ポーションはジェシーにもらった試供品か。
このナイフは初期装備なんだろうか。
ん?
ウィンドウの下部に何かあるな。
この絵はゴミ箱と隣に表示されているのはGold?
これはお金か!
Gold:1000 と表示されているということは1000ゴールドあるということか。
これはお買い物が出来そうだな。
とりあえずナイフを取り出してみよう。
え~とたしかボックスは一度アイテムに触れるんだったかな。
ウィンドウのナイフのアイコンに触れると右手が光った。
その光が収まると小ぶりなナイフが握られている。
これはなんだろう。
じっと見つめているとウィンドウが開いた。
初心者用剥ぎ取りナイフ
説明『剥ぎ取り用ナイフ。モンスターなどに刺すことにより死体を素材へと変える。戦闘には使用できない』
ふむ、名前そのままな効果だな。
倒したモンスターに刺すだけで解体してくれるのかな。
確かに倒したモンスターをわざわざ解体していたら大変だな。
特に人型モンスターなんかいたら精神的に厳しいものがある。
今のところ必要はないからアイテムボックスに戻しておこう。
ナイフをしまいしばらく歩いたところ大通りまで戻ってこれた。
特に目的地は決めていないが一度神殿まで戻ってみるかな。
そういえば神殿の内部を見ていないことを思い出した。
何があるのか気になるので次の目的地は神殿に決定だ。
大通りをてくてくと歩いていくとあっという間に神殿にたどり着いた。
昨日この階段を転げ落ちたんだなぁと思うとなにやら体がムズ痒くなる。
階段を上り神殿の入口にたどり着いた。
中に入ろうとすると入り口に立っていた兵士に声をかけられる。
「神殿にいかなる用事かな、青年よ」
「いや特に用事って訳ではないですが中がどうなってるのかなぁっと思いまして」
「申し訳ないが安全のため正式な用事が無い者は入ることができないのだ」
ふむどうやらこの神殿は何か特殊な施設のようだ。
「ああ、そうなんですか。分かりました」
「うむ、すまないな」
兵士を乗り越えてでも入りたいというわけでもないのであっさりと引き下がる。
でも正式な用事とか言っていたな。
そのうちクエストとかで入れるようになるのかな。
なにやら重要な施設みたいだしレアなイベントが起きそうだ。
覚えておこう。
しかしいきなり目的が頓挫してしまった。
どうしようかな。
そう思いながら階段を見つめていると落下耐性スキルの事を思い出した。
この階段を使えばスキル上げできるのではないだろうか。
取り敢えず一番下まで降りて実験してみる。
まずは1段だけ上りそこから飛び降りてみる。
…何もなし。
2段目。
…何もなし。
3段目、4段目と増やして行き5段目。
グキッ!
ピコーン
お、スキルが上がった。
慌ててログを開く。
落下耐性スキルが0.1上昇した。
おーしっかりと上がっているな。
ステータスを見るとHPが99/100となっていた。
もう一度やってみよう。
グキッ!
ピコーン
よしよし、しっかり上がる。
痛みもなんか踏んだかな位の軽微なものだ。
痛みはダメージに比例するのだろう。
よしさらにもう一回!
…あれ?
ダメージが無いな。
もしかして落下耐性が上がったから5段じゃダメージがなくなってしまったのか。
じゃあ6段目なら。
グキッ!
ピコーン
予想通りみたいだな。
しかしこれは楽しい。
スキルが上がりまくりだぜ!
そんなことを繰り返し7段目までいったところでふと視線を感じる。
周りを見渡すと何か遠巻きに皆俺をみている。
冷静に考えるとここは街のど真ん中でさらにプレイヤーのスタート地点。
ものすごく人通りの多い場所だ。
そんなところでひたすら階段を上り飛び降り続ける人がいたら流石になんだこの変な奴はとなるな。
その変な奴とは俺のことだが。
急に恥ずかしくなってきた。
「なっなんか足の調子がおかしいかなぁ」
誰に言ってるのか分からない言い訳をしながら神殿を離れていく。
イツカの羞恥心が10.0上昇した。
そんなログが脳内で流れた。
落下耐性のスキル上げは人目の付かない場所で行おう。
スキルウィンドウを見ると落下耐性が1.2まで上がっていた。
1.2で階段6段分か。
スキルを上げていけば昨日落ちた穴でもノーダメージで降りれるようになるのかな。
ああ、そうだ。
若干足がしびれてるな。
HPはどうなってるのかな。
ステータスウィンドウを開くとHPは60/100となっていた。
地味にダメージを食らっていたようだ。
取り敢えずその場に座り込み回復するのを待つ。
立っているより座っている時の方が回復スピードは早いようだ。
ピコーン
ピコーン
定期的にスキルが上がる音がする。
確認すると自然回復スキルが上昇していた。
体力が全回復する頃には自然回復が0.9になっていた。
「さて、次は何処に行こうかなっと」
そう独り言をつぶやきながら立ち上がる。
そういえばお金はどうやって稼ぐのだろうか。
モンスターを狩って素材を売り払うのかな。
でもこういうゲームには冒険者ギルドのようなところがあってそこで依頼を受けられると相場が決まっている。
ちょっくらギルドを探してみますかな。
でもこの広い街を当てもなくうろうろとさ迷っても見つけられなさそうだ。
というか存在しなかった場合完全に無駄になるな。
うーん、どうしようかな。
悩んでいると女の子の声が聞こえた。
「お花いりませんか?一つ2ゴールドですー」
10歳くらいの女の子がカゴに花を入れて立っている。
花売りのようだ。
そうだ彼女にギルドの場所を聞いてみよう。
「お嬢さん、ちょっと尋ねていいかな?」
「はい、なんでしょう?」
「その冒険者ギルドみたいなものってこの街にあるかな?」
「はい、ありますよ」
「その場所を教えてもらえないかな」
「お花一つ2ゴールドです」
可愛らしい笑みを浮かべてそう言ってくる。
この子なかなか商魂たくましいな。
将来が楽しみだ。
「オーケイ、一つ買うよ」
アイテムボックスを開きGoldの部分に触れる。
すると数の入力を求められたので2と発言するとコインが2つ手に現れた。
それを女の子に渡し、交換に青い花を受け取る。
「ありがとうございます。冒険者ギルドは北西区にあります。入り口に大きな剣の看板があるからすぐ分かると思いますよ」
「ありがとう。またね」
ぺこりと頭を下げた女の子と別れると俺は歩き出した。
さっき神殿から離れるときに西の大通りに向かったからここから北のほうへ向かえば北西区とやらに出られるかな。
俺はさきほど買った青い花の匂いを嗅ぎながら北へ向かう。
この花いい匂いがするな。
花をじっと見るとウィンドウが開いた。
青ルビエの花
説明『温暖な気候の地に生えるルビエの花。色により香りの効果が違い青ルビエには鎮静の効果がある。調合などに用いられ香水の原料などにももちいられる』
確かになにやら落ち着く香りがするな。
この匂いは好きかも。
今度あの子を見かけたらまた買おうかな。
そんなことを思いながら冒険者ギルドへと足を進めるのであった。
現在のスキル値
筋力:1.1
集中力:3.3
自然回復:0.9
落下耐性:1.2
解読:0.1
所持金:998Gold
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あとがき
こいつ外にでないなぁ。
ひきこもり型主人公のようです。
イツカが戦闘する日はくるのか!
感想返し
>>通りスカ裏さん
確かにスタミナ減っててもおかしく無いですね。
ステータス確認してなかったからその間に回復しちゃったってことにしておいてくだs
>>通行人Dさん
確かに突然逆にログが表示されると違和感があるかもしれませんね。
LinkDeadも自分が普通に使ってたから違和感を感じなかった!
貴重なご意見ありがとうございます、修正しておきます。
感想ありがとうございます。