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No.18737の一覧
[0] 戦え!戦闘員160号! 第12話:『番外編・天才科学者とぼんくら戦闘員』[とりす](2011/01/20 18:29)
[1] 第01話:『超展開!? 地球に降りた二つの宇宙人!』[とりす](2010/05/10 19:18)
[2] 第02話:『対決! 魔法少女プリンセス・フリージア!』[とりす](2010/05/11 18:38)
[3] 第03話:『新たなる決意! 戦闘員としての一歩!』[とりす](2010/05/14 12:31)
[4] 第04話:『運命の出会い? もうひとりの魔法少女!』[とりす](2010/05/18 17:01)
[5] 第05話:『奇策! 160号の罠!』[とりす](2010/05/22 19:45)
[6] 第06話:『嵐の予兆!? 束の間の非日常!』[とりす](2010/05/27 21:19)
[7] 第07話:『黒星からの使者! わがまま皇女様のご指名!?』[とりす](2010/06/02 16:16)
[8] 第08話:『御門市観光! 引き寄せられた逢瀬!?』[とりす](2010/06/13 07:45)
[9] 第09話:『決戦! 御門市廃ビルでの死闘! 前編』[とりす](2011/01/01 19:33)
[10] 第10話:『決戦! 御門市廃ビルでの死闘! 後編』[とりす](2011/01/14 03:37)
[11] 第11話:『王の帰還! 黒き星の思惑!?』[とりす](2011/01/18 05:09)
[12] 第12話:『番外編・天才科学者とぼんくら戦闘員』[とりす](2011/01/21 08:42)
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[18737] 第11話:『王の帰還! 黒き星の思惑!?』
Name: とりす◆6afcdd68 ID:a6f3365c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/01/18 05:09
 ファントム・メダルのシステムは、原理はともかく、効能は極めて単純である。
 そのキッカケは、いつだったか、ヴェスタが得意げなキメ顔で言っていた台詞に由来する。

『人間の脳が仕様を理解できんからな。例えば私は超天才科学者だから、貴様に翼をつけてやることなど造作もないが、しかしその動かし方を脳が知らないのでは、翼もただの飾りに成り下がる。人間は自分の想像外の物は、理解できても把握することはできないようになっているんだ。鳥の真似をしても人は空を飛べない――絶対にな』

 そう、人は人以外にはなれない。それ以外を知る術がないからだ。
 しかしノワール脅威の科学力で、それを覆すことができれば、どうだろうか。
 人間が翼の羽ばたかせ方を、触手の動かし方を、糸を吐き出す技術を、『理解』することさえできれば、その能力を自在に操ることができるのではないか――。

 ファントム・メダルは、それを装着したからといって、飛躍的に筋力や跳躍力が上がるわけでもないし、目に見えてパワーアップするような効果はない。
 ただ、俺の全身箇所、そのあらゆる場所にあらかじめて仕込んでいる『ファントム・アビリティ』ともいうべき擬似的な生物機能を制御し、俺がその使い方を分かるよう、生物データを情報化したものを無理やり脳に流し込んで、一時的にその生物であることを脳に「誤認識」させる――それがメダルの能力なのだ。
 例えば試作型として選んだサンプル・蜘蛛メダルを例に挙げれば、こいつが発動できる能力は手首から発射されるノワール特性の粘着性の糸。それを蜘蛛のように自在に操れるよう、メダルが蜘蛛の生態データを脳に送り込む。
 そうすることで俺は人間でありながら、傍から見れば蜘蛛であるかのように糸を手繰り寄せ、巣を作り、自由に移動することが可能となる……例え初めて発動する技能でも、俺はそれを、まるで生まれながらにして持っていたかのように、手に取るように『理解』できているというわけだ。

 ……とまあ、理論上そういう構造だったのだが、改造体である俺の肉体はともかく、脳みそは普通の人間のそれと変わらないわけで、いかにノワールの科学力が宇宙一であったとしても、なかなか脳が異物である生態データに拒絶反応を起こして素直に従ってはくれず、開発は難航の一途を辿っていた――。






「それがどうよヴェスタ。やっぱり俺って本番に強い男だったんだな!」

 改造室で目を覚まし、戦いが終わったことを聞いた時、真っ先に胸に浮かんだのは勝利の余韻というよりも、メダルを制御することに成功したことへの達成感だった。

「よっしゃあ! 俺ってば天才!」
「……お前は本当にどうしようもないくらいのオオバカだな」

 だというのに、俺と開発を同じくしたおさげ幼女ヴェスタ・ノワールは、心底呆れたような声と冷めきった目で俺を見つめ、ただ嘆息を濃い色にするばかりだ。面倒くさそうにタッチパネルをいじりながら、俺の素体の破損チェックに余念がなく、むしろ俺のことなんてシカトの一点張りである。

「んだよヴェスタ、もう少し喜べよ。これで第二第三のメダルの製作に着手できるんだぞ。いやあ、俺も全身に仕込んだこの秘密技能が無駄になるんじゃないかと心配で――」
「喋るな、馬鹿が移る」
「…………」

 冷たいお言葉である。
 流石に盛り上がっていた俺の感情は、一気に波が引いたように穏やかなそれに戻る。
 どうしようもない沈黙が、改造室を覆っていた。
 なんとなく俺も気まずくなって、視線をそらしたり、戻したりしながら、挙動不審に振舞う。
 ヴェスタはただ、淡々と自分の作業に没頭していた。

「……あの、ヴェスタさん」

 頭をかきながら、静かに、決して荒波を立てないよう、相手に刺激を与えぬことだけに細心の注意を払い、ぽつりと訊ねてみる。

「もしかして、怒っていますか」
「怒る? 私が? お前に? ――何故」

 こっちを見てもくれない。
 いや、頑張るんだ俺。ここで負けちゃいけない。
 挫けず、更なる接触を試みる俺。

「いや、まあ、メダルお前に内緒でとってきちゃったし……」
「殿下の行われたことだろう。私が口を挟むことではない」
「そうなんだけど、結果的に頼んだの俺だし……いや、相談しなかったのは悪かったと思ってるよ」
「唾を飛ばすな。不快だ、死ぬ」
「……っ」

 あまりに強硬な態度に、さすがに温厚で優しく態度もいいと評判の俺でも頭にくる。
 つい口調が荒々しくなったとして、それを誰が責められようか。
 これで失敗したというなら俺も自身の迂闊さを反省もする。けど結果的には何もかも成功だったのだ。少しはヴェスタだってこの研究成果を喜んでもいいんじゃないか。
 その態度は、気が付いたら知らないうちに言葉として口から飛び出していた。

「だってお前、言ったら絶対反対しただろっ!」
「反対したに決まっておろうがこのオオウツケがっ!!!」

 ……俺の、何倍もの音声で怒鳴りつけられた。




 ◆◆◆

「いいか! その容量の少ない脳みそによおぉぉぉく叩き込んでおけ! あのメダルはまだ私が完成品と認めていない物だったんだ! 科学者が、自分の満足いっていない作品を勝手に使われて、あまつさえそれがたまたま成功したからとドヤ顔してる奴を見て喜ぶと思うか! あんな欠陥品を本番に使わせたとあってはこの私の一生の恥なのだぞ! どう責任をとってくれるのだ! 貴様が、私の輝かしい栄光に泥を塗ったのだ! こんな屈辱は生まれて初めてだ、こんなに怒り狂ったのはお前が初めてだ!! 死ね! いやいっそ私の手で分解してくれるわっ!!」
「おお。派手にやっておるのう」

 改造室の扉一枚を隔てた廊下側では、今まさにドアを開こうとしていた紅い瞳の少女が、やれやれと肩を竦めているところだった。そっと伸ばしていた手を引っ込める。

「今行くのはキケンなようじゃの。ここでアヤツの武功を褒めようものなら我にまで飛び火がくるというもの。我の代わりに精一杯賛辞を与えておいてくれ、将軍」

 少女が振り返った先には、心痛な面持ちで直立しているディアナ将軍の姿があった。彼女は深く頷きながらも、やや困惑したように眉をひそめながら、目の前の存在に対して敬意を払いつつ発言を求める。

「しかし皇女殿下……本当によろしいのですか。出発の儀を行わずご帰還なさるなど」
「よいよい。堅苦しいのは苦手じゃ。それに存外、随分と長くこの星に滞在してしまったからの。あちらで残している執務に支障をきたすし……見たいものは、この目で見れたしな」

 ディアナには、正直、理解できていなかった。本星が急に使者を送ってきたこともそうだが、ただ1度の交戦だけを見て、それで満足したと言って急に帰ろうとしていることも――。

(……総帥は、何をお考えなのか。いや、本当は、何を見たかったのか……?)

 偉大なる主に疑念を抱いているつもりはない。ただ、この一連の行動は不可解極まるものであった。
 だが少なくとも、この目の前の皇女に示した結果は、決して悪い物ではなかったはず。それは、彼女の表情からもおのずと推測ができる。ディアナはただ、そのことに心の底から満足することしかできなかった。

「――ああ、そうそう。将軍よ。我が名において、一つだけ命じておこう」
「……っ! ハッ……何なりと」

 ディアナは腰を深くし、その命令を享受する姿勢をとった。
 使者の言葉は、そのまま自身の言葉と思え――それは総帥自らが仰っていたことだ。
 決して違えるわけにはいかない。

「この先、あの男を束縛するな。可能な限り、望むものを与え、好きなようにさせてやれ」
「…………はっ?」

 言われたことが一瞬理解できず、ディアナはその妖艶な美貌をまるで子供のように幼くし、きょとんとした目を相手に向けてしまった。しかし彼女はその表情が見たかったといわんばかりに悪戯めいた笑みを浮かべ、ゆったりとした足取りで歩き出す。

「久方ぶりに我を愉しませた、その労に報いねばな。もっとも、あの男が金や命のような低俗な物を要求するとも思えんが」
「お、お待ちください殿下。あの男というのは……160号のことですか?」
「他に誰がおる。――我は思うのだよ。恐らくあの男はの、この先も貴殿の裁量を越えた申し出を幾つもしてくるであろう。だから我が、あらかじめそれを赦すと申しておるのじゃ。“あやつの好きにさせよ”と」
「そ、それはしかし、作戦指揮に支障が――」
「ははは、将軍」

 ふいに足を止め、振り返り――その血塗られた瞳が、ディアナを辛辣に射抜いた。

我に同じことを言わせるつもりか・・・・・・・・・・・・・・・?」
「め、滅相も……っ!!」
「では、良い。なに、やつにそれを伝える必要はない。貴殿はきたるべき日に是と答えればよいだけじゃ。きっと、面白いことがおきるぞ。今日以上に面白いことがな。……くくく」

 ははは、はははは、ははははははははははははははははははははははははははっ!!
 廊下に、王の歓声が怒涛のように響き渡る。
 それを唯一傾聴することを許された者は、ただ、頭を地面に下げたまま、微動だにすることはなかった。




 ◆◆◆

 その日。
 気が付いたら、皇女殿下の姿は既に基地になかった。

「帰っちゃいましたねー、殿下」
「そうだな」
「結局、何しに来たんすかねあの人?」
「分からん」

 俺達は、そう首を捻ることしかできず、謎を多く残したまま、黒き星ノワールの使者は波紋を与えて地球から去っていった。
 彼女の退場が、次なるステージへの新たなる幕開けであることを、この時俺はまだ知る由もなかったのである――。

「……なんか格好よくそれっぽいモノローグいれてますけど、本当にそうなんすか? せんぱい」
「分からん」
「はぁ……。ま、いいや。訓練しましょーよーせんぱい」
「お前本当に訓練が好きだなあ……」
「はいっ! だって爽快に首折っても死なないじゃないすか! それが楽しくて!」
「怖ぇえよ!」

 こうして俺達は、殿下のいない日常へとあっという間に戻された。
 だが事態は、既に、変わっていたのだ。
 俺達とは係わり合いのない場所で――俺達ではなく、もう片方の星が。






※次回、覆った戦局盤

勝った!第一部完!
というわけでもないのですが、ここで一区切り。
次回から、白き星のほうの事情が少しずつ垣間見えてきます。
残る登場人物は二人。そのどれも女の子です。期待がもてますね。

嘘つきました。女の子と女の人でした。


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