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No.18737の一覧
[0] 戦え!戦闘員160号! 第12話:『番外編・天才科学者とぼんくら戦闘員』[とりす](2011/01/20 18:29)
[1] 第01話:『超展開!? 地球に降りた二つの宇宙人!』[とりす](2010/05/10 19:18)
[2] 第02話:『対決! 魔法少女プリンセス・フリージア!』[とりす](2010/05/11 18:38)
[3] 第03話:『新たなる決意! 戦闘員としての一歩!』[とりす](2010/05/14 12:31)
[4] 第04話:『運命の出会い? もうひとりの魔法少女!』[とりす](2010/05/18 17:01)
[5] 第05話:『奇策! 160号の罠!』[とりす](2010/05/22 19:45)
[6] 第06話:『嵐の予兆!? 束の間の非日常!』[とりす](2010/05/27 21:19)
[7] 第07話:『黒星からの使者! わがまま皇女様のご指名!?』[とりす](2010/06/02 16:16)
[8] 第08話:『御門市観光! 引き寄せられた逢瀬!?』[とりす](2010/06/13 07:45)
[9] 第09話:『決戦! 御門市廃ビルでの死闘! 前編』[とりす](2011/01/01 19:33)
[10] 第10話:『決戦! 御門市廃ビルでの死闘! 後編』[とりす](2011/01/14 03:37)
[11] 第11話:『王の帰還! 黒き星の思惑!?』[とりす](2011/01/18 05:09)
[12] 第12話:『番外編・天才科学者とぼんくら戦闘員』[とりす](2011/01/21 08:42)
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[18737] 戦え!戦闘員160号! 第12話:『番外編・天才科学者とぼんくら戦闘員』
Name: とりす◆bdfaf7a6 ID:9aab68a9 次を表示する
Date: 2011/01/20 18:29
 目覚めは、お世辞にも良好とは言い難かった。
 ぼんやりとした視界に貫くような眩しさを感じて、思わず声をあげる。

「うっ……」
「――おや。気付いたか」

 呻きは無意識の内から漏れた言葉だったが、それを拾う別の声が、第二の刺激として確かに体に届いた。

「……ここ、は……?」
「まだプログラムは完了していない。今はまだ何も考えるな」

 視覚はただ一点の光を、聴覚はその自分以外の声を感じ取るが、それ以外の知覚がどうにも曖昧で自分でも掴みきれない。
 自分は今立っているのか座っているのか。
 起きているのか寝ているのか。
 何か触っているのか何も持っていないのか。
 全てが曖昧で、不明瞭で、不適切だ。
 だから分かるのは、今自分が「眩しい」と感じていることと。
 聞こえてくる声が、少女のような声色であるということだけだった。
 逆をいえば、それだけが今の自分を確立している全てと言える。

「しかし一時的とはいえ脳が覚醒するとは……やはり再生に無理があったのか?」

 少女の声は、ぶつぶつと何やら独り言を呟いているようだった。こちらにはもう、まったく関心がないというように、完全に一人だけの世界を展開してしまっている。
 しかし今の自分がすがれるものが光と声しかない以上、それは非常に困る。
 何もないと、不安でしょうがない。

「……ぁ、ぅく」

 だからなんとか声を出そうとしたのだが、それは不完全に終わってしまった。
 しかし声の主の興味を引く役割は果たせたようだった。

「なんだ、まだ起きていたのか。その状態でタフな奴だな。……やれやれ」

 このまま覚醒状態が続くと痛覚が解放された時ショック死しかねんぞ、とかなんとか声がして、次の瞬間、体に新たな刺激が走った。
 それは痛みだ。
 体のどこかにちくりとした衝撃が伝わり、しかしそれはまどろみのように自然に薄らいでいく。
 そしてそのゆりかごのような優しさに引っ張られるように、意識もまた、ゆっくりと、自分の手から離れていくのがなんとなく実感できた。
 落ちる、と思ったときにはもう無かった。全て。





「――う」

 目覚めは、お世辞にも良好とは言い難かった。
 ぼんやりとした視界に貫くような眩しさを感じて、思わず腕を動かして目をこする。

「……なんか、前にも似たようなことがあったような……」

 だが今は、以前とは違い、全ての感覚が手元にあった。
 腕だって動くし、手も指も動かせる。
 視界だって慣れれば、それが馬鹿でかい照明であることが理解できた。
 その光を掴むように、右手を掲げ、数回ぐーぱーの体勢を繰り返してみる。
 ……うん、動く。何もかも。

「起き立てだというのに活発だな。健康そうで何よりだ」

 声は、頭のすぐ横で響いた。そうして今更ながら、自分が仰向けに寝そべっているのだと実感する。ほとんど反射的に首だけ声のほうに振り向いてみれば、そこには二つのおさげを垂らした、緑髪の少女がいた。黒いワンピースのような服の上に大きな白衣を着込んでいる。
 少女はシニカルに口元を吊り上げると、「起き上がれるか?」と訊ねてきた。

「よっと」

 予備動作と腹筋だけで上半身を起こす。そうして改めて少女のほうに視線を向けると、彼女は想像以上に小さかった。多分自分が立てば、お腹の位置あたりに少女の頭がくるような伸長差だ。
 続いてきょろきょろと周囲を見渡してみる。自分が今まで体を預けていたのは診察台のような無骨な長方形のベッド(らしき物)で、シーツも何も掛けられていない。その周囲には見たこともない機械がベッドを囲むように設置されていて、備え付けの台には、赤黒く変色したメスのような物も数本見える。
 部屋はこのベッドを中心にそれほど広くはなく、黒いコンクリートのようなもので覆われていた。上を見上げればかつて視界を焼いた照明と、その端には数本、虫の脚のように組み重なっている鉄製のアームがある。伸びれば蜘蛛のようにこちらに脚が下りてくるに違いない。

「……色々と不自然なところはあるけど、とりあえずここ、病院ってことでいいのかな」
「間違いではないな」

 もっとも正解でもないが、と少女は喉の奥で笑いを上げる。見た目は可憐な少女なのに、その表情には長年を生きた不思議な齢のようなものが見受けられた。
 少女は目を細め、愉しむようにこちらを凝視する。

「時に、お前。自分が何故今ここでこうしているのか、心当たりはあるのか?」

 少女は幼い声で、しかしやはり成熟した言葉と顔で問いかけてくる。そのアンバランスさに戸惑いながらも何とか言葉を見つけようとし――そして絶句した。
 記憶を掘り起こそうとする。自分が何故ここにいるのか。直前に何があったのか。なんでもいい、小さな断片でも見逃すまいと必死に意識を集中させ、そして気付いたのだ。

「……え? あれ……?」

 思い出せないのだ。ここで目覚める以前の最後の記憶が何なのか。
 ではそれより以前の記憶はどうだ?
 それも分からない。
 ではそれよりもっと前は? その前は? その昔は?
 なんでもいい、自分の思い出を何か思い浮かべろ。
 何かあるだろう。趣味、家庭環境、名前、生まれ、家族構成、経歴、恋人、友人、知人、なにか――なにか、ないのか――!?

「やはり、記憶がないか」

 少女は、あまり驚きもせず、あたかも当然のようにその事実を口にした。

「……やはり? 俺は、記憶喪失で、ここに運ばれてきた、のか?」

 記憶喪失。漫画やドラマではお馴染みのフレーズだが、そんなものはそうそう現実でお目にかかれるものじゃない。あんな都合よく忘れることなんて、不可能に近いとも言われているはずだ。
 しかし自分の異常を振り返れば、それしか考えられない。
 記憶喪失……俺が……?
 しかしその言葉も、少女は否定した。

「順序がまるで逆だ。……まあ、記憶がなければ無理もない。一から説明してやろう」
「……頼む」

 少女のほうに体ごと向き直り、真摯な表情で頷く。
 今はもう、自分の中に何一つ手がかりがない状態なのだ。その真実を知るのは、他人であるこの少女しかいない。
 一体自分の身に何が起きたのか。
 その言葉一遍すら逃すものかと、全神経を少女の来るべき言葉に集中させる。
 しかしそんな努力をするまでもなく、少女は間をおかず、回りくどいことは面倒だとでも言うかのように、しごく簡潔に答えを述べた。

「お前は最初から死んでいた。それを我ら《ノワール》が拾い、改造して戦闘員に作り変えたのだ」






「……は?」

 一瞬我が耳を疑った。
 数秒間をおき、彼女が言った言葉を何度も頭の中で復唱し、そして出た言葉が、それだった。
 いや……。
 ……なんだって?

「すまない。もう一度言ってくれないか」

 きっと記憶喪失で混乱していた頭が錯覚して、全然関係のないキーワードを封印された記憶から拾ってきてしまったのだろう。
 無理もない。突然の事態に困惑することは決して恥ではない。
 受け入れることが大事なのだ。
 現実を認めろ俺。
 もう一度彼女の口から真実を聞き出すんだ。

「お前は最初から死んでいた。それを我ら《ノワール》が拾い、改造して戦闘員に作り変えたのだ」
「ふざけてるのか!」

 思わず激昂する。記憶のない自分をからかっているのかと本気で怒り、思わず少女に掴みかかろうとする……が、その表情は真剣そのもので、何より彼女の強い視線に睨まれ、俺は蛙のように身を固めてしまった。
 その瞳は、絶対強者だ。少なくとも、自分より数段格上の存在であると脳が警告を鳴らしている。

「ほう……。まだ戦闘プログラムも組み込んでいないCクラスの素体にしては見事な反応だ。運がよかったな、戦闘員160号。掴みかかっていたら私にいらん仕事を増やすところだったぞ」
「ひゃく……なんだって?」
「今の、お前の名前だよ。お前は《ノワール》のために戦い、《ノワール》のために死ぬ。そのために生まれた存在だ。名前など、認識できればそれで十分だろう」

 少女は明らかに挑発していた。にやにやと口元に嫌な笑みを浮かべ、それこそ蛇のような狡猾さで、こちらの反応を窺っている。
 その小さな肢体に……なんという存在感だろうか。彼女の見た目は明らかにこちらが乱暴すればすぐに折れてしまいそうなほどに華奢なのに、その魔性の瞳が、それを許さない。
 いや、彼女そのものに阻まれているといってもいい。
 ……何をしても、迎える結末は一つだけだろう。

「……いや、すまない。色々と混乱してて……頭が変になってた」

 頭を振り、なんとか心を落ち着かせる。
 ベッドに深く腰をあずけ、そのまま息を吐き出すと共に、上半身から全ての力を抜く。
 脱力、といってもいい。
 ……心を落ち着かせ、ね。なんとも滑稽な気分だ。
 そんなものが、今の自分にあるのかどうかすら怪しい。

「疑うなら心電図を見せてやってもいいぞ。血脈のかわりに導線が、心臓のかわりに内臓炉が、複雑にびっしりと絡み合い埋められた『設計図』だ。今のお前の体に、人間の肉体と同じ物など一つたりとて存在していない」

 脳以外はな、と自分の頭を指差しながら笑う少女に、言葉も出なかった。
 その虚実でさえどうでもいい。
 ただひどく、打ちのめされた気分だった。
 頭を垂れ、今更ながら自分の服装に意識をやっていなかったことに気付く。
 全裸だった。

「うぇえっ!?」
「ん? おお、気が利かずすまないな。ほれ、改造台の横にタオルがかけられているぞ」

 慌ててひったくるようにタオルを手に取り、とりあえずは最優先として腰に巻く。
 ……とりあえず、自分が男であることは疑いようもない事実であると言うことだけは視覚で確認できた。

「……見た目は、全然普通の人間じゃないか……」
「別に手八本脚六本の怪物にしてやってもよかったんだが、脳がその動きを理解できまい。生前の体に造るのが一番理想的なのだ。ああ、だが顔だけは許してくれ。お前の死体は特に頭の形状が酷くてな。生前を復元するのが不可能だったので、この星の模範的な成人男性の顔立ちに作り変えさせてもらった」
「……はぁ」

 そんなことを言われても、記憶も鏡もないこの場所では想像することすらできない。
 とりあえず……うん、髪の毛はあるようだけど。

「脳も破片から完全に再現するのに苦労したぞ。私がヴェスタ・ノワールでなければ不可能だったろうな」

 うんうんと満足げに頷く少女にジト目で返す。

「とりあえず、何にせよ今置かれてる状況が全部俺の理解の外だってことは理解したよ」
「話が早くて助かるぞ。ここをクリアできない改造体は、洗脳して使うしかないからな。自己を持たない戦闘員は著しく戦闘力が下がる。とりあえずは私も将軍に怒鳴られずにすむというものだ」

 白衣のポケットに手をつっこみ、さっきまで向けていた威圧の視線はどこへやら、少女は親しみやすそうな柔らかな視線をこちらに向け、にっこりと微笑んだ。

「場所を移そう。そこでこれからのお前の境遇を説明する」
「聞きたくないなあ」
「嫌でも聞きたくなるさ。お前が生きる場所は、今この瞬間にここしか無くなったのだから」

 くるりと背を向け歩き出す少女の背中(白衣の裾が完全に地面についている。格好悪い)を見つめ、どうしたものかと思案するが、すぐにそれが無意味なことであることに気付き、ゆっくりとベッドから降りて床に足をつける。
 ……確かに、この瞬間から、俺の第二の人生とも呼ぶべき時間が始まったのだろう。


 今ここに、戦闘員160号が誕生した。





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