やがて、比較的にすいている場所を見つけ、そこで狩りをすることにする。
さて、紆余曲折あったがやっと亀狩りだ。
ちなみに、今から狩る亀は名前がそのまま「タートル」だ。
少し離れた狩場にはヘビータートルという上位種が居るらしい。
さて、どうやって攻略するか…
セシーさんに情報貰っておけばよかった…といまさらに思う。
フレンドリストからチャットで話しかけることは出来るが向こうも狩り中なのだし控えよう。
向こうの狩りかたは俺たちよりもはるかにシビアなのだし。
とりあえず、打撃が向くものとして打撃中心でやるのがいいか…
後は、顔を引っ込めたりしたらそこを突きだな。
斬り攻撃は余り通りそうにない気がする。
少なくとも甲羅に閉じこもったら斬りではダメそうだ。
ふむ、打撃中心でたまに突きか…
今まで余り使ってこなかった連携だな。
打撃から斬りにつなぐのは大分スムーズに行くようになったと思ってるんだが。
石突きを使った打撃の後だとどうしても刃先が後ろにあるため、回して斬った方が動かしやすい。
むしろ石突きで突くのがいいのかも知れないな。
とりあえず、基本方針を決めたところでタートルに向かって接近する。
む、足元が砂浜なせいで若干動きづらいな…
アースバードの首飾りの効果が出てるからこの程度なのだろうか?
それとも、首飾りの効果は微々たる物なのだろうか…
ちょっと実験するために首輪を付け外ししながら動き回ってみる。
だが、効果を実感することが出来ない。
やっぱりこの首輪の効果は微々たる物なのだろうか?
そうだとすると大分がっかりだな…
取りあえず俺は実験を中止し、狩りに戻ることにする。
タートルはアースバードのように妙な索敵範囲を持っているわけではないらしく、後ろから近づけば気づかれずに接近することが出来る。
さすがに不審を感じたのかタートルは首を上に伸ばして周りの確認をしようとしている。
俺はこの好機を逃さず、握った槍で伸びた首を狙って槍を突き出した。
その気配を感じたのか、亀はこちらに顔を回して気づき、顔をあわてて引っ込める。
その行動によってクリティカルこそ出せなかったが、ダメージを与えるのに成功する。
その後、亀はこちらを向きのしかかってくるように攻撃をしてきた。
その攻撃は亀らしく幾分遅めであり、回避に重点を置いた俺ならば十分によけれるものだ。
さらに言えば、回避する時妙に足が軽く感じる。
攻撃や移動の時は砂に足を取られる感じがあるが、回避しようとすると若干その感じが少なくなるのだ。
これはもしかしてアースバードの首輪の効果なのだろうか?
ふむ、どうやら回避する行動に対して地形効果を軽減するということなのかもしれない。
亀の攻撃は当たれば致命傷を受けかねないが、当たらなければどうと言うことは無い。
昔の偉い人もどこかでいっていた事だ。
回避し、攻撃後の亀を石突で殴る。
それを繰り返す。
たまにやわらかい部分を出してくるので刃を使って斬ろうと試みるがすぐに縮めてしまい成功しない。
やはり、自身の技量が低いことを再確認させられるな…
それはともかく、ダメージを食らうことも無く正直楽勝だなと心に油断が生まれるが…
…次第にそれも焦りに変わっていく。
なぜなら一向に亀が沈む気配が見えないからだ。
すでに10発は殴っているしかし、亀は動きを鈍らせることすらない。
このまま行けば倒すことは可能だろう。攻撃は受けにくく、こちらの攻撃は当てやすいのだから。
だか、こうも時間がかかっては意味が無い。効率が悪すぎるからだ。
俺は失念していたのだ亀類は総じて防御力が高く体力が多いという、手数を重視する俺のようなタイプでは分が悪いということを。
セシーさんのように圧倒的攻撃力があれば高い防御を突き破って体力を減らすことが出来るだろう。
魔術師系のように物理防御が意味を成さない攻撃手段を持つならおいしい的だろう。
弓手のように、遠距離によって顔を出す動作が頻繁に誘発できる武器ならそこを狙えばいいだろう。
だが、俺にはそのどれも持って居ないため、結果、倒すのに時間がかかってしまう。
結局20発以上も殴ったぐらいであろうか、やっと亀は引っくり返って光となり消えていった。
ベリトの下へと帰りながらどうしたものかと頭を捻らせる。
「ダメージが通らん。これじゃ効率が悪すぎる」
「それこそ俺にはどうしようもないぞ。能力低下系の魔法は僧侶の枠組みですらない。
正直俺もただ見てるだけだったから全く面白くなかったな」
「セシーさんほど攻撃力があれば別なんだろうが…、近接は厳しいなこれは」
「まぁ、もともとVIT型のまずいって話で来た狩場だしなぁ」
「VIT型だけでなく近接全般に不味かったってわけだな…」
「だけど、このまま帰るのもな、なんかいい方法ないかねぇ」
「斬り、突き、打撃全部試してどれも大きなダメージにならなかったからな…
槍の強みが全く生かせんぞ」
しばし二人で黙り込む。
「そうだなぁ…。セシーさんに手伝ってもらうとか」
「で、その間俺は何をしてればいいんだ?」
「壁とか?」
「どうやってだよ。ダメージで勝てないからタゲなんてこっちにこねぇぞ」
「庇えば?」
「回避型が庇ってどうする。避けるのが身上だぞ。食らったら死に掛けるわ」
「ちっ、使えねぇな」
「なんてこと言いやがる」
軽口を叩きながら、頭をつき合わせて相談するもいい案が出てこない。
すると、ベリトがいいことを言った。
「亀といったらひっくり返したら有効なんじゃねぇか?」
「そうかもしれんが、そもそもどうやってその状態にするんだよ」
「お前の手に持ってる長いもので出来ないか?」
なんと言う発想の転換、槍を攻撃手段じゃなくただの棒だとおもってないと出てこない。
俺は完全に槍に出来ることは、斬る、突く、叩くの3種の攻撃だけだと思考が停止していた。
「おまえ…、天才か…」
「おおう、お前がそう素直に褒めるのは珍しいな。もっと褒めるがよい」
「まぁ、ひっくり返したところで特に何も無い可能性も有るけどな」
つい出たつぶやきにベリトが増長しやがったので、とりあえず叩き潰しておく。
自分で否定の可能性を言っておきながら、ひっくり返すのは相当有効なのではないかと思う。
少なくとも甲羅よりは腹の方が柔らかそうだ。
もっともモンスターに部位によるダメージ変化があるかは不明だが、たぶんクリティカルは取れるのではないかとおもう。
後は、実際にひっくり返せるか、どうやったらひっくり返すのが簡単か、ひっくり返った状態からの復帰がどれくらいなのかが問題だが、それはやってみながらでなければ分からないだろう。
幸い、向こうの攻撃にあたることは早々無いのだし、実験するのは簡単だ。
そういえば、ひっくり返った状態ならベリトも攻撃に参加しても構わないのではないだろうか?
微々たるダメージだろうが、無いよりマシだろうし杖は一応打撃属性だ。
まぁ、確実に殺せるための攻撃回数に変化が無い様ならやめればいいだろう。
よし、これ以上は考えてもしょうがない。
実戦でやってみるとしよう。
近くを歩いていたタートルに接敵する。
とりあえず、初戦と同じように首を伸ばしたところをきりつける。
今回は伸びきったところではなく、伸ばし始めたところを狙ったのでうまく奇襲になったようだ。
頭に打撃がクリティカルしタートルは怯んで動きをとめた。
その隙を逃さず、槍を横からタートルの下に滑り込ませる。
体の反対側に石突きが見えたところで、石突きを支点にして槍を持ち上げる!
亀の体が浮き上がり、うまくひっくり返せそうだと思ったとき、タートルはもがいて前へ進もうとする。
その動きで槍は腹の下をすべり、後ろのほうから外れてしまった。
ひっくり返すのは失敗だ。
簡単そうに思えた亀をひっくり返す試みは意外な難易度で俺に立ちはだかった。
ネックはやはり棒が細い点であろう。
当然、槍なのでそれなりに太いのであるが、根本的に形状として棒はひっくり返すのには向いていないと思う。
もっと平らな板のようなものがあれば…
あるいは棒が2本あれば…
バスターソードや槍の二刀流ならば、もっと簡単にひっくり返すことが出来ると思われる。
だが、ここに無いことを言ってもしょうがないし、そのために槍の二刀流を行うのも間抜けだ。
いや、短槍二刀流はいつかやってみたいとは思ってるのだが。
ひっくり返すのに失敗した亀だが、それはそのまま俺に向かって攻撃を仕掛ける。
俺は危なげなく避けるが、再度腹の下に槍を入れるのは難しそうだ。
なぜなら槍を腹の下に入れるには亀のそばでかがまなければならず危険極まりない。
避けやすいから何とかなっているのであり、食らえば一気にスタミナを持っていかれるのは自明である。
怯み…と考えセシーさんが思い浮かぶが、今は望むべくも無いので却下する。
結局そのまま泥臭く殴りつづけ一匹目と同じように時間をかけて討伐するのだった。