さて、先の戦いの反省だが、まず何より途中で気を抜いてしまったことだろう。
頭に突きが決まり、完全にしとめたと思ったのだがここはVRの世界だ。
モンスターに脳髄などあるわけもなく、おそらくクリティカルの判定は出ていただろうがそれで即死などあるはずがない。
スキルなどで即死効果などがあるものもあるだろうが、ただの通常攻撃ではそんなことはないだろう。
見た目が派手な攻撃が決まったからといって油断してはいけないという事だな。
本来、確かめるまでもなく基本的なことだが、大きな火傷をするまえに気づけて僥倖だったと思うことにしよう。
もうひとつ気になるのが、最後の突進にブロックを試みたときのことだ。
単なるブロックの失敗という感覚とはどうも違う感じがした。
今までの場合、失敗してこちらの体勢が崩されるというようなことはなかったのだ。
リビとの戦いではせいぜい攻撃が止められず、こちらにダメージが通るぐらいだ。
視覚的に見れば、巨体の突進を篭手で払うぐらいでとめられるわけがないので当然と言えば当然だが…
うーむ、よく分からんな。
今度、防具屋の爺にでも聞いてみようか。
或いは掲示板で情報を募っても良いかもしれないな。
まぁ、なんにせよ、分かるまでは突進を篭手でのブロックするのはやめて置くのが良いだろう。
後は特に問題はなかったように思える。
頭への打撃のよろけ誘発からクリティカル攻撃など我ながらすばらしい動きだと自画自賛しても怒られないだろう。
最初の回避で体勢を崩してしまったのは良くなかったが、向こうがどのような反撃をしてくるかが不明だったのだったのだからしょうがない部分があると思う。
後は、必要攻撃数の問題か。
突き、打撃、クリティカルの突き、斬りと4発必要だった。
クリティカルがないなら都合5発ほど攻撃をしないと倒せない計算だ。
リビの一回り大きいだけの癖にえらく体力が上がってる…。
もっとも、攻撃自体を避けることは難しくなさそうであったから何とかなるだろう。
打撃によるよろけを積極的に狙っていくべきかもしれないな。
うまくすればそこからクリティカルのチャンスだし、そうでなくても攻撃を受ける可能性が減るのだから。
久しぶりに、戦闘の基本方針に項目を追加だな
6、打撃による頭部攻撃を積極的に狙い、よろけ、気絶の誘発を狙う。
しかし、こう考えると槍は本当に強い武器だと思う。
熟練度の上がり辛さなど、如何とでも補えるのだからデメリットといっても大きい物ではないと感じる。
もっとも、ほかの武器を使用してみて比較しているわけでもないので実際には何ともいえないだろうが…
ちなみに、周りを見るとオーソドックスに剣を使っている人が多いようだ。
…お、遠くに槌を使ってる戦士がいるな。バルバゲンの信徒だろうか。
体力もまだ回復しないし、なかなか珍しいのでしばらく観察してみる。
彼女はやはりリビリオンを相手にしているようだ。
…、ふむ…、
リビリオンが8割がたよろけて一方的に殴られている…
打撃が効き難いためか手数は多く必要としているみたいだが、ほとんど反撃がないのだから関係ないだろう。
あれはちょっと反則なんじゃ…?
見ていると相手になってるリビリオンがかわいそうになってくる。
まぁ、あれは槌が強いというよりは彼の人のPS(プレイヤースキル)が尋常ではないようだと思うが…
きっとクローズからのプレイヤーなんだろう。
そうすると尖ったビルドであることも考えられるな…、STR=DEXの二極とか…
マイノリティを愛する俺としては師匠と呼べるかもしれない。
向こうからしたら、勝手に師匠扱いしたら迷惑だろうが。
さて、俺も負けないようにがんばらないとな。
体力も回復したことだし次の敵を探すとしよう。
その後、間に休憩を挟みながらリビリオンを何匹か狩る。
それで分かったことは突進以外の攻撃は篭手でブロックすることが可能だったということだ。
調子に乗って再度突進をブロックしようとしたらやはり弾き飛ばされて危機的状況に陥る羽目になった。
スタミナ曲線の効果で体力が半分減ると通常回避すらおぼつかなくなるため、あわてて回復剤を使い事なきを得たが危なかった。
この前追いかけられたユニークリビ(ドスリビリオンというらしい)に追いかけられた時よりも現実的に危機を感じた。
なんにしろやはり突進にブロックは無理みたいだ。
これはシステム的な問題なのだろう。
やはり爺に聞くのが一番早いかもしれない。
あと、とても重要なこともわかった。
リビリオンはおいしくない。
リビとドロップ素材変わらないくせに確率も多少高くなる程度。
そのくせ体力が5倍近くで攻撃力も高くなってるため倒すのに時間がかかるし、場合によっては回復剤を使わないといけない。
つまり、金銭的に見てリビと比べると圧倒的にまずい。
経験点に関しては、ステータスボードに表示されていないため分からないが…
経験点は優遇されてると期待しないとやってられない不味さだ。
そりゃ、南門前でリビの虐殺が起こるわけだな…
あれは初心者用のボーナス的な設定になっているのだろうか?
しかし、あの場は既にいも洗い状態で、いまさら中に入っていっても意味がなさそうし…
しょうがないから諦めてリビリオンを狩ることにしようか…
まぁ、武器屋の親父の言葉が本当なら、こちらの方が熟練値は上がりやすいはずなわけであることだし。
たまに湧くリビを狩りつつ、リビリオンメインで狩りを続けていく。
何とか回復を使わないで数匹狩ることに成功している。
ブロックをはじかれるようなことがなければ、せいぜい1,2発攻撃を受ける程度で倒せるからだ。
皮鎧を新調したことで防御力もそれなりのものになったのだろう。
確実に攻撃力が上がっているであろうリビリオンに、前回のリビ程度のダメージで抑えることが出来ているのだ。
素での防御に期待できない俺が防具に金をかけるのは間違ってなかったようだ。
相変わらず休みながらではあるが、それなりに安定してきた狩りを続けることしばし、リビリオンを倒した後に見慣れないものが落ちているのを見つける。
どうも首飾りで有るように見える。
これは!と期待に胸を膨らませてあわててその首飾りを拾い上げる。
どうもレアドロップであるようだ!
この感覚は何度経験してもたまらない。
狙っていたレアであろうが無かろうが、見つけたときに心臓が踊るような感覚がある。
さて、一体これはどんなものなのだろうか?
わくわくしながら首飾りを調べる。
どうやら、リビリオンの顔をかたどった装飾の付いた首飾りのようである。
正直、不細工な顔が木彫りになっているようにしか見えない。
若干、がっかりしながら外れかなと考えかけるが、頭に浮かんできたこの首飾りの効果にそんな考えは消し飛んだ。
リビリオンの首飾り:防御上昇(微) スタミナ自然回復量上昇(小)
リビリオンの顔が象られた素朴な首飾り。持つものにリビリオンのごとき体力が備わるといわれる。
都市部の一部女性の間ではファッションアイテムとしても通用するらしいが、真偽は不明である。
スタミナ回復量上昇効果!
すばらしい!俺が今求めてやまないものだ!
さっきまでリビリオンが不味いと考えていたのを棚に上げ、リビリオンを礼賛する思考でいっぱいになる。
俺は有頂天になりながら早速首飾りを身に着ける。
不細工な木彫りの装飾を、俺はそっと服の中に入れた。
別に、不細工なのが首にかかってるのを隠すためじゃないよ、戦闘中にぶらぶらすると邪魔なだけだよ。ほんとだよ。
このドロップをしてくれたと思えば、このリビリオンの顔も可愛いとも思え… …そうも無いな。
まぁ、いい、なんにしろこの首飾りは俺の狩りにとても助けになってくれるだろう。
そういえば装飾品関係の装備を見てくるのを忘れていた。
今度街に戻ったときには確認しよう思う。