<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

オリジナルSS投稿掲示板


[広告]


No.15918の一覧
[0] フレイムウィンド&ケイオス  (TRPG風 異世界ファンタジー転生物)[ランダム作成者](2010/04/18 12:17)
[1] 1  チュートリアルなど無い[ランダム作成者](2010/04/11 14:23)
[2] 2  『スカベンジャーズ・マンション』 編[ランダム作成者](2010/04/04 11:49)
[3] [ランダム作成者](2010/03/05 19:59)
[4] [ランダム作成者](2010/04/04 10:57)
[5] [ランダム作成者](2011/02/18 06:32)
[6] [ランダム作成者](2010/04/04 10:59)
[7] [ランダム作成者](2010/03/05 20:47)
[8] [ランダム作成者](2010/03/27 12:51)
[9] [ランダム作成者](2011/02/18 06:30)
[10] 10[ランダム作成者](2010/04/11 14:29)
[11] 11  レベルアップ[ランダム作成者](2011/02/13 01:43)
[12] 12[ランダム作成者](2010/04/11 14:35)
[13] 13[ランダム作成者](2010/04/12 10:50)
[14] 14  『エトラーゼの旅立ち』 編[ランダム作成者](2010/04/26 15:42)
[15] 15[ランダム作成者](2011/02/18 06:34)
[16] 16[ランダム作成者](2010/05/09 13:10)
[17] 17  意思ぶつけ作戦[ランダム作成者](2010/05/25 02:19)
[18] 18[ランダム作成者](2011/02/13 02:36)
[19] 19  精神世界の戦い[ランダム作成者](2011/02/13 05:10)
[20] 20  いざ、人生の再スタート      (LV 3にアップ)[ランダム作成者](2011/02/18 22:55)
[21] 20.5  かくして混沌の申し子は放たれた     (主人公以外のステ表記)[ランダム作成者](2011/02/27 14:19)
[22] 21  『帝国からの逃避行』 編     [ランダム作成者](2011/12/07 21:52)
[23] 22[ランダム作成者](2012/03/18 15:13)
[24] 23  リンデン王国を目指して[ランダム作成者](2012/03/19 02:30)
[25] 24  グレーターデーモン     (ティーナのステータス表記)[ランダム作成者](2012/04/05 05:41)
[26] 暫定 キャラクターデータ まとめ[ランダム作成者](2011/02/13 02:00)
[27] 暫定 アイテムデータ まとめ[ランダム作成者](2010/05/20 16:57)
[28] LVや能力値などについての暫定的で適当な概要説明 & サンプルキャラクターズ[ランダム作成者](2011/02/27 14:10)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[15918]
Name: ランダム作成者◆f9a7ea31 ID:470fdece 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/05 20:47

 総勢11名の死体を漁らせてもらった結果、岩野郎一味が貯め込んでいた、かなりの量の食料を入手する事ができた。



 ◆ ケタ肉の塊 〈重量 1000グラム〉

   詳細: 肉と言えばケタか豚と言われる程に流通している、一般的な食肉素材。
        これはその、モモ肉の塊である。
        大人しく従順な気性、かつ何でも食べて成長が早く、しかも多産なケタは、
        家畜の中で最も養殖向きな生き物なのだ。


 ◆ 月光鱒の切り身 〈重量 500グラム〉

   詳細: 獲物を捕らず、月の光に含まれる微量な魔力を摂取して生きる川魚、
        月光鱒の皮付きの切り身。
        その特異な生態からか、寄生虫や病原菌の類は一切保有しておらず、生で食べても問題はない。
        肉質は弾力に富み、淡白で美味。
        生息範囲が広大で養殖向きなため、河川の近くで暮らす人々にはお馴染みと言っていい食品である。


 ◆ スマイリー キャベツ

   詳細: どのような調理法でも美味しく食べる事のできる、食卓野菜の定番品。
        腐ってでもいない限り、およそ外れとされる食べ方は存在しない。
        柔らかく、癖のないの味なので様々な料理の材料としても用いられる。
        尚、その名称は熟した葉玉を見下ろした際の形状に由来する──というのが、一般的な説である。


 ◆ オミカン

   詳細: 世界最大の柑橘類。
        柑橘類全般に言える事だが、果肉だけでなく果皮、種子までもが幅広い用途を含むため、
        基本的に捨てる部分が存在しない。
        そのような理由と、最大の種であるという事などから、太陽や大地の恵みとして
        真っ先に挙げられる作物の一つである。
      



 えーと……干し肉が33、ケタ肉とやらの塊が27に豚肉の塊が22。あとは川魚の切り身とか、変わった形のキャベツとか、やたらとでかくて大味そうなオレンジとか……まあ、色々と沢山だ。
 アイテム収納なんて反則技がなけりゃあ、途方に暮れる量だったな。
 連中がどんな方法でかき集めたのかは想像に難くないが、俺としては『有り難くいただきます』としか言えん。とにかく、これで当面の食糧問題は解決だ。
 飢えたモドキに襲われる心配もないだろう。
 いやー、よかったよかった。

「ニクー! ニク、うめー! なまでもうめー!」

「……何というか、活発な妹さんですね。──あっ、そこキツくしないで! 逃げたりなんてしませんから!
 せめてもう少し余裕を! 痛い! 肩が外れちゃう!」

「大丈夫だ。俺は痛くない」

 哀願するイモリ野郎を寛大な優しさでもって縛り上げながら、モドキに適当な餌を与える。
 しかしまさか、一番に消そうと思っていたこいつだけが生き残るとはなあ……。捕虜を取るような余裕はないと思っていただけに嬉しい誤算だった。
 岩野郎みたいな化け物が居なけりゃあ、俺はイモリ以外の一人を残すよう気を配ってただろうし。イモリにしても生き残れたのは地力を超えた偶然の結果だったようだし。お互いに運が良かったってところかね。

 ああ、捕虜を取る意味は分かるよな?
 人質だったり食料だったり憂さ晴らし要員だったりと利用法は前提次第でいくらでもあるが、今回は手っ取り早い情報源としてのケースだ。
 他に仲間は居るのか? 居たとすれば、その構成は? 自分達以外にもグループはあるのか? あったとして、どの程度まで知っているのか? 知られているのか?
 ……等々と。聞きたい事は山ほどある。
 肝心なのは主導権を明確にし、相手に舐められないようにする事。その上で嘘を見破れる洞察力と一から十まで聞き出す根気、得た情報を整理するだけの頭があれば及第点と言っていい。
 大概の奴なら、それで絞り尽くせるだろう。
 センスがあれば、多少強情な奴でも何とかなる。
 揺るがぬ意思や確固たる信念を持っていたり、専門の訓練を受けていたりする奴が相手だった場合は、悪い事は言わない。時間の無駄だからやめておけ。
 素人の生兵法が通じるのはそこまで。後はプロに任せるのが賢い選択だ。
 任せられるアテもヒマもないってんなら……分かるよな? 色々だ。
 不確定要素の強いサバイバルではよくある事だから、覚えておいた方がいいぞ。

「そういや、名前を聞いてなかったな。……リザードでいいのか?」

「違います違います。そいつぁ渾名。連中が呼びにくいってんで勝手に決めた、不本意な渾名ですわ。
 本名はテンダリウス・ローバーノ・フルシュシシニグラウクル・ボンガボンガ――」

「リザードでいいな」
「ああ、やっぱり!?」

 今回に限っては、そこまで意気込む必要もなかったんだけどな。
 イモリ野郎ことリザードは実に調子の良い奴で、こちらの質問に快く答えてくれた。
 といっても、頭が悪くて口が軽いってわけじゃない。協力的に振る舞うことで俺の心証を良くしようという腹なんだろう。
 この迷宮に独りで挑む事の愚かさ、仲間の居ない身で意地を張る事の無意味さをよく分かっているからこその態度だ。自分が生きるために何をすればいいのか、してはいけないのかをよく分かっている。
 薄情者と謗るなかれ。何事にも潮時というものがあるのだ。
 こんな状況で死人に義理立てしても始まらん。

 それで、得られた情報についてだが……細かいとこまで逐一聞いたせいか、リザードの身の上話みたいになっちまった。
 何でもスタート地点は五つも下の階層で、岩野郎と同じ部屋だったらしい。あの頑丈さと腕っぷしに幾度となく助けられたそうだ。
 お互い、気が付いたら珍妙な姿になってたって共通点もあってか、関係は比較的良好だった。
 粗野で乱暴で我が儘で、自分の事を〝ボス〟と呼ばせるような威張りん坊だが、決して付き合いきれない程ではない。この程度の悪党は何処にでも居る。――というのが、岩野郎に対するリザードの評価だ。
 前世でもっと酷い奴の下で働いていた経験があったから、特に反感を抱く事はなかったんだそうな。
 中々に辛抱強い性分の持ち主である。

 そして、そんな何処にでも居るはずの悪党が童話に出てくる怪物みたいになっちまったのは、アヤトラのグループと合流を果たしてからなのだとか。
 アヤトラってのはここから九層下の、恐らくは最下層から上がってきた唯一のご同輩で、元が同じ人間だったとは思えないほどの戦闘力と統率力を兼ね備えた男らしい。
 種族はほとんど人間と変わらない見た目のハーフエルフとかいうやつで、歳は俺より四、五歳上といったところ。
 なのに化け物、変わり者。
 戦える者だけでなく、本来なら死ぬはずだった無力な女子供までもを引き連れて、上へ上へと駒を進めてきたというのだから、相当な奴である事は間違いないだろう。
 どんな人物なのかは、実際に会ってみるまで判断が付かんがな。
 まあ、問答無用で襲ってくる輩でもなさそうだし、遭遇を殊更に怯える必要はないだろう。
 岩野郎が追い出されたのも自業自得みたいだしな。

 そう、岩野郎はそのアヤトラのグループから追い出された。というか、アヤトラ直々に処刑されたらしい。
 理由は子供を喰ったから。
 それもそれも、食料に困っていたわけでもないのにだ。
 単純明快だな。俺だって処刑するよ、そんなの。危なすぎて一緒には居られん。
 だが、リザードはそうは思わなかったようだ。
 いや、思ってはいたのか……。
 でも、助けちまった。アヤトラの目を盗んでな。
 手持ちにあったリフレッシュストーンで九割方死んでいた岩野郎を蘇生させ、こっそりと逃げ出したんだと。
 何故かって? そりゃまあ、色々とあるわな。
 それまで一緒にやってきて命を助けられた恩がある。負い目もある。共に加わり、一番親しくしていただけに、もうアヤトラのグループには居づらいってのもあったんだろう。

 リザードは岩野郎から相談を受けていた。
 女子供が視界をかすめる度に湧き起こる、狂おしい衝動について。いくら食べても満たされない、理性を蝕む欲求について。
 岩野郎の種族はロック・オーガ。俗に人食い巨人とか呼ばれている連中の亜種だったんだそうな。
 人食いなんて厄介な本能を抱えちまった、生まれの不幸。そいつをはね除けるだけの意思も倫理も持ち合わせていなかった、心の未熟。
 不運に弱さが重なった末の暴走だったってわけだ。
 気の毒な話ではある。――が、裏を返せばそれだけの話。
 『我慢できませんでしたァァ!!』じゃ済まされんだろ。いくら何でも。
 無理でも耐えろ。死んでも堪えろ。耐えられんのなら、絶対にバレないようにやれ。あと、俺を喰おうとするな。そんな簡単な事も守れねえから、長生きできなかったんだよ。
 リザードの奴も間抜けな事をしたもんだ。
 自分も小動物や昆虫を見て美味そうだと感じてしまう身体になってしまったから、他人事だとは思えなかったんだと。
 その共感から来る同情が、第一の動機ってやつかねえ?
 リフレッシュストーンなんて緊急救命装置がアイテム欄になきゃあ、最期まで付き合ってやる事もなかったんだろうけどな。魔法ってのも罪作りなモンだぜ。

 ちなみに、テンダリウス何ちゃらってリザードの本名は、最初からそういう風に書かれていたのだとか。
 ……どんな嫌がらせだよ。それも賽の目の結果なのか? 部族の習わしとかなのかね?
 イモリじゃなくてよかったなあ、俺。

「やはり【美形】をお持ちでしたか! いやいやいや、眉目秀麗! 一目瞭然! 分からねえって方がどうかしてまさぁ。
 顔が良い。頭も良い。度胸もあって腕っぷしも強いとなりゃあ、もう未来は薔薇色間違いなしですな!」

 そうかそうか、お前も笑うか。
 今更、見え透いた世辞に機嫌を左右されるような感性は持ち合わせちゃいないが、そこを突くのだけはやめてくれ。まだ慣れてないし、未確認だからどう振る舞っていいのかも分からんのだ。
 顔ってやつには嫌でも持ち主の内面が出てくるからな。星の数ほどの悪相を拝み、判断を下し、ああは成るまいと心懸けてきた身としては気になってしょうがない。
 一体俺は、どんな顔をしているのか?
 触っただけじゃあ何とも言えん。神ボトルでは不明瞭にしか映らん。早く鏡が欲しかった。

「そうそう、美形といえばアヤトラさんもそうなんですけどね。あっちもまあ、才気煥発と言いますか。
 天は二物を与えず云々って格言は、凡人の気休めのためにあるんだな~と、つくづく思い知りましたよ」

「……かもしれねえな。だが、天が与えてくれた物とやらを使いこなせるかどうかは、また別の話だろうよ」
「ほっほ~? こりゃまた何とも格好良い事を仰る。俺っちも持ち上げ甲斐があるってもんですわ」

 けど、こいつはアレだな。きっと口を動かしてねえと調子が出ないんだろうな。
 不安の裏返しか、ただ単に生理的なものなのか。少なくとも、一から十まで俺の歓心を買いたいがために喋っているわけじゃなさそうだ。
 危険に聡く、己の分を弁えており、そこそこに情が厚くて義理堅い。
 一線を測る能力に長けているからか、喋り癖も致命的といった程じゃあない。
 現に俺の顔色の伺い方が絶妙だ。何某かのお零れにあやかろうと擦り寄ってくる、気持ち悪い連中の相手を散々にしてきたから分かるんだが、ちょっと凄いぞ。鬱陶しいはずなのに全然気にならん。
 ……だからといって気に入るか、信用できるかというと、まったくの別問題なんだがな。
 でもまあ、今のところ有用ではあるか。
 傍に居なかったタイプだが、扱いに苦労する事はなさそうだし。透明化の能力も失うには余りにも惜しい。
 しばらくは手元に置いて、様子を見るのがいいだろう。
 俺のご機嫌じゃなく、不意を窺う気配を一片でも臭わせたら即処断。その方針で連れて行くとしようか。

「朗報だぞ、リザード。どうやら俺の心の天秤は、お前さんを生かす方に傾いたらしい」
「あ、やっぱりまだ考えてました?」
「ああ。普段なら、もう少し甘めに見積もっているところなんだがな。さすがに状況が状況だ。そうも言ってられんだろ」

「いえいえ、大した懐の広さだと思いますよ? 俺っちが坊ちゃんの立場なら、こんな怪しいイモリ人間、
 不安で不安で生かしちゃおけやせんぜ。気持ち悪い。口が軽い。敵だった。これだけで充分万死に値しやす。
 そいつを許してくれるってんだからぁもうっ、感謝の言葉もございやせん! 本日から朝夕のお祈りが欠かせなくなったってなもんですわ!」

 そう言いながら、まだまだ一安心には程遠いって面だな。……いや、面は読めんから雰囲気か。
 この助命があくまでも仮の物、お試し期間の到来に過ぎない事をよく理解していやがる。

「その様子だと、釘を刺す必要はなさそうだな」
「……へい、恐れ入りやす」

 こうしてまた一人、俺の道行きに奇妙な連れが加わる事となった。

 …………ロープは腰に括り付けとくか。
 尻尾だと切り離して逃げかねんしな。








 道すがらに行ったリザードとのやり取りも含めて、数時間。
 ウェッジとの合流地点まで後少しといった所で、俺達は思わぬ足止めを食らう羽目になった。

「……何だ、ありゃあ?」

 白い膜みたいなのが通路の一面を覆って、行く手を塞いでたんだよ。
 これは……その、何だ……。もしかしなくてもアレのアレか?
 俺はとあるホラー映画の1シーンを思い出し、深々と眉を顰めた。
 徘徊するゾンビ共と言い、いくら何でも典型的すぎるぞ。人間の恐怖心を煽るための場所か何かですか、ここは。
 ……悪魔が運営しているそうだから違うとも言い切れんか。苦々しいところだな。

「うぉー、でけー」
「蜘蛛の巣……ですねえ。どうも見ても」
「そうだな。どう見ても蜘蛛の巣だな。家主を想像しただけで身震いしちまうような、ご立派な蜘蛛の巣だ」

 でけーよ、馬鹿。
 5×5メートルの通路一面だぞ? 糸も太いし、張った奴はひょっとして人間くらいのサイズなんじゃねえのか?
 やばいぞ。
 ネズミ程度ならともかく、虫がでかいのはやばい。
 脳味噌がない分、身体の造りがとんでもないからな。特に肉食昆虫は最悪だ。硬くて速くて力持ち、生命力は段違い。蜘蛛はクモ目に属する動物で正確に言うと昆虫じゃないよ。――なんて知識は気休めにもならん。足の数と触角の有無と頭部胸部の境目があやふやって違いだけで、ほとんど虫と変わらねえじゃねえか。広義では虫だ、虫。厄介な特徴を全部備えている上に糸まで使うから余計に性質が悪いぞ。
 唯一の救いは、巣に近付きさえしなければ危険はないという事だが……こっちの生き物に過度の期待は禁物ってもんだろう。
 ……腹立たしいが、ここは回り道しかないか。
 って、リザード君。どうして君はそんな不用心に近付いていくのかね? 危ないじゃないか。

「あ~……やっぱりそうだ。坊ちゃん、多分ですが危険はないと思いやす」
「何だ? 対策でもあるのか?」
「いえね、実はこれ、知り合いが張ってたやつにそっくりなんですわ。奥で蜘蛛が待ち構えてるって様子もないようなんで、十中八九シャンディー姉さんの仕業……なんじゃないかなあ、と」

 ほう、イモリのくせに蜘蛛の姉が居るのか。
 恐らく親はオーストラリアの怪物、ヨーウィーだな。
 あっちはトカゲの身体にカブト虫の足といったデザインで、イモリと蜘蛛じゃ微妙に違うような気もするが……。他に適当なのも思い浮かばんし、親戚って事で妥協しよう。

「シャンディー姉さんってのは、アヤトラさんとこの調整役みたいなお人でして。
 ティルケニスとかいう蜘蛛女の種族なんですがね。といっても、見た目はそんなじゃないんですよ。
 腕が四本で所々蜘蛛っぽいってだけで…………俺っちのがよっぽど不気味なんじゃないですかねえ?」

 うん。まあ、口には出さない冗談ってやつだ。
 必要な事なんだよ。ユーモアを欠いた思惟思索は、冷却器のない機械みたいなモンだからな。鈍る前に横道へと逸らしてやらにゃあならん。
 それを踏まえて、どんな時でも遊び心を忘れないのが俺という人間の信条なのだ。
 例え、死刑判決を受けても絶対に忘れない。
 薬物注射? 電気椅子? 温い温い。第一につまらん。第二にそれじゃ誰の気も晴れんだろ。そうだな、まずは飢えた猛獣が居る檻の中にでも閉じ込めてもらおうか。何度でも何度でもだ。それで駄目なら人食い鮫とだ。もし生き残ったら、ミサイルの的がいいな。核で死ぬ栄誉を俺に寄越せ。もちろん、全部全米生中継だ。

 …………………………………………まさか、採用されるとは思わなかったんだがな。

「そうそう、姉さんは器用なお人でしてね。この糸で服を作ってくれるんですよ。
 手間が掛かるのと疲れるからって理由で女子供優先で、俺っち達には結局回ってこなかったんですけどね。
 ……せめて、前くらい隠させてほしかったなあ。誰も気にしてくれないのが、また何とも言えず悲しかった」

「いじけるのは構わんが、その姉さんってのは男を捕まえるのに網を張る習性でもあるのか? 通路を塞ぐ意図がさっぱり分からんぞ」

 物が糸だけにな。……我ながらイマイチすぎる。。

「そういやぁそうですね……。姉さん、教えてくれなかったなあ」
「…………なるほど。大体分かった。気にせずに進むぞ」
「え? あーはいはい、了解しやした」

 松明の火でちゃっちゃと焼き払って、先を急ぐ。
 俺の予想が正しければ、あの網は一種の警報装置だ。
 原理は分からんが、恐らくは触れるなりしただけで蜘蛛女に情報が伝わる仕組みになっているはず。
 リザードが教えてもらえなかったのも当然だ。せいぜい相手の位置が把握できる程度の物であったとしても、先手を打つための重要な布石となり得るわけだからな。効果を知る人間は少なければ少ないほどいい。
 アヤトラ一行は大所帯という話だし。さぞや重宝してきたんだろうよ。
 ……厳しいねえ。
 どう誤魔化せばいいのか分からねえってところが特に。嫌でも後手に回るしかないのだから。
 とりあえずは気に留めておくとしようかね。それくらいしかできん。








 ようやく辿り着いた合流地点は、今やすっかりお馴染みとなった牢屋の並ぶ通路の一角だった。
 大体この辺って話だったからな。一番に目に付く、端の牢屋に居れば分かるだろ。

「それじゃあ、俺はしばらくこっちで横になってるから。お前さんはモ……カーリャと一緒にそっちで休んでてくれ」
「えぇっ!? ちょっとお待ちを! 寝床を分けるのは理解できやすが、それだと俺っちの身が危険じゃないですかね?」
「なぁに、親交を深める良い機会だろ。さあさあさあ、入った入った。とっととオネムのお時間ですよ~」
「おうおう、ゆっくりやすめ!」

 そういうわけでリザードとモドキを一緒の牢屋に放り込み、俺は久方ぶりの独り寝を満喫する事にした。
 いやー、子守りを引き受けてくれる奴が居て助かった。コアラなんぞに構っていたら取れる疲れも取れんだろうしな。
 【激怒】のおかげで身体が怠いから、しっかり休まんと不味いんだわ。

「うあぁ!? 何で近寄ってくるんですかぁぁ!?」
「おうおうおう! なんだなんだ? トカゲ、なんでにげるんだ?」

 向かい側で繰り広げられる喧噪も、まったく全然気にならん。
 とにかく今は、ただ泥のように眠りてえやな。








 合流地点に到着してから約一日、ウェッジと別れてからおよそ一日半以上が経過した。
 近くまで来ているかもと見回ったりもしてみたんだが……今のところ、あのお人好しが現れる気配は一向にない。
 俺は少々、悲観的になり始めていた。
 個人差はあれど、人間が飲まず食わずで活動できる時間はそう長くない。ましてやウェッジは一度空腹で死にかけてるからな。二日も持てば良い方だろう。
 シニガミから逃げ切れたとしても、何処か与り知らぬ場所でぶっ倒れている可能性もあるわけだ。
 拾いに行こうにも、この広さだ。人手も圧倒的に足りない。俺より先にゾンビかネズミかゼリーお化けが見つけちまう事だろうよ。
 …………もう一日……いや、二日待つか。
 それで駄目なら、諦めよう。

「……あの、坊ちゃん? 坊ちゃんはお召し上がりにならないんで?」
「おう、ハラこわしたか? グールか、グールくったのか?」
「ん? …………ああ、んなわけねえだろ。お前らの見てねえところで栄養を補給してるんだよ」
「なに? カーリャにナイショか? ナイショなのか? くちくさいぞ!」
「そりゃ何日も磨いてねえんだから、臭いもするだろうよ」
「いえ……多分、妹さんは〝水臭いぞ〟と言いたいだけかと思いやすが……」

 いいから黙って食え。お前らが心配するような事じゃねえよ。
 ただの願掛け。そうでもせんと俺の気が済まねえってだけの、手前勝手な拘りだからな。
 二日経ったら食うさ。……二日経ったらな。

「ところで、リザード。お前さんはアヤトラのグループに恨まれていると思うか?」
「ん~~……どうでしょうかねえ? 挨拶もせずにグラコフと一緒に消えたわけですから、良くは思われてないんでしょうけど……」
「恨みを買うような真似はしてないんだな?」
「へい。長ったらしい名前に懸けて誓ってもいいですぜ」

 ……なら、隠れさせるのはやめておいた方がいいか。却って印象を悪くしかねん。
 俺にとって用心深さは美徳の一つだが、世の大半の連中はそうでもないようだからな。
 取り引きが終わった後に額を狙わせていたスナイパーの存在を明かすなんて行為は、やっちゃいけない事なのだ。
 アレは高い授業料だったなあ……。
 常識ってやつの授業料は、いつだって法外だ。学んでからじゃ遅すぎる。世間ってのは怖いねえ。

 近付いてくる団体客に気付いた俺とリザードは軽く頷き合い、諸手を挙げて歓迎してやる事にした。
 コンセプトはラブ&ピース。
 そして俺は幼気な男の子。存分に保護欲をくすぐってくれるわ!


 …………うん。人間、できもしない事を考えるもんじゃねえやな。
















 あとがき

 次回からは大所帯になるかもしれません。
 人気者ウェッジは生きているのか? 果たして、何人生き残れるのか? そもそも、お外に出られるのか?
 私めにもさっぱりですわ。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 現在の所持品  17/17

 パーソナル マップ  (72)
 フォーチュン ダイス  (507)
 豊穣神の永遠のボトル

 丈夫な革製の背負い袋
 入)ヒール ストーン
 入)ヒール ストーン
 入)リフレッシュ ストーン (5)
 入)陽光のカンテラ
 入)水筒 〈空〉
 入)丸い水筒 〈湧き水〉
 入)大きめの水筒 〈井戸水〉

 拳大の石  (347)
 冒険者の松明  (243)
 火の付いた冒険者の松明
 麻製のロープ  (186) リザードの拘束と牢屋の入り口固定で5消費
 蜘蛛の歩みの秘薬  (6)
 蟻の力の秘薬  (6)
 ケタの干し肉  (38) ウェッジを待つ間に2消費
 ケタ肉の塊  (25) モドキにやって1消費 ウェッジを待つ間に1消費
 豚肉の塊  (24)
 月光鱒の切り身  (58) ウェッジを待つ間に2消費
 ナングの卵 (26)
 スマイリー キャベツ  (65)
 オミカン  (39)


 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



 リザードを含めた他のキャラのステータスは、データまとめで出そうかと思っています。
 いや、もったいぶるようなモンじゃないんですけどね。



前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.023979902267456