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No.15918の一覧
[0] フレイムウィンド&ケイオス  (TRPG風 異世界ファンタジー転生物)[ランダム作成者](2010/04/18 12:17)
[1] 1  チュートリアルなど無い[ランダム作成者](2010/04/11 14:23)
[2] 2  『スカベンジャーズ・マンション』 編[ランダム作成者](2010/04/04 11:49)
[3] [ランダム作成者](2010/03/05 19:59)
[4] [ランダム作成者](2010/04/04 10:57)
[5] [ランダム作成者](2011/02/18 06:32)
[6] [ランダム作成者](2010/04/04 10:59)
[7] [ランダム作成者](2010/03/05 20:47)
[8] [ランダム作成者](2010/03/27 12:51)
[9] [ランダム作成者](2011/02/18 06:30)
[10] 10[ランダム作成者](2010/04/11 14:29)
[11] 11  レベルアップ[ランダム作成者](2011/02/13 01:43)
[12] 12[ランダム作成者](2010/04/11 14:35)
[13] 13[ランダム作成者](2010/04/12 10:50)
[14] 14  『エトラーゼの旅立ち』 編[ランダム作成者](2010/04/26 15:42)
[15] 15[ランダム作成者](2011/02/18 06:34)
[16] 16[ランダム作成者](2010/05/09 13:10)
[17] 17  意思ぶつけ作戦[ランダム作成者](2010/05/25 02:19)
[18] 18[ランダム作成者](2011/02/13 02:36)
[19] 19  精神世界の戦い[ランダム作成者](2011/02/13 05:10)
[20] 20  いざ、人生の再スタート      (LV 3にアップ)[ランダム作成者](2011/02/18 22:55)
[21] 20.5  かくして混沌の申し子は放たれた     (主人公以外のステ表記)[ランダム作成者](2011/02/27 14:19)
[22] 21  『帝国からの逃避行』 編     [ランダム作成者](2011/12/07 21:52)
[23] 22[ランダム作成者](2012/03/18 15:13)
[24] 23  リンデン王国を目指して[ランダム作成者](2012/03/19 02:30)
[25] 24  グレーターデーモン     (ティーナのステータス表記)[ランダム作成者](2012/04/05 05:41)
[26] 暫定 キャラクターデータ まとめ[ランダム作成者](2011/02/13 02:00)
[27] 暫定 アイテムデータ まとめ[ランダム作成者](2010/05/20 16:57)
[28] LVや能力値などについての暫定的で適当な概要説明 & サンプルキャラクターズ[ランダム作成者](2011/02/27 14:10)
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[15918] 15
Name: ランダム作成者◆f9a7ea31 ID:470fdece 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/18 06:34

 レドゥン帝国、第七キメラ研究所1階──南東の部屋。


 ここも外れか……。
 意気揚々と全員での探索を開始してから、約3時間後。
 14部屋目の確認を終えた俺は磨り減った神経を整えるため、大きく身体を伸ばしての柔軟運動に入った。

 幽閉されている騎士団三人娘を救出して、脱出の手助けをしてもらおう。
 ──と、決まったまではいいものの、肝心の牢の鍵が保管されているという所長室の場所は分からず。
 三人娘のアストラル体も結界とやらの影響で活動時間と行動範囲が大幅に制限されているらしく、調査の役には立たず。
 故に俺達は、とりあえず上階にあるだろうとのヨシノの言葉だけを頼りに、一階の部屋を片っ端から当たっている最中なのであった。

 いやまったく、団体での隠密行動なもんだから疲れる疲れる。
 進展無し、成果無し、実入り無しと来て余計にな。心身共に応えるぞ。
 …………あー、背伸びが気持ちいい。

「ふわぁ~~あ……」

 ついでに欠伸で脳細胞を活性化だ。

「おやおや坊ちゃん、そろそろオネムのお時間ですかい?」
「うるせー、文句あるか」

 軽口を叩くリザードへの返事は、我ながら覇気のないものだった。
 成長期だからか知らんが、こういう緊張感を伴う作業が長続きしねえんだよな、この身体。
 眠気にも弱いし、どうしても集中力が散漫になっちまう。
 『肉体は魂の牢獄だ』──プラトンはイデア論の観点からそう言ったんだろうが、字面だけなら今の俺を表すのに最も相応しい言葉だな。

「せめて字が読めればよかったんですけどねえ。そしたら一々中を調べる手間も省けるでしょうし」
「恥じる事は無い。某の時代では読み書きが出来る者の方こそ稀であったぞ」
「そうですか? いや、でも……もうちょっと英語を勉強しておけば……」

 ドアプレートを睨んで唸るウェッジの奴の甚だしい見当違いに溜息をつく。
 確かに書かれている内容が分かれば、効率も格段にアップするだろうけどな。アルファベットですらない表記に対して英語の勉強は意味がないと思うぞ。

「一応言っとくが、それ英語でもラテン語でもアラビア語でもないからな」
「もちろんポルトガル語とも違いやすぜ」
「ありゃ……じゃあ、異世界語ってやつですかね?」
「多分な。外に出たら本格的に言葉の壁に悩まされる事になるだろうから、覚悟しとけよ」

 本来なら外国人同士であるはずの俺達の言葉が通じるのは、エトラーゼの間だけで機能する翻訳魔法のおかげだって話だからな。
 しかも、言語限定。
 文字翻訳までには至らない。
 当然、こちらの世界の文字なんて分かるはずがない。
 生粋の異世界人と意思疎通を図りたいのなら、相応の技能を習得する必要があるってわけだ。
 具体的には《語学》と《解読》の二つを上げればいいらしい。
 あれもこれも全部ヨシノの受け売りで恐縮だが、一から言葉を覚えるよりかはずっと楽なのだそうだ。

「外か…………やっぱり、最初は学校にでも通って常識を学んだ方がいいんですかね……?」
「んぅむ、某は梅干しが在るかどうかだけが心配で為らぬな」
「いやいや、何よりもまず先立つ物が必要っしょ。誰か持ってやすかい? 俺っち文無しですぜ」
「おう、カネか! ないとこまるな!」

 まあ、その辺の心配ができるようになったってのは嬉しい事なのかね?
 ちなみに分かっているかもしれんが、俺は服が欲しいぞ。
 替えの服も大量に欲しいぞ。

 …………決して大それた望みじゃないと思うんだがな。








 レドゥン帝国、第七キメラ研究所1階──東側通路。


 角を曲がろうとしたところで、新たなるシャイターンの影を発見。
 眼球の裏がスパークするような感覚に従い、反対側の角の陰へと側転気味の横っ飛び。

「お兄さん?」

 直後に発射された銃弾が突き当たりの壁に痕を残すのを眺めながら、俺は後続の四人を手で制した。
 ……危ねー。
 いきなり何て事してくれやがんだ。もう少しでヘソが増えちまうとこだったぞ。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 R1─FG001 パトローター  LV 3

 HP ??/??  MP ??/??  CP ??/??

 詳細: ???


 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



 深呼吸の後に改めて窺った先では、機銃を付けたヘリコプターそっくりのシャイターンが3機編隊を組んで待ち構えていた。
 ……どうでもいいが、名前の方はパトロールとローターを掛けた洒落なのかね?
 見たまんまの、小さなラジコン哨戒ヘリって感じだな。
 音は静かで動きも滑らか、米軍が極秘裏に開発した兵器という触れ込みでも充分に通用しそうである。

「うううう撃ってきましたよ! どど、どう、どうするんですか!? マシンガンですよ、アレ!?」

「慌てんじゃねえ! 威力からして拳銃弾、それも9パラ未満の豆鉄砲みたいなもんだ。
 当たっても肉と骨で止まる。急所さえ守ってりゃあ、まず死ぬこたぁねえだろうよ」

 目分量で測った口径の程を告げ、ガタガタ震えるウェッジの奴を落ち着かせる。
 元日本人にしては珍しく銃への危機感全開で好ましい限りだが、竦んでちゃあ何も始まらんぞ。

「で、でも、痛いんですよね?」
「そいつぁお前の感受性次第だな。慣れると意外と気にならんもんだぞ」
「うっそだぁ~……」

 思わず口を衝いて出たのであろうリザードのぼやきには、撃たれた者の実感がこもっていた。
 中々の重みだが、腹から飛び立とうとするピンクの蝶々に四苦八苦しつつダース単位で殺してきた俺を前にして経験者ぶるのは迂闊だったな。
 悪戯心が湧いてくるじゃねえか。

「嘘だと思うんなら試してみるか?」
「えぇ!? 冗談じゃねえですぜ! 何でまたそんな心無いセリフが出てくるんですかい!?」
「誰も蜂の巣になれとまでは言ってねえよ。俺がやった盾があるだろうが」
「おお、成る程! 防御に徹して敵の弾切れを誘おうと云う訳だな?」

 俺の言わんとするところを察したアヤトラが、嬉しそうに相づちを打つ。
 頷いて肯定してやると、美しく朗らかな喜色満面となった。

「面白い! 早速やってみようではないか!」
「あの……立候補があるんなら、俺っちがやる必要はねえですよね?」
「アホ抜かせ。お前もやる。俺もやる。ウェッジもやる。全員でやるんだよ」
「オレもですか!?」
「おうおう! ぜんいんならカーリャもやるぞ!」

 モドキの奴にも盾を貸し、まずは言い出しっぺの俺がお手本となって矢面に。
 次にアヤトラ、モドキと続き、残りの二人が奇声を揃えて躍り出る。
 透明な樹脂製タワーシールドの表面で展開されるダイレクト着弾の様子は、否応なしに血流を加速させるほどの激しさだった。

「うひぁァァッ当たる当たる当たるあたたたたた死ぬゥゥ──ッ!!?」
「ふはははははは!! 存外綺麗で眩しい程ぞ! 星の如く瞬いておるわ!」
「おうおうおう! パラパラだ! パララララララのラララララ!!」

「お兄さぁぁーん!! これってみんなでやる意味あるんですかァァ──!?」
「あるぞ。全員一緒って事にしねえと、お前とリザードは物陰で震えてるだけだったろうが」
「かもしれませんけど! オレらに無茶やらせてどうしようっていうんです!?」
「そんなこと俺が知るか! 自分で考えろ!」
「ちょっ!?」

 突き放す俺の言葉を受け、ウェッジの顔が大きく歪む。
 本当に深い考えがあるわけじゃないんだがな。ラジコンヘリを仕留めるついでのお遊びみたいなもんだし。
 敢えて言うなら、度胸試しかね?
 ウェッジもリザードもすっかり逃げ腰が板に付いちまってるからな。臆病な気持ちは生き残るために欠かせない要素だが、余りに過ぎると打開できるはずの事態までもを逃す羽目になる。
 死地に挑んで脱しようとする男が、それじゃあいかんだろ。
 最低限、銃口を向けられても冷静に対処できるくらいの度胸が必要だ。
 今回の行動は、その度胸を手っ取り早く養うための通過儀礼だったのである。

 おお、即興のくせに上手い理由を思い付いたじゃねえか。
 偉いぞ、俺。

「よぉーし! 嵐が止んだぞ!
 総員帆を張れ! 錨を上げろ! お高く留まったガキの玩具に大人の意地を見せてやれ!!」

「ふはははは! 掛かれぇ────い!!」
「おうおうおう、うぉ──っ!!」
「チクショー! っもうヤケクソだああああ!!」
「……あ、やった! 初白星ですよ!」

 弾薬を撃ち尽くして旋回するだけになった三羽のアホウドリ目掛けて、熱くなった連中が殺到する。
 縄を投げつけ、石をぶつけ、盾に体重を乗せて叩き込む俺達の姿は、まるで狩りに勤しむ原始人のようだったに違いない。
 ……ま、偶にくらいはな。
 童心に返って暴れてみるってのも悪くないもんだ。
 こんな場所で見つけた束の間の息抜きとしちゃあ、割と良く楽しめた方だろう。








 レドゥン帝国、第七キメラ研究所1階──東側広間。


 両開きの扉を開けると、そこは狂気の園だった。
 壁際にはいくつもの手術用らしき寝台が並び、物言わぬ成れの果てが乗せられている。
 足の踏み場もないほどに散らばった赤、黒、黄色は、余計な物だと切り捨てられた彼らの中身なのだろうか?
 腐り、乾き、塗り込められた死の臭いが凄まじい。
 しかも、これは惨劇の跡ではない。
 真っ最中の光景なのだ。
 合金製の悪魔達が人の尊厳を踏みにじり、死者の平安を侵し続けているのである。

「ぶほ……っ!!?」

 顔だけ出して室内を覗いたウェッジの奴は、さっき食ったオミカンを戻しそうになって噎せていた。
 ……さすがに現在進行形なだけあって、地下一階で見た改造現場跡よりも遙かに酷い有り様だな。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 R1─SE003 デス メディカル  LV 2

 HP ??/??  MP ??/??  CP ??/??

 詳細: ???


 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 R1─SE004 MM クリエーター  LV 2

 HP ??/??  MP ??/??  CP ??/??

 詳細: ???


 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



 で、こいつらが改造手術担当のシャイターンってわけか。
 デスメディカルは救急車を思い出させる赤と白のツートンカラーが印象的な、解体要員。
 先端にメスやピンセットやドリルや電ノコが付いた複数のマニピュレーターを操作して、犠牲者達を切り刻んでいる。
 MMクリエーターは青と白で構成された、その色違いだな。
 下拵えの済んだ死体に次々と怪しい機械を接続していく、さしずめインプラント要員といったところかね。
 デザインはアレだ。某国民的SF映画に出てくる、R2何ちゃらに似ていると言えば分かりやすいかもしれん。
 ……相方のお喋りな金ピカが居れば、少しはマシな眺めになってたかもな。
 現状だとBGMが胸糞悪い作業音しかない上に、動いてるのは無言の機械と改造済みの死体共だけと来てやがる。余りの陰気さに溜息が出てくるぜ。

「どうする? 踏み込むか?」
「いや、種子島を備えた敵が居らぬのならば迎え撃つ方が良かろう」
「タネガシマ?」

 アヤトラの返事に首を傾げる。
 迎え撃つのはいいが、世界一美しいロケット基地のある島がどうしたって?
 通訳を求めて振り向くと、蹲ってはモドキに背中をさすられているウェッジとリザードの情けない姿が目に映った。
 おいこら待て、お前ら下で何見てきたんだ? 
 確かに臭いは凄まじいが、今更これくらいで参ってくれるなよ。

「来るぞ、是色! 我が心、云わずとも分かっておろうな!」
「あいあい! お前が後ろで俺が前な!」

 先刻活躍したばかりのタワーシールドを構え、改造ゾンビの突進を食い止める。
 ……楽勝だな。
 体格と体重の差は歴然だが、この手応えなら問題ない。重心にさえ気を付けていれば当たり負けする事はないだろう。
 すぐに流して足払い。

「【流水の鞭(エレメンタル・ウィップ・アクア)】! いざ、祓い清めん!」

 んで、転倒したところにアヤトラが一打ちだ。
 サムライボーイの右手から伸びた水の鞭は、ジョーンズ博士も真っ青の正確さで改造ゾンビの延髄を粉砕したのであった。
 いやー、魔法って本当に便利ですねー。
 刀以外にもバリエーションがある事が分かって、ますます羨ましくなったぞ。

「なあ、それって人に教えてやったりとかはできねえのか?」

「うむ……実の所、某にも何故扱えるのかは定かでは無いのだ。
 然し、案ずる事無かれ。、徳を積み、精進を重ねれば、自ずと道は開かれようぞ」

「うはは! 徳に精進と来たか! そりゃまた何とも口当たりの良いお言葉でございますねえ!」

 まとめて突っ込んできた改造ゾンビ共の足を水平にした盾で引っ掛けてやりながら、俺は上機嫌に横隔膜を震わせた。
 精進はともかく、徳を積むのは手遅れだ。
 生まれ変わりを体験したおかげで輪廻転生を信じられるようにはなったけどな。記憶と人格が丸々残ってちゃあ、魂が浄化された事にはならんだろ。
 俺は相変わらず悪党のまんまだぞ。
 ステータスに徳の数値があったとしたら、目を覆わんばかりのマイナスに違いない。

「なに、一口に徳と云っても千差万別。そう難しく考える必要は無いのだ。
 所詮は、移ろいゆく人の心と時代の流れより生じた泡沫の如き物に過ぎぬのだからな」

 風が千切れ、水流が唸り、所狭しと機械仕掛けの悪魔と亡者を蹴散らしていく。
 どうやらアヤトラの奴も段々と興が乗ってきたようだ。
 切れ長の瞳の奥に、覚えのある強い輝きが見て取れた。

「人を見よ! 人間を見よ! 気取り屋の獣共が蠢く様を! そして想え!!
 同じ神仏を崇め、等しき道義を説きながら、些細な利害の不一致で骨肉の争いを演じねば為らぬ、人の世の無常を!」

 それはまさしく、情熱の炎。
 狂気と意志と渇望が混ざり合った、道を求める者の眼だ。
 更に辛酸の遍歴を想わせる凄味が、戦いに慣れ親しんだ者特有の色濃い影が、決して褪せぬ不屈の勇気が、彼をただの思い悩む若武者ではない、神将さながらの高みにまで押し上げていた。

「徳とは何ぞや!? 義とは何ぞや!?
 衆生の期待に応える事か? 世の間違いを正す事か? ならば何が善で! 何が悪だ!!」

 しかしまた、やけにテンションが高いな。
 文字通りの腑塗れの戦場だ。そんな所で命のやり取りにしようってわけだから、少なからず高揚しちまうのは仕方ない。

「我が身、如何にして救いの手と為らん!? 毘沙門天の化身と成らん!!?」

 仕方ないんだが……盛り上がるにも程があるだろ。
 おかげで俺の方はすっかり冷めちまったじゃねえか。他の三人も棒立ちでドン引きだ。
 山盛りのドラッグを使っても、ここまでハイになるのはちょっと難しいぞ。
 もしかしてアレか? 一種のトランス状態ってやつか?
 失われた前世の記憶が刺激されたとかで、アドレナリンとドーパミンが全開になってやがんのか?
 何が切っ掛けかはともかくとして、狙い過たず攻撃が鋭くなっていく一方なのが恐ろしい。
 我を忘れまくっておきながらの安定感溢れる的確な鞭捌き。達人なんて生易しいモンじゃねえ。戦いの申し子か何かか、お前は。
 背中を預ける俺の身にもなってみやがれってんだ。

 鞭が風を切るたびに、うなじが寒くなるだろうが!
 並みの肝っ玉ならとっくの昔に漏らしちまってるところだぞ! 畜生め!

「何故生まれた!? 何故、生まれ変わった!? 俺は誰だ!!? 何を望んだ!!?!」
「知るかってんだ、ボケぇぇ――――――――ッッ!!!」

 最後のデスメディカルがしばき倒され火を噴いたところでアヤトラの背後に回り、潰れない程度に股間を蹴り上げる。
 野郎相手のクールダウンには、これが最も効果的な手段なのだ。

「自問自答の哲学に浸るんなら、俺の居ない所でやれ! 
 徳について学びたけりゃあ、あの世でソクラテスにでも弟子入りしてこい!!
 テメェなら諸手を挙げて大歓迎だ! さぞかし可愛がってくれる事だろうよ!」

 更に逆エビ固めで鬱憤を晴らす。

「ぬおぉぉぉ…………!!?」

 ふむ、やっぱり昔の日本人でも床を叩くか。
 思った通り、このリアクションは時代を超えて万国共通みたいだな。
 外に出たら異世界人相手でも通じるかどうか試してみよう。


「…………で、何の話をしてたんだっけか?」

「うむ……確か、其方の徳に関してではなかったか?
 善悪は常に表裏一体。世の様、人の様にて如何様にでも転ずる故、某は意識して徳行を積む必要は無いと思うぞ。
 味方を作り、敵を討ち、困難を乗り越える。今の所は、ただ其れだけを行っておれば充分であろう」

「そうかいそうかい。要するに考えるだけ無駄ってわけだな」
「まあ、有り体に申せばそう云う事ぞ」

 頷くアヤトラの妙に晴れ晴れとした顔が気に入らなかったので、スコーピオン・デスロックに移行する。
 まったく、分かりきった答えを出すのに大層なご託を並べやがって。
 徳に対して忌避感を抱くのが、馬鹿馬鹿しくなっちまったじゃねえか。
 だが…………そうか、なるほど。
 善悪は表裏一体。結局は気の持ちよう、発想の転換次第か。
 こっちの世界の情勢や価値観によっては、俺みたいなのが高徳の師扱いで持て囃される事も有り得るわけだ。

 ……やだな。
 想像するだに気持ち悪いぞ。
 人間、気楽に生きるのが一番だ。身の丈に合わない事を考えるもんじゃねえやな。








 レドゥン帝国、第七キメラ研究所2階──西側の部屋。


 迫るラジコンヘリの群れ。
 行く手を遮る有象無象の改造生物。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 サイバー キメラ クリーチャー  LV ??

 HP ??/??  MP ??/??  CP ??/??

 詳細: ???


 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



 あるモノは熊の身体にワニの顎、またあるモノは大蛇の胴に獣の四肢。
 中にはヒューマノイド型生物が混じっているのであろう、吐き気を催す未知のモノまでもが居る始末。

「UMA動物園かよォォ!? ここはよォォォ!!?」

 一目見ての感想は、自身の語彙の不足を痛感してしまうほどに有り触れたものだった。
 ……こいつらが研究所で合成されたキメラ生物ってわけか。
 見た目はバラバラ、レベルもバラバラ。なのに名前はみんな一緒で、個性的なんだか没個性なんだかよく分からん化け物共だな。
 名前以外の共通点といえは、頭部に接続された謎機械くらいなもんかね?
 お揃いの衣装を着せられた改造ゾンビと比べると、素材の持ち味を生かしたソフトな処置に思えてくるな。

「うおォるあァァあああアアアッッ!!! どけやァァ、カス共ォォォ!!」

 だがまあ、呑気に眺めている暇はない。
 這うような前傾姿勢から、盾を構えて全速前進。
 【早駆け】を使用し、小さな身体とフットワークを活かしてキメラ生物共の足下をくぐり抜ける。
 真後ろまで来たラジコンヘリの群れが銃弾をバラ撒く音が聞こえてきたが、遮蔽物が多いおかげで命中する事はなかった。
 味方ごと撃つか……。最初っからそんな自覚はねえんだろうな。
 利用させてもらうぞ。
 ステップを刻んで象足の踏み付けを躱し、横から来る牙の主には仲間の誤爆をプレゼント。
 位置取りに細心の注意を払いつつ、できるだけ多くの敵をラジコンヘリの銃火に晒してやろうと立ち回る。

「はい、ごめんなさいよ! はいはい、ごめんなさいよ!」

 乱戦状態がこちらの有利に働いているな。この調子なら秘薬を使う必要もないだろう。
 一気に突破して、目指すはアヤトラ達との合流地点だ。
 ……あ、いや、それは不味いか。

「うわはぁぁ────ッ!!」

 格段に激しくなった銃声を耳にして、第六感からのヘッドスライディング。
 そのまま転がり、物凄い勢いで穴空きチーズにされていくキメラ生物共から距離を取る。
 動きを止めずに後方を見やると、あの機械バッタがご機嫌麗しくガトリング・ガンに物を言わせていやがった。
 しかも、2……3体!? って、また増えた!
 4体も追ってきたのかよ。自分の大人気ぶりに涙が出てくるぜ。
 ……他の奴らは上手いこと逃げ切れたのかねえ?

 一階の中央付近でシャイターンの大群と遭遇した俺達は、一目散に脱兎となる事を余儀なくされた。
 機械バッタがの他にも物騒なのが沢山居やがったからな。とてもじゃないが手に負えん。
 ──が、予め想定していた事態でもあったので、撤退は一人の犠牲も出す事なくスムーズに行われた。
 少なくとも、別れる前に見た限りじゃあな。
 俺がこうして孤独な逃避行に陥っているのは、想定を遙かに超えて群がってくる敵の数が多かったから。恥ずかしい話だが、回れ右して西側の階段で上に行くルートしか残されていなかったのだ。
 銃弾の雨から逃げ、機械バッタから逃げ、逃げて逃げての全速力で着々と合流地点から遠ざかっているというわけである。
 言うまでもなく、非常に不味い状況だ。



  ◆ 蝗の躍動の秘薬 〈使用回数 1〉〈効果時間 10分間〉

   詳細: 若草を擂り潰したかのような臭気が漂う、苦味の強い飲み薬。
        服用すれば立ち所に敏捷力と跳躍力が倍増する。
        しかし、身体に掛かる負担が軽減されるわけではないので、
        激しい運動の際には気を付ける必要があるだろう。



 俺はアヤトラからもらった新しい秘薬と蜘蛛の歩みの秘薬を飲み、即座に跳躍。足を止めずに床、壁、天井と接地面を目まぐるしく変えて、弾幕地獄を避け続けた。
 本邦初公開。
 これぞ助走と跳躍を繰り返しながら前へと進む、変幻自在の移動術。
 名付けて、ジグザグ立体運動である。

「っクソッタレがああぁぁ!! もったいねえ事させやがってぇぇぇ!!」

 傍から見たら、物理法則無視の異次元曲芸以外の何物でもないだろう。
 ぶっつけ本番で、こんな離れ業を披露できてしまうとは……。いやはや、自分の空間把握能力が恐ろしすぎてならん。
 けど、ロスが多い分、速度が上がっても振り切れるかどうかは微妙なところか。

「ぐぉ……っ!?」

 そしてトドメを刺すように、前からも機械バッタがお出ましと来たもんだ。
 ……楽しくなってきたぞ。

「ファイヤ────────ッッ!!!!」

 躊躇せずに【激怒】を発動。
 熱い! 熱い!! クソ熱い!!!
 更に倍増したAGIの数値が赴くがままの爆発的な加速でもって前後からの掃射を置き去りにし、電気を帯びた触角の迎撃を回避する。
 立ちはだかる機械バッタ本体は、盾をボード代わりに用いる事で爽快に滑り抜けさせてもらった。

「俺はペンギンの皇帝だァァァ──────ォ!!!」

 気分は丁度、南極の氷の上を滑るアレである。
 いいんだよいいんだよ。ごっこ遊びってのは幾つになっても楽しいもんなんだよ。
 成りきりこそ娯楽の本質。俺は心からそう思うね。
 RPGなんてその最たるモンだろうな。何せ、ロール(成りきって)・プレイング(遊ぶ)・ゲームっていうくらいだし。
 ……初めての【激怒】の時がガ=オーで、次がコウテイペンギン成りきりってのは、さすがに酷い落差だとは思うがな。
 
 で、えーと……【激怒】の効果は120秒だったっけか。
 時間切れまで、どれだけの距離が稼げるかが勝負だな。

 角を曲がり、敵を飛び越え、吹き飛ばし、通路の壁をひた走る。


「おうおうおう! おまえブジだったか! よかったな!」

 気が付くと、いつの間にかモドキの奴が並走していやがった。

「ああ、お前も上に来てたのか? 他の三人はどうした?」
「おう、ショチョーシツみつけた! カギとった! もうすぐキシダンサイコーだ!」
「なにぃ!? 随分順調だな?」

 もしかして、俺が囮役みたいになってたからなのか?
 にしても、全員集合を待たずに探索再開とはアヤトラの奴も薄情と言おうか、臨機応変と言おうか……。
 まあ、別れてからの短い時間で成果を上げたってんなら、文句を言う筋合いじゃねえやな。

「それで、何でお前はここに? まさか、俺を探しに来たわけじゃねえだろう?」
「おう、ちがうぞ! かあさまたすけにきた!」
「助けにって……親孝行は感心するが、先走ってどうすんだよ。第一、居場所も分からねえんじゃ──」
「イバショわかるぞ! カーリャ、かあさまのケハイわかる!」

 なんと、そりゃまたご都合主義な。
 親子の絆か、発達した野生の本能か、はたまたシャンディー姉さんのような異世界種族特有の不思議能力なのか。理由はともかく、モドキなりに確信があっての行動なわけだ。
 不思議能力といえば……こいつ、エトラーゼじゃないのに言葉が通じるんだよな。
 三人娘はアストラル体だったから、肉声ではなく魂の共振とやらで俺と会話をしていた。
 俺からすると普通に英語で話しているようにしか思えないんだが、モドキの奴もそんな感じなのかもしれん。
 つまりは一種のテレパシーだ。
 不思議というより超能力だな。母親ともそれで交信してんのか? さっきから独り言がうるせえぞ。

「──かあさま? かあさま!? かあさまかあさまかあさま!!? カーリャのこえきこえない?!」
「おーい、どうした? 音信不通か? 脳内電波の調子が悪いのか? それとも脳自体が悪いのか?」
「やべー! クソやべー!!」

 あと、いきなり反転するのもやめてくれ。
 またあのスリルの中に逆戻りしちまうだろうが。自殺したいんなら、何処か人目に付かない所でひっそりとやれ。俺を巻き込むな。
 俺の身体も勝手に動くんじゃねえ。
 反応が良すぎて、ちょっとした怪現象だぞ。本能が理性を置いてきぼりにしちまってるじゃねえか。

「やばいって何がだぁぁ!? お前のお袋に何かあったのかぁぁ!?」
「にゅわぐぁああああぁぁぁぁ!!!」
「待てこらァ──ッ!! 逃げてもいいが、逃げんなこらぁぁ────ッッ!!!」

 モドキの背中を必死に追いながら、止め処なく流れる冷や汗を拭う。
 何だか知らんが、確かにこれはやばそうだ。
 明らかな地響きに伴い、無尽の圧力が心臓を絞り上げる。
 俺は噴火を直前に控えた火山の傍に居るかのような、天変地異の前触れに似たものを感じ始めていた。

「ばか! シャイターン、ばか! かあさまのフウインといた!
 かあさまげんかいリセイほーかい!! ぎがえふぇくとでめたもるふぉ────っぜ!!!」

 通路全体に亀裂が走り、猛烈なアップダウンが俺達を襲う。
 縦揺れ型の大地震だ。
 耐えられるのは、地震大国日本が誇る最新鋭の建築物くらいなものだろう。
 数十秒と持たずに急角度で傾いた床に足を取られた俺は、転がりながら、崩れゆく天井の向こうに眼を奪われていた。
 垣間見えるのは……一体何だ?
 分からない。目が離せない。
 強大で、理不尽で、途方もなく圧倒的な存在がそこに居る。
 そこに居るのだ。


 【激怒】後の虚脱感も何のその。
 全身を蝕み、凍てつかせんとする恐怖と狂乱に抗うため、俺はガ=オーに成りきった。

















 あとがき

 今回はテンポを考え、ダイジェスト風でお送りしました。
 主人公が研究所の内部を全部見て回るのは不可能ですからね。それを言い訳に端折りまくりです。

 おかげさまで、あと二回くらいで序章が終わりそうです。
 結局、顔も分からず裸のままで終わりそうです。
 色々と機会を逸したような気がしますね。



■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 現在の所持品  19/20

 パーソナル マップ  (72)
 フォーチュン ダイス  (483)
 豊穣神の永遠のボトル
 特殊樹脂製のタワーシールド  (5) 〈Dグレード〉 〈軽量級〉 雪上ではソリにもなります。武器防具の類は色々と使い道があって本当に便利ですね。

 丈夫で軽くて滑らかで愛が込められた高品質の スパイダーシルク製の背負い袋

 入)スパイダーシルクの子供用胴衣 〈Eグレード〉 〈超軽量級〉
 入)スパイダーシルクの子供用手袋 〈Eグレード〉 〈超軽量級〉
 入)スパイダーシルクの子供用肌着 〈Eグレード〉 〈超軽量級〉
 入)ケタの干し肉  (37) 探索の片手間に食べて1消費
 入)他の袋4枚

 丁寧な作りの軽くて丈夫な スパイダーシルク製の背負い袋

 入)スマイリーキャベツ  (5)
 入)オミカン  (9) おやつに食べて1消費 貴重なビタミン源です。

 丈夫な革製の背負い袋

 入)陽光のカンテラ
 入)水筒 〈空〉
 入)丸い水筒 〈湧き水〉
 入)大きめの水筒 〈井戸水〉

 ヒール ストーン
 ヒール ストーン
 リフレッシュ ストーン (4)
 冒険者の松明  (32)
 火の付いた冒険者の松明
 麻製のロープ  (71)
 蜘蛛の歩みの秘薬  (8) シャイターンから逃げるために1消費
 蟻の力の秘薬  (9)
 蜂の一刺しの秘薬  (3)
 蝗の躍動の秘薬  (2) シャイターンから逃げるために1消費
 ケタ肉の塊  (24)
 月光鱒の切り身  (58)


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 次回、ママン・ハザード。

 これが終わったら、俺、主人公のレベルに合った初心者向けのシナリオを書くつもりなんだ……。



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