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No.15492の一覧
[0] ファンタジー 迷宮物[K.Y](2010/03/27 21:14)
[1] プロローグ[K.Y](2010/01/17 20:39)
[2] 第一話[K.Y](2010/01/17 20:40)
[3] 第二話[K.Y](2010/01/21 21:44)
[4] 第三話[K.Y](2010/01/31 20:17)
[5] 第四話[K.Y](2010/03/27 15:45)
[6] 第五話[K.Y](2010/03/27 15:46)
[7] 第六話[K.Y](2010/03/27 21:14)
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[15492] プロローグ
Name: K.Y◆4f5df61f ID:7900bcbf 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/01/17 20:39


 
この世界は神により生み出された。
 
それが、この大陸ガイアテラの常識であった。
 
それには勿論理由がある。
 
未だに誰もが作れないような『神の遺産』とも言われている建物が世界各地に残されているからである。
 
『神の遺産』は未だ解明できない不思議なチカラを数多く宿し、多くの国がそこを起点とし国を興した。
 
その様な『神の遺産』の中で異端とされるモノがあった。
 
『神の遺産』の殆どは同じ大きさの神殿であったのだが、その中の一つのみ規模が違ったのだ。
 
長き間人々から「暗黒神殿」と呼ばれる大神殿である。
 
「暗黒神殿」と呼ばれる理由は当然ながら、ある。
 
この世界には魔物・モンスターと言われる全ての種族に敵対する生物がいる。
 
モンスターは世界各地に存在しているのだが、そのモンスターの生まれる場所と言われる洞窟が大神殿の付近に存在したからだ。
 
その為この地は長い間、人のいない荒れた大神殿とモンスターの生まれ出るといわれる洞窟のみが存在する不毛の大地であった。
 
しかしある時、領地としてその場所を所有する国の王によりその場所に人が派遣される。
 
 
「危険である物をそのままにしておいて良い訳が無い
それにあの地にあれらが存在するのも何か理由があるからに違いない・・・かの地の全てを解き明かせ」
 
 
王のその言葉に従い不毛なる大地に人の営みが築かれていく事となる。
 
最早その王はおらず、その国すらも存在はしていない。
 
が、不毛なる大地であった土地は見事に姿を変え、各国が注目し一目置く都市となった。
 
迷宮都市『スカンディア』
 
この地より、この物語は始まる。
 
 
 
 
 
 
 
「くぅっ!!」
 
 
ブロードソードを持ち、皮の装備を身に着けた青年-アズライト-は、自分に襲いかかって来る鈍い輝きを必死の思いで横に跳ぶことで躱す。
 
そのまま体勢を崩し、何度か転がりながら距離を取ると立ち上がり、自身の身体に付いた埃や汚れを払うこともせずに剣を構えて相手を睨み付ける。
 
コボルド、それがアズライトに向かって攻撃を仕掛けてきた相手である。
 
犬をそのまま大きくし、人間のように手足を進化させた二足歩行のモンスターだ。
 
 
「グガァァ!!」
 
 
アズライトによって傷付けられたのだろう、体のあちこちを赤く染めながらも瞳に怒りを宿し、此方に剣を振り上げ襲いかかって来るコボルド
 
 
「しっ!」
 
 
相手との距離を見極め、アズライトは姿勢を低くすると短く息を漏らしながらコボルドの横を駆け抜ける。
 
と、共に剣を横に構え、此方の行動にまだ対処できずがら空きになっている脇腹を切り裂く。
 
 
「ギャイン!?」
 
 
ズシャ!という肉の避ける音と感触を感じながら、コボルドの上げた悲鳴など気にせず直ぐさま体を反転させ前に見えるコボルドの背中に向かってジャンプする。
 
いきなりの反転に足元が滑りギャリっと耳障りな音を立て体にも負荷が掛かるものの力を入れて無視し、思わぬ反撃に体を前のめりにうつむかせているコボルドの背中を思いっきり踏みつける。
 
 
「ギャッ・・・!」
 
 
ドシュッ!
 
 
そのまま背中に馬乗りとなり、 両手でしっかりと握りしめた剣を相手の首めがけて振り下ろした。
 
断末魔の叫びすらまともに上げることすら出来ずに、コボルドは何度か体を痙攣させると、体全体から力が抜け事切れたことをアズライトに伝える。
 
 
「・・・ふぅ」
 
 
戦闘が終わった事を感じた彼は、少しばかりの疲労感と共に思わず溜息をはき出した。
 
 
「ぉっと!?」
 
 
そのままの体勢で息を整えていたアズライトだったが、コボルドの死体が光り出し、光りの粒となって消える。
 
後に残るのは薄紅色の小石のみとなり、座っていたモノが無くなった事により彼は体重を支えきれず思わず尻餅をついてしまった。
 
 
(うわぁ・・・格好悪いなぁ・・・)
 
 
痛みを訴える尻をさすりながらも体勢を整えると思わず周囲を見渡す。
 
 
「ははっ」
 
 
誰も見ていないことを確認できた彼は、安堵と気恥ずかしさにより軽く笑い声を漏らすと、その場に残った薄紅色の小石、血晶石と呼ばれる小石を腰に装備した何も入ってないような小さい麻袋に入れる。
 
その後、その麻袋を親指で撫でるように擦ってやると不思議な事に麻袋の表面に文字が浮かび上がる。
 
黒のインクが滲み出るように浮かんだ文字は『薄紅色の血晶石 17コ』と書かれていた。
 
 
「今日は・・・これぐらいでいいか」
 
 
その文字を読み、軽く頷いた後そう独り言を漏らすと、アズライトはこの場所より脱出する為に歩き出した。
 
ファーストダンジョン地下三階、そう呼ばれる場所から出る為に。
 
 
 
 
 
迷宮都市『スカンディア』
 
そこは世界で唯一この場所にだけ存在する迷宮と呼ばれる場所がある都市である。
 
現在は『ニブルヘルム』と呼ばれ迷宮となった場所であるが・・・この場所は元々、モンスターの生まれる場所といわれる洞窟だったのだ。
 
モンスターは世界各地にいると説明したが、それはモンスターが世界各地に常に存在しているというわけではない。
 
場所柄にも寄るが、一年中モンスターが居る地域などはなくその被害に怯えずに暮らせる時期もある。
 
だが、『ニブルヘルム』は違う。
 
モンスターが常におり、なおかつ奧に行けば行くほど強力なモンスターが出現するのだ。
 
それだけならば、荒れることはあっても発展することは無いように思えるだろうが、モンスターはある特色を持っていた。
 
モンスターを倒すと、血晶石と呼ばれる紅い石を残しその身は消え去るのである。
 
この血晶石、そのモンスターの命を凝縮しているのか多くの人を魅了し最初は宝石として売買されていた。
 
しかし、その後色々と加工、調合できる事が解り病気の治療や、武器や防具等に魔力や魔法を宿すときの繋ぎ、宝石や装飾品の価値を高める為の素材等様々な利用価値があることが解った。
 
そして多くの人物が夢見る奇跡『不老不死』その劣化板とも言える『老化の遅延、及び延命』
 
この効果を持つ薬の開発に成功したのだ。
 
この為、血晶石を得る為にモンスターが常にいるニブルヘルムは、世界中の注目を浴び人々が集まりだした。
 
そして『ニブルヘルム』の近くにあった暗黒神殿と呼ばれていた大神殿。
 
今は『バルドゥル大神殿』と名称を変えているのだが、この大神殿が他に点在する神殿とは比較にならない神秘を持っていることが解ったのである。
 
これらの『ニブルヘルム』と『バルドゥル大神殿』により、この地は発展を続け一都市ながらも世界的に有名で一国と同じ扱いを受ける自治権を持った大都市となったのだ。
 
そしてその『バルドゥル大神殿』を本拠地として活動しているのが、迷宮都市支援ギルド『ノルン』である。
 
基本的に支援しているのは冒険者であるが、冒険者支援では無く迷宮都市支援とされてるのには理由がある。
 
この世界にはクラスシステム(職業選択)というものが存在するのだ。
 
人やエルフやドワーフなどの知識や歴史を積み重ね文明を築く事ができる存在は、生まれた瞬間からノービスというクラスが与えられる。
 
ノービスは「何者にもなれるが何も極められないクラス」と言われており、経験を積めば他のクラスになれるがクラスとしては最弱と認定されているのだ。
 
経験を一定以上積み、神殿に行けばレベルアップ(地力上昇)という加護が得られる。
 
その名の通り体力や耐久力、力や敏捷性などの身体能力が上がる加護のことであるが、ノービスはこの身体能力の上昇値がもっとも低いのである。
 
だがノービスでレベルを上げ、尚かつ自分の就きたい職業に関することを指導・独学問わずに行っていると別のクラスになることができる。
 
冒険者としてのクラスだけでなく商人や鍛冶師、農民というクラスも存在するため迷宮都市に関する全ての人間がお世話になる場所、それがノルンでありその為に迷宮都市支援という肩書きを貰っているのだ。
 
尚、一度クラスを変えたらそれよりも上級のクラスにはなることが出来るが、他のクラスに変えることは不可能となってしまう。
 
つまり商人が農民になりたいと思っても不可能なのだ、もちろん畑を耕したり作物を育てたりすることは出来る、が『商人』に適した成長をする様に体がなってしまっている為『農民』のクラスを持つ人ほどの成果を上げることは出来ない。
 
この様な事情があるために、様々な職業になれるが殆ど身体能力が上昇しないノービスは「何者にもなれるが何も極められない」と言われている。
 
もっとも、スカンディアに一番多いのはやはり冒険者である関係上、商人などの一般職スキルと呼ばれるクラスになる人は少ないため、広大なる大神殿の端の方にしか受付が無いのだが。
 
結局のところ迷宮都市支援となっているが、大神殿にお世話になっている者達の八割以上が冒険者であり、実質的には冒険者支援ギルドと言ってしまっても過言ではない。
 
 
 
 
 
ファーストダンジョンより無事に脱出できたアズライトは、今日獲得した血晶石の換金とステータスの確認の為に大神殿の中央入口に来ていた。
 
空が茜色に染まりきりもう一時間も経てば夜と断言できるような時間帯であったが、周りには多くの冒険者が絶えず行き来していた。
 
 
「・・・・・・はぁ」
 
 
後少し歩けば大神殿内に入れるという位置で、アズライトは大きく溜息を漏らした。
 
自分の行動が招いている事とは言えこれから投げ掛けられるであろう言葉に気持ちが沈んだ為だ。
 
何度も投げ掛けられている為に慣れてしまった部分も大きいが、それでも気分が良くなる訳では無い。
 
しかし、このまま佇んでいてもどうしようもない為に、少しばかりの気合いを入れると入口の方へと歩いていく。
 
入口を抜けると休憩所と呼ばれる椅子とテーブルが並べられただけの場所に出る。
 
ここはクラスチェンジやレベルアップの順番待ち等の冒険者や、ノルンに対して用事のある者、ただの待ち合わせ等といった全ての人が利用して良い場所となっている。
 
もっとも、冒険者用窓口が近いために冒険者以外の姿は全く見当たらないが。
 
余談ではあるが、万人が利用して良い場所ではあるが大神殿の中である為に酒や嗜好品・賭事の類は全て禁止されている。
 
破れば勿論注意を受け、罰金を課せられる。
 
その上、悪質だと判断された場合にはノルンより支援停止を言い渡され、血晶石の換金はおろかレベルアップ・クラスチェンジもして貰えなくなる。
 
その為に気性が荒かったり、短気で暴力的な者が多い冒険者達でも殆どの者がこのルールは守っている。
 
アズライトは、各々のテーブルにて話に花を咲かせている冒険者達に目もくれず、歩調を早め窓口の所まで真っ直ぐ歩いていこうとしていた、が、そんな彼の姿を見つけたある冒険者が声を掛けてくる。
 
 
「よう!ファーストマスター!!」
 
 
その声に、少しばかり辺りが静かになると次いで大小の笑い声があちらこちらから漏れた。
中には態と聞かせるような大音量の笑い声までも。
 
 
「今日の成果はどうだった?」
 
 
「・・・別に、何時も通りだったよ」
 
 
その笑い声にイラっとしたアズライトであったが、声を掛けられた手前無視することも出来ずに、そう言葉を返す。
 
 
「ははっ!!何時も通りか、ホントにファーストマスター様は薄紅色の血晶石が大好きですなぁ!!」
 
 
すると、その言葉を聞いた別の冒険者よりその様な言葉が投げ掛けられる。
と、共に辺りから更なる笑い声が巻き起こる。
 
アズライトは、その言葉にも笑い声にも反応はしなかったものの、思わず強く強く拳を握り締める。
 
 
「くくっ、あ~申し訳なかったなぁファーストマスター呼び止めたりしちまってよ
俺はただ単純に調子を聞きたかっただけなんだ」
 
 
最初に声を掛けてきた白髪・茶眼で中肉中背の冒険者は、笑みをかみ殺しながらも眼では笑いながら、口だけの謝罪を言って会話を打ち切った。
 
アズライトも、なんの返事を返すことなく、冷めた表情のまま足早に窓口の方へと向かっていく。
 
その後もしばらくの間は、休憩所から笑い声は絶えなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
後書き
 
どうもK・Yです。
 
新年あけましてごめんなさい。
 
作者としても、ああいった手前どうにか12月中に更新したかったのですが・・・年末年始ってホント忙しいよね!!
 
どうにか時間が出来たので書きましたが・・・1月半ばですね・・・
 
改めまして、今年も作者とこの「ファンタジー 迷宮物」をよろしくお願いします。
 
 
 


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