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No.15363の一覧
[0] ヌーディストドラゴン (異世界・変態ファンタジー)[サイ娘倶楽部](2010/05/04 02:08)
[1] 1-2[サイ娘倶楽部](2010/01/11 14:19)
[2] 1-3[サイ娘倶楽部](2010/01/14 05:46)
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[4] 2-2[サイ娘倶楽部](2010/05/02 21:33)
[5] 2-3[サイ娘倶楽部](2010/05/04 02:09)
[6] 3-1[サイ娘倶楽部](2012/01/08 02:08)
[7] 3-2[サイ娘倶楽部](2012/12/27 01:28)
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[15363] 2-3
Name: サイ娘倶楽部◆c965b1c8 ID:52b592ea 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/04 02:09


***** 下ネタギガ注意 *****






 2-3







 ――衣類。
 
 ヒトをヒトたらしめている概念のひとつで、ヒトが社会の中で生きていくためには必要不可欠なものである。
 まず大前提として、体温調節や表皮の保護が、衣類の存在理由として挙げられるだろう。
 寒いところでは服を着込み、日差しが強いところでは布を被り、硬い物で負傷しないよう革で防ぐ。
 外套や手袋、防具などは、ヒト自身を守るために作られ、使われてきた。
 
 しかし、自身を守るだけならば、毛皮を発達させればそれで済むことも多い。
 実際に、多くの獣や魔物は、自身の体表を進化させることで、様々な環境に適応していった。
 
“隠すこと”
 
 それが、ヒトとケモノを分けるひとつの要因である。
 
 ヒトが社会の中で生きていくためには、“ヒトらしくないこと”は表に出すことができない。
 制約を守り、周囲と協調していくことで、ヒトは社会性を維持しているのである。
 その“社会性の維持”に欠かせないのが、衣服によって己の一部を隠すことだ。
 
 
 人前では、服を脱いではいけません。
 
 
 全ての状況に当てはまるわけではない。
 しかし、この世界において、最も多くのヒトが遵守しているルール。
 
 ヒトが服を脱ぐのは、ヒトである必要がなくなったとき。
 
 ケモノと変わらず、本能のために動くとき。
 人前で満たすことを許されない、原初の欲求を満たすとき。
 
 すなわち、排泄と生殖である。
 
 そのための器官を衣類で隠すことで、ヒトは社会に適応できる。
 
 
 そして。
 そのための器官を晒すことが、カキヤの能力解放へと繋がるのである。
 
 
 腕や顔を露出させることも、部分開放にはなっている。
 
 実際、長袖より半袖の方が体調も崩れにくくなったりする。
 しかし、それらは微々たる変化でしかない。
 大きく変わってくるのは、体幹部だ。
 
 乳首や下半身を晒したときに生じる“力”こそが。
 カキヤを“竜神の生まれ変わり”と言わしめているのである。
 
 
 
 故に。
 
 
 
(……まずいな……。今の状態だと尻を半分出すのが精一杯だ……!)
 
 
 
 拘束されて逸物を晒せない今の状況は。
 なにげにピンチだったりする。
 
 
「……もぞもぞして、どうしたんですか?
 はっ!? まさか背中に虫がはいったとか!」
 
「(びくっ)ああいや、ごめん何でもない。
 それより――えっと、リシトアーキ? 君は敵対する者が後を絶たないって言ってたけど」
「? はい。私の眷属を狙う者は多いですが……それが?」
「いや、竜族を狙うなんて、とんでもない輩がいたんだな、と思って。
 ……やっぱり、他の魔族とか、そういう連中なのかな?」
 
 訊ねながら。
 カキヤはこれから自分はどう動くべきか、考えていた。
 
 今回の事件は。
 ほぼ間違いなく、自分たちが巻き込まれただけの話。
 自分やノユキに危害が及ばないのであれば、静観すべき問題だろう。
 ただ、自分はこうやって縛られていて。
 そしておそらく、ノユキも捕らえられている。
 故に、脱出のために力を振るわなければならない。竜神としての力を。
 
 この、蛇竜の女性の目の前で。
 
 竜神が魔物全体から狙われているのは、嫌というほど理解している。
 今はまだ、あやふやな情報でしか“竜神転生”の事実は魔物内に広まっていない。
 先日の角娘のときのように、やむを得ない場合のみ正体を明かして倒しているが、それは高位の魔物に限った話である。
 実力の高い者ほど、自分が負けた話など吹聴しないだろう。
 カキヤはそう判断し、実際、カキヤが旅を続けていても、魔物内で自分の噂が広まる気配は感じなかった。
 
 重要なのは、自分の正体を明かしても、それが魔物達に広まらないことである。
 たとえ現状の窮地を打破できたとしても。
 噂を聞きつけて、大量の魔物が連日して襲いかかってくるような事態になったら。
 いくら竜神としての能力を発揮できるとしても、すぐに限界は来てしまうだろう。
 自分やノユキの命を守りきるのも、難しくなってしまう。
 だから、自分の能力の使いどころは、慎重に選ばなければならない。
 
 目撃者が人間や下級の魔物が相手なら、それほど心配する必要はない。
 せいぜい「変態だーっ!?」と思われる程度で済む。
 彼らは竜神について深くを知らないし、たとえ吹聴して回っても、信じる者は少ないだろう。
 しかし、高位の魔物となると話は違う。
 上述したように、相手に屈辱も与えておかないと、高確率で噂が広まってしまうだろう。
 
 
 蛇竜の女性――リシトアーキが、ヒトを害することも厭わない存在だったなら。
 自分はそれほど迷わずに鉄棒制裁を加えることができ、そのまま逃亡も容易となる。
 しかし。
 
 もし、仮に。
 
 
 
 
 
「ああ、いえ。
 私達を狙っているのは、魔物ではなくヒトなのです。
 私の祖父は、昔から一地方の守護をしていまして……どうも、そういうのが気に食わないヒト達も多いようなのです」
 
 
 この蛇竜が、“いいやつ”だったならば。
 
 
 
 
「とはいえ、私もヒトを傷つけたくはありませんし……。
 今までは私が頑丈だったから何とかなっていましたが、すみません、巻き込んでしまって……」
 
「……………………」
 
「あ、で、でも大丈夫ですよ!
 きっと私にトドメを刺すために、誰か来ると思いますから!
 そのとき、貴方は助けて貰えるよう、一生懸命お願いしますから!」
 
「……どうして、ただのヒトに、そこまで気を使うんだ?」
 
「え……?
 どうして、って……私のせいで巻き込まれてしまったのですから、当然じゃないですか。
 ただのヒトとか、そういうのは関係ないと思います。
 私、ヒトとは仲良くしたいと思ってますから。だから御爺様にも無理を言って、こうして旅しているわけですし」
 
 
 ……内心で、重い溜息を吐く。
 
 こんな“いいやつ”に、力尽くで口止めなんて、できそうになかった。
 
 
 
 ならば、することは、ひとつ。
 
 手早く脱いで、この場を脱出する。
 それだけなのだが――
 
 
 
(くそっ……これ以上ズボンを下ろせない……!)
 
 
 
 後ろ手に縛られているので、今以上にズボンを下ろすことができない。
 すなわち、これ以上の“部分開放”が困難だということ。
 臀部を半分だけ晒している今の状態では、せいぜいリシトアーキの能力に耐えるのが限界である。
 カキヤを縛っている縄は蛇竜を縛るための特殊仕様のようで、生半可な力では千切れそうもなかった。
 この縄を千切るには、最低限、臀部を全て解放するか、逸物を外気に晒するか。それくらい露出しないと難しいだろう。
 
 尻の一番膨らんでいる部分を出しているのだから、あとは身体を捩るだけで全部脱げる――と最初は思っていた。
 しかし。
 とある事情により、それは困難となってしまっていた。
 
 
(くそっ……! 鎮まれ……! 鎮まれってんだよ……!)
 
 
 縛られている、という非日常性と。
 薄闇のなかでもよくわかる、リシトアーキの着衣の乱れが。
 
 カキヤの一部を、変形させていたのである。
 
 
 ぶっちゃけると、引っかかってこれ以上脱げなかった。
 
 
 
「あの……先程から動いていますが……本当に大丈夫ですか?
 苦しいとか……まさか、何か持病をお持ちなのですか!?」
 
 きかん坊が言うことを聞かないだけです。
 などと言えるはずがない。
 というか、這いずりながら近付いてこないでくれ!
 シャツの襟元がよりヤバイ開き具合になるじゃないか!
 というか、このままだと野営テントに気付かれてしまう!
 
「な、何でもないからっ!」
 
 慌てて転がり、背中を向ける。
 尻が見えてしまうが、やんちゃな男の子を見られるよりは幾分かマシだ。
 ――と、思ったら。
 
 
 勢いがつきすぎて。
 
 うつぶせの姿勢になって。
 
 後ろ手に縛られてて。
 
 体重が一点に集中して。
 
 緊張と焦燥感と、あとは魔族にもいいやつはいたんだなーというよくわからない嬉しさが混ざり合って。
 
 何の意図もなく身体を揺すったりしてしまって。
 
 
「……うっ!?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 どしん、と岩牢が揺れた。
 
 尋常ではない振動である。
 リシトアーキが慌てて周囲を見回すと、揺れは治まることなく続いており、時折天井の欠片が落ちてきていた。
 
 ――まさか、このまま自分たちを埋めるつもりなのか。
 
 なるほど、とリシトアーキは歯を食いしばった。
 これなら自分の姿を見ずとも、確実に息の根を止められるだろう。
 一緒に捕まってしまった男性も、逃げられずに。
 
 それはダメだ、と思った。
 自分が殺されるのは仕方ない。
 敵が多いというのを理解しているのに、無理を言って旅をしていたのだから。
 自業自得としか言い様がない。
 故に今までも、襲ってきた相手に報復するとか、そういうことは一切考えていなかった。
 
 しかし、他人を巻き添えにするのはいけない。
 この男性には何の落ち度もなく。
 ただ、自分と一緒にいただけ。
 それだけで、命を奪われようとしている。
 そんな理不尽、認めたくなかった。
 種族の違いとか、そんなのは関係ない。
 
 だってこの人は、きっと、いいひとだから。
 
 思い出すのは馬車の記憶。
 リシトアーキが寝入る前。
 きっと、彼はこちらの不自然さに気付いていた。
 しかしそれを暴き立てるようなことをせず、共に馬車に乗り込み、事を荒立てないよう寝たふりまでしていた。
 それは何故か。
 理由は簡単。傍らにいた銀髪の少女を、不安がらせないため。
 少女はとても安穏とした表情で、彼と共にいた。
 まるで全ての幸せが、そこにあるかのように。
 あのような――のニオイを纏う少女に、あそこまで信頼されているのだから。
 そんな彼が、悪い人の筈が、なかった。
 
 なのに。
 今、自分のせいで。
 
 リシトアーキは頭の回転の早い方ではない。
 よく竜族仲間には、どんくさいと言われている。
 そんな彼女が、必死になって考えていた。
 
 どうやったら彼を救えるか。
 どうやったら、この窮地を逃れられるか。
 
 わからない。
 わからなかった。
 
 
 少しずつ、今いる場所が崩壊していく感覚。
 ゆっくりと、諦観が心の中に忍び寄ってくる。
 
 身体を竜形態に戻せば、縄を千切ることは可能だろう。
 しかしそのときは、岩牢に収まりきらない巨体が、そのまま生き埋めになるだけである。
 しかも、傍らのヒトを押し潰す形で。
 
 もう、どうしようもない。
 
 そう思い、せめて最後は、相手の顔を見て謝罪しようと顔を向け、
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 何故かちょっぴり爽やかになった顔で。
 男性が、ズボンを脱ぎ捨てていた。
 
 
 そして。
 
 
 ――栗の花の香りと共に。
 強烈な“ニオイ”が、リシトアーキの嗅覚を灼いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ――今度こそ、お礼を言おう。
 
 ベラウは心の中で、そう呟き、勇気を振り絞って声を出そうとする。
 しかし、彼女の喉が空気を震わせる前に。
 大きな声が、彼女の決意を吹き飛ばしていた。
 
 
「こらーっ! カキヤから! はなれろーっ!!!」
 
 
 響いたのは舌っ足らずな絶叫。
 声の主は、可憐な銀髪の女の子。
 その表情を憤怒で真っ赤にし、怒りの対象に唾を飛ばしていた。
 ちなみにベラウのことではない。
 
 逞しいカキヤの腕に抱かれている、翠髪の女性に対してだ。
 
「す、すみません。腰が抜けてしまいまして」
「あー、いいって。この場に置いておくのも危なそうだし、とりあえず次の街までは運んでやるよ」
「だめ! そこはわたしせんようなんだから、ぜったいだめー!!!
 そこはハダカじゃないといちゃいけないばしょなの! それでわたしはカキヤせんようなのっ!」
「いや違うし。というか誤解を招くこと言うんじゃねえっ!」
 
 女の子に注意しつつ、ベラウの方を窺うカキヤ。
 それに対して、苦笑いで手を振ったりでもすればフォローになったかもしれないが。
 とっさのことで、つい一歩退いて目を逸らしてしまう。
 
(……あ、落ち込んだ)
 
 心なし肩を落としたカキヤは、上半身に何も身に付けていなかった。
 下半身は、女性用の外套を巻き付けることで、なんとか隠れているが、その下は全裸である。
 ちなみにベラウの外套だ。返ってくることは期待していない。というか返されても着られないだろう。
 
 
 やはりというかなんというか。
 ベラウと女の子を助けに来たとき、カキヤは全裸だった。
 目にも留まらぬ早業で誘拐犯達を気絶させたカキヤは、やっぱり全裸のまま、ベラウ達を連れて逃げ出していた。
 今回は4人ということもあり、歩ける者は歩いての移動とはなったが、唯一の男性が全裸ということに変わりはなかった。
 これでは見た目があまりにもアレなので、ベラウは自分の着ていた外套を貸し、今に至る。
 どうして全裸で助けてくれたのかはさっぱりわからないが、
 そういう性癖なのだろう、とベラウは深く考えるのを止めていた。
 
 そんなことより、助けてくれたお礼を言わなければ。
 そう思い、何度か声をかけようとしているのだが。
 
 女性がカキヤにお姫様抱っこされているのが、そんなに気に食わないのか。
 銀髪の女の子が、烈火の如くお怒りになっていた。
 その怒り具合たるや、生半可な覚悟では近付くことすら困難で。
 ベラウはお礼を言いたくても言えないもどかしさを抱えたまま、彼らの後ろをついていくことしか、できなかった。
 
 
 
 
 ふと。
 
 女の子のわめき声に紛れながら。
 
 小さな声が、聞こえてきた。
 
 
「……あの、カキヤさん。あ、ありがとうございます。
 私、男の人にこうしていただくの、はじめてで、その」
 
 
 何やら、お礼を言っているようだった。
 私も言いたいのになあ、とちょっぴりジト目で、ぽーっとした翠髪の女性へ視線を向ける。
 と。
 
 
 
「あれ……ねむ…………ぁ……――――」
 
 女の子の倒れる気配。
 しかしそこまで気にする余裕もなく。
 
 ベラウの意識はそこで途切れた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「お、おい。リシトアーキ?
 能力が暴走してないか!? 俺も眠気がやばいんだが……!」
 
「す、すいません!
 ……お、おかしいですね。もう平気の筈なのですが、どうしてかドキドキして息苦しくて」
 
 
 ――そんな声が、聞こえたような、聞こえなかったような。







(第3話につづく)



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