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No.1501の一覧
[0] ヴァルチャー[ポンチ](2007/09/23 01:02)
[1] Re:ヴァルチャー[ポンチ](2007/09/24 01:22)
[2] Re[2]:ヴァルチャー[ポンチ](2007/09/24 23:42)
[3] Re[3]:ヴァルチャー[ポンチ](2007/09/26 01:56)
[4] Re[4]:ヴァルチャー[ポンチ](2007/09/26 23:32)
[5] Re[5]:ヴァルチャー[ポンチ](2007/09/27 18:55)
[6] Re[6]:ヴァルチャー[喫著無](2007/09/28 21:34)
[7] Re[7]:ヴァルチャー[ポンチ](2007/09/29 17:17)
[8] Re[8]:ヴァルチャー[ポンチ](2007/09/30 21:57)
[9] Re[9]:ヴァルチャー[ポンチ](2007/10/02 23:27)
[10] Re[10]:ヴァルチャー[ポンチ](2007/10/04 19:01)
[11] Re[11]:ヴァルチャー[ポンチ](2007/10/05 23:41)
[12] Re[12]:ヴァルチャー[ポンチ](2007/10/06 21:23)
[13] Re[13]:ヴァルチャー[ポンチ](2007/10/08 00:21)
[14] 番外 ヤナギ[ポンチ](2010/06/08 00:04)
[15] 番外 ツバキ[ポンチ](2010/06/09 21:00)
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[1501] Re[9]:ヴァルチャー
Name: ポンチ◆ebd5b07d ID:440294e0 前を表示する / 次を表示する
Date: 2007/10/02 23:27
 少しずつ理解できてきた。
 今まで、体の使い方が分かっていなかった。少しずつ、いや、ようやく分かってきた。






第十話 すまない、少し眠る






 ハジュラの下水道は、盗掘王が作り出した発掘のための穴だ。それを整備して、今の形になっている。
 下水道に潜む怪物を避けながら、その横穴にたどり着いていた。
 ギャング十名と共に進むのは、死の回廊。
 どのようにしてリンガー商会がこの道を知ったかは定かではない。だが、この道を乗り越えた者はいないとされている。
 古代王の墳墓への入り口は二箇所。ホドリ監獄とされている大穴、もう一つこそが盗掘王が掘り進めて横穴を開けた死の回廊だ。
 下水道の魔物は、ここから湧き出すともいわれている。ハジュラの下水道は邪神神殿の森と同じく人の立ち入れない場所なのである。
 横穴を抜けるまでは何事もなかったのだが、遺跡の内部と思しき回廊に入ってからは、独特の危険な気配が満ちていた。
「あー、ここは落ち着くな」
 とアギラが声をあげると、ギャングたちは呆れたような顔になる。
 十人、多いように思うが、王子とエリザベートを含めていることを考えれば少なすぎる人数だ。アリスとタキガワがいるのは、彼らが最もこの手の戦いに長けているからだ。他の八名は、荷物持ちと盾でしかない。
 商会本社には、エリザベートの身代わりをシャルロットが務めている。隠密行動である。ハーラル一家に見つかってしまうのだけは避けたい。
「センサーには異常無し。生命反応も小型のものしか存在しない」
 タキガワが言うが、アギラは聞いていない。
「……こりゃあ諦める気にもなるわ」
 王子は、鳥肌の立つ二の腕を抑える。ここには、言葉にできない危険な空気がある。立ち入るのを体が拒否するような、何かの意思が充満している。
 タキガワとアギラ、二人は違ったことを感じている。特に、アギラにとっては居心地のいい場所のようだ。一方のタキガワは、危険度が高いという程度にしか感じていない。人間の本能に呼びかける圧迫感とはまた違ったものである。
 ランタンの灯りに照らされて進むと、天井が高くなった。
「この先に、生物の反応がある。大型だ」
 タキガワのセンサーはそう判断していた。
 王子とエリザベートは止まるつもりなど毛頭無い。
「俺とタキガワさんで先行するよ」
「任せたわ」
 アギラとタキガワ、仲がいいとは言えないが、仕事となればそういうことは言わない。
 天井はどんどん高くなり、叩き壊された扉が見えた。タキガワは暗視センサーで、アギラは梟の瞳で暗闇を苦にしない。
 広いホールには、所々に何かが転がっていた。白骨と、何か中途半端な柱のようなものだ。
 いるいる、アギラは声を出さずに、高揚してくる食欲を鎮める。タキガワは、両手を前に出して警戒態勢を取っていた。
 ホール中央には、台形の高台があり、階段まであった。その頂上に、一振りの剣が突き刺さっている。確実に罠だ。
「無視したらいけそうだな」
 アギラは言うが、タキガワのセンサーは柱に見えているものの反応を捉えている。
「無理だな。近づいただけで反応するらしい」
 タキガワは言うが早いか両手にレーザーブレードを展開して柱を斬りつけた。緑色の体液が飛び散り、他の柱も擬態を解く。
 蟹と百足を足したような、三メートル近い化物たちに取囲まれる。毒のついた針を持っているようだが、タキガワには神経毒など通じない。また、アギラにも人や動物に通じる毒はよっぽど特殊なものでない限り通じない。
 犬の形を取ったアギラは包囲を素早く潜り抜け、その際に触手で化物の頭を潰していく。反応速度でいえば、昆虫ほどではないようだ。
「クソ不味い」
「きたねぇもん食ってんじゃねぇ」
 タキガワのレーザーブレードは、蟹百足の傷口を炭化させる。決して速い動きではない。そして、幾度も蟹百足の爪や牙を突き立てられてるが、彼の装甲には全く損傷を与えられてはいなかった。
「アギラぁ、まとめて片付ける。下がってろ」
「ボケがっ」
 言いながらも、アギラは逃げた。
 タキガワが、人間でいうならばへその辺りからシャツを裂いた。そこから見えるのは、腹部プラズマバルカン。石造りの回廊で跳弾しないことも含めて、一人で多数を相手にするには理にかなった武装である。
 アギラが物陰に逃げたと同時に轟音が響き、蟹百足は焦げ後を無数に残して動くものはいなくなっていた。
「お前、俺を巻き込もうとしてなかったか?」
「さあ、そんなことはなかったと思うぜ」
「使う時は気をつけろよ」
「強力すぎて使うタイミングがあんまり無いんだよ」
 味方を巻き込むという意味では使いどころは難しいだろう。強すぎれば孤立するし、何もしなければ化物と呼ばれる。アギラよりはマシだが、彼も苦労しているらしい。
 しばらくして王子、エリザベート、アリスそれとギャングたちと合流して、問題の財宝であるらしい剣もついでに持っていくことになった。千年以上前の代物にも関わらず、剣は輝きを保っていた。装飾も豪華で、それなりの価値がありそうだ。
 その後も、罠などはほとんどなかったものの、定期的に化物と襲われたり財宝があったりを繰り返すことになる。
 一本道ながら、入り組んだ回廊を進むこと二日。
 念のために一ヶ月は持つくらいの物資を持ち込んだだけあって、余裕のある進み具合のようだ。古代の地図の写し、という胡散臭いものともルートはあっている。
「さっき通ったのが番兵の門、だから次が魂の井戸でいいわけね」
 アーサーは地図を何度も確認しているというのに、また声に出して確認している。読みにくい古代文字のはずが、アーサーはどこで知ったのかこれが読めるらしい。
 地図は、次の『魂の井戸』という部屋が中央部であることを示していた。
「アーサー、次のとこは少しヤバいぞ」
 アギラが囁いた。
「どうして?」
「いや、ちょっとした知り合いに似た気配があるんだ。なんていうか、上手く説明できないんだけど、な」
 バルガリエルとよく似た気配を感じる。いや、あれくらいの強さの、自分と同じようなものがいるのを感じていた。
「確証は無いけどな。全員でいっても負けるかもしれない」
「へえ、ってことはあの重戦士、神の戦槌より強いってこと」
「ああ、多分な」
 バルガリエルであれば、神の戦槌を軽く倒していたことだろう。強さというのは、パラメーターという設定数値ではない。噛みあう、噛みあわないもあるが、恐らくは場数とどこまで圧倒的な何かを持つかによる。
「おい、バケモノ。次のとこがヤバいってのはマジか」
 タキガワが口を挟んだ。ピカピカだったコートは返り血で斑に染まっている。
「ああ、聞いてたのかよ。まあヤバいな」
「俺がいてもか」
「ああ、ヤバい。戦わずにすむ方法があるなら、そうした方がいい。多分、話が通じるとしたら俺だ。先に俺が行こう」
「……本気で言ってんのかよ」
「前もな、話し合いでなんとかしたんだ」
「俺もついていくぞ。ヤバくなったらカチ込む」
 タキガワの声でアリスたちギャングも、変な笑い声を上げた。
「アタシらもだ。どうせ、引き返したってロクなことがねぇしな。アギラさんよお」
「アリスちゃん、お前ら」
「ちゃんづけすんなっ」
 回廊で休息を取り、アギラはバルガリエルと対峙した時よりも、ずっと平静な気持ちで奥に進んだ。かなり離れて、アリスたちもついてくる。エリザベートと王子、そして数人のギャングは最悪に備えてさらに後ろだ。
 回廊、ホール、回廊、ホール。それが死の回廊の基本的な作りだ。
 魂の井戸、地図にそう書かれたそこは、先ほどまでのホールとは全く違っていた。ただ、中心に井戸があるだけだ。だが、そこから危険な何かが漂ってきている。
「なんだ」
 一歩入った瞬間、唯一の退路でありタキガワたちとの道である通路の扉が閉まった。
 異形のアギラといえど、ここが明らかに異質であること、そして何か得体の知れない恐ろしいものが潜んでいることはすぐに理解できた。
 一番素早く動ける形、犬の形態で、まっすぐに進む。行くな、と体が警告を告げる。
「お前、ただの異形じゃないな」
 井戸から声がした。女の声だ。今になって、自分がどれだけ気味の悪い存在か理解できた。喋らないはずのものが喋っている、そんな違和感が、井戸の声から発せられている。
 見ると、先ほどまではいなかったものがいる。女の上半身だ。何も身につけていない裸。作りものめいた美しい顔かたち。全てが、どこか作りものめいている完璧。上半身だけ見るに、そう感じた。
「お、俺たちは、ここの財宝とかには興味がない。ここを通って、地下の大河の辺りまでいきたいだけなんだ。と、通してほしい。何もしない」
「虫のいい話。ミデの同属。ああ、少し違う。人間みたいな精神の形。似ているけど違う。私はミデ。お前は?」
「あ、アギラだ」
 女は作り物の顔で笑みを作った。
「ここが静かになって、千年は経つ。私は四代目のミデ。恐ろしく昔に最初のミデを倒したヤツは竜を戒める道具を得た。あとのミデは寿命で死んだ。私の役目はお前と戦って、勝てば褒美をやることだ。ミデから何を欲している?」
「ただ通して欲しいだけだ。戦う気は無い」
「ダメだ。ミデと会った者はミデに欲せねばならない。ミデはそのためにここにいる。戦わないといけないのは変わらないぞ。ミデはそのためにいるんだから」
 邪妖精の女王と比べたら、まだマシだ。こいつには勝てる可能性がある。
「最初のミデを倒したヤツは、シアリスと名乗っていたぞ。お前はミデに会った二人目の生き物だ。ミデは何でも与えてやる」
 シアリス、クソ神だ。竜を戒める力、どういうことだろう。
「答えないなら、ミデを倒してここを通れ」
 答える暇もなく、何かが飛んできた。とっさに避けたが、さっきまで立っていた場所が粉々に砕けている。
「ミデの吐息は烈風吐息。ミデのあんよは百の帷子。ミデのおてては竜の顎」
 井戸から、ミデは這い出した。
 女の上半身、蟹百足の下半身、腕はいつの間にか牙を持つ竜の頭に。背後に回り込もうとしたが、速い。あの部屋にいた蟹百足とは比べものにならない速さで、ミデはアギラの動きについてくる。
「烈風吐息は全てを塵に」
 触手を放ったが、口をカッと開いたミデにより、それはまさしく塵にまで分解された。触手に走った痛みと、イーティングホラーの持つ何かが理解させてくれ。アレは、見えないほど細かい針を無数に吐き出したものだと。
 至近距離では自身の体まで傷つける。使えないはずだ。犬の形でとびかかったが、今度は蟹百足の下半身とその両手の竜の頭が噛み砕こうと襲ってくる。砕かれることを覚悟で七本の触手を放ち、吸血を行う。
 案の定、犬の足、前足と後ろ足を引き裂かれた。が、吸った血で再生した肉で、新たな足を作り出して逃げる。
「なんだこいつ」
 血の味が、おかしい。こいつの血は、味が違う。なんといえばいいのだろう、何か小さな生き物を無数に採食したような、そんな血だ。
「ミデの肉を食べるな、アギラ。ちゃんと大きくなれないぞ」
 なんだこいつ。
「お、お前、いったいなんなんだ」
「ミデはミデだ」
 体が、勝手に何かを理解、いや、思い出させようとしている。
「戦ってる時にボーっとするな」
 ミデの歌うような声。
 跳ね飛ばされても、まだ頭がグルグルと。だけど、体は勝手に動く。頭部の作り方、イーティングホラーの知る生物。その中で一番強い生物。
「ガルム、ガルムの頭。邪神の犬の頭、最初のミデはよく食べたぞ」
 ガルムだ。イーティングホラーの遺伝子に刷り込まれている戦いの記憶。イーティングホラーは擬態するモノ。ありとあらゆるものを食い尽くすために作られた邪神の兵士。
「ガルム、知ってるぞ。なんで知ってる、なんで俺はマネができる」
 ガルムの足、ガルムの尾、ガルムの牙。それを再現しても、イーティングホラーでは半端なまがい物だ。だが、ただの犬よりは速い。
「アギラはイーティングホラーのくせに戦い方を知らない。ミデは知っている。お前たちと戦った最初のミデは知っている」
「うぅるせえぇぇぇぇ」
 ガルムの擬態をした牙が、ミデの左腕を噛み千切った。
 肉を食む。なんだこいつ、なんだこいつ、なんでこいつが怖い。そして、この肉の味がどうして、どうしてこのように間違ったことをしていると感じさせる。してはならぬことをしていると、どうして体はそう思う。
「ミデはお前たちと共に戦った。我々を作り出した者と戦った。今のミデは、魂の井戸に作られたミデだ。お前たちとは違う。だけど、アギラはミデの仲間」
「じゃあ黙って通せよっ」
「できない。ミデを倒さないとここは通せない。アギラの望みがそうなのなら、ミデはここを通さない」
 烈風吐息で、体の三分の一が弾けた。とびかかって、その上半身に絡みつく。体全体を触手として、吸血。
「肉を食むな。ミデの肉を食むな、アギラのためにならない。仲間の肉を食むな」
「畜生っ、お前はなんなんだっ」
「ミデは王との約束を守る。ミデは墓の守り、魂の守り。そして、欲望の守り」
 全部吸え。ちぎられても、いや、食い尽くせ。
 触手を伸ばして食い尽くせ。体が、軽い。驚くほど力が漲っている。
「黙れよっ」
 何を我慢している。千載一遇のチャンスをフイにしてまでなぜ俺は離れた。吸血の作用で、ミデはぐったりとしている。体液の大部分を失ったのだ、それも無理は無い。
「さあ、ミデを倒して進め。お前とミデは相性が悪い。ミデは、ガルムやニズヘグには強いけど、イーティングホラーには弱い。アギラと戦うようにはできていない」
「待てよ、お前」
「ミデだ。ミデは四代目のミデ」
「お前に勝ったら望みを叶えるんだな、そうだな」
「ミデは欲望の守り。お前がミデより強く望めば、宝を与えてやる。魂の井戸の底、古い古い王は、人に与える慈悲深い王」
「お前をくれ。俺たちは争ってはいけない。そういう形にできている。イーティングホラーとミデは争うものじゃない」
「それがお前の望みか。いいだろう。ミデは最初のミデと同じくイーティングホラーと共に戦おう」
 ミデは「ギアアアア」という人の形をしているとは思えぬ異形の叫びを上げて、自身の頭に無事な右手を突っ込んだ。竜の頭はヒトの形をしたものに戻っていたが、それはミデ自身の脳をかき回している。
「これを食えば、ミデとアギラは最初のミデとイーティングホラーのように、共に戦うだろう。さあ、食え」
 ミデが差し出したのは、宝石のようなものだった。ミデの頭部より掻き出された青い宝石は、光の無い中で輝きを放っている。
 アギラは、それを飲み込んだ。
 ミデの契約の証、魂の王との契約の中に存在するものの一つ。それは、ミデという生物の心臓のような何か。
「アギラ、傷を治すから、しばらく待て」
「いいんだな、ほんとに仲間になるんだな」
「お前の望みは叶えた。ミデはお前と共に戦おう。我々は最初から戦うモノなんだから」
 敵意は無いようだ。
「ミデ、俺の仲間をつれてくる。襲うなよ、いいな」
「ミデはかしこい。仲間は食わないくらい分かっている」
 アギラの後ろで、扉の開く音が響いた。
 なだれこんできたアリスゆタキガワに、「説得は成功した」と告げたのだが、なかなか収まらない。特に、ミデが魂の井戸から取り出した不気味な虫を食っているのが、相当アリスに悪影響を与えているようで、タキガワがなんとかなだめたが、もう少しでまた戦うことになる所だった。
 アギラの傷が深いこと、新たに仲間になったミデの傷を修復するのに多少の時間が必要なために、魂の井戸から少し離れた所で休息することになった。アギラとミデとタキガワは、傷の治りが早くなるとのことで魂の井戸で休息をとっている。
「ま、俺は見張りだがな」
 タキガワは言って、心配してんじゃねーんだぞ、というのを繰り返した。こいつもツンデレだ。
「アギラ、食べろ」
 ミデの差し出したのは、何か肉の塊のような虫とも獣ともつかない蠢くものだった。タキガワはあまりの気持ち悪さに顔を背けている。
「なんだ、これ。懐かしい感じのする味だ」
「これはシニクだ。ミデと最初のミデと、アギラのようなものたちが食べていたものだ」
 ミデの知識が頭に勝手に入る。
「ミデの脳石はアギラが食べた。ミデはアギラに仕える。最初のミデはシアリスに仕えた。アギラが二人目の主だ」
「知らない記憶がある。ミデの記憶か」
「そうだ、シアリスはそれを見れなかった」
 断片化された情報が頭の中にある。無数のミデとイーティングホラー、そしてガルムやニズヘグが炎の中で何かと戦っている。ああ、あれは竜か。
 イーティングホラーは、竜の体にヒルのように取り付いて、血を吸っている。ミデとガルムとニズヘグは、強大な竜に戦いを挑んでいる。あれは、あの後ろには、ああ邪妖精の女王。
「おい、アギラ、大丈夫か」
「すまない、少し眠る」
「機人、そっとしておいてやれ。アギラは修復している。アギラに欠けているものを」
 深い眠りの中で、何かとても大事なことを教わった気がする。
 目覚めて覚えていたのは、竜は敵だということだけだ。








 ミデの加入により、安全な道筋になった。後の部屋のバケモノは、全てミデに怯えて丸くなるだけだった。
 徒歩で三日。
 懐かしいホドリ監獄にたどりついて、最初にあったのは、やはりミデに武器を構える者たちで、アギラとカザミの再会により、お頭グレイとも再会することになった。
「ここをまとめてるホドリム・グレイだ。お前らは、……懐かしい野朗がいやがるな」
 グレイは、苦虫を噛み潰したような顔で、にこやかに前に出たアーサーと見詰め合った。
「占星術師レド、大神官グラハム、ホドリム・グレイ、どれが本当の名前か教えてほしいわね。ま、それよりも再会を祝いましょうか?」
「おい、カザミ。そこのチンピラとアギラとバケモノはお前に任す。秩序乱しやがったらぶっ殺せ」
 ギャングたちは身構えるが、カザミは相変わらずの板ばさみで執り成す。
「つもる話はあっちでしましょう。どうせ、聞かれるのはオッサンも嫌でしょ」
「ちっ、バカ王子が」
 このようにして、死の回廊は踏破された。
 ふと、ユウのことを思い出したアギラは、ミデとユウの対面を思い描いて頭が痛くなった。


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