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No.14030の一覧
[0] 死んで覚える迷宮探索(よしお→異世界)[汚い忍者](2010/01/07 01:11)
[1] 第一話[汚い忍者](2009/11/28 08:01)
[2] 第二話[汚い忍者](2009/12/02 10:41)
[3] 第三話[汚い忍者](2009/12/02 10:48)
[4] 第四話[汚い忍者](2009/12/02 11:11)
[5] 第五話[汚い忍者](2009/12/02 11:19)
[6] 第六話[汚い忍者](2009/12/02 11:32)
[7] 第七話[汚い忍者](2009/12/02 11:41)
[8] 第八話[汚い忍者](2009/12/02 11:47)
[9] 第九話[汚い忍者](2010/01/12 01:40)
[10] 第十話[汚い忍者](2009/12/07 00:32)
[11] 第十一話[汚い忍者](2009/12/10 02:08)
[12] 第十二話[汚い忍者](2009/12/26 10:00)
[13] 第十三話[汚い忍者](2010/01/11 00:27)
[14] 第十四話[汚い忍者](2010/01/13 01:32)
[15] 第十五話[汚い忍者](2010/04/03 19:09)
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[14030] 第三話
Name: 汚い忍者◆64ee84f7 ID:62ef03fa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/02 10:48
東ウェリントン国。西ウェリントン国

元々は一つの国であったそうだが、現在は東西に分裂し冷戦状態。まるで第二次世界大戦後のドイツのような国家である。
ドイツではその境界線上にベルリンの壁が位置していたが、東西ウェリントンでは魔法的な何かで遮断されており、基本的に行き来することは出来ない。

そんなウェリントン国には地下迷宮が存在する。
現在、迷宮は3つ確認されており、東ウェリントンに1つ、西ウェリントンに2つ存在するという。
お約束の如くどの迷宮の内部にも様々なモンスターが存在し、非常に危険なスポットであるのだが、その危険な迷宮への挑戦者達は後を絶つことはない。
何故ならば東ウェリントンに位置する迷宮では100年ほど前に地下6階で多くの財宝が見つかった記録があり、また希少な資源の採掘が可能であるからだ。
その為、犯罪者や政治犯などの強制収容所の労働者達が毎日迷宮へと潜らされ、虫けらのように死んでいる。

東ウェリントンの迷宮は現在地下9階まで攻略されている。
迷宮に対して様々な記録や資料はあるもの地下9階以降について書かれたのはない。
それぞれの迷宮は独立していると考えられている。
しかし、200年程前に西ウェリントンに位置する迷宮の入り口から入った国軍小隊が壊滅しながらも、そのうち2名が東ウェリントンの迷宮の入り口から帰還したとなんていう逸話も残っているらしいが、真偽の程は不明である。
すなわち、構造やモンスターの種類、最下層は地下何階なのか等、迷宮については殆ど分かっていないのが現状なのである。







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■エリアジャンプ中です。 東ウェリントン サザーン区 >>> ブーヘンヴァルト強制収容所■



ゆったりとした速度で囚人護送車が進む。

角っぽいものが生えている以外は見た目は普通の人間っぽい男性だったり、頭がトカゲな大柄な男性だったり、猫耳と尻尾をつけているというのに全く萌えという要素を見出せない40台女性だったり、牢内に閉じ込められている人々のラインナップは幅広い。


唯一つ統一しているのは全員まるで映画の囚人が着ている様な縞々模様の服を着ていることと一様に暗い表情をしていることであろうか。

そんな顔ぶれの中でよしおはこれからの生活に希望を見出していた。




よしおはあの尋問後の驚愕の展開を思い起こし、期待に胸を膨らませていた。

結局よしおは致死斬鬼シームレスコラプションとやらが一体何なのか皆目検討がつかなかったので、厨二美人の質問に対して首を横に振ったのだ。

すると


『YESと答えるヤツは致死斬鬼シームレスコラプションのスパイ!NOと答えるヤツは訓練された致死斬鬼シームレスコラプションのスパイだわっ!』

『丁度ブーヘンヴァルトへの補給要員が欲しかった所なのよっ!』

等と言われ、いきなり就職先を斡旋された。
そしてあれよあれよという間に内定が決まったのだ。

意味が分からないが、先立つものがないよしおとしては就職先が決まったのはありがたい。

聞いたところによると就職先では寮も完備されており、待遇と福利厚生も充足しているという。
留置所で用意してあったのか、縞々模様の囚人服のような制服もすぐさま支給された。
就職先へ向かう移動手段が囚人護送車っぽいのは気になったが、文化の違いなのかもしれない。

どうやらよしおが桃色回路ストロベリースクリプトとやらで尚且つ訓練された致死斬鬼シームレスコラプションとやらのスパイであったことが採用の決め手となったらしい。

本人ですら覚えのない自身の境遇をありがたみながら牢馬車に乗る前に配られた就職先の資料をもう一度眺める、
が、よしおにはなんと書いてあるのかさっぱりわからなかった。


幸いな事に翻訳機の役目を果たすこのピアスはさほど高いものでもないらしく返却してくれとも言われなかったのでそのまま頂いてしまった。

しかし、残念な事にこの翻訳機には公共語聞き取れるようになっても読めるようになるという訳ではなかった。











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王国暦653年度入社案内

株式会社 ブーヘンヴァルト強制収容所

◆あいさつ
こんにちは。株式会社 ブーヘンヴァルト強制収容所人事部採用担当です
淘汰の激しい迷宮探索業界で、当収容所が創業400年を超える企業であるのは、政府をはじめ周り
の人々に信頼されてきた証だと思っています。
会社を形づくるのは社員です。
その一人ひとりが、強く逞しい人になってこそ、会社も発展すると信じています。
ですから当社では、出身やそれまでの経歴に一切とらわれない、人材採用と教育を行っています。
当社が求めるのは、何事にも積極的に取り組んでいく姿勢と、今日よりも明日、少しでも成長しようとする
意欲、そしてそれを元に確実に成果へ結びつける能力です。
どんな仕事でもつらいものですが、その中にやりがいや喜びを見出して、素晴らしい人生を築いてほしい
し、ブーヘンヴァルト強制収容所という会社で、私と一緒にそれを実現してほしいと思っています。
厳しい迷宮探索から生還し、青空に映える太陽の光を浴びたとき、きっと貴方は言い表せないやりがいと
いうものを感じることが出来るでしょう。
向上心とチャレンジ精神あふれる皆様のご活躍を期待しています。

◆仕事内容
探索部…地下9階以降への探索を目標としています。未知なるモンスターとの戦闘も必要になる過酷な
職場ですがだからこそスキルアップには最適な職場と言えるでしょう。

拠点防衛部…地下4階に位置する拠点の防衛任務に携わっていただきます。凶暴なモンスターから拠点
を守りきるという仕事は非常に責任のある仕事ではありますが、それだけやりがいのある仕事です。

資材部…迷宮内の資源の発掘をしていただきます。未経験の方はまず浅い階層で技術を身につけてか
らより深い階層での発掘、もしくは探索部か拠点防衛部への異動となります。

実績…新人初迷宮探索の生還率60%を達成!他社には真似出来ない安全な職場です!

◆給与
完全出来高制

◆待遇
迷宮探索会社である以上、命の危険があるのは当然ですが、当社は他社にはない充実した待遇で皆様
をお迎えしております。
月休3日・連帯責任・寮完備・購買施設あり・あなたの頑張りによっては賞与のチャンスも!?

◆勤務地 
東ウェリントン国 ブーヘンヴァルト区

◆ 福利厚生
迷宮探索業界では命の危険というのは避けて通れないもの…。積極的採用を推進している当社では新
たな仲間との出会いも数多くあるでしょうが、当然の事ながら親しい仲間との別れもあるでしょう。
だからこそ仲間との絆は大切にして欲しい。そんな思いを込めて当社ではパーティ制度を採用していま
す。気の合う仲間同士でともに汗を流し労働の喜びを分かち合いましょう!

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よしおの就職先は間違い無くブラック企業であった。







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■現在位置は 東ウェリントン ブーヘンヴァルト区 ブーヘンヴァルト強制収容所 (C-2) です。■
■Welcome to Konzentrationslager Buchenwald■


辺りは石壁で囲まれ、その上には有刺鉄線。入り口は1箇所のみ。厳重な警備を抜けて新入社員たちは社内の広場へと集められていた。

広場の中心には石碑らしきモニュメントが設置されており、その前に鶏頭のスーツを着た男性が立ち、ハキハキとした声でスピーチを始めた。


「皆さん!入社おめでとうございます!株式会社 ブーヘンヴァルト強制収容所の人事部採用担当の†堕天使猫姫†と申します!」


人事部採用担当の大きな挨拶から始まり、会社案内を口頭で説明している。


頭が鶏でしかも男なのに猫姫とはこれ如何に。


と、この世界の人間(といえるのかどうかはわからないが)のネーミングセンスは相変わらず酷い、なんてことを考えていたのだが、会社案内を聞いて仕事内容や待遇を知ったよしおは自身でも血の気が引いて行くのを感じていた。


(モンスターとの戦闘あり。月休3日、新人の生還率60%って…どんなブラック企業だよ…。)


よしおは牢馬車に載せられる前にこれまで尋問を担当していたオークが冷たい視線でこちらを見ているのを思い出した。

あ…あの豚の目…自身が豚のくせに俺のことを養豚場の豚でも見るかのように冷たい目で見ている…。
残酷な目だ…“かわいそうだけど明日の朝にはお肉屋さんの店先に並ぶ運命なのね”って感じの!

と、印象に残っていたのであるが、あの目はこうなる事を哀れんでいたのだろうか。


「以上で当社の説明を終りとします。みなさんはまず資材部での所属となるのですが、資材部の担当教官からこれからについてのより詳しい説明があるでしょう」


「さて、皆様のご活躍を願いまして拙い物ではありますが当社からプレゼントを用意しております」


支給されたのは、使い込まれたであろう青銅の剣、青銅の盾、つるはし、皮のリュックサックであった。所々血液と思われる染みが付着しているのはどういうことなのだろうか。


「皆様に支給しました武器防具の使用者は残念ながらすでに退職してしまったのですが、それらには先輩たちの血と汗、思いが詰まっているのです!」


「貴方たちがそれを継承するのです!彼らのような立派な社員となってください!」


退職した人間もいる、と聞いてよしおは少しの安堵を得る。

当然、よしおはすぐにでも辞表をだす決心をした。








一度入れば死体となってしか出られないと噂される株式会社ブーヘンヴァルト強制収容所。
通称蟻地獄。
「退職とは死ぬ事と見つけたり」なんて標語が張ってあったりする超ブラック企業である。

よしおはわかっていなかった。

”退職届”という書類が、蟻地獄の総務ではすぐにでも「退職」できる最大の激戦区である”探索部への異動願”と同義とみなす慣例があることを。

桃色回路ストロベリースクリプトの命を賭けた生活は鶏頭の激励と無謀な決心を合図にこうして始まったのだ。



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設定

[よしお]
桃色回路(ストロベリースクリプト)の二つ名を持ち、謎の組織 致死斬鬼(シームレスコラプション)のスパイではないか噂される男。その真相は未だ不明。

[致死斬鬼(シームレスコラプション)]
西ウェリントン国の情報機関の一つ。実際は致死斬鬼なんていう厨二病的な名称ではないがよしおのもつ翻訳機が故障しているため、間違った翻訳がされている。

[ブーヘンヴァルト強制収容所]
蟻地獄とも呼ばれる。採用者と退職者の入れ代わりが激しい。犯罪者や政治犯、密入国者を積極的採用しており、退職=死の超優良企業。
ちなみにブーヘンヴァルト強制収容所は実在した強制収容所である。

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